でも日本語版サイトが現れる前から,既に国内のSecond Life(SL:セカンドライフ)ブームはかなり過熱気味だ。新聞や雑誌にはセカンドライフを盛り上げる記事で溢れているし,書店に行けば入門書や解説書が数多く並ぶ。メディアと歩調を合わせて,広告,教育/セミナー,コンサルティング,システムなどの関連企業も,SL関連事業で一儲けを企む。もちろん調査会社も後押しする。みずほコープレート銀行産業調査部は,来年末にも,SLの加入者数が2億5000万人に迫り,仮想通貨の年間総取引量が1兆2500億円に達すると予言する。
こうなると一般企業も,SLでの事業準備をせき立てられる。一般のインターネットユーザーもアバターで仮想社会を経験しておかないと,時代の波に乗り遅れのではと心配になる。日本でのSLブームは世界的には遅れて始まったが,一般企業もユーザーも横並びで一斉に飛びつこうとしている。日本語サイトが立ち上がった今,いよいよ本格的なSLバブルが始まりそうだ。
そこで,Linden Labが公表している統計データから実態を探ってみた。SLのトップページで掲載されていた最新の統計データである(日本時間16日21時の画面)。
現在のSLの人口が800万人を超えた。ある書籍の本文見出しを真似れば,「800万人を魅了するインターネットの新らしい世界」が展開されていることになる。先の銀行の調査部の予測では,現在の登録アバタ数800万人が2008年12月には2億4800万人に膨れ上がるとのこと。この予言を信用すると驚くべき人口爆発がこれからも起こることになる。
この6月までも,以下のようにユニークユーザー数と登録者数(アバター数か?)は急激に増えてきた。そして今後ともこの驚異的な上昇カーブを描き続けていくと見ているようだ。
次に総利用時間の推移を示す。
でもちょっと気になることがある。人口の伸びに比べて,総利用時間の増え方が鈍くなってきているからだ。それ以上に懸念するのは,アクティブユーザー数の割合の減り方が目立つことである。
みずほのレポートでは,2007年3月時点の全アバター(登録者)500万人のうち34%がアクティブアバターと紹介していた。昨日の統計データで同じように計算してみると,全アバター809万のうち約21%がアクティブアバターとなっていた。この約3ヶ月間で,アクティブユーザーの割合が大幅に落ち込んでいる(アクティブユーザー数も少し減っているようだが)。
その21%のアクティブ率すら,かなり底上げされた値ではなかろうか。みずほは,過去60日に一度でもログインしたアバターをアクティブと見なしているからである(最新の統計データでは,登録者数809万人中173万アバターが過去60日に一度はログインしていた。その結果,アクティブ率が21%となる)。言い方を変えれば,SLが800万人を魅了しているはずなのに,その8割近い登録ユーザーは2ヶ月に1度もSLを訪れていないのだ。
運用元のLinden Labは,もう少し現実的なアクティブアバター数を次のようにはじいている(アクティブ率の定義は不明だが,7日以内のログイン数に近い)。以下のように現在のアクティブアバター数を約50万アバターと発表している。こちらのほうが納得できる数字だ。過去60日にログインしたアバター数173万に比べて,3分の1以下のアバター数である。
以下,国別アクティブアバター数のランキング表を示しておく。日本はまだ2万7000アバターである。でも,日本語版が始まり騒ぎたているので,日本のアクティブアバター数はこれから飛躍的に増えてこよう。年内には米国に次いで2位となり,10万台に乗せるかもしれない。
急増したとしても,年末においてアクティブアバターがせいぜい10万人程度のレベルである。この現実を認識しておいた方が良さそうだ。
だから,遠い将来に夢を託すだけなら問題ないが,今すぐの成果を期待すると大失敗となりかねない。なのに,期待を抱きすぎたのか,SLに進出した企業からは,早くも落胆する声が聞こえ始めている。仮想空間で企業活動を始めてみたものの,閑散として閑古鳥が鳴くだけと。アクティブアバター数が全世界でわずか50万人弱で,オンライン中のアバターとなるとピーク時でもなかなか4万に届かない(冒頭の統計データでは3万314アバター)。現状では,アバターの姿がまばらなのも不思議ではない。よほど面白いイベントでも仕掛け続けないと,アバターが集まってくれそうもない。これはSLに限った話ではないが。
Los Angeles Timesが先週14日の記事でも,SLに開設していた施設が店じまいしている話を報じていた。同記事によると,6月のアクティブアバター数が前月比2.5%減と落ち込んでいる。また両替総量も,以下の表のように,今年3月をピークに下降線を辿っている。
確かに,少し踊り場に入ったようだ。テキスト中心のSNSと違って,CGベースのSLは,まだまだ一般ユーザーにはハードルが高い。一度,試してみても,面倒で諦めたユーザーも多いはず(僕も,昨年10月に一度登録したが,それ以降,一度もログインしていない)。要するに,まだ発展途上のサービスである。施設の構築もこれからの段階である。また個人パソコンの多くが,まだSLを走らせるのに十分なパワーを備えていなかったりもする。
いずれ,再びSLが上昇気流に乗る可能性は十分あり得る。下のグラフが示すように,SLの土地も拡大しているし,島も増える一方である。その上に施設が次々と構築されていき,誰もが新しい体験を楽しめるようになるなら,高性能パソコンを買って,久しぶりにSLにログインしてみようか。何年先になるのかな。
◇参考
・Virtual marketers have second thoughts about Second Life(Los Angeles Times)
・「セカンドライフ」にみる仮想世界・仮想経済の可能性
―Web2.0に続くインターネットの新たな進化(みずほコーポレート銀行)
・Second Life人口が200万人突破と大騒ぎするが,アクティブユーザーはまだ20万人程度(メディア・パブ)
タグ:仮想世界
インストールして、徘徊してみました。
やはりクライアントソフトの日本語化などはまだまだ
完成度が高くないですね。
それと、有料サービスの決済方法も現状はUS$建てで
円が独歩安の状態の今、日本からUS$で決済するのは非常に
もったいないというか、不利ですね。
US$が事実上の世界標準の通貨であることは解っていますが
ローカライズしてサービスを行なう国・地域では
現地通貨で決済できるようにしてもらわないと、
為替レートで左右されてしまうのは困ります。
リアルで行われている手法を仮想にとりこめないとダメなんです。
あるいは、SLは、能力開発スキルアップの教習所みたいなものなんです。
だから、webでも、netでもないんです。
正しくは「ハードルが高い」ですね。
セカンドライフ」ブーム、もう終わり?
http://blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/1007234.html
ただのカタログといわれた。
リンデンドルの価値は今1$:270L$あたり、1L$の価値は先進国ではなんでもない価値だが、中進国以下の国にはおいしい価値だ。
このあたりから大きな火がつくと思う。
3Dアバターの質が悪すぎると思いました。
動きも含めて質の高いオンラインゲーム・アバターに
慣れているネットユーザーには満足出来るものでは無いと思います。
ただ自由度の高さとアイデアは凄くいいですね。