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2018年06月01日

高年層のSNS利用が増える一方で、若中年層のSNS離れが始まったのか

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 若中年層のSNS利用に陰りが・・・。

 総務省は先週末(平成30年5月25日)に平成29年通信利用動向調査の結果を公表し、年齢層別のソーシャルネットワーキングサービス(SNS)の利用状況を明らかにしたが、その中で気になったのが若年層と中年層でSNS利用率が前年比マイナスとなっていたことである。

 まずその結果を示すグラフを図1に。

平成29年通信利用SNS状況.png
(ソース:総務省)
図1 SNSの利用動向。各年齢層のインターネット利用者のうちSNSを利用している割合を示している。平成28年と平成29年の調査結果である。平成29年の調査は平成29年11月〜12月に実施。全国約4万世帯に郵送で調査票を配布し、回収率41.1%の16,117世帯から有効回答を得た。


 SNSを最も頻繁に利用している年齢層である13〜19歳、20〜29歳、30〜39歳において、揃って昨年のSNS利用率がわずかながらマイナス成長となっている。一方でSNSを利用している割合がまだ低い50歳以上の高年齢層や6~12歳の低年齢層では、SNS利用の割合がこれまで通り上昇している。

 図2に示す過去4年間(平成26年〜29年)のSNS利用動向を見ても分かるように、平成28年までは10代〜60代のすべての年齢層において、SNS利用の割合は増え続けていた。例えば、20〜29歳では71.4%(26年)→72.1%(27年)→76.6%(28年)と、30〜39歳では62.6%(26年)→65%(27年)→70.5%(28年)と、毎年着実に増えていた。ところが平成29年には10代〜30代の年齢層で急ブレーキがかかり、前年比で初めてマイナスに転じたのだ。


平成26~29年通信利用SNS状況a.png
(ソース:総務省)
図2 平成26〜29年におけるSNS利用状況。

 最もSNSを活用している若中年層において陰りが見えてきたのはなぜか。一昨年あたりから、20代や30代のSNS利用率が70%前後が達してきたが、早くも天井感が出てきたのだろうか。

 そこでSNS先行国の米国はどうなっているかを探ってみた。米シンクタンクのPew Research Centerは、毎年、18歳以上の米国成人のSNS利用率を観測してきている。今年1月末の2018年調査結果を含めて、これまでSNS利用率がどのように推移しているかを図3に示す。18〜29歳、30〜49歳、50〜64歳、65歳以上の四つの年齢階層別に示されていてる。


Pew SNSUsage2018.png
(ソース:Pew Research Center)
図3 米国における年齢階層別のSNS利用の割合。少なくとも一つのSNSを利用している米国成人の割合を示している。2018年調査は2018年1月に実施。

 SNSはもともと若者向けのコミュニティーサービスとして生まれてきた。その揺籃期から爆発的に急成長し始めた時期(2006年〜2008年:Myspace時代)において、SNSに夢中になったのは18〜29歳の若者だけで、30代以上の中高年者の大半からは白い目で見られるか無視されていた。若者の文化として開花したSNSは、2008年には18〜29歳の若年層でSNS利用率が早くも70%近くに達していた。

 ところがFacebookが、これまでトップを独走していたMyspaceを一気に追い抜いた2009年頃から、SNSの世界が様変わりしてきた。家族間のコミュニティーの場としても浸透してきたFacebookが、30代以上の年齢層にも広く利用され始め、年々、利用の輪がより高い年齢層へと拡大していったのだ。

 圧倒的なシェアを占めたFacebookが牽引する形で発展してきたSNSの勢いは、グローバルにもまだまだ衰えていない。若者の間でFacebook離れが目立ち始めているが、代わりにInstagramやSnapchatなどのSNSに新たに飛びつき、複数の多様なSNSを使い分ける個人が増えてきている。

 ただしSNS利用率で見ると、図3のPewのグラフからも読み取れるように、米国の若中年層において3年前あたりから伸びが急に鈍ってきている。18〜29歳で90%近くで、また30〜49歳で80%近くで、天井感が出てきている。また50~64歳の高齢者層も最近は、利用率が65%近くで伸びが鈍化し始めている。SNSの普及する時期も天井感が出る時期も、若年齢層から始まり次第に高齢者層で起こっている。天井の位置は、高齢層ほど低くなっている。

 このような米国におけるSNS利用率のトレンドが、日本でもある程度の時差を持って現れ始めたといえる。日本では、若中年層のSNS利用率で早くも天井感が出てきているように見える。70%前後とは天井が低すぎるように思える。国民性や文化の違いか。また平成29年調査では、調査票の回収率向上のため従来とは違う簡易調査票も用いており、その影響でマイナス成長に下振れしたのかもしれない。今回の調査でも、インターネット利用上の個人的な不安を問うと、87.7%と一番高かったのが「個人情報やインターネット利用履歴の漏えい」であった。これもSNSから敬遠される要因になったのかも。


 一方で、日本では50歳以上のSNS利用率がまだしばらく勢いよく上昇していきそう。同じ総務省の調査によると、50代のインターネット利用が昨年初めて90%を超えた。日本の人口構成は世界で例を見ない「棺桶型」と言われているようだが、人口のボリュームゾーンである上部の高齢者のインターネット利用率が若年層と同じ90%台に乗せ始め、SNS利用率も増えていきそう。リアルの世界だけではなくて、ネットの世界でも少子高齢化が日本は先行するのか。


◇参考
・平成29年通信利用動向調査 ポイント(総務省)
・平成 29 年通信利用動向調査の結果(概要)(総務省)
・平成28年通信利用動向調査 ポイント(総務省)
・Social Media Fact Sheet(Pew Research Center)




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posted by 田中善一郎 at 06:18 | Comment(0) | Web2.0 SNS CGM
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