その検証のために,ニュースアグリゲーターTechmemeに登場するニュースサイト/ブログの掲載回数ランキングを見ることにした。Techmemeはネット業界のキーパーソンから高い評価を得ているサイトで,掲載回数の多いマスメディアサイトやブログのニュース系記事はネット業界の人たちに実際よく読まれている。そのランキングで選ばれる常連のニュースサイトやブログを,以下のように分類してみた。マスメディアには,新聞社系,雑誌社系,通信社系のサイトが中心で,最近ではPR系サイトのニュースリリースも掲載されだしている。
3〜4年前までは,ネット業界のニュース記事もマスメディアがオリジナルをほとんど発信していた。ブログがニュースを扱っていても,ソースとしてマスメディアのニュース記事を引用していた。それが最近では,オリジナルなニュース記事もブログがマスメディアを凌ぐ勢いである。量だけではなくて,質においてもだ。
その勢いを増すブログは,Techmemeで上位にランクされているニュース系ブログである。その多くは,個人ブログではなくてコマーシャルブログである。代表的なコマーシャルブログの創刊年を以下に示す。
TechCrunch:2005年6月
Engadget:2004年3月
ReadWriteWeb :2003年4月
Silicon Alley Insider:2007年7月
GigaOM:2006年
VentureBeat:2006年9月
PaidContent.org:2002年
Gizmode:2002年
マニアックなガジェット分野ブログであるGizmodeとEngadgetがいち早く浮上したが,コマーシャルブログが本格的に勢いづいたのは2006年頃からである。2006年末にTechCrunchがGoogleのYouTube買収をスクープし,それをNYTimesやWSJが引用し後追いしたのが一つの転機だったかもしれない。それ以降,メインストリームのマスメディアがブログ記事を引用することは珍しくなくなってきている。
コマーシャル・ブログ・パブリシャーの代表格になってきたTechCrunchは,満3年にも達していないブログだが,Techmemeのランキングでトップの座に就いている。同サイトの月間ユニークビジター数は280万。広告売上は昨年4月に月間20万ドルと発言して以来明らかにしていないが,その後かなり増えているはず。さらに,最近では1〜2ヶ月置きに1000〜2000人規模のパーティーを開いており,この収入も多そう。海外数カ国の外国語版も出ている。M&A弁護士の創立者Michael Arringtonと元Business2.0の Erick Schonfeldが編集しており,フルタイムのスタッフ8〜9人を抱えた小さなパブリシャーである。
こうした新興のブログパブリシャーの平均像は,カバー分野をターゲット化したニュース系グループブログ(ブロガーが複数人)を発行する小規模のオンラインパブリシャーといえよう。ブロガーも新しいタイプのジャーナリストなのかもしれない。ここでは“jounablogger”との呼び名を使わしてもらっているが,伝統マスメディアのジャーナリストとはかなり違う。その違いは次回で触れる。
これらブログパブリシャーが発行しているコマーシャルブログの中には,Gizmode,Engadget,TechCrunchのように海外進出しているブログも少なくない。評価の高いブログが増えてきたのに合わせて,マスメディアサイトだけではなくてブログも収集対象にしたニュースアグリゲーターが幾つか出てきたわけだ。TechmemeやBlogRunnner,TrailRank,Sphereなどである。最初,マスメディアサイトしか対象にしていなかったTopix.comも有力ブログを対象に加えた。最近では,Google Newsも一部コマーシャルブログを掲載するようになってきた。
(つづく)
◇参考
・ ジャーナリスト風ブロガー“jounablogger”(その1):米国の技術分野メディアで台頭(メディア・パブ)
・ジャーナリスト風ブロガー“jounablogger”(その2):評価高まる(メディア・パブ)
・An Interview With Michael Arrington (Portfolio.com)
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