ロイター(Reuters Institute)の最近の調査でも、こうした傾向を示していた。今年の1月から2月にかけて、36か国のニュースユーザー7万人を対象に実施した調査である。
その結果によると、例えば米国ユーザーの場合、各種ニュースソースの利用率が図1のように推移している。過去1週間に利用したニュースソースを答えさせた結果である。利用ニュースソースとしては、オンライン(ソーシャルメディアも含む)、TV、プリント(新聞紙など)に加えて、ソーシャルメディア単独も答えさせている。
(ソース:Reuters Institute)
図1 米国のニュースユーザーが利用しているニュースソース。
ニュースソースとしてオンラインがトップに定着し、そのオンラインの中でソーシャルメディアでのニュース接触が急増している。一方で、ニュースメディアの王者であった新聞紙が下降を続けている。TVは踏ん張っている。よく知られている傾向である。ただ、オフラインからオンラインへのシフトが進んでいても、実際には両方のニュースソースを併用している人が多い。複数回答なので、オフラインからオンラインへのシフトが劇的には表れない。77%のユーザーがオンラインニュースと接し、22%のユーザーが新聞紙ニュースに接したと答えているが、実際の利用頻度(利用回数とか利用時間)は1桁以上の差が開いているはずである。
そこで、複数回答ではなくて単回答にし、さらに年齢層別に調査すれば、オンラインシフトがもっと明示されるだろう。図3は、36か国の回答者すべてを対象に、過去1週間で利用した主要ニュースソースを一つ答えさせている。ニュースソースとしてラジオも加えている。
(ソース:Reuters Institute)
図2 年齢層別のニュースソース利用率。各年齢層18-24/25-34/35-44/45-54/55+歳の回答者数は7754/12,332/12,976/12,630/24,620人。
若年層ほどオンラインシフトが一段と進行していることが、はっきりと示されている。18歳から44歳までの各年齢層では、主要なニュースソースがTVではなくてオンラインとなっている。さらに18〜24歳の若年層となると、ソーシャルメディアだけ(33%)でもTV(24%)を凌いでいた。
ではニュースソースの主流となってきたオンラインにおいて、ニュースコンテンツと何処で出会っているのだろうか。オンラインニュースのユーザー(回答者6万6230人)を対象にした調査によると、ニュースメディアのサイトに直接訪れてニュースコンテンツと接しているユーザーは回答者の32%しかいない。その他の約65%のユーザーは、図3に示すように、検索、ソーシャルメディア、ニュースアグリゲーターを介してニュースコンテンツと出会っている。
(ソース:Reuters Institute)
図3 オンラインのニュースコンテンツと主にどこで接しているのか? ニュースユーザーの65%は、パブリッシャーのニュースサイトに訪れないで、検索、ソーシャルメディア、ニュースアグリゲーターなどでニュース記事を見つけている。35歳以下の若者となると、73%がパブリッシャーのニュースサイトに訪れなくて、他でニュース記事と出会っている。
オンラインの中でも、ソーシャルメディアでニュースコンテンツと出会っているユーザーの割合が、図4で示したように、多くの国で急速に高まってきている。米国人(大人)の約半数(51%)がソーシャルメディアでニュースコンテンツと接しており、そのほとんど(48%)がフェイスブックでニュースコンテンツを見つけている。
(ソース:Reuters Institute)
図4 ソーシャルメディアでニュースコンテンツと接している人の割合。2016年までほとんどの国で、ソーシャルメディアを介してニュース記事を見つけている割合が増え続けていたが、2017年にはスペインやフランスのように一部の国でスローダウンし始めている
このように、ニュースコンテンツと接する場が、オフラインからオンラインへと、さらにオンラインではフェイスブックなどのソーシャルメディアへと、若者を中心にシフトが加速化している。この流れにおいて、氾濫するコンテンツの中から、良いニュース記事とか重要なニュース記事を見出すのは大変だ。以前は、ニュース記事を生み出していたニュースパブリッシャーの編集者とかジャーナリストが、良いコンテンツや重要なコンテンツを選んで、パーケージした形でオーディエンスに届けていた。オフライン(プリントなど)の全盛時代だけではなくて、オンライン時代になってもしばらく続いた。
特に欧米の伝統的なニュースメディア(新聞社やTV/ケーブル)は、2000年当初あたりからオンライン・ニュースサイトに力を入れ、オンライン時代のニュースメディアをけん引し、集客数も増やしてきた。ニュースサイトでは、オフライン時代と変わらず、編集者が良かれと思う記事や重要と思う記事を、パーケージした形で提供していた。ページのレイアウトや見出しサイズを工夫したりして、読者に読んで欲しいコンテンツを知らせていた。パッケージでの提供も、編集者側の伝えたいメッセージが込められていたりする。
ところが図3で示すように、ニュースメディアのサイトに直接訪れてニュースコンテンツと接するニュースユーザーが減ってきている。代わりに、ソーシャルメディアや検索エンジン、ニュースアグリゲーターでニュースコンテンツに出会うユーザーが増えている。
ここで見逃せないのは、Reuters Instituteも指摘するように、ソーシャルメディアや検索エンジン、ニュースアグリゲーターでは、ユーザーが接するニュースコンテンツを機械的なアルゴリズムによって選んで表示していることだ。それも基本的にはパッケージでの提供ではなくて、一本一本のニュース記事単位で、アルゴリズムが良い/重要と判断したコンテンツを優先して表示していく。図3から、オンラインニュース・ユーザーの約54%(Search25% + Social Media23% + Aggrigator)がアルゴリズムの選んだニュースコンテンツと接していることになる。さらに35歳以下のユーザーに絞ると、64%のユーザーが機械が選んだニュース記事を読んでいる。
オリジナルのニュースコンテンツを生み出している編集者やジャーナリストが選んだニュース記事と接するには、ニュースメディア・サイトに直接アクセスするか、サイト側から送られるEmailとかMobile Alartに頼ることになる。図3から、オンラインニュース・ユーザーの約44%(Direct32% + Email6% + Mobile Alert5%)が編集者が選んだニュースコンテンツと接している。35歳以下のユーザーとなると、34%のユーザーにしか編集者の想いが伝わらないということか。
(ソース:Reuters Institute)
図5 「アルゴリズム」が選んだニュースコンテンツと接しているユーザーと、「編集者」が選んだニュースコンテンツと接しているユーザー。「アルゴリズム」が選んだニュースコンテンツと接しているユーザーの割合が、全体では54%であるが、35歳以下の若年層では64%と跳ね上がる
◇参考
・Reuters Institute Digital News Report 2017(Reuters Institute)