今回のレポートの特徴は、共著としてLiang Wu氏が加わり中国語版も用意されているように、中国関連のネット産業動向が詳しく紹介されていることだ。インターネットのトレンドを語るには、中国の影響がますます大きくなっているからであろう。
今回のレポートのプレゼン資料は、この記事の最後に張り付けておいた。またAll Things Dにおける彼女の講演ビデオは、こちらで視聴できる。
ここでは、このプレゼン資料の中から、面白しそうな図表を適当にピックアップして、見ていきたい。
世界のインターネットユーザー数は24億人に達し、昨年2012年に比べ8%増えた。特にネット人口が増えた国は、イランやインドネシアなどの新興国である。次の表は、過去4年間でインターネットユーザーの純増数の多かった国のランキングである。
米国を核にして発展してきたインターネットも、今や、世界のインターネット人口で見ると米国市場の占める割合が減ってきている。ただし、インターネットサービスを展開する企業となると、米国企業が圧倒的に強い。でも、今や世界一のインターネット人口を誇る中国市場では、海外企業に厳しい規制を課したりしているため、米国企業は大きく進出できず中国企業の成長だけが際立っている。事実上鎖国に近い中国市場は別にしても、インターネットユーザーが世界中に分散しているだけに、有力なインターネット企業とってグローバル展開が欠かせない。次のグラフは、月間ユニークビジター数の多いトップ10のインターネットサービス企業である。トップ10のうち、上位8社は米国企業である。でもユーザーの81%は米国外である。
これからのネット産業をけん引するのはモバイル環境であることは間違いない。つぎのグラフで示すように、世界のインターネットトラフィックのうち、モバイルトラフィックの占める割合が急増している。2012には15%を占めていたモバイルトラフィックが、2年後の2014年には30%と倍増しそうだ。
当然のことだが、モバイルメディアのユーザー接触時間や広告費が増えてきた。モバイルの立ち上がりが日本や韓国に比べ遅れていた米国でも、モバイル市場が明らかに上昇し始めている。メディア別の接触時間シェアと広告費シェアを示す次のグラフのように、両シェアともプリント(新聞、雑誌)が縮小し、モバイルが拡大している。 2年前の2010年と比較すると、インターネット接触時間シェアが25%(2010年)から26%(2012年)へ、インターネット広告費シェアが19%から20%へと、頭打ちの傾向にある。ところがモバイルの割合でみると、モバイル接触時間シェアが8%(2010年)から12%(2012年)へ、モバイル広告費シェアが0.8%から3%へと、急拡大している。ただ日本と比べると、米国のインターネット環境はまだまだパソコン中心に見える。
でもグローバル展開をする米国のインターネット企業では、海外でのモバイルシフトを米国市場以上に加速化させる必要に迫られている。例えばフェイスブックでは、デスクトップ向けサービス上での広告売る上げが完全に頭打ちになっているのに対して、モバイル広告を急増させている。先の決算報告では、広告売上高の30%をモバイル広告で占めていた。
中国と米国におけるメディア接触時間の違いも興味深い。多様な娯楽やメディアサービスが充実している米国では、中国に比べてインターネット/モバイル接触時間が少ないのはうなずける。でも、モバイルメディア接触時間の割合が、中国が米国の2倍近いとは、やはりすごい。
そのほか、このレポートには、最近急成長しているサービス分野にスポットを当ててくれているので、頭の整理にもなる。例えば、写真関連のソーシャルサービスの成長を示すグラフ。Snapchatはこんなにも写真のアップロード数を増やしているのか。10秒で消えていく気軽さが受けているのだろう。
講座のオンラインコースも順調に伸び続けている。
以下は、同レポートのプレゼン資料。
◇参考
・KPCB Internet Trends 2013 from Kleiner Perkins Caufield & Byers(KPCB)
・Mary Meeker's Latest Masterful Presentation On The State Of The Web(BusinessInsider)