NYタイムズ(NYT)は、グローバルにおいても最もブランド力があり、かつ影響力がある新聞と言えよう。またオンライン(デジタル)化でも先行し世界でもトップクラスのビジター数を誇っているし、さらに最近ではデジタル版の有料化で大成功を収めたとみなされている。
このように優等生なのに、経営状態は決して安泰ではない。まだまだ不安定な状態が続いているのである。年間総売上高が6年少し前まで30億ドルを超えていたのが、2013年には約半分の16億ドル以下まで半減している。NYTの経営を支えていた広告売上高が、2005年には約23億ドルもあったのが2013年には7億ドルを割り込むまで沈んでいる。地方紙などを売却したため落ち込みが大きく出ているが、厳しさは変わらない。優等生のNYTでもこうだから、米国の大半の伝統新聞がいかに深刻な状況に立たされているかが分かる。
NYT社の2013年決算が発表されたので、目につく数字を紹介する。広告売上はかつて総売上高の7割以上も占めていたが、いまや約4割に減ってしまっている。さらに13年の広告売上高も前年比でマイナス6.3%と下げ止まらない。一方、販売売上高はデジタル版の有料化が功を奏して、前年比3%増となった。
確かに、有料デジタル版の定期購読者数が増え続けている。黄色の下線を引いた数字が、デジタル購読者数の四半期単位の推移である(売却したBoston Globeなどの購読者数は省く)。デジタル購読者数の成長率が鈍化しつつあるが、それでも13年第4四半期には約3万3000人を上乗せして、76万人に達した。
プリント版(新聞紙)の読者が減り続けているだけに、デジタル版の販売売上の大幅アップを目指したい。実際、デジタル版有料購読者数がプリント購読者数を追い抜く勢いを見せている。ところが売上高で見ると、13年のデジタル版の販売売上高は約1億4900万億ドルで、全販売売上高の22%に過ぎない。牽引車としてはまだ力不足である。未だにプリント版(新聞紙)の販売売上に圧倒的に依存しているのが現状である。そのプリント版売上高も購読料金を値上げして、読者の減った分をなんとか補っているのだ。そうなるとデジタル広告にも頑張って欲しい。プリント版広告の長期低落は止まりそうもないので、やはりデジタル版広告売上に大きな期待が集まる。でも誤算があった。デジタル広告は期待を裏切って、13年も前年比2.3%減とまたもやマイナス成長に陥った。
そこでデジタル版広告事業のテコ入れが急務となり、ついに「ネイティブ広告」に着手することになった。ジャーナリズムを標榜するNYTとしては、編集との境界があいまいになるネイティブ広告は避けたいのが本音であった。だが従来のバナー広告がじり貧気味になってきていることもあって、今年に入ってネイティブ広告市場に本格的に踏み切ることになった。NYTのネイティブ広告導入については
こちらの記事を参照してもらいたい。
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Can the New York Times’s online readership offset its prolonged ad slump?(Quartz)
posted by 田中善一郎 at 07:42
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