第1夜 ドラマ 感染爆発〜パンデミック・フルー
第2夜 調査報告 新型インフルエンザの恐怖
(第1夜は1月16日午前0時10分〜1時40分に,第2夜は1月17日午前0時10分〜1時05分にNHK総合で再放送)
視聴するとやっぱり不安が増幅したので,情報装備だけでもしておこうと,ネットで新型インフルエンザの最新状況を調べてみた。
専門家は口を揃えて,新型インフルエンザの大流行は時間の問題だと前々から警告していた。どうも被害に遭う確率は,東京直下地震よりも新型インフルエンザのほうが高そう。
厚生労働省は日本の死者数を64万人と試算しているが,日本で200万人、世界中で1億人を超える場合もありうると警鐘を鳴らす。また政府は人口の約1/4人が感染し、医療機関で受診する患者数が最大で2500万人と仮定して対応しているとか。現状のH5N1鳥インフルエンザウイルス感染者の致死率が60%以上なので,国内の死者は200万人で済まないのかもしれない。
現在は,鳥から人に感染する場合が大半である。人から人への感染もインドネシア,パキスタン,カンボジア,ベトナム,中国などで起こっているが,局所的で非常に限定されている。今は,H5N1鳥インフルエンザの段階で,WTOの定義によると,以下の表のフェーズ3の段階である。
(WHOの原図はこちら)
鳥インフルエンザ(H5N1亜型)の発病者数(死亡者)の発生国分布は次のようになっている。
(厚生労働省のページより)*クリックで拡大表示可能
・2007年以降の分布図は,感染症情報センターが作成している)
WHOの公式発表によると,これまでの鳥インフルエンザ(H5N1亜型)の発病者数は349人で死亡者数は216人である(2008年1月11日作成の一覧表より)。致死率は62%となる。
ここで気になるのは,発病者数の推移である。WHOの一覧表とか推移グラフ(「H5N1インフルエンザ(鳥及び人)の潮流」より)を見ている限りでは,現在際だって急増しているわけではない。冬期間に増加現象が見られるのはいつものことである。今シーズンはやや多いような気もするが・・・。
やはり恐ろしいのは,H5N1インフルエンザが突然変異して,ヒト-ヒト感染を爆発的に引き起こす新型インフルエンザが現れるときである。中国などで発生したようなH5N1のヒト-ヒト感染が増え始めたのは,新型インフルエンザの予兆かもしれない。専門家からも,「新型インフルエンザの導火線に今や火がついた状況で,いつ爆発しても不思議ではない」との声が高まっており,覚悟しておく必要がありそうだ。
世界的に流行する,いわゆるパンデミックインフルエンザ(Pandemic Flu)を避けられないとすると,その襲来に備えておかなければならない。感染力の強い新型インフルエンザだと,感染者がバスの中で咳をするだけで,乗車客全員に感染する可能性があるという。流行りだしたら自宅に引きこもるほかないのかも。でもNHKのドラマでも語られていたが,いったんパンデミックインフルエンザがまん延し始めると,ピークを過ぎるのに少なくとも2ヶ月間はかかるようだ。2ヶ月間以上も籠城しなければならないとは,こりゃ無理だ。「新型インフルエンザ 未知の脅威、食料備蓄は必須」)で勧めているように,食料や日用品などの備蓄をしていても,時々買い出しに外に出なければならないだろう。そのためには,花粉症患者のように,ゴーグルとマスクを付けなければ危ない。そう,ゴーグルとマスクを必ず買っておかないと。
でも現実には,人がいる場所に出かける限り,感染の危険をゼロに抑えることは不可能だ。そこでワクチンに頼りたい。でも,これも大きな期待を抱けないのが現状である。現在備えているワクチンは,鳥インフルエンザウイルス(H5N1)に対するワクチンである。これをプレパンデミックワクチンとして製造し,政府は1000万人分を備蓄している。だが,新型インフルエンザウイルスに対する感染防止の効果は,必ずしも高くないかもしれない。より効果の高いパンデミックワクチンは,新型インフルエンザウイルスが発生しないと製造できないのだ。
NHKのドラマでは,新型インフルエンザが発生した村に,すぐに欧米のワクチンメーカーのスタッフが飛んで来ていた。新型ウイルスを持ち帰り,パンデミックワクチンを競って製造したいからだ。ドラマの中では,そのワクチンを利用できるようになるには,半年もかかるとしていた(注:厚生労働省のある資料では,「パンデミックワクチンの資材の確保から製造の終了まで概ね1 年程度の期間を要する」とある)。
過去の新型インフルエンザでは,1918年の「スペインインフルエンザ」,1957年の「アジアインフルエンザ」、1968年の「香港インフルエンザ」が世界的に流行した。スペインインフルエンザでは,世界で約4000万人(日本で39万人)が死亡した。だがその後ワクチンの開発のお陰でか,アジアインフルエンザでの犠牲者は約200万人,香港インフルエンザでは約100万人に収まっている。だが,現在はグローバル時代で,都市部に人口が密集している。新型インフルエンザが世界中を伝播する速度は,過去の比ではない。パンデミックワクチンを半年も待てるかどうか。
そこで,とりあえずプレパンデミックワクチンに頼らざる得ない。これも1000万人分しか備蓄していないので,接種を受けることができる人は限られる。新型インフルエンザワクチン接種に関するガイドラインに示されているように,医療事業者やライフライン従業者に限られる(注:厚生労働省のある資料では,「備蓄してあるプレパンデミックワクチンの原液を接種可能な状態にするまで1〜2ヶ月を要する」とある)。
もっと心配なのは,病院が発病者を受け入れることができるかどうかだ。ドラマでも描かれたように,大流行すると病院は,医者が足りない,ベッドが足りない,人工呼吸器は足りないと,大パニックに陥るだろう。さらに,もっと深刻な問題が浮上している。新型インフルエンザ患者の診察を嫌がっている医者が多いことである。番組でも紹介していたが,ある区の医者へのアンケート結果によると,半分以上の医者が避けたいとしている。また京都新聞(2007/01/13の朝刊)によると,新型インフルエンザの発生に備え京都府と京都市が府内120の医療機関に患者の受け入れを要請したところ、三分の一に当たる40の病院が、拒否か態度を保留したと報じていた。米国では,非常事態になれば歯科医も動員するとのことだが。
ところで,新型インフルエンザや東京直下地震などの情報が迅速に正しく公開されているのか疑問になることがある。危機を煽り立ててビジネスチャンスを企む企業や,注目を浴びたい専門家などからの情報が目立つ場合が多い。一方で,市民がパニックを犯さないように,また対応の遅れを知られないように,情報を隠蔽する傾向もある。新型インフルエンザについては,海外で多くの情報が公開されているので,海外情報のチェックも必要である。
例えば,ニュースアグリゲーターで検索すると,もの凄い量の関連記事が出てくるはずだ。以下は,英国のNEWS NOWで“Bird Flu”で検索した結果である。参考までに,ニュース記事では学術用語の“Aviann infuluennza”よりも“Bird Flu”のほうがよく使われる。新型インフルエンザを検索する場合は,“Pandemic”だけでもかなり良い結果が得られる。
検索で見つけた興味深い記事を2本紹介する。
・Prepare for big flu pandemic economic hit, UN says(Reuters.com)
パンデミックインフルエンザが発生すると世界経済は大打撃を被る。国連によると,世界経済は2兆ドル(約220兆円)以上の損害を受ける。これは世界のGDPの5%に相当する。
・Group: Bird Flu Pandemic Risk Overblown(AP)
Bernard Vallat(head of the World Organization for Animal Health (OIE))が,鳥インフルエンザがパンデミックインフルエンザに変異する可能性が減ったと発言。パンデミックインフルエンザの危機を煽っていると批判を。
●参考サイト
・厚生労働省 新型インフルエンザ対策関連情報
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/index.html
・厚生労働省 新型インフルエンザに関するQ&A
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/02.html#2-1
・国立感染症研究所 感染症情報センター<インフルエンザ
http://idsc.nih.go.jp/disease/influenza/index.html
・WHO Avian influenza
http://www.who.int/csr/disease/avian_influenza/en/
・ニュースサイト Bird flu news / bird flu in poultry - Latest news and information on bird flu
http://www.thepoultrysite.com/bird-flu/bird-flu-news.php
・新型インフルエンザ、鳥インフルエンザ|パンデミック・フルー 新型インフルエンザ Xデー ガイドブック
http://blog.moura.jp/influenza/
●最近のニュース記事から
・世界経済への影響
Prepare for big flu pandemic economic hit, UN says(Reuters.com)
・Bird flu may be easily transmissible between humans (Prauda)
・Group: Bird Flu Pandemic Risk Overblown(AP)
・China ensures public health safety during Olympic Games (Xinhua News)
・France lifts bird-flu risk alert to 'moderate' from 'weak'(Forbes)
・Human to Human bird flu transmission in Pakistan confirmed by WHO-(World Health Org)(AFP)
・China says son likely infected father with bird flu(Reuters)




欧米諸国、特に米国と比べると日本政府の対応はお寒い限りです。これも「自己責任」の一言で片づけられるのでしょうか。
H5N1だけでなく、子宮頚癌(若い女性の癌死のトップ) の原因となるHPV(ヒトパピローマウィルス)に対する対策、先進国の中では唯一増加している本邦におけるHIVの現状など、情報が不足していますね。積極的に調べないと、自分たちに迫っているの危機の本質が分らないのは、おかしいですね。
▼新型インフルエンザ防御マニュアルQ&A:http://blog.moura.jp/influenza/
今年もよろしくお願いします。