ところが、英国のある調査会社の報告によると、TV接触時間の国別ランキングでは上位に先進国が並び、スマホ接触時間のランキングでは上位を逆に新興国が独占していた。「ほんまかいな」と突っ込みたくなる結果である。
この結果は、Mary Meeker氏が先日公開した「KPCB Internet trends 2014」の中でも、紹介された。Meeker氏のレポートの中で利用されているデータは、他の組織で以前公表されたものが少なくない。以下のグラフも、英MillwardBrownが実施した調査「AdReaction」の結果で、今年の3月末に公開されていた。
「AdReaction」の調査は、2013年11月から12月に、世界30ヵ国(文末で対象国を掲載)、16歳から45歳までの約12、000名を対象に実施した。ただし調査対象は全員、テレビを所有し、かつスマホかタブレットのモバイル端末を所有している人としている。今や消費者の多くは、TV、PC、スマホ、タブレットなど、複数のスクリーンを通してメディアと接触している。つまりマルチスクリーンユーザーである。最初のグラフは、各国のマルチスクリーンユーザーが、平均して毎日、TV、PC,スマホ、タブレットのそれぞれとどれくらいの時間接触しているかを調査した結果である。もちろん、複数のスクリーンと同時に接している場合もそれぞれの時間を加えている。
マーケターにとっても、テレビが最も優先度の高いメディアであった。でもこれからは、マルチスクリーンユーザー化している消費者に向けて、急激に接触時間が増えだしているモバイル端末、特にスマホへの対応が重要になっている。そこで、AdReactionの調査結果より、TV接触時間が長いトップ10か国とスマホ接触時間が長いトップ10か国をリストアップした。
UK,148
USA,147
France,134
Kenya,132
Indonesia,132
Nigeria,131
Germany,129
South Korea,127
Japan,125
Australia,125
スマホ接触時間が長いトップ10か国
(1日当たりの時間:単位は分)
Nigeria,193
Saudi Arabia,189
Indonesia,181
Philippines,174
Kenya,174
China,170
Vietnam,168
Thailand,167
Argentina,166
Colombia,165
ところが、メディア接触時間の長短だけで、広告メディアとしての優先度を決められない。今回の調査でも、メディア別の接触時間に加えて、各メディア広告に対する消費者の好感度も調べている。以下の表で、TV接触時間あるいはスマホ接触時間が長いトップ3国、および日本における、TV広告の好感度とスマホ広告の好感度を示しておく。
英国や米国、フランスのような先進国の人たちは、今もTVをよく視聴しているようだが、広告そのものに対しては必ずしも好ましいと見ていない。さらにまだメディアとして未熟なスマホの広告についてはかなり厳しく、好ましいと感じている人の割合がわずか10%台である。一方、ナイジェリアなどの新興国では、広告に対しておおようなのか、TV広告だけではなくてスマホ広告についても、かなりの割合で好ましいと感じている人が多い。日本は、テレビ広告を好ましいと感じる人の割合が先進国の中で最も高かったが、逆にスマホ広告に対しては好ましくないと多くの人が見ている。スマホが安心で安全なメディアとして十分に認知されていなく、スマホ広告もあまり信用されていない結果となっている。
◇参考
・AdReaction 2014 | Marketing in a multiscreen world
・How the World Consumes Media−in Charts and Maps(Atlantic)