まず、英国から。先週末に、Professional Publishers Association (PPA) から英国で販売されている主要雑誌の発行部数(プリント版+デジタル版、プリント版、デジタル版)が公表された(ABC Combined Circulation Chart - PPA)。2013年1月から2013年6月までの期間のABC考査データである。
英国は英語圏なので、米国の多くの雑誌が進出しているのが特徴である。逆に、The Economistのように米国市場を中心にグローバル展開している雑誌も目立つ。BBCから多くの雑誌が発行されているのも特徴と言える。
総販売部数(プリント版+デジタル版)、デジタル版販売部数、デジタル版販売比率のそれぞれについて、Guardianがトップ15雑誌を以下のようにグラフ表示していた。また同サイトからembedできるようになっていたので、それも張り付けておく。拡大したグラフはそちらで。
デジタル版の販売部数が1万部を超えた雑誌は6タイトルだけであった。Conde Nast社のGQが1万2331部、Hearst-Rodale社のMen's Healthが1万2018部と、米国出版社の雑誌が目についた。総販売部数のうちデジタル版の占める割合が10%を超える雑誌はわずか4タイトルだけであった。ほとんどの雑誌はデジタル版割合が数%以下である。まだまだプリント(紙)版が中心である。米英では定期購読すれば安価に雑誌を送ってもらえるため、惰性で紙雑誌を購入し続けている読者が多いようだが、やはり紙離れが目立ってきた。プリント版雑誌の販売部数を1年前に比べ5%以上減らしている雑誌が目白押しである。デジタル版を販売しているかどうかに関係なしに、プリント版が長期低落する流れを止めるのは厳しい。総販売部数を維持していくためには、プリント版の減る分以上にデジタル版で補わなければならないのだ。
これまで新しモノ好きの男性読者が主にデジタル雑誌に手を出していたが、女性読者も増え始めている。Vanity Fairはデジタル版を前年比+33.1%の8308部と増やした。しかしプリント版が同9.58%減と大きく落ち込んだため、総販売部数が9万6685部と同9.58減になってしまった。またVogueはデジタル版を同463%増の7601部と急伸させたが、プリント版が同5.57%減となったため、総販売部数は約20万部と前年より2.8%減らした。さらに英国でも人気のCosmopolitanにいたっては、デジタル版が9894部と同25.6%減のブレーキがかかり、プリント版も同15.4%減と不振であったため、総販売部数が同15.4%減の約31万部に急落した。
デジタル版が伝統雑誌の救世主になるかどうか、前途は厳しそう。
◇参考
・Digital magazines: how popular are they?(Guardian)