いったい,何をしでかしたのだろうか。残念ながら,一昨日初めてGlamのコンテンツを閲覧したので,この1年間にどのように変容してきたのかが詳しく分からない。でも,現在のサイトをザッと見ただけだが,勢いを十分に感じ取れる。
Glam.comは,ファッション,美容,ショッピング,ライフスタイル,セレブなどをカバーした,コミュニティー重視の女性向けサイトである。主に18歳から49歳の大人の女性をターゲットにしている。各ページの上段のタブメニューから分かるように,次の8種のチャンネルから成り立っている。
・Celebrities
・Quizzes
・Fashion
・Beauty
・Lifestyle
・Shopping
・Glam Network
・GlamSpace
全体の第一印象は,デザインが洗練されおり,編集がこなれており,それにコミュニティー機能がしっかり備わっていることであった。例えば,Quizzesのページを覗いてみよう(クリックで拡大表示)。ユーザーを参加させるタイプのコンテンツが目立ち,読ませる工夫が込められている。
Glam.comのメニューの中で特に注目したいのは,Glam NetworkとGlamSpaceである。Glam Networkはパートナーとなる女性向けコンテンツサイトを束ねたメディアネットワークである。もう一つはGlamSpaceはSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)である。
女性向けサイト350パブリッシャーのハブ的存在に
ファッションからエンターテイメントまで女性をターゲットにしたサイトは多い。女性向け雑誌サイトもあれば,ニッチなテーマに絞ったブログもありと,多彩である。これらの中から選りすぐりの女性向けパブリッシャーを仲間入りさせて,Glam.comをハブにしたネットワークがGlam Networkである。
このようなアグリゲーターでもあるネットワークを構築するには,中核となるハブサイトがかなりの求心力を備えていないと成り立たない。お互いに競合する場合もあるだけに,Glam Networkに参加を促すには,パブリッシャーに何か旨みを提示しなければならない。
編集やデザインが優れていたことも大きいが,加入パブリッシャーサイトにトラフィックを誘導する仕組みがきっちりと備わっていたことが,女性向けWebサイトやブログにGlam Networkへの加入を促していったのだろう。昨年半ば当たりからGlamのユニークビジター数が増え,リーチが急拡大するに伴い,日増しにパブリッシャーが加わるようになり,今では350サイトにも膨れあがった。
パブリッシャとしては,以下のように,ブランド力のある女性誌サイトやWebサイト,それに有力ブログが名を連ねている(Glam Network Directoryを参照)。
Cosmopolitan
Marie Claire
Nylon
Dwell
Nubella
BeautyDen
Bag Snob
Refinery 29
Second City Style
Fashion Tribe
eBeautyDaily(ブログネットワークb5mediaに属しているブログ)
Tarot.com
これらのパブリッシャーとGlamとの関係は,ニュースサイトとGoogle Newsとの関係と似通っている。記事の本文は,ソースのサイトで閲覧させるようにしている。ただし大きな違いがある。各パブリッシャーとGlamとの間では提携を結んでおり,お互いにトラフィックを誘導するwin-win関係を築いていることだ。
例えば,セレブ,ファッション,ゴシップニュースを売り物にするHollyscoopとの関係を見てみよう。
Glamのサイトには,次のようなHollyscoopの最新記事(リンク付き)を示すWidgetを掲げている。
一方,Hollyscoopのトップページには,Glamへ誘導するWidgetが貼り付けられている。
このほか,Glam Networkの各ページには,参加パブリッシャーの最新記事へのリンクが数多く用意されていた。以下は,Glam Networkのトップページである(クリックで拡大表示)。
また参加ブログは,Glam Network Blogsのページでも,次のトピック別に紹介されている。
Art & Design
Beauty
Books
Celebrities
City Guides
Fashion
Film & TV
Food & Wine
Gifts & Greetings
Glam Editor Blogs
Handbags
Health & Wellness
Home Decor
Humor & Satire
Jewelry
Lifestyle
Models
On the Edge
Parenting
Pets
Shoes
Shopping
Technology
Travel
Weddings
さらにトピック別のRSSフィード配信も実施している。たとえばHandbagsのRSSフィードでは,加入ブログ内でHandbags関連のエントリーの更新情報が送られることになる。
加入パブリッシャには,ページビューはさほど多くないが,優れたコンテンツを擁するインディーズ系パブリッシャーが目立つ。そうしたブログのレベルを知るには,今年2月に加入したBudget Fashionista が好例である。個人日記風ブログではなくて,質の高い情報ブログである。ブロガーのkathryn Finneyもプロと思われる。
Cosmopolitanなどの雑誌サイトとは密な連携を
Cosmopolitan,Marie Claire,Dwell,Nylonなどの有力な女性向け雑誌とは,もっと密な連携プレーを展開している。
Cosmopolitanは,Fashionチャンネルで,以下のような“COSMO ON GLAM”ページを提供している(クリックで拡大表示)。
Marie Claireは,ハンドバッグのデザインコンテストをGlamと組んで実施中だ。読者投票でトップになると,ニューヨークの有名ホテルに泊まって,Marie Claire誌の一日編集者を務めるというプロジェクトである。
SNSも昨年秋から開始
GlamSpaceと称するSNS(ベータ版)を,2006年9月から開始した。特徴は,女性ユーザーだけではなくて,モデルやスタイリスト,ファッションデザイナーなど,女性関連分野や女性顧客向け職業に携わる人たちも加わっていることである。以下は,GlamSpaceに登録するときに選ぶ個人属性欄である。GenderでMaleがあるように,男性も登録できる。男性のスタイリストもいるので当然か。
先ほどの,提携雑誌などにもGlamSpaceにプロフィールページを提供し,読者とのコミュニティーの場として使い始めている。以下は,Cosmopolitanの例である。
SNS会員の特典は次の通り。
As a Glam member you have free access to:
* Our fashion-forward articles and photo galleries, including in-depth Trend Watches, celebrity Fashion Evolutions, Glam's It Girl of the Month, Style Grids, and weekly Star Galleries featuring all your favorite celebrities.
* Fashion, style, and celebrity quizzes to get to know yourself.
* Exclusive interviews with the hottest designers, beauty experts, and A-list celebrities.
* The latest must-have products from your favorite stores, such as Neiman Marcus, Sephora, Shopbop, Bluefly, Active Endeavors, and Target.
* Insider tips, snag celebrity-favorite products, and see the latest and greatest beauty finds in our new beauty section, where you'll also find exclusive interviews with hair and makeup experts, top stars, and the beauty-obsessed.
* Exclusive boutiques like Scoop NYC, Tracey Ross, and Fragments where you can shop.
* The largest community of fashion and lifestyle bloggers on the Web.
* Glam Flash, our members-only e-mail that dishes on celebrity fashion, tells you how to get their looks and where to find the hottest styles, and more!
NYTやWSJの全面広告で,iVillageに対する勝利宣言を
12年の歴史を誇る女性向け定番サイトiVillageの牙城を崩したことは,Glamのブランド力を高めることになろう。先週末には,New York Times(NYT)やWSJなどの主要新聞に,iVillageに対する勝利宣言を誇示した全面広告を掲載したのも,今の勢いを更に加速化させたいからであろう。
1年前まで,ユニークユーザー数がiVillageの20分の1程度のマイナーサイトが,一気に王者を抜き去りトップに躍り出たのである。突然変異のようにも思えるが,Glamの開発物語を紐解くと,編集やデザインなどの点でそれなりの地盤作りを整えてきていることが理解できる。創刊前にEsther Dysonと話し合ったり,デザイン面では日本のデザイン事務所CAPとも議論するなどをしながら,Glam.comの設計を進めてきている。並みの編集者やネットデザイナーのチームではなさそうだ。
伝統的なメディアサイトは,自前主義を貫き,自サイトにユーザーを囲い込むようなクローズな姿勢を採りがちである。一方Glam.comは、他のパブリッシャーとの共存共栄を図るオープン路線の道を選んでだ。Glam Networkの加入パブリッシャーとの協力で,Glam.comのハブ的な求心力を高め,結果としてユニークビジター数の急増を実現した。同時に,加入パブリッシャーサイトへのトラフィック誘導を惜しみなく行った。
SNSのGlamSpaceも外に開かれている。プロフィールページには,Slide,ComやYouTubeなどのWidgetが貼り付けられている。
さらに,最近,広告事業でGoogleと複数年契約を結んだり,3月にはショッピング検索のTheFind.comと提携したり,さらにオンラインゲームのOxigenと組んで“Fight Girls Fantasy League”を6月12日に立ち上げたりと,ますます活発な動きを展開している。
最後に,同サイトが用意している広告メニューを。
Product Placement
Custom Advertorial
Direct Marketing
Targeted Brand Advertising
Product Trial and Sampling
Event Sponsorship
WOM Marketing
Video Distribution
Product Reviews
◇参考
・驚異の女性サイト“Glam”,訪問者数が1年間で37倍に増え一躍トップに(メディア・パブ)
・Glam Media Ranked as Number One Women's Web Property by comScore(プレスリリース)
・Glam surges to No. 1 women’s property, overtakes iVillage(VentureBeat)
・Search company beats rivals for ad, search deal with fashionista site.(RED HERRING)
・「24 Hours in Cyberspace」のメンバーらがつくったファッションウェブジン「Glam」(CNET Japan)