ソーシャルメディアの勢いは、日本国内でもまだ衰えそうもない。「LINE」「Instagram」「YouTube」「Twitter」のいずれも、ユーザー数が増え続けている。でも有力SNSのなかで「Facebook」だけが、ユーザー数が減り始めているようだ。
総務省が先週公表した「平成29年情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」で明らかにした主要ソーシャルメディアの利用率推移からも、主要SNSの勢いの違いが読み取れる。今回の調査は、平成 29 年 11 月 11 日(土)〜17 日(金)に13 歳から 69 歳までの男女 1,500 人を(性別・年齢 10 歳刻みで 2017 年 1 月住民基本台帳の実勢比例)を対象に実施した。本調査研究は、総務省情報通信政策研究所が東京大学大学院情報学環との共同研究の形で行っている。
同調査では2012年から代表的なソーシャルメディア系サービス(画像等の共有サイトも含む)の利用率を調べている。ここでは、その中からLINE、Facebook、Twitter、それに画像系のYouTube(2014年以降)、ニコニコ動画(2014年以降)、Instagram(2015年以降)の利用率推移を取り上げて、図1〜図6に掲げる。全世代および年代別の推移を示している。
まず注目すべきは、LINEが2017年末に全世代通しての利用率が75.8%と前年の67%から大幅にアップし、YouTubeを抜き去ってトップに躍り出たことである。年代別で見ても、10代以外のすべての世代で最も高い利用率となっている。中でも、50代が53.8%から67.1%へ、60代が23.8%から39.8%へと、この1年間における高齢者の急増が際立った。
(ソース:総務省)
図1 LINEの利用率の推移(全世代と年代別)
図1 LINEの利用率の推移(全世代と年代別)
Facebookは、世界の大半の国でナンバー1に居座っているのに日本では伸び悩み、とうとう昨年末に全世代通しての利用率が31.9%と前年の32.3%よりも減ってしまった。最も熱心なユーザーが多いはずの20代と30代で減り始めているのが厳しい。2018年第2四半期の決算発表でも、北米のDAU(Daily Active User)が前四半期比横ばい、欧州のDAU 数が同微減となっており、先進国での勢いに陰りが見え始めている。
(ソース:総務省)
図2 Facebookの利用率の推移(全世代と年代別)
図2 Facebookの利用率の推移(全世代と年代別)
一方のTwitterは、グローバルに見ても日本がもっとも勢いのある国になっている。全世代通しての利用率が31.1%と増えており、Facebookと肩を並べている。10代や20代の若年層に至ってはTwitterがFacebookを大きく上回っていた。
(ソース:総務省)
図3 Twitterの利用率の推移(全世代と年代別)
図3 Twitterの利用率の推移(全世代と年代別)
YouTubeは、LINEと同じように、若年層だけではなくて、高齢層の利用も増えている。全世代通しての利用率も72.2%と着実に高くなっている。10代(13歳以上)の利用率が93.5%とは凄い。
(ソース:総務省)
図4 YouTubeの利用率の推移(全世代と年代別)
図4 YouTubeの利用率の推移(全世代と年代別)
今や旬のInstagramの勢いもすさまじい。20代の利用率が52.8%となり、親方のFacebookの52.3%を上回った。全世代の利用率を男女別で見ると、女性が31%で男性が19.4%であった。女性の利用率も、Instagram(31%)がFacebook(30%)を追い抜いている。女性パワーがさく裂している。
(ソース:総務省)
図5 Instagramの利用率の推移(全世代と年代別)
図5 Instagramの利用率の推移(全世代と年代別)
動画系のニコニコ動画は、有料のプレミアム会員数が減り続け先行き不安が膨らんでいるが、昨年末の利用率は再びプラスに転じている。本格的な回復基調に戻れるかどうか。
(ソース:総務省)
図6 ニコニコ動画の利用率の推移(全世代と年代別)
図6 ニコニコ動画の利用率の推移(全世代と年代別)
先週、FacebookとTwitterの決算発表の後、両社の株価が暴落した。その背景として、米国や欧州でユーザー数が頭打ち、あるいは減る傾向が見られたことがある。そこで早くも、ソーシャルメディア全盛時代が終ろうしているとの声も出始めている。
そこで、米国における主要ソーシャルメディア系サービスの利用率の推移を見ておこう。今年1月にPew Reseach Center実施した2018年調査結果を加えたグラフを図7に示す。FacebookやTwitterのような先行SNSに成長の鈍化が見られるものの、その間に後発のInstagramやSnapchatが急成長し、さらに日本では鳴かず飛ばずのPinterestやLinkedInがそれぞれ29%、25%の高い利用率を維持している。このように多様なSNSを複数、用途に応じて使い分けしており、主要SNSの利用率の総計では図に示すように増え続けている。
また先進国で先行SNSで天井感が出てきているが、若年の人口層が厚い開発途上国では、ソーシャルメディア系サービスの利用率はしばらく増え続けるだろう。先週のFacebookの決算発表時のデータを見ても、例えばアジアパシフィック地域のFacebookのDAUが5億4600万人と、1年前の4億5300万人から大幅に増やしている。ソーシャルサービスが失速し始めたというのは早すぎそう。
(ソース:Pew Research Center)
図7 米国におけるソーシャルメディア系サービスの利用率の推移。利用率が20%を超えるサービスが増えている。
最後に、グローバルに人気の高いソーシャルメディア系サービスのFacebook、YouTube, Twitter, Instagramの利用率が、日米でどう違うかを見ておこう。Facebookを除けば、ほぼ同じ傾向を示している。グローバルにはローカルSNSであるLINEが、日本ではFacebookにとって代わる地位を確保してきているということか。
(データ:総務省、Pew Research Center)
図8 ソーシャルメディア系サービスの利用率の比較(日本と米国)。日本は総務省が2017年11月中旬に13歳以上の人を対象に実施した調査結果。米国はPew Research Centerが2018年1月上旬に18歳以上の成人を対象に実施た調査結果。
◇参考
・平成29年情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書(概要)(総務省情報通信政策研究所)
・Social Media Use in 2018 (Pew Research Center)