そこで、ニュースやエンターテイメントコンテンツを提供するメディアサイトでは、いかにして彼らのコンテンツがソーシャルメディアでより多くのユーザーに共有してもらうかが重要になってきた。ところがソーシャルメディアのタイプによって、拡散しやすいコンテンツが異なるはずだ。ソーシャルメディア対策に力を注がなければならなくなったパブリッシャーにすれば、どのようなコンテンツがどのソーシャルメディアで拡散しやすいかを定量的に知りたいところだ。
そこでメディア分析会社NewsWhipは、パブリッシャーサイトが発する各記事が代表的なソーシャルメディアでどれくらい共有されているかを計測している。同社は毎月、フェイスブックとツイッターについて、それぞれで共有数の多かった上位パブリッシャーサイトを公表している。今回は、フェイスブックとツイッターにリンクトインとピンタレストを加えたソーシャルメディアのそれぞれにおいて、どのような記事が共有数が多いかを比較している。2014年10月から12月までの3か月間でパブリッシャーが発信した各記事の共有数を計数した。
各ソーシャルメディアにおいて、共有数の多かったトップ100の記事を取り上げ、比較している。驚くことに、各ソーシャルメディアにおけるトップ100の記事にほとんど重なりがなかったのだ。以下の表では、特定のソーシャルメディアで選ばれたトップ100本の記事がどれくらい、他の三つのソーシャルメディアのトップ100に入っているかを示している。例えばフェイスブックで選ばれたトップ100本の記事は、ツイッターやピンタレストで1本しかトップ100に入っていない。リンクトインにいたっては、1本も選ばれていない。ある程度、棲み分けが進んでいるとは思っていたが・・・・。(注:本文では表と食い違っていて、フェイスブックとリンクトインのトップ100に同じ記事が2本入っていると説明していた)
図1 主要ソーシャルメディア4サイトのそれぞれの間で、共にトップ100に選ばれた記事数
(ソース:NewsWhip)
NewsWhipの毎月のレポートを見ていても、フェイスブックとツイッターにおいて、拡散しやすいパブリッシャー・コンテンツの違いは読み取れる。フェイスブックでは感情に訴えた記事や、エンターテイメント性の高い記事、それに最近ではクイズ記事が盛んに共有される。そこに集中的に注力したのがBuzzFeedに代表されるバイラルメディアである。フェイスブックで選ばれたトップ100の記事のほとんどが、バイラルメディア発の記事である。一方、ツイッターでは速報性のあるコンテンツ(記事)がリツイートされる。このため新聞などの伝統メディアがツイッターを活用する場合が目立つ。
リンクトインとピンタレストは日本国内では今一つパッとしないが、米国ではパブリッシャーが無視できないソーシャルメディアとなっている。リンクトインはビジネスパーソン向け、ピンタレストは女性向けで、共に中年ユーザー層が厚いのが特徴である。それぞれのソーシャルメディアの反応を見ながら、パブリッシャーは共有しやすいコンテンツを発信しているのだ。
NewsWhipのレポートで、リンクトインで共有数の多いコンテンツを分析していたので、フェイスブックとの違いを見てみよう。ちなみに、Pew Research Centerが昨年9月に実施したソーシャルメディア利用率調査によると、米成人(18歳以上)のオンラインユーザーのうち、71%がフェイスブックを28%がリンクトインを使っていた。またリンクトインユーザーの86%は、フェイスブックも併用していた。
次の図2で示した表は、リンクトインにおける人気の高いパブリッシャー・ランキングである。2014年10月の1か月間に各パブリッシャーが発信した記事ずべての共有数を総計し、その共有数の多いパブリッシャーの順位である。ビジネスパーソン向けのコンテンツを発信しているパブリッシャー・サイトがズラリと並んでいる。ファイスブックの方がユーザー数や利用時間が圧倒的に多く、リンクインのビジネスユーザーもファイスブックも利用しているのだが、フェイスブックで埋没してしまうビジネス向けコンテンツが、リンクトインでは脚光を浴びるわけである。逆に、ファイスブックで巨大な共有数を誇り上位に陣取るバイラルメディア・サイトは、リンクトインでは姿を現していない。あのBazzFeedすら影が薄いのだ。
図2 リンクトインで共有数の多いパブリッシャー・ランキング。2014年10月のトップ20。
(ソース:NewsWhip)
次はリンクトインで共有数の多い記事一覧。2014年9月の調査である。やはり、キャリアアドバイスや自己啓発関連の記事の人気が高い。逆に、フェイスブックで人気記事ランキング(共有数の多い記事)で上位をほぼ独占しているクイズ記事が、リンクトインでは相手にされない。
図3 リンクトインで共有数の多い記事一覧。2014年9月のパブリッシャー発の記事が対象
(ソース:NewsWhip)
このように米国のパブリッシャーにとって、棲み分けを考慮したソーシャルメディア対策を講じやすい。日本ではフェイスブックがリンクトイン的な役割も果たしており、米国のような棲み分けははっきりと起こっていない。というか、仕事と遊びの場を曖昧にしておきたいのかな。
◇参考
・The Most Shared Stories On Different Social Networks Are Very Different(NewsWhip)
・The Biggest LinkedIn Publishers Of October 2014(NewsWhip)
・Four LinkedIn Lessons From Six Months Of Exclusive Data(NewsWhip)
・Social Media Update 2014(Pew Research Center)