PhotBucketは動画写真共有サイトである。今や,FaceBookを追い抜き,MySpaceとYouTubeに次ぐ商用ソーシャル系サイトのビッグ3にのし上がってきた。
これまでソーシャル系サイト同士は概ね,持ちつ持たれつの関係にあった。米国のSNSはオープンなサイトが多いだけに,なおさらである。そのためMySpaceのユーザーページでも,YouTubeやPhotBucket,Flickrなどからの動画や写真のWidget(ウィジェット)が,数多く貼り付けられている。当然,ユーザーの往来も多くなる。
MySpaceなどのSNSサイトとしても,このような外部Widgetを容認することにより,集客力を高めてきたとも言える。MySpaceユーザーからすれば,自分のページに外部Widgetを自由に貼り付けたいからだ。
また,動画や写真の共有サイトも,SNSやブログからのトラフィックをアテにしている。そのためには,自サイト提供のWidgetを,SNSやブログに貼り付けて(エンベッドして)もらいたい。実際,急成長している共有サイトは,MySpaceなどの大手SNSからのトラフィックに支えられてきた。逆に,締め出された共有サイトの多くは苦戦を強いられている。
一見,SNSと動画/写真共有サイトはwin-winの関係に見える。ところが,MySpaceのような大規模SNSでは,会員数だけがやたらに増えたが,会員数に見合う収益化で満足な状況に至っていない。そこで,YouTubeやPhotBucketに客を送り込むインフラとして,SNSサイトが使われているのではとの不満を募らせてきていたのだ。
中でも動画サービスは,これからの収益源として最も注目される分野である。せっかく集めたSNS会員に対して,外部の動画共有サイトが勝手にサービスを展開してもらっては,MySpaceもおもしろくない。動画広告もやられてしまうかもしれない。MySpaceの親会社でもあるNews Corpには潤沢な動画資産を抱えているだけに,手を打つ必要がある。そこで,MySpace自身も1年ほど前から,自前の動画共有サービスを繰り広げている。外部の動画共有サービスの閉め出しは急務となっているようだ。
実際に,Widgetの締め出しは,時々実施していた。瞬間的にだが,YouTube動画を閉め出したこともあった。だが,その時は,すぐに締め出しを解除した。おそらく,MySpaceを支えているミュージシャンのページに,YouTube投稿のプロモーションビデオが数多く貼り付けられていたからであろう。今回のPhotBucket動画締め出しでも,YouTube動画については何も手を打っていない。
今回の行動について,いろんな憶測が飛んでいる。今回の締め出しでPhotBucketが大打撃を受け企業価値が落っこちた時に,MySpaceがPhotBucketの買収に動くという話が一つ。もう一つは,外部Widget提供者に対し,MySpaceでのWidget事業を有償で認めるのではとの話が。
だが今回のMySpaceの行動に,当然のように,ブロガーからブーイングの嵐が吹き荒れている。その中で,MicrosoftのDon Dodge氏がブログの中で次のように語っているのが目に付いた。
Free services always come with strings attached, limitations, service outages, advertising, and rules that can change at any time without notice.フリーサービスは,突然,変更されても仕方がないことだと。Microsoft社員らしい発言である。タダほど恐いモノはないと言いたいのだろう。
ともかく,MySpaceがWidgetビジネスの主導権を握っていこうとしている。
◇参考
・Breaking news: Posting from Photobucket to MySpace(Blog.Photobucket.com)
・Photobucket動画、MySpaceから遮断される(TechCrunch Japanese)
・米国のWeb2.0サイト,トップ25はどこか(メディア・パブ)
・MySpace Video,あのYouTubeを凌ぐ勢い (メディア・パブ)
・MySpace & Photobucket - Free services come with strings attached(Don Dodge on The Next Big Thing)