ところが,Microsoftが実際に手ごわい敵と見ているのは,GoogleではなくてMySpaceである。こう主張する人が現れてきた。Slide社CEOでPayPal共同設立者のMax Levchin氏が,先週開かれたSoftware 2007 Conferenceのパネル討論会の場で,Microsohtを最も脅かす存在は,SNSトップであるMySpaceであると言い張ったのである(InformationWeekより)。
彼の主張によると,SNSはパソコンOSと似ており,ユーザーをロックインする傾向が強いという。80年代から90年代にかけて,Microsoftがパソコンの世界を制覇できたのは,パソコンOSを事実上独占し続けてこれたからである。同じように,SNSを事実上独占しているMySpaceがインターネットの世界で主導権を握るかもしれないと,Microsoftが恐れているというのだ。
MicrosoftがMS OSの地位を固めていけたのは,MS Windows(MS-DOS)上で走るアプリケーションソフト市場を当初サードパーティーに開放していたことが挙げられる。そして,パソコンOSの独占を事実上達成した後には,MSはパソコンアプリケーションの開発に注力し,主要分野のOfficeソフトも寡占することになった。自社ソフトに親和性の高いアプリを先行して開発できるのだから,当然,優位に立てた。その結果,ユーザーが蓄積してきた膨大なデータ資産は,Microsoft製品上でのみ活かされることになっていった。つまり,ユーザーはMicrosoft製品/サービスにロックインされることになったとも言える。
この同じようなシナリオを,これからMySpaceが展開しようとしている。だからMicrosoftがMySpaceを恐れていると,Levchin氏は見ているのだろう。確かに今や,MySpaceが米SNS市場をほぼ独占に近い形で制覇している。MySpaceはこれまで,サードパーティーがMySpace上でアプリケーションサービスを展開するのを概ね容認してきた。そのため,YouTube,Photobucket,Flickr,Slideなどは,MySpace向けのサービスをWidgetの形で提供している。MySpaceのユーザーはサードパーティーのサービスを使って,マイページ(プロフィールページ)のカスタマイズを実施できるのだ。マイページのユーザーデータも蓄積されていく。
そして,Microsoftがアプリケーション(Office)の開発に注力したように,MySpaceも自前アプリケーションを充実させていこうとしている。最近,Photobucketを買収したのもそのためと言うのだ。ユーザーがジワジワMySpaceにロックインされていく・・・。
米SNSの広告市場も急拡大していく。5年後には25億ドル強に膨れあがるとの予測も出ている。これからのMySpaceが,80年代〜90年代のMicrosoftのような存在になっていく・・・・。
なんか,最もらしい話に聞こえる。だがSNSがOS的な役割を演じるかもしれないが,インターネットビジネス全体から見れば分野は限定されるのでは。それに,MySpaceが今のような独走状態を継続できる保証もないし。やっぱり,Microsoftにとって最も手強い敵は,今のところGoogleでは。
◇参考
・Microsoft's Biggest Threat: MySpace?(InformationWeek)
・SNSの広告市場,5年後に約10倍に(メディア・パブ)
・MySpace,揺さぶった末に動画・写真共有サイトPhotBucketを買収へ(メディア・パブ)
ご指摘のように「Microsoftにとって最も手強い敵は,今のところGoogleでは」と、私も実感しています。