December 16, 2007(NYT)
今月の中旬に,BusinessWeekとNew York Timesが“クラウドコンピューティング”を派手に取り上げていた。驚いたのは,BusinessWeek誌が41回,New York Times紙が16回も記事中で"cloud computing" を連呼していたことだ。
米国の有力紙と有力誌が並んで,“雲”を掴むようなバズワードを連呼しながら熱狂的に伝えている。この様子を,ちょっと皮肉りながら紹介していたのがPortfolio誌のサイトである。Portfolioは有力出版社Condé Nastが満を持して今年創刊したビジネス(経営)誌である。
BW誌もNYT紙も"cloud computing" をグーグルの次期戦略として興奮気味に紹介しているのだが,PortfolioはグーグルのPR指揮者によって仕組まれたPRキャンペーンに乗ったものだと皮肉っているのである。
Cloud Computingは,急に登場した言葉ではない。以前から,Intenet Cloudという用語は使われていたし,昨年当たりからSchmidt(Google CEO)も公の場でCloud Computingを売り込んでいた。
Cloud Computingとはユーザーから見れば,Webベースのアプリケーションとデータ格納を意味する。つまりアプリケーションもユーザーデータもCloud(インターネット側)に任せるサービスである。これからは,インターネットとの常時接続,つまりいつでもどこでもCloudに繋がった状態で生活する。だから,アプリケーションソフトウェアもデータも雲(Cloud)の中に置けばよいというわけだ。ユーザーはパソコンやケータイから,雲の中の無数のコンピュータやデータを利用できるようになる。
でも,なぜこれまでのように,"web-based software" や"web services"ではなくて,"cloud computing"を使わせたいのか。一つは前者が技術用語的で一般の人にとって親しみを持てないからであった。最近の調査結果でも明らかである。米国人の75%は,Google Docsのようなweb-based software を聞いたことがないということである。もっと寂しいことに,デスクトップのオフィスアプリケーション(MSのOffice)を止めて,Google Docsのようなオンラインアプリに乗り移った人は,わずか0.5%である。やはりフワフワした夢のような"cloud computing" というバズワードに乗せて売り込まないとダメと,Google PR担当者が考えたのかもしれない。
Schmidtが「Cloud Computingと広告は連携する」と述べているように,Googleにとって戦略的なサービスであるに違いない。でも,Googleの専売特許ではない。IBM(Blue Cloud),Amazon(Elastic Comute Cloud),それにMicrosoft(Windows Live)なども取り組んでいる。Web2.0も食傷気味で新鮮みがなくなっていることだし,Web2.0に取って代わるコンセプトとして,来年はCloud Computingが氾濫しそう。
ところで,この記事(エントリー)でもCloud Computingを10回も連呼してしまった。PRするように頼まれもしていないのに・・・。
◇参考
・Get Your Head Out of the Clouds(Portfolio.com)
・Google Gets Ready to Rumble With Microsoft (NYTimes.com)
・Google and the Wisdom of Clouds(BusinessWeek.com)
・Google CEO’s new paradigm: ‘cloud computing and advertising go hand-in-hand’(ZDNet)