RSSはメディアのコンテンツ流通のあり方を大きく変えようとしている。メディアの主導権争いも,これまでと違った展開を見せそうだ。RSSが浸透するにつれて,コンテンツ提供者(伝統的なメディア)の立場が相対的に弱くなりつつある。新興メディアとしてコンテンツ仲介者が台頭してきた。GoogleやYahooが代表選手だ。コンテンツ消費者がRSSリーダー的なツールで,メディアと接触する機会が増えてくるのは間違いない。両社は,単なる「コンテンツアグリゲータ+コンテンツサーチエンジン」に留まっていない。すでに,ワンストップでパーソナライズしたコンテンツを集め整理するツールをユーザーに提供している。YahooのMyYahooに続いて,つい最近Googleも同様のサービスを打ち上げた。MyYahooなどはRSSリーダー機能も包含している。コンテンツ消費者に直結しているMyYahooを介して,有用なマーケッティング情報がどっさり,リアルタイムで収集できる。もちろん,ターゲッティング広告にとって最高の場となろう。
このままでは,消費者との接触の場が,GoogleやYahooなどのコンテンツ仲介者の勢力下におかれかねない。そこで,今年に入って,新聞社のGuardianと Los Angeles Timesなどや出版社のCNETと VNUなどが,独自に自社ブランドRSSリーダーの配布実験に動き始めたのも,こうした背景があるからだ。だが,各社が単独でRSSリーダーを配布しても,ユーザーが飛びつくかどうか。VNUなどは,同業他社に仲間入りを誘ったりしているが。GoogleやYahooの勢いに押され気味である。
単独ではなくて,主要メディアが大同団結して立ち上げる“AlertInfo”プロジェクトは,いろんな意味で興味深い。うがった見方かもしれないが,最近のフランスにおける反米(反米国文化,反英語,反Google)運動の流れと合致する。3月22日のエントリーで,
仏シラク大統領はかねてから,米国のアングロサクソン的な価値観の押しつけや英語一辺倒の流れに反発している。仏国内でも,Googleが進めている図書館蔵書のデジタル化計画に危機感を抱いており,デジタル化する蔵書の選択などをGoogleなどにやらせたくないとの意見がでてきたのだ。先週も同大統領が,独自の蔵書デジタル化計画を欧州連合(EU)が進めるよう,指示したばかりであったと書いた。フランスでも勢力を増すGoogleのサーチエンジンについても,フランスの知識人から反発があるのは当然だろう。フランスのメディアのコンテンツを勝手にかき集め,さらに勝手に評価(表示順位付け)しているのだから。 フランスのAFP通信(Agence France Presse)も,同社のニュース・コンテンツを無断で利用しているとして,米GoogleをU.S. District Court for the District of Columbiaに提訴している。
と言うことは,このAlertInfoプロジェクトは,フランスの誇り高いメディア会社が起こした,米国のGoogleやYahooへのレジスタンス運動かもしれない。
*参加企業
lesechos.fr, latribune.fr, lemonde.fr, lefigaro.fr, lentreprise.com, lexpress.fr, lexpansion.com, france2.fr, liberation.fr, rtl.fr, nouvelobs.com, france3.fr, lequipe.fr, 01net.fr, zdnet.fr, businessmobile.fr and soon, france5.fr et m6.fr.
◇参考
・French Media Companies Join To Launch RSS Newsreader
・新聞社サイトが変身の兆し,RSSニュースリーダー提供に踏み込む
・ネットメディアの地殻変動(その1)
・通信社AFPが,Googleを無断掲載で提訴
ただこのエントリーで紹介したような共同ブランド/メディアブランドのRSSリーダーが定着するのは,難しいかもしれません