プリントメディアを取り巻く環境が日増しに厳しくなり,各社ともオンラインメディアに賭けざる得ない状況に追いつめられている。その中で話題のポッドキャストに一斉に飛びつき始めたのだ。
ポッドキャスティングが出始めて間もない昨年は,技術系雑誌社のWebサイトが挑戦する程度であった。今年に入って,特にこの1,2ヶ月の間に,一般の雑誌や新聞系のサイトも手がけてきている。Forbes,Newsweek, Businessweek(今月半ばから)といったメジャーな雑誌までも手を挙げた。新聞社のWebサイトも採用がブームになっている。以下は実施している新聞系サイトの一例。
・Columbus Dispatch : Commentary on videogames
・Denver Post : Highlights from the morning paper
・Philadelphia Daily News : Talk, interviews with journalists, music
・San Francisco Chronicle : Interviews with newsmakers
・Seattle Post-Intelligencer : Interviews with chefs, cookbook authors
・Ventura County (Calif.) Star : Interviews with reporters, local music
だが,「ブームだから,とりあえずテスト的にやっておこう」というレベルのものが多い。内容は,その日のニュースのダイジェスト,インタビューなどのトークショー,ラジオ放送番組から拝借したクリップなど。500ドルそこそこの投資でも,なんとかポッドキャスティングを始められる。現段階では,ラジオ放送の経験がないプリントメディアのジャーナリスト(ラジオの素人)が手探りで試みているサービスが目立つ。そのため,聴取者も数百人程度と多くない。これからの段階だ。
すでに,新聞社や雑誌社のWebサイトでは,ブロードバンド時代に伴って,音声レポートや映像レポートをストリームの形で提供している。なのに,なぜあえてポッドキャスティングなのか。縁の薄かった若年層にリーチするためである。そこで新聞や雑誌離れが進む若年層のメディア接触の動向をウォッチしておく必要がある。与えられる情報を受け取るのではなくて,欲しい情報だけを取り入れたい。特に若者を中心に,この方向に流れているのは確かだ。ポッドキャスティングのようにRSSフィードでの情報提供が注目されているのもそのためである。
これから若年層は,ますますケータイ,iPod,PSPなどのポータブルプレーヤーで好みの情報に接することになろう。これまで新聞,雑誌,ラジオ,テレビが提供していた情報も,ポータブルプレーヤーを介して読んだり,聴いたり,見たりする時間が増えるはずだ。大きく変わろうとしているユーザーのメディア接触に合わせて,新聞社や雑誌社がどのようにポッドキャスティングに取り組んでいくかを見ていきたい。
◇参考
・Papers Turn to 'Podcasting' In Bid to Draw More Readers
http://online.wsj.com/public/article/0,,SB111582547907330498-BJz4wNLNc8pxJ1Pf4hjMKB7mVTk_20060513,00.html
・From Print to Pod: The Innovative Power of Small Ideas
http://www.timporter.com/firstdraft/archives/000447.html
・Papers that podcast
http://blog.seattlepi.nwsource.com/buzz/archives/004789.html