今回のデータの多くは、大手新聞社を中心に17社を対象にした調査によるものであるが、トレンドとしては全体(全社)でもあまり変わらないと見ている。2012年の総売上高は386億ドルで、2011年の395億ドルに比べて2%減で収まった。減少率が小さくなったのは、販売収入が前年比で5%も増えたからだ。特にデジタルコンテンツの有料化に踏み切った新聞が増えてきたことが、大きく貢献している。デジタル販売収入が加わってきたことのほかに、プリント版(新聞紙)やバンドル版(プリント+デジタル)の購読料を高く設定してことも効いたようである。
広告売上は前年比6%減と、減り続けている。デジタル広告売上が前年比4%増となっているが、プリント広告売上が相変わらず厳しく同9%減となっているのが痛い。プリント広告売上高は総売上の46%も占めるだけに、プリント広告売上の減少を補うのは大変なのだ。
それでも、広告売上の減少分を、5%増の販売売上やその他売上で補うことにより、なんとか総売上を2%減に食い止めている。軌道に乗り始めたデジタル有料サービス収入が増えていけば、今年にも売上高の底打ちが実現するかもと米新聞業界では期待しているようだ。
売上の内訳は次の円グラフのようになる。2011年と2012年の売上項目のシェアを示している。ここでPrint Newspaperとあるのは、プリント版(新聞紙)広告売上である。
(ソース:NAA)
次のグラフは、各項目の売上の対前年比(YOY %)である。No. of Companiesは調査対象の新聞社数である。
(ソース:NAA)
デジタルコンテンツの有料化を活路にして、新聞産業が復活するとの希望的観測が出始めている。でもあくまで底が見えてきたということで、大きく再浮上するとは思えない。それどころか、底を打つのさえ難しいと警鐘を鳴らす声も少なくない。
まず、今でも新聞産業の総売上げの半分近を占めるプリント広告売上が、2012年も前年比-9%と減り続けている。当てにしていたデジタル広告売上も同4%増と勢いがない。新聞産業を支えてきた広告売上が、長期低落するのは避けらそうもない。
そこで広告売上の減った分を、はたして販売売上で補えていけるかが鍵になる。救世主として期待されているのがデジタル広告収入である。Pewが先ほど発行した State of the Mediaの年次報告でも、1380タイトルの日刊紙のうち約450タイトルの新聞サイトが有料化に向っている。藁をも掴む形で有料化ダッシュが続いているのだ。今回の調査では、新規にデジタル販売収入を獲得した新聞が多いこともあって、販売収入の底上げに大きく貢献した。中でもバンドル(プリント+デジタル)の販売売上が前年比499%増と爆発的な伸びたが、最初だけの現象で継続性があるかどうかは不透明である。また、プリント(新聞紙)だけの販売収入は、前年比-14%と大きく落ち始めている。底を打つには、販売収入の対前年比を、2012年の同5%増以上に高めなければならないだろう。
◇参考
・The American Newspaper Media Industry Revenue Profile 2012(NAA)
・Deeper data dive finds $5.5 billion in uncounted newspaper industry revenue(Poynter.)
・We can see the future of newspapers now. Get in the habit of paying again(NewMediaRules)