News CorpによるDow Jones買収が決まりかけた昨年秋頃から,無料で閲覧できる記事を少しずつ増やしてはいた。マードックの意向をくみ取っていたのだろう。そしてWSJがNews Corpの傘下に収まってからは,社説やOp-ed,ビデオなどと,WSJ.com内で無料閲覧できる範囲を一段と広げていった。
この流れからしてWSJ.comの有料サービス停止は避けがたいと見られていた。ところが先週,マードックの口から告げられたのは有料サービスの継続である。
そこで,先ほどWSJ.comのトップページをチェックしてみた。有料の砦を固めているのではなくて,逆に無料で閲覧できる割合が以前に比べ増えていた。現実には,無料サービスを拡充しているよに見受けられた。下のスナップショットで,赤で囲んだ記事は全文をタダで閲読できたのだ。
NYTimes.comも伝えているように,マードックはWSJに非ビジネス分野,特に政治やエンターテイメント分野をカバーさせたがっている。スポーツの場合,これまでのようなスポーツビジネスだけではなくて,スポーツそのものの記事もWSJで取り上げたいとしているようだ。
こうした非ビジネス分野の記事は,WSJ.comでは無料で閲覧できるようになるはず。一般受けする記事を増やして読者リーチを広げ,広告売上を伸ばしたいのだ。
Nielsen Onlineの2007年12月測定によると,WSJ.comの月間ユニークユーザー数は541万人と,NYTimes.comの1718万人に比べ大幅に下回る。マードックは,有料の壁を取っ払えばWSJ.comも2000万人にリーチできると主張していた。今回は,現場の声もたまには聞き入れる形で有料の壁を残すことになったのだが,WSJ.comの収益をこれまで以上に広告に依存していく路線は変わらないだろう。昨日,コンテンツ連動広告や検索広告でMicrosoftと提携したのも,そのためである。
継続する有料購読サービスについては,値上げを示唆している。噂では,現在の年間購読料を99ドルから119ドルにアップするという。実は次のように,これまでもオンライン有料サービスは値上げを続けていた。
2000: $59
2001: $59
2003: $79
2004: $79
2005: $79
2006: $99
2007: $99(WSJ紙購読者は$49)
2008: $119 (?,推測)
有料サービスは,量的には絞り込んで質で勝負すると言ったところか。一般のニュースは無料でドンドン提供する代わりに,WSJならではの“オンリーワン”記事を有料で提供していくことになるのだろう。現在,オンラインの有料読者は約100万人だが,良質のオンリーワン記事を発信していければ,値上げしても読者は減らないだろう。
参考までに,WSJ.comのメディアキットを以下に。
(ソース:www.dowjonesonline.com/audience)
ここでユニークユーザー数が2000万人となっているのは,The Wall Street Journal Online以外に, Barrons.com, MarketWatch.com, AllThingsD.com なども含んでいるためであろう。
◇参考
・Wall St. Journal Plans a Move and a Sports Page (NYTimes.com)
・Murdoch: WSJ.com Won’t Go Free(WSJ.com)
・WSJ.com to Retain Subscription Component(WSJ.com)
・WSJ.comが有料サービスを継続,マードックがダボス会議で明らかに(メディア・パブ)
・マードックがWSJの今後を語る,ダウジューンズ買収完了後のTVインタビューで(メディア・パブ)
・有料サイトのWSJ.com,そろりと無料化に動き出したのか(メディア・パブ)
・US: WSJ.com gives free entry to op-eds, videos and more(Editors Weblog)
・米新聞社サイトのトップ10,NYTが1位でUSATodayが2位(メディア・パブ)
・Wall Street Journal Digital Network Teams With Microsoft for Contextual and Paid Search Advertising(MS,プレスリリース)
タグ:WSJ