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2018年05月21日

金融新聞「FT」までがFBからインスタグラムへ注力シフト、絵文字を用いたりしてエンゲージメントが大幅アップ

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 インスタグラム(Instagram)は、美容やファッション、食、旅行などをカバーする軟らか系パブリッシャーにとって、今や最も注力するソーシャルプラットフォームとなっている。さらに驚くことに、インスタ映えと縁がなさそうな硬派系の金融専門紙フィナンシャル・タイムズ(FT)までも、プロモーションの有効な場としてインスタグラム対策に力を入れている。

 メディア分析会社のNewsWhipによると、FTがインスタグラムに投稿した記事の平均エンゲージメントが、フェイスブックへの投稿記事よりも13.4倍も高かったいう。英国の代表的な新聞サイトがこの1年間(2017年4月〜2018年4月)にインスタグラムおよびフェイスブックに投稿した記事を対象に、それぞれのSNSにおける記事一本当たりのエンゲージメント数(ここではコメント数、いいね!数といったリアクションの合計)を計数した結果が、図1である。

FT201804InstagramvsFB.png
(ソース:NewsWhip)
図1 インスタグラム投稿記事 vs フェイスブック投稿記事。英新聞系の8ニュースサイトが投稿した記事1本当たりの平均エンゲージメント数を示している。FTとGuardianはインスタグラム投稿記事のエンゲージメントが高い。バイラル性の高い記事を売りにする大衆新聞Daily Mailはフェイスブック投稿記事のエンゲージメントが高い。


 FTがフェイスブックに投稿した記事の平均エンゲージメントが201だったのに対して、インスタグラムに投稿した記事はその13倍以上の2,703の高スコアを得ている。インスタグラムのオーディエンスのほうが、FTの投稿記事に対して圧倒的に高い反応を示しているのだ。なぜFTの記事が、インスタグラムのオーディエンスに受け入れられているのか。

 上の図1を見ても分かるように、インスタグラム投稿記事のエンゲージメントが高いパブリッシャーと、フェイスブックのほうが高いパブリッシャーとに分かれる。各パブリッシャーの投稿記事のコンテンツの違いにもよるし、パブリッシャーの力の入れ方の違いにもよる。ただこれまで、日本は別にして、大半の国のパブリッシャーはフェイスブックに高く依存し、その対策に努めてきた。フェイスブック批判の嵐が吹き荒れている今日でも、ほとんどのパブリッシャーは大量の記事をフェイスブックに未だに投稿し続けている。

 ニュース系パブリッシャーからすれば、フェイスブックにはテキストや写真、さらには動画であろうと、これまでのスタイルのニュース記事を投稿できるので、多くの記事を提供できる。一方インスタグラムには写真や動画コンテンツが中心となり、それもインスタ映えするモノでないと埋没しかねないだけに、提供できる記事が限定される。 

 そのため、図1の各新聞系パブリッシャーでも、投稿記事数ではフェイスブック向けがインスタグラム向けよりもけた違いに多くなっているい。そこで、
総エンゲージメント=投稿記事数×1記事当たりのエンゲージメント
で比較すると、FTも含めてすべてのパブリッシャーで、フェイスブックの総エンゲージメントのほうが高くなる。

 ただ現状のままでは、フェイスブックのニュースフィード・アルゴリズムの変更次第でパブリッシャーが大打撃を被りかねないだけに、パブリッシャーからすればフェイスブックへの過度な依存から脱したい。その一環として、同じフェイスブック傘下であっても、いま旬のインスタグラムをもっと活用していきたくなる。

 FTは他の欧米の有力ニュースメディアに比べると、フェイスブックへの依存度は高くない。提供する硬い経済金融記事は一般にバイラル性が弱いため、フェイスブックではエンゲージメントが低くなってしまう。それに有料記事はpaywallに阻止される。それでも本流の記事を中心に投稿して、若いオーディエンスにリーチし認知してもらっていた。だが、若年層のフェイスブック離れが起き始めている昨今、若年層へのリーチを進めていくにはインスタグラムの更なる活用も必要になったのだろう。

 そこで、FTのインスタグラム・ページを覗いてみた。


FT20180520Instagram.png
図2 FTの公式ページ(インスタグラム)

 毎日、3〜5件の写真/動画/イラスト(漫画)/グラフのコンテンツが投稿されていた。ハリー王子の結婚式の写真(左上)は1万5000件のいいね!と71件のコメントを、プーチン氏から花束プレゼントを受けるメルケル氏の写真(右上)は4608件のいいね!と97件のコメントを、ヨガに関するグラフ(左中央)は4490件のいいね!と295件のコメントを受けていた。どの投稿コンテンツも、少なくとも1000件以上のいいね!を獲得しており、常連のファンを掴んでいるようだ。FTのブランド力も効いて、安心して閲覧できるのだろう。

 FT Photo Diary や漫画イラスト、グラフなどの定番のコンテンツを毎日数件、丁寧にまとめられている。簡潔なテキストが添えられているだけで、毎日数件のコンテンツなら、つかの間に閲覧できてしまう。インスタグラムではリンクを張れないこともあって、特定のFT記事と関連付けさせていないところも、押しつけがましさがなくて好感が持たれているのかも。

 また、話題になっているのが、コンテンツのテキスト文に絵文字を使っていることである。絵文字採用なんて当たり前のように思えるが、お堅い金融パブリッシャーが採用するとなると、話題になるのだ。FT Photo Diaryにカメラの絵文字を挿入する程度のことだが、インスタグラムユーザーに少しでも親しみを持ってもらおうとする姿勢が伺える。

 こうした、インスタグラムへの取組がうまくいったのか、月間の総インスタグラム・エンゲージメントが、図3に示すように、約2倍に跳ね上がっている。
FT201804InstagramEngagement.png

(ソース:NewsWhip)

図3 FTのインスタグラム・エンゲージメントの総計。この1年間で約2倍に。

 ついでに、FTのフェイスブックページも覗いてみた。インスタグラムページのフォロワー数が69万人に対して、フェイスブックページでは5倍強の380万人近くのフォロワーを抱えている。でも、フェイスブックページでの投稿記事1本当たりのリアクション(いいね!+コメント)は、インスタグラムページの13分の1以下しか得られていない。


図4 FTのフェイスブック・ページ

 インスタグラムページでは投稿記事すべてを簡潔に閲覧できる。一方フェイスブックページでは投稿記事はほとんどがFT記事と直結したリンク情報で、全文を閲覧するにはFTサイトに飛ばなければならない。フェイスブックユーザーのほうが満足度が低くなるのは仕方がない。

 分散型メディアを採るパブリッシャーは、ソーシャルプラットフォーム別に適した役割分担を持たせる必要がある。

◇参考
・How the Financial Times switches tactics to win big on Instagram(NewsWhip)
・Financial Times CEO John Ridding explains how to make people pay for media(recode)



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posted by 田中善一郎 at 13:13 | Comment(0) | Web2.0 SNS CGM
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