上の表をグラフ化したのが次の図である。
ピンタレストは、ユーザーがネット上のお気に入りの画像を投稿(pin)し共有できるソーシャルサービスである。魅力ある画像が多いファッション、美容、ヘルス、フード/ドリンク、旅行、生活雑貨、アート、趣味などの分野に人気が集まり、女性ユーザーの支持が極めて多いのが特徴である。女性のショッピング欲を刺激するサイトにもなっている。AddShoppersの調査(こちらを参照)でも、ピンタレスト経由で訪れる消費者による小売店サイトでの売上が大きく伸びているという。
また興味深い動きとして、ピンタレストを本格的に活用する雑誌社が出てきたことも見逃せない。有力なコンシューマー雑誌を数多く発行しているハースト(Hearst)社は、各雑誌サイトでピンタレスト対策を講じ、ピンタレストからの参照トラフィックを増やしてきている。Country Living, Delish, Elle Decor, Good Housekeeping, Harper’s Bazaar, House Beautiful, Marie Claire, Redbook, Veranda , Woman’s Dayなどの各雑誌サイトへの流入トラフィックでは、いずれもツイッターからよりもピンタレストからのビジット数が多くなってきたという。Elle Decor, Good Housekeeping ,Harper’s Bazaarの女性誌サイトでは、全トラフィックのうち5%から10%がピンタレストの参照トラフィックになっているとのことだ。
いくつかの雑誌サイトを眺めてみて驚いたのは、掲載画像(主に写真)の多くにPinボタンが置かれており、ワンクリックでその画像をピンタレストに投稿できるようになっていることであった。ハーストの雑誌/雑誌サイトでは写真が”売り”で、外部で勝手にコピーされたくないはずだった。プロの写真家が撮った写真が多いし、被写体にセレブが登場している写真も多いから尚更だ。ところが掲載写真をピンタレストに投稿できるようにしたということは、その写真のコピーを容認したことになる。それどころか、リピン(投稿された画像を他の人が再投稿する)、つまりコピーによる画像の拡散を勧めることにもなる。
実際の雑誌サイトの例を見ておこう。最初はCosmopolitanのサイトの掲載記事“18 Signs You’re With the Man You Should Marry,”である。この記事の画像は、ユーザーによって2300回以上もピンタレストに投稿されていた。その記事がツイートされた回数が約800回なので、ここでもツイッターを凌いでいた。
次の例は、Harper’s Bazaarのサイトである。取り上げたのはお馴染のセレブに関する記事だが、セレブが写った写真上にカーソルを動かすと、ピンボタンがポップアップした。そのボタンを押すだけで写真を投稿できるわけだ。
さらに、各雑誌はそれぞれ独自アカウントを備えている。膨大な雑誌サイトの画像などをうまく分類してピンすることにより、フォローするユーザー(フォロワー)を増やしてきている。4つの雑誌について、それぞれのフェイスブックLike数、ツイッター・フォロワー数、そしてピンタレスト・フォロワー数を掲げておく。既に460万人以上のピンタレスト・フォロワーを抱えているHarper’s Bazaarの画像ボード(こちらを参照)を見れば、その充実ぶりが読み取れる。投稿された画像の多くが、さらにリピンされている。
このようにピンタレストサイトでは、ハーストの各雑誌の画像が数多く投稿されいき、さらにリピンされて拡散することになる。こうした画像を見たユーザーが、その画像をクリックすれば、その画像を掲載した記事に飛んで行ける。これが雑誌サイトへのトラフィックとなるわけだ。ハーストの雑誌に掲載されている画像には商品写真も多いので、ユーザーをショッピングページに誘導させることもできる。