数年前まで米国でも,ジャーナリストとブロガーとの棲み分けは明確であった。ジャーナリストは主にメインストリームメディアの記者をさし,個人的立場で好きなことを書くブロガーとは一線を画していた。
ところがこの3〜4年の間に状況が大きく変わってきた。分野によっては,マスメディアの存在を脅かしかねないブログが次々と生まれてきているからだ。それに伴い,ジャーナリストとブロガーの境界線があいまいになってきている。たとえばIT技術分野に限ってみれば,ブログ(つまりブロガー)が発するコンテンツがメインストリームメディア(つまりジャーナリスト)のそれよりも優れていることは珍しくなくなっている。
以前のエントリーでも書き留めておいたのだが,米国では商業のブログ出版が相次いで生まれている。Techcrunch,Engadget,Read/WriteWeb,GigaOM,Silicon Alley Insider,Techdirtなどは,個人ブログの域を越えた商用ブログである。複数のブロガーが投稿するグループブログが中心である。専任の職業ブロガーもいるし,コンサルタントなどを兼務しながらの兼業ブロガーもいる。それに,マスメディア(ジャーナリスト)から転身したブロガーも少なくない。彼らは個人的に好き勝手なことを書くブロガーではない。ジャーナリスティックな立場で書くブロガーが増えており,彼らを“jounablogger”と呼ぶ造語も生まれている。そこで,次のような絵を描いてみた。
ブログ出版に属するようなjounabloggerともなると、マスメディアを出し抜くスクープ記事も頻繁に生み出している。IT技術分野だと,ブロガーのほうがマスメディアの記者よりも企業内部に精通している場合が少なくない。またGoogleやYahoo,Microsoftなどの大手企業でも,マスメディアよりもソーシャルメディアを重視することも多い。新しい実験サービスの発表はよく,プレスリリースではなくて公式ブログで行っている。開発者などのブログがソーシャルメディアリリースとして使われているのである。Microsoftのビルゲーツも3年前に,老舗のパソコン雑誌を差し置いて,ガジェットブログのEngadgetやGizmodoからの単独インタビューに応えていた。
オンラインサービスやネット技術などは,インターネット上で直ちに試したりチェックできるものである。日常的にネットに接しているブロガーが,生々しい記事を書けるのも当然である。ネット系技術/サービス分野は特殊かもしれないが,マスメディアの記者でなくても一次情報に接する機会が増えてきているのは確かだ。ということは,マスメディアの記者も今までの特権では優位性を保てなくなるのかもしれない。
(つづく)
◇参考
・技術分野のニュース市場,「ベストエフォート」型ミドルメディアが台頭(メディア・パブ)
・・ビルゲーツ,ブロガー5人のインタビューを受ける(メディア・パブ)
・Google/YouTube,ダボス会議でも存在感をアピール(メディア・パブ)
タグ:ブログ