昨日のUSA Todayのサイトでも、手前味噌のニュースを以下のように報道していた。

USA Today平日版の9月の発行部数が287万6586部と、1年前の171万3833部に比べて67%増と驚異的な成長を成し遂げたのだ。プリント版の新聞(新聞紙)の発行部数が1年間で19%も減っているにも関わらずである。驚異的な成長が実現したのは、154万5364部ものデジタル版(プリント版と同じレプリカ編集版+同じでないノンレプリカ編集版)の大きな底上があったからである。このデジタル版は1年前に8万6307部しかなかったので、前年比1690%増と爆発的な伸びを示している。
実は、このデジタル版の部数算法が曲者である。154万5364部のデジタル版の中には、無料の148万部のノンレプリカ版が加算されているのだ。スマホやタブレット向けのアプリが含まれているのであるが、無料のデジタル版であっても、30日間で1度でもユーザーによってアクセスされていたなら、そのユニークユーザーをデジタル版の部数としてカウントしているのである。これは、昨年12月にABC協会(発行部数の考査機関)を改名したthe Alliance for Audited Media(AAM)が新たに認めた算法である。
これまで米新聞協会は四半期ごとに新聞発行部数や広告売上高を公表していたが、この数年、急降下する一方であった。つまり発表するごとに、新聞が広告媒体として弱体化していることを認める結果になっていた。

そこでAAMではデジタルシフトにより新聞環境が大きく変わっているということで、四半期ごとの従来型発表や主要新聞の発行部数ランキングの提示も止めることにした。その代わりとして、考査対象としてモバイルアプリなども含めて、発行部数を計数することにした。その時に、無料のデジタル版も無料であっても、30日間に一度でもアクセスしておれば部数として加えることにしたのだ。こうすれば、プリント版部数が減っても、無料のデジタル版のお蔭で新聞の発行部数は増えていきそうだ。さらに、プリント版の購読者が、やはり30日間に一度でもデジタル版をアクセスしておれば、その読者は2部も購読したことにできる。これまで新聞広告料が発行部数によって左右されてきただけに、新聞業界としては何とかして発行部数を増やした形にしたかったのだろう。
ついでに、USA Today に抜かれた、NYTとWSJの9月時点の発行部数も示しておく。NYT平日版の発行部数は前年比18%増の189万7890部と増え続けている。プリント版は前年比6%減であったが、有料のデジタル版購読者数は前年比28%増の72万7000人と順調に推移している。四半期ごとの推移は次のようになる。Boston Globeは売却したので、加算しなくなった。
*NYTの有料デジタル購読者数の推移
・2011年第2四半期:28万1000人
・2011年第3四半期:32万4000人
・2011年第4四半期:39万人
・2012年第1四半期:47万2000人
・2012年第2四半期:53万2000人
・2012年第3四半期:56万6000人( NYTimes + IHT)+
・2012年第4四半期:64万0000人( NYTimes + IHT)+
・2012年第1四半期:67万6000人( NYTimes + IHT)+
・2013年第2四半期:69万9000人( NYTimes + IHT)+
・2013年第3四半期:72万7000人
WSJ平日版の発行部数は、1年前の229万3798部から227万3767と、ほぼフラットに推移した。
◇参考
・USA Today’s circulation up 67 percent? Newspaper industry makes comparisons increasingly difficult(Poynter.)
・USA TODAY regains national circulation lead(USA TODAY)
・Newspaper sales dive enters 8th straight year(Reflections of a Newssosaur)
紙とデジタルで先頭を行く米国では、単純比較ができない時代が一足先に来てしまい、AAMの数字作りも限界のようです。今回のUSATodayの大躍進がランキングに載らないというのも、なにか絶妙のタイミングですね。ランキングがなくなるのはウォッチャーとしては痛いですが、潮時をうまくとらえたように思います。しかし、詳細データを、日本からアクセスする方法はないのでしょうか?
※ところで、参考記事3本目のリンクが間違っているようです。
よろしくお願いします。