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2007年03月12日

旧来型メディア企業,オンライン事業が高成長でも安心できないかも

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 伝統的なメディア企業は,新聞社も雑誌社もTV局も,オンライン事業へのシフトを急いでいる。既存の非オンライン事業が頭打ち傾向を示し,時には下降線を辿り始めているからだ。

  一方でネット広告市場は,この4年間30%強の高成長を続けている。そこで,オンライン事業の売上がこれからも,20%から30%の年間成長率を続けるとの強気な意見が支配的だ。NYT(New York Times)もそうだ。同社CEOのJanet Robinson氏は,今年のデジタル部門売上高が前年比30%増の350万ドルに達すると予測する(MarketWatchより)。

 このようにオンライン事業が絶好調なのに,米新聞社などの旧来型メディア業界は必ずしも安泰と言い切れないようである。現実には,厳しい現況に直面している。総売上に占めるデジタル部門売上の割合がまだまだ小さいからだ。NYTは,米国の新聞社の中でも,デジタル部門売上比率がかなり高い部類に属する。それでも2004年のデジタル部門売上比率はわずか4%であった。2006年はAbout.comの買収効果が大きく貢献し急増したが,まだ8%である。このためデジタル部門の売上高が30%近く増えても,既存の中核事業(新聞紙売上)が最近のように苦戦が続くと,必ずしも全社売上がプラスに転じるとは限らないのである。

  それでも,旧来型の新聞社や雑誌社はオンラインシフトを加速化させざるえない状況に立たされている。中期計画ではNYTのように,デジタル部門の売上高を前年比20%〜30%近い増加と見込むメディア企業が多い。厳しく見れば,デジタル部門売上が前年比20%増を切るようでは,危険水域に突入してしまうかもしれないのだ。

  デジタル部門の売上の中心はネット広告である。そのネット広告売上が30%近く増えると見積もるメディア企業が少なくない。ここ3〜4年の追い風がこれからも吹き続けると期待しているからである。The Interactive Advertising Bureau (IAB) と PricewaterhouseCoopers (PwC)の発表でも,2006年インターネット広告売上高は168億ドルと,前年比34%増を示した。下のグラフは,IAB発表のインターネット広告売上費を,1996年から四半期単位でプロットしたものである。

?L0703.JPG
(ソース:Paul Kedrosky's Infectious Greed)

  このグラフを見る限りでは,中期計画期間中に渡ってオンライン広告売上高が前年比20%〜30%増とはじいても,無茶とは言えないかもしれない。問題は,まだ絶対額が圧倒的に大きい非オンライン部門売上を減らさない形で,達成できるかどうかだ。

  日本の2006年インターネット広告費は,電通が発表している。1996年からプロットしたグラフを以下に示す。毎年の成長率は,2003年が40%増,04年が53%増,05年が55%増,06年が29%増となっている。日本の多くの旧来型メディア企業でも,中期的にもネット広告を毎年20%〜30%くらい増やしていかなければならないのだろう。

JapanInternetAd2006.JPG  

 オンライン広告費が米国でも日本でも,この4年間続けて,ほぼ30%強の成長率を示してきた。好景気が後押ししたことも大きい。だが,ここしばらく20%台の成長を維持したとしても,旧来型メディア企業のオンライン事業も同じような成長を享受できるとは限らない。YahooやGoogleを代表とする新興のネット系メディア企業の方が勢いがあり,シェアを拡大しそうであるからだ。ともかく,旧来型メディア企業の前途は厳しい。




◇参考
・N.Y. Times Co. sees digital revenue rising 30%(MarketWatch)
・IAB/PwC RELEASE FOURTH-QUARTER AND FY 2006 INTERNET AD REVENUE FIGURES:Internet Advertising Revenues Estimated at $16.8 Billion for Full Year 2006(IAB)
・The Economics of Online Advertising(O'Reilly Radar)
・・ニューヨークタイムズ,新聞広告の落ち込みをネット広告では補えず(メディア・パブ)
・2006年の日本の広告費は5兆9,954億円,前年比0.6%増(電通)

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posted by 田中善一郎 at 07:45 | Comment(0) | TrackBack(3) | マーケティング 広告
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