昨年は,両業界の明暗がくっきりと現れた。2007年末の就業状況を1年前(2006年末)と比べてみると,米メディア業界では就業者数が1万4100人も減っている。逆にマーケティング業界で働く人はこの1年間で2万1900人も増えた。
この1年間の就業者数の増減を,両業界の業種別に示した表を以下に示す(Ad Age DataCenter調査)。
(ソース:Ad Age DataCenter, Bureau of Labor Statistics)
メディア業界では,やっぱり新聞の凋落が悲惨だ。年間で1万6900人も新聞業界で働く人が減っている。今年に入っても,レイオフの嵐が吹き荒れている。この先,どうなるのだろうか。わずかに明るさが見えるのはインターネットメディア。加速化するオンラインシフトのお陰で,昨年の就業者数は9200人増えた。マーケティング業界ではコンサルティングに従事する人が急増している。
メディア業界の労働需要で気になるのは,2000年のネットバブル期をピークに下降線を辿っていることである。新聞業界だけではなくて,雑誌業界もTV放送業界も長期低落傾向を示している。昨年就業者数を伸ばしたインターネットメディア業界も,バブル崩壊で激減したこともあって,2000年のピーク時に遠く及ばない。
*メディア業界の就業者数:2007年現在とピーク時の比較
(ソース:Ad Age DataCenter, Bureau of Labor Statistics)
なぜメディア業界の労働需要が減っていくのだろうか。以前なら,同じようなコンテンツを提供していても多くのメディア企業(新聞社,雑誌社,TV局)が共存し繁栄できた。だが,グローバルなインターネットの出現で,同じようなコンテンツを作るメディア企業が数多く存在する必要がなくなっているのかもしれない。それに,ユーザー生成コンテンツ(UGC:User Generated Content)の台頭が,プロの編集者の仕事を減らしていくとも言われ始めている。欧州の新聞経営者3000人を対象に実施したアンケート調査によると,3年以内に新聞記事の約40%がUGC(User Generated Content)で占められるそうな。どうもこれは,新聞経営者が人員削減をしたいというシグナルのようだ。
◇参考
・Media Work Force Sinks to 15-Year Low(AdAge.com)
・また始まった米新聞社の人員削減の嵐,NYTは100人の記者が犠牲に(メディア・パブ)
・新聞記事の4割がユーザー作成コンテンツに,だから記者の増員は不要だと(メディア・パブ)
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