朝日新聞社のasahi.com(アサヒ・コム)とヤフーのYahoo!スポーツが,今夏の高校野球(第89回全国高校野球選手権大会)の特設ページで連携することになった。
ヤフーはこれまでも,サイトの信用力/求心力を高めるためにも,ブランドのあるサイトとの連携に力を入れてきている。たとえばYahoo!ニュースでは,全国紙の新聞社との提携実現を悲願としてきた。その結果,今では読売新聞,毎日新聞,産経新聞からニュース提供を受けYahoo!ニュース内で閲覧できるようになっている。だが未だに朝日新聞や日本経済新聞と手を結べていないのが,ヤフーの課題となっていた。
それだけに,夏の高校野球大会関連記事に限定しているが,asahi.comの記事がYahoo! JAPANのドメイン内で閲覧できるようになったことは,ちょっと驚きでもある。新しい動きへの予兆かもしれない。
朝日新聞社のプレスリリースに,ヤフー取締役COO喜多埜氏の次のようなコメントが載っていた。「朝日新聞社様の強みとYahoo! JAPANの強みを双方で活かし,コンテンツを展開する事は,両社にとって非常に意義の深いものです。今後も朝日新聞社様との関係および連携を強化し,お客様に最良のインターネット環境を提供したいと思います。」
実際に,どのような連携を実施しているかを見てみよう。Yahoo!スポーツ内には既に特集ページ「Yahoo!スポーツ - 2007 夏の高校野球」が立ち上がっている。asahi.comとの関係では,新着ニュースとコラムが用意されている。また地方大会のニュース・試合結果をまとめたページを地域別に設けている。asahi.comから提供されたニュースを全文,Yahoo!スポーツ内で閲覧できる。ただし,コラムについてはYahoo!スポーツ内では見出しだけを掲載し,asahi.comに飛んで本文を読ませるようにしている。
Yahoo!スポーツのトップページには,以下のような特集ページの案内枠を設けていた。ここでも,asahi.comのコラム記事に直接アクセスするためのテキストリンクを置いていた。
今回の連携は,ヤフーやasahi.comの今後の展開を占う意味でも興味深い。まず,ヤフーにとっては,念願の朝日新聞のコンテンツをYahoo!サイト内に取り込めたことは意義深いだろう。さらに,夏の高校野球大会の主催新聞社のコンテンツだけに,特設ページへの集客効果も期待できる。
また,ヤフーが推し進めているオープン化路線に沿っていることにも注目したい(「Yahoo!ニュースが断トツなのに更なる強化へ,読者参加と外部リンク機能を本格導入(1)(2)(3)」で紹介)。商域やサービス提供範囲をYahoo!サイトだけにこだわるのではなくて,パートナーサイトにも拡大させていこうとしているのだ。パートナーのメディアサイトと「Yahoo!メディアネットワーク」を組み,パートナーサイトへのトラフィック誘導と広告配信を狙う。
asahi.comも旨みがありそうだ。まずニュースコンテンツを提供することより,情報提供料を受け取ることができる。さらに,コラム記事などの閲覧のために,Yahoo!スポーツからのトラフィックをかなり期待できる。それに,広告までも付いてきそうである。asahi.com内だけで特集ページ「高校野球」を閉じて展開するよりも,圧倒的な集客力を誇るYahoo!サイトと提携した方が,収益に貢献するはずだ。
確かに,ヤフーとメディアサイトとの間でwin-winの関係を構築できるだろう。ヤフーサイトはますます強力になり求心力を高めることになるはず。一方で,メディアサイトはヤフーへの依存をますます強めることになるのだろう。
◇参考
・Yahoo!ニュースが断トツなのに更なる強化へ,読者参加と外部リンク機能を本格導入(1)(メディア・パブ)
・Yahoo!ニュースが断トツなのに更なる強化へ,読者参加と外部リンク機能を本格導入(2)(メディア・パブ)
・Yahoo!ニュースが断トツなのに更なる強化へ,読者参加と外部リンク機能を本格導入(3)(メディア・パブ)
・2006年度第4四半期 および通期決算説明会のプレゼンテーション資料(2007年4月24日発表) (Yahoo! JAPAN )
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