NYタイムズに代表される米国の伝統メディアの多くは、人減らしなどの経費削減で息をつなぐのに精一杯の厳しい状況が続いている。一方,勢いづいてきたデジタル特化の新興メディアは、投資家から多くの資金を調達でき、一段と攻勢をかけてきたのだ。AdAgeでは、資金調達により躍進した6ブランドのメディアサイトの現況を紹介していたので、次のような表にまとめてみた。
図1 代表的な新興デジタルメディア・サイトの現況

(ソース:AdAge)
おおまかにまとめると、こうなる。20億円から130億円規模の資金を調達してリソース(人やシステム)を強化し、サイトを充実させ、この1年間でトラフィックを数10%から多いサイトで400%も増やした。トラフィックは、ComScoreの2014年12月データを使っている。年間の売上高も35億円から120億円規模と、トラフィックの伸びに合わせて増えているようだ。多くは、黒字化を実現していると主張している。
こうした新興メディアのサイトは通常のコンテンツは無料で、ほとんどの収益を広告収入に依存している。
CPM(表示1000回あたりの料金)の推定額は、Business Insiderが$20〜$25、Refinery29が$16-$17で、Voxはサイトによって違うが$6〜$8から $18〜$20までとなっているようだ。BuzzFeedは $8 to $10と低料金であるが、登録ベースのクリエイティブなネイティブ広告料金ではまとめて$100,000 〜 $500,000と高額になる。 Thrillist のCPMは$12 〜$15となっているが、eコマース・プラットフォームのJackThreadsを買収して以降、売上高の70%〜80%をeコマースから得ている。
新興メディアは一般に、NYタイムズやWSJ、ワシントンポストのような伝統メディアに比べると、まだまだ信頼性やブランド力で見劣りすると見られていた。ところがつい最近、オバマ大統領がVoxとBuzzFeedのそれぞれに、単独インタビューに応じたのだ。新興デジタルメディアの社会的地位が一気にアップしたのだ。ミレニアル世代(14歳から34歳)を中心とした若者では、伝統メディア離れが進む一方で、ソーシャルメディアでの接点を重視している新興メディアになびいている。政府も企業も若者にリーチするには、新興メディアを活用していくのが当然の流れとなってきた。
BuzzFeedのサイトに掲載されていたオバマ大統領インタビューを以下に載せておく。
図2 BuzzFeedのオバマ大統領インタビュー。2015年2月11日付け記事

これら新興メディアの特徴は、自サイトだけではなくてソーシャルメディアでのコンテンツ発信に力を入れていることである。今回のBuzzFeedやVoxの大統領インタビューも、ビデオ撮りした動画コンテンツをソーシャルメディアから視聴できるようにしている。以下はVoxのFacebookページに掲載されていた動画コンテンツ例である(複数本を投稿していた)。視聴回数が約45万回となっていた。YouTubeにも投稿していたが、各動画コンテンツの視聴回数はまだ2万回に届いていなかった。昨年後半から、投稿動画の視聴回数でFacebookがYouTube を追い抜いたと言われているが、この例でも拡散しやすいFacebookの視聴回数が YouTubeを圧倒しているようだ。
図3 Voxのオバマ大統領インタビュー。2015年2月10日付けのVoxのFacebookページ

◇参考
・Reality Check: Sizing Up VC-Backed Publishers' Prospects(AdAge)
・Venture Capital Investments in the Digital Media Sector - October 2014( Preqin)
・Vox and BuzzFeed Obtain Interviews With Obama(NYTimes)