米AAM(The Alliance for Audited Media)がこのほど、昨年(2013年)下半期における主要コンシューマー雑誌の販売部数を公表した。調査対象となった386誌(タイトル)の総購読数は前年同期比1.7%減と、やはりマイナス成長となった。アメリカの雑誌市場の特徴は、定期購読の割合が高いことだが、その定期購読数(paid subscriptions)が同1.2%減と下げ止まらない。さらに、ニューススタンドや書店で売られる一部売り(single-copy sales)総数は同11.1%減と大きく落ち込んだ。一部売り部数は、定期購読数に比べると少ないが、単価が高いため販売売上高の底上げにも欠かせない。特に女性向けファッション誌のように都会派雑誌では、話題のセレブを表紙に登場させたりして一部売り販売に力を入れてきた。
ところが、ネットの影響を大きく受け始めた。アメリカの雑誌の定期購読は年間購読料が非常に安いこともあって、惰性で継続購読する人が多いのか、定期購読数は極端に減ることはなかった。でも一部売り販売は大打撃を被っている。人気雑誌であっても一部売りの販売部数を年間で、10%〜20%も急に減らし始めているのだ。オンライン/デジタル・メディアに浸食されていることは明らかである。そこで、タブレットやスマホの普及に合わせて、自らデジタル雑誌に本格的に乗り出している。300誌(タイトル)以上がプリント版のデジタルレプリカ版を販売しており、昨年下期には前年同期比36.7%増の1080万部を売った。デジタル雑誌が伸びていることは確かだが、総購読部数のうちデジタル版の占める割合はわずか3.5%に過ぎない。紙の雑誌(プリント版)の部数減を補うのは無理にしても、一部売り部数の減った分だけでもデジタル版で補いところである。
AAMが、昨年下期における総販売部数、一部売り総販売部数、それにデジタル版(プリント版のレプリカ版)販売部数のそれぞれについて、トップ25の雑誌を以下のように公表している。最初の表は、総販売部数である。目についた雑誌としては、前年同期比30%増の「American Rifleman」。全米ライフル協会の公式雑誌である。雑誌部数だけではなくて、銃犯罪も増えたりしないのかな。
デジタルレプリカ版の販売部数は次の通り。期待されたほどに立ち上がっていないのが現状である。
3年ほど前まで、デジタル雑誌にはプリント版(紙雑誌)を超えたコンテンツが期待されていた。プリント版では表現できない動画やパノラマ写真、CG、アニメ、音声を盛り込んだり、さらに紙面の物理的制約から日の目を見なかった写真や記事を載せたりした、デジタル雑誌である。だが余分な制作・編集コストをかけたくないため、大方のデジタル雑誌はプリントコンテンツをそのまま焼き直したレプリカの域から出ていない。
アメリカの伝統的なコンシューマー雑誌は広告売上高に大きく依存している。このため当面は、広告主に示す販売保証部数を出来る限り減らしたくない。ところが紙離れが進み、読者はモバイル端末でのメディア接触時間を増やしてきている。そこで雑誌社としては、とりあえずプリント版雑誌(レプリカ版)をモバイル端末で読んでもらって、雑誌の販売保証部数の維持に努めている。ただレプリカ版ではデジタル雑誌としての新しい魅力に乏しいだけに、部数をどこまで伸ばしていけるかが課題となる。例えば「Vanity Fair」は、一部売り部数をこの1年前間で6万9500部も減らしているが、同じ時期にデジタルレプリカ版の販売部数を2万8700部しか増やせていない。いまのところ、デジタル版が雑誌の救世主になっていない。
・Top 25 U.S. Consumer Magazines for December 2013(Alliance for Audited Media)
・Magazine circulation down(WWLP.com)