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2017年04月28日

米ネット広告売上が22%増と急成長なのに、グーグルとフェイスブック以外のメディア会社がゼロ成長なのはなぜ

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 米国のインターネット広告は相変わらず絶好調だ。 IAB(the Interactive Advertising Bureau)とPwC(Pricewaterhouse Coopers)から公表された恒例の“IAB internet advertising revenue report”によると、昨年(2016年)のネット広告売上が725憶ドルとなり、前年比で21.8%も増えた。今年にも、TV広告を追い抜く勢いである。

 このネット広告で最大の課題は、グーグルとフェイスブックの2巨人による寡占があまりにも進んでいることである。Digital Content NextのJason Kint氏がはじいたデータによると、図1に示すように、グーグルとフェイスブックによるネット広告売上の合計が、2016年に517憶ドル(=376憶ドル+141憶ドル)に達した。これは米国のネット広告売上高(725憶ドル)の71.3%も占めることになる。両巨人による市場占有率が、一昨年(2015年)の67.4%から昨年の71.3%へと、一段と寡占化が進んでいると予測している。

AdGoogleFacebook2016a.png
単位:10憶ドル
(データソース:Digital Content NextのJason Kint氏、IAB+PwC)
図1 米インターネット広告の売上高(単位は10憶ドル)。2巨人(グーグル+フェイスブック)だけの売上高合計が、その他大勢の売上高総計を大幅に上回る。2巨人による市場占有率が、最近の1年間でも拡大している

 図1で示したグーグルとフェイスブックの米市場におけるネット広告売上高は、それぞれの公表決算書をベースに推定した値である。その他の売上高は、IABが発表した全米のインターネット広告売上高から2巨人の売上高を差し引いた値を用いている。精度はあまり高くないかもしれないが、大きなトレンドは読み取れるであろう。

 この1年間(2016年の1年間)で米国のインターネット広告売上は129憶ドル(725憶ドル-596憶ドル)も増えたが、その同じ期間にグーグルは63憶ドル、フェイスブックは51憶ドルも増えている。両巨人の売上増は計114憶ドルとなり、全米増加分(129憶ドル)のうちの89%も占めることになる。驚くことに、グーグルとフェイスブックの2社以外の全メディア(広告媒体社)の増加分はわずか14憶ドルで、全体の11%しか占めていないのだ。

 さらに、FortuneやBusiness Insiderでも紹介されていたが、Pivotal Researchのアナリスト Brian Wieser氏は、もっと厳しく見ている。2016年の米国のインターネット広告売上の増加分の全てが2巨人によるものだという。ということは、その他のメディア社の売上はゼロ成長であったということになる。同氏によると、2巨人による市場占有率は、一昨年の72%から昨年は77%へと跳ね上がったと予測している。

  IABとPwCのレポートによると、2016年第4四半期のインターネット広告売上の73%が上位10社に占められていると報告している。先に紹介したKint氏やWieser氏の予測ほど、グーグルとフェイスブックによる寡占度は高くないようだが、それでも広告売上が両巨人に過度に集中しているのは間違いない。

 両巨人が寡占化を進めて来れたのは、モバイル広告の取り組みがうまく行ったことがある。また今後とも急成長が見込める動画広告にも先手を打っており、寡占状態は当分続きそう。そこで、IABとPwCのレポートによる、モバイル広告と動画広告の動向を付け加えておく。

 米国における、モバイル広告売上と非モバイル(デスクトップ)広告売上の推移を、図2と図3に示す。2016年のトピックスは、インターネット広告売上の半分以上をモバイル広告が初めて占めたことだ。

IAB2016Mobile.png
(単位:10憶ドル)
(ソース:IAB、PwC)
図2 モバイル広告売上と非モバイル(デスクトップ)広告売上の推移
 
IABMobile2016.png
(ソース:IAB、PwC)
図3 2016年のモバイル広告売上は前年比77%増の366憶ドルに。インターネット広告売上725憶ドルの半分以上を占めた。

 特にフェイスブックのモバイルシフトは凄まじく、今では同社の広告売上高の84%をモバイル広告が占めるようになった。また、2016年の米国のモバイル検索広告売上は前年比91%増の172憶ドルに達し、グーグルもモバイルの追い風を受けている。
 
 グーグルとフェイスブックがインターネット広告事業で最も力を入れているのが動画広告である。その動画広告売上高は、図4に示すように、2015年の59憶ドルから2016年には前年比53%増の91憶ドルへと急増。特に目立つのは、モバイル動画広告の急伸だ。2015年の16.9憶ドルから2016年の41.6憶ドルへと成長。前年比145%増の驚異的な伸びを示した。

IAB2016Video.png
(単位:10憶ドル)
(ソース:IAB、PwC)
図4 米国の動画広告売上。モバイル動画広告売上の急成長が際立つ

 両巨人の地位は揺るぎそうもない。ただ最近、両社のインターネット広告事業に関して、不正請求や問題サイトへの広告掲載などの不祥事が相次いでおり、逆風も吹き荒れている。また広告媒体社が自社メディアで、両巨人に対するプラットフォームの在り方を厳しく追及する記事が目立って増えてきたのも興味深い。
 

◇参考
・IAB internet advertising revenue report:2016 full year results
(IAB)
・Jason Kint氏のツイート
・Google and Facebook Account For Nearly All Growth in Digital Ads(Fortune)
・Facebook and Google completely dominate the digital ad industry(Business Insider)



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posted by 田中善一郎 at 16:05 | Comment(0) | TrackBack(0) | マーケティング 広告
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