調査会社eMarketerの米国市場予測によると、今年(2018年)のディスプレイ広告費564億ドル(約6兆2000億円)のうち約6割近い329億ドル(3兆5200億円)をネイティブ広告費が占める。2016年から2019年(予測)までの推移を図1に示す。ネイティブ・ディスプレイ広告費(図1の赤棒)の対前年増加率は、2016年が63.7%増、2017年が50.1%増と、爆発的な伸びを示した。それに比べ今年はやや減速するが、それでもプラス31%とすごい勢いで伸び続けそうだ。
(ソース:eMarketer)
図1 米国のディスプレイ広告費の推移。今年のディスプレイ広告費(予測)の58.3%はネイティブ広告が占める。ディスプレイ広告には一般のバナー広告だけではなくて、動画広告やネイティブ広告、リッチメディア広告も含んでいる。
このネイティブ広告の大半はインフィード広告である。確かに最近、スマホでソーシャルサイトやニュースサイトに接していて目立つのが、流れるように視野に入るインフィード広告の存在である。米国市場での主役は、やはりFacebook(FB)である。今年の米国のディスプレイ広告費の37.2%に相当する210億ドルをFBが米国市場で稼ぐと、eMarketerは予測している。
米国ではFBなどのソーシャルサイトの広告シェアが高い。そのソーシャル広告は2018年も96%近くがネイティブに頼ることになるという。FBのニュースフィードに流れるインフィード広告がその代表である。だが、そのFBはフェイクニュースや個人情報不正利用の問題を抱えていることもあって、Googleとともに寡占していたデジタル広告市場でブレーキが少しかかりそう。eMarketerもFBのシェア予測を最近になって下方修正している。
ここで注目したいのが、米国のネイティブ・ディスプレイ広告市場で昨年は80.9%も占めていたソーシャルサイトが今年は73.5%に落ちると見られていることだ。代わって、残りの26.5%が非ソーシャルサイトが占めることになる。今年の非ソーシャルのネイティブ・ディスプレイ広告費は、前年に比べ80%も増えて87.1億ドルに達すると見込まれている。
このように広告市場に揺さぶりをかけようとしているのがAmazonである。非ソーシャルプラットフォームであるAmazonがネイティブ広告市場でも暴れようとしている。同社のディスプレイ広告費は、今年の21.7億ドルから2020年には47.8億ドルに膨らむと見込まれている。今年の米国のインターネット広告市場は1000億ドルの大台に乗せるだろう。これからもGoogleとFacebookによる寡占が一段と進むと見られていたネット広告市場も、その勢力図が塗り替わろうとしているのかもしれない。
米国の2017年の870億ドル(約9兆5700億円)規模に比べると、日本の2017年のインターネット広告市場は電通発表で1兆5094億円とかなり小さいが、大きな時差こそあれインフィード広告の展開でも後追いしている。サイバーエージェント/デジタルインファクトが実施したインフィード広告市場調査では、2017年に前年比36%増の1903億円に達した。今年は同23.1%増の2343億円と予想している。インフィード広告のソーシャルサイトの割合は、昨年が69.2%で、今年は71.2%とほぼ同じと見込まれている。つまり非ソーシャルが約3割となっている。規模こそ米国に比べ小さいが活気があり、似通った動きを見せている。
◇参考
・Native Ad Spend Will Make Up Nearly 60% of Display Spending in 2018(eMarketer)
・EMarketer: Native ad growth will dip to 31% this year(Marketing Dive)
・Native ads will drive 74% of all ad revenue by 2021(Business Insider)
・サイバーエージェント、インフィード広告市場調査を実施(サイバーエージェント)
・SNSでは、約6割が「ハッシュタグ検索よりも、タイムラインで情報収集」(プレスリリース、PR TIMES)
・今後、企業が最も注力したいSNS広告は「LINEのインフィード広告」(プレスリリース、PR TIMES)