「オンラインパブリシャーは広告スペースの販売を止めなさい」とは・・。これは聞き捨てならない話である。
新聞や雑誌,それにTVといった伝統的なメディアが,先進国では成熟段階に突入している。そこで旧来メディア各社は,オンラインメディアに活路を見いだそうと躍起である。中でも,新聞社や雑誌社の多くは,軸足をプリント事業からオンライン事業にシフトさせ,Web事業の成長に賭けていこうとしている。
米国の新聞社の例で見れば,プリント(新聞紙)事業の減収減益と,オンライン事業の増収増益の流れが明確になってきている。オンライン事業の売上高は,事実上オンライン広告売上高となるのだが,この3年間,20%〜30%台の高度成長を続けている。なのに新聞社全体では,減収減益が常態化しつつあるのだ。特に今年に入ってからは,プリント事業の広告売上高の落ち込みが一層目立つようになり,米新聞社の経営は厳しい状況に陥っている。
プリント事業の広告売上の落ち込み分を,オンライン広告の増収分で補えていないのだ。オンライン広告は高成長しているものの,絶対額がまだまだ小さい。一つ前のエントリーで紹介したNYT(ニューヨークタイムズ)の第2四半期決算では,オンライン売上高が前年同期比23.4%増も伸びたにもかかわらず,全体の売上高は同3.7%減と落ち込んでいる。NYTでも,オンライン売上高がやっと全売上の10%を突破した段階で,オンライン事業が牽引車にはなりきれていない。米新聞社の平均では,オンライン売上比率は5%程度と更に低い。
今のオンライン広告の高成長が続けば,数年後にもオンライン事業が真の牽引車となり,新聞社が復活するとの青写真を描いているのだが・・・。問題は,オンライン広告がこれからも,20%〜30%くらいの高成長を続けていけるかどうかだ。
だが,かなり厳しいのかもしれない。Publishing2.0でも述べられているように,これまでのような広告スペースを売るやり方ではオンライン広告の成長が鈍るのかもしれない。
新聞,雑誌それにTVのような伝統的なメディアは,広告スペースを高く売りつけることができた。オフライン広告の広告スペースは有限で,希少性があったからだ。ところが,それに代わるオンライン広告では広告スペースを容易に作り出せ,どうしてもデフレ傾向となる。オンライン広告料金がオフライン広告に比べ安価になるのは仕方がないのかもしれない。
例えば,米新聞の稼ぎ頭であったクラシファイド(案内)広告も紙離れが進み,オンラインが主戦場になってきた。ところが,Craigslistsのようなクラシファイド専用サイトでは,掲載スペースをいくらでも用意できる。このため掲載料もタダ同然となる。新聞紙の広告スペースを売る感覚で,新聞社サイトがクラシファイド広告事業を展開していても,Craigslistsなどとの戦いで苦戦したのも仕方がないのかも。
さらに,検索連動や行動ターゲティングのように,成長性の高いインターネット広告も,固定の広告スペースを売るというタイプではない。各ユーザー一人一人に向けて閲覧状況に合わせて最適と思われる広告を投げるものである。
でも,伝統的なメディア会社が展開するサイトに対して,“Stop Selling Space”と警鐘を鳴らされても・・・・。これまでのオフライン広告のような売上規模を,オンライン広告で達成するのが難しいことも理解できるのだが・・・。
◇参考
・米有力新聞社NYTとDJ,第2四半期決算も冴えない(メディア・パブ)
・旧来型メディア企業,オンライン事業が高成長でも安心できないかも(メディア・パブ)
・米新聞社広告売上,オンラインが22.3%アップでも全体で4.8%ダウン(メディア・パブ)
・Can the Washington Post survive? (Fortune)
・Online Publishers Need To Stop Selling Space(Publishing 2.0)
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