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2014年07月15日

伝統メディアのニュースサイトも、フェイズブック対策に本腰

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  新興のバイラルメディアだけではなくて、伝統メディア(新聞/TV/雑誌)のニュースサイトでも、ソーシャルメディア・サイト経由のアクセスが増えている。中でも注目すべきは、フェイスブックからのトラフィックが際立って増え始めていることである。

 バイラルメディアに代表される新興のニュースサイトの多くは、フェイスブックなどのソーシャルメディアからのトラフィックに大きく依存している。そのバイラルメディアのトップランナーであるBuzzFeedでは、総トラフィックのうち75%以上がソーシャルメディアから流入している。ところが伝統メディアのニュースサイトは、各記事にソーシャルメディアの共有ボタンを添えたり、ソーシャルメディアに公式アカウントを設けたりしているが、ソーシャルメディアで話題になる記事つくりに新興ニュースサイトほど専念してこなかった。だが最近になって、ソーシャルメディア対応に本腰を入れ始めたようで、伝統メディアサイトのニュース記事もソーシャルメディアで共有されかなり拡散するようになってきた。

 ニュースサイトへの流入トラフィック量を見ていくと、多くのソーシャルメディアの中でやはりフェイスブックからのトラフィックが群を抜いている。そこで、主要ニュースサイトの記事がそれぞれ、どれくらいフェイスブックで共有されているかを調べてみた。アイルランドのメディア分析会社NewsWhipは、ニュースサイトなどのパブリッシャーサイトの記事がフェイスブックでComment/Share/LikeされたInteraction回数を計数し、その総計(Interaction=Comment+Share+Like)を定期的に公表している。毎日、約25万本の英語ニュースを対象に測定している。

 ここで、代表的なニュースサイトを対象に、それぞれの月間Interaction回数(表のTotal FB)と月間記事本数(表のArticle Count)を掲げる。Interaction回数が多ければ、フェイスブックへの参照トラフィックが増えていくことになろう。以下の表では、2013年10月、14年2月、14年6月の推移を示す。14サイトを選んだ。やはり目立つのはバイラルメディアである。BuzzFeedやUpworthyのようなバイラルメディアは、記事本数が少ない割にInteraction回数(Total FB)が多い。ただし、バイラルメディアは容易に立ち上げられることもあって乱立気味で、戦国時代に入っている。開設間もない新顔のサイトでも月間Interaction回数が100万回を超えることもある一方で、いくつかのサイトはいつの間にか消えてしまったりしている。

FacebookPublisher201310201406.png
(データソース:NewsWhip)


 この1年近くの大きな動きは、フェイスブックからのトラフィック急増の追い風に乗ってHuffingtonPostとBuzzFeedの2大サイトの躍進が加速化し、伝統メディアの旗頭であるNYタイムズのサイトをユニークビジター数で一気に抜き去り、さらに差を拡大していることだ。新興の両巨人サイトと代表的な伝統メディアサイトのInteraction回数の推移を、折れ線グラフで示すと、次のようになる。

FacebookNewspaperInteraction2014a.png
(データソース:NewsWhip) 追記:プロットミスがありましたので、7月16日にグラフを差し替えました

伝統メディアのサイトも目立たないが、月間Interaction回数を着々と底上げしている。Guardianは、昨年10月の458万回から今年6月には993万回と倍増させた。保守急先鋒のTV系Foxnewsも、538万回から1940万回へと急増させている。代表的な新聞サイトの、今年1月から4月までのInteraction回数総計は次のようになる。大衆新聞のDaily MailやUSA Todayの記事がネットで持てはやされるのは当然かもしれないが、高級新聞とみなされるGuardian、NYT、WaPoの記事もフェイスブック上で話題になる機会は増えているのは確かなようだ。フェイスブック対策をほとんど講じなかった公共メディアのBBCも、ソーシャルメディア向けの” this 17-second time-lapse video”のようなビデオクリップを試したりしている。

FacebookNewspaperInteraction2014.png
(ソース:NewsWhip)

 こうしたニュースサイト動きを、フェイスブックも後押ししている。昨年暮れからニュースフィードの掲載アルゴリズムを一部変え、質の高いニュースを優先して掲載するようにしたという。こうした後押しもあってか、NewsWhipが測定対象としているパブリッシャーサイトのニュース記事の総Interaction回数は、以下のグラフのように、今年1月の3億9400万件から4月の4億8300万件と、4か月間で23%も増えているのだ。

FBInteractionWhip2014a.png
(ソース:NewsWhip)

 月間Interaction数が100万件を超えたパブリッシャーサイト数は、2013年8月に25サイトであったのが、今年5月には80サイトにも急増した。UpworthyやDistractifyに代表されるバイラルメディアが爆発的に急成長した時期とも重なる。ニュースをファイスブックなどのソーシャルメディアを介して探すという行為は、少なくとも若年層では完全に主流となってきている。

FBInteractionWhip2014b.png
(ソース:NewsWhip)

 伝統メディアの中で注目したいのは、大手雑誌社のハースト(Hearst)である。一つ前の記事で紹介したように、同社の雑誌サイト(18サイト)の総トラフィックの25%は、フェイスブックからの参照トラフィックである。1年前の4%から、すごい伸びである。今やグーグルサーチからのトラフィックをはるかにしのぐようになった。特に主力雑誌のCosmopolitanは流入トラフィックの45%、Harper’s Bazaarは59%もが、フェイスブックからである。グーグル対策よりもフェイスブック対策に注力しているのだ。

 ただし伝統メディアは一般に、トラフィックの質を気にする。バイラルメディアのようにトラヒックの量が急増しても、ニュースサイトのブランディング向上や収益化に結びつかなければ、意味がないと見ているのである。PewResearchCenterのレポートによると、流入トラフィックのパスによって、ニュースサイトのエンゲージメントに大きな差が生じていると報告している。ニュースサイトのホームページに直接アクセスするユーザーは、当然のようにサイトへのエンゲージメントが高いファンが中心である。訪問当たりの滞在時間が長く、閲覧ページ数も多く、訪問回数も多い。一方、フェイスブック経由でアクセスするユーザーは、逆に滞在時間が短く、閲覧ページ数は少ない。サーチエンジン経由で訪れるユーザーよりもサイトへのエンゲージメントが低い結果となっていた。

ReferralTrafficFacebookPew.png
(ソース:Pew Research Center)

 伝統メディアとしては、バイラルメディアのような量的拡大一辺倒のサイトとページビューやユニークビジター数の量で競っても分が悪いのは確か。それでも、これまでリーチしづらかったユーザーとの接点を増やすために、ソーシャルメディアの参照トラフィックを増やす抜本的な対策を講じるべきだろう。飛んできたユーザーに対し、いかにサイトへのエンゲージメントを持たせるかの仕掛けが必要となる。またニュース記事も分野やテーマによっては、ニュースサイトのユーザーよりも、ソーシャルメディアのユーザーを主ターゲットすることも増えそう。


◇参考
・People Are Sharing More News Than Ever On Facebook(WhipBlog)
・NewsWhip: Interaction with news content on Facebook up 23 percent in three months(Pointer)・
・The 30 Most Viral Stories Of 2014 Will Make You Shake Your Fists And Scream, 'Why?!'(BusinessInsider)
・The Biggest Facebook Publishers of June 2014(Whip Blog)
・Social, Search and Direct(PewResearch)
・How Hearst learned to play with emotions to drive Facebook traffic(Digiday)



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posted by 田中善一郎 at 15:25 | Comment(1) | TrackBack(0) | Web2.0 SNS CGM
この記事へのコメント
ポストのタイトル誤記が。
勿体無いですー
Posted by at 2014年08月14日 06:26
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