バイラルメディアに代表される新興のニュースサイトの多くは、フェイスブックなどのソーシャルメディアからのトラフィックに大きく依存している。そのバイラルメディアのトップランナーであるBuzzFeedでは、総トラフィックのうち75%以上がソーシャルメディアから流入している。ところが伝統メディアのニュースサイトは、各記事にソーシャルメディアの共有ボタンを添えたり、ソーシャルメディアに公式アカウントを設けたりしているが、ソーシャルメディアで話題になる記事つくりに新興ニュースサイトほど専念してこなかった。だが最近になって、ソーシャルメディア対応に本腰を入れ始めたようで、伝統メディアサイトのニュース記事もソーシャルメディアで共有されかなり拡散するようになってきた。
ニュースサイトへの流入トラフィック量を見ていくと、多くのソーシャルメディアの中でやはりフェイスブックからのトラフィックが群を抜いている。そこで、主要ニュースサイトの記事がそれぞれ、どれくらいフェイスブックで共有されているかを調べてみた。アイルランドのメディア分析会社NewsWhipは、ニュースサイトなどのパブリッシャーサイトの記事がフェイスブックでComment/Share/LikeされたInteraction回数を計数し、その総計(Interaction=Comment+Share+Like)を定期的に公表している。毎日、約25万本の英語ニュースを対象に測定している。
ここで、代表的なニュースサイトを対象に、それぞれの月間Interaction回数(表のTotal FB)と月間記事本数(表のArticle Count)を掲げる。Interaction回数が多ければ、フェイスブックへの参照トラフィックが増えていくことになろう。以下の表では、2013年10月、14年2月、14年6月の推移を示す。14サイトを選んだ。やはり目立つのはバイラルメディアである。BuzzFeedやUpworthyのようなバイラルメディアは、記事本数が少ない割にInteraction回数(Total FB)が多い。ただし、バイラルメディアは容易に立ち上げられることもあって乱立気味で、戦国時代に入っている。開設間もない新顔のサイトでも月間Interaction回数が100万回を超えることもある一方で、いくつかのサイトはいつの間にか消えてしまったりしている。
伝統メディアのサイトも目立たないが、月間Interaction回数を着々と底上げしている。Guardianは、昨年10月の458万回から今年6月には993万回と倍増させた。保守急先鋒のTV系Foxnewsも、538万回から1940万回へと急増させている。代表的な新聞サイトの、今年1月から4月までのInteraction回数総計は次のようになる。大衆新聞のDaily MailやUSA Todayの記事がネットで持てはやされるのは当然かもしれないが、高級新聞とみなされるGuardian、NYT、WaPoの記事もフェイスブック上で話題になる機会は増えているのは確かなようだ。フェイスブック対策をほとんど講じなかった公共メディアのBBCも、ソーシャルメディア向けの” this 17-second time-lapse video”のようなビデオクリップを試したりしている。
こうしたニュースサイト動きを、フェイスブックも後押ししている。昨年暮れからニュースフィードの掲載アルゴリズムを一部変え、質の高いニュースを優先して掲載するようにしたという。こうした後押しもあってか、NewsWhipが測定対象としているパブリッシャーサイトのニュース記事の総Interaction回数は、以下のグラフのように、今年1月の3億9400万件から4月の4億8300万件と、4か月間で23%も増えているのだ。
伝統メディアとしては、バイラルメディアのような量的拡大一辺倒のサイトとページビューやユニークビジター数の量で競っても分が悪いのは確か。それでも、これまでリーチしづらかったユーザーとの接点を増やすために、ソーシャルメディアの参照トラフィックを増やす抜本的な対策を講じるべきだろう。飛んできたユーザーに対し、いかにサイトへのエンゲージメントを持たせるかの仕掛けが必要となる。またニュース記事も分野やテーマによっては、ニュースサイトのユーザーよりも、ソーシャルメディアのユーザーを主ターゲットすることも増えそう。
勿体無いですー