欧米のネット関連企業が一斉に,モバイル市場に本腰を入れ始めた。GoogleやYahoo,Microsoftなどの大手もそうだ。パソコンネット市場がやや飽和気味になってきただけに,未開拓地が多く残るモバイルネット市場に入れ込むのは当然かもしれない。
現在のモバイル市場では,日本と欧米では大きな時差が存在する。日本がかなり先を走っている。欧米は第3世代携帯電話方式の導入で遅れていたこともあって,後追いする形となっている。でも,日本で先行したモバイルアプリケーションが,はたして欧米でも同じように受け入れられるのだろうか。
電車内や待ち合わせ場所などで皆が一斉にケータイ画面に見入る光景や,文芸部門の年間ベストセラーでケータイ小説が上位を独占したことなど,日本のケータイ事情は欧米のニュースメディアでも最近よく紹介されている。だがどうも,ケータイべったりの生活をおくっている日本人を変わり者と見ているようでもある。
日本がモバイルインターネットで先行しているのは確かだ。そのためGoogleやYahooが日本市場で先駆けてモバイル向け検索エンジンサービスや検索連動広告事業を展開している。だが,日本人が夢中になっているモバイルサービスが世界で通用するとは限らない。日本市場で成功しているサービスが「グローバルな先進サービス」であるのだろうか。
最近,日本のSNSと欧米のSNSの違いを調べていて,驚くべき事実に出くわした。日本のSNSはもともと,米国のSNSをお手本に展開してきた。パソコンSNSの規模(会員数)も米国の巨大SNSと比べるとまだまだ小さい。
だが,モバイルSNSとなると立場が完全に逆転する。日本がかなり先行している。日本人のテーストを組み込んだモバイルSNSが大きく開花している。先のエントリーでも触れたように,日本のSNSトラフィックの8割近くがモバイルアクセスになろうとしているのだ。
欧米を拠点とするMySpaceやFacebookなどの大手SNSサイトも,モバイルSNSに力を入れている。だが,彼らのモバイルサービスの捉え方が日本とはちょっと違うようだ。あくまで現在のSNSを拡大するためにモバイルにも注力していくという姿勢である。最近MySpaceのKatz(managing director of international)が次のように語っている(NMA.co.ukより)。
MySpace MD Travis Katz has predicted that over half of the site's traffic will be from mobile within five years.
MySpaceの共同創立者であるDeWolfeも昨年,同じように予測していたTelegraph.co.ukより)
"I fully expect in four or five years from now at least half of the log-ins to MySpace will come from mobile devices".
「5年以内にもSNSトラフィックの5割がモバイルからとなる」。彼らからすれば意欲あるメッセージを伝えたつもりなのだろうが,これには驚いた。日本では現時点で既に,SNSトラフィックの8割近くがモバイルからとなっているのだから。
欧米のインターネットモバイルが遅れすぎているのか,それともどっぷりケータイ生活を過ごしている日本人が変わりすぎているのか。日本で成功した先行モバイルサービスを“グローバルな先進サービス”と信じて,海外進出する日本企業も少なくない。かつてドコモが2兆円近くを投じ欧米を中心とした携帯電話会社数社と資本提携を結んで,iモードサービスの世界展開を夢見ていたことを思い出す。
最後に,M:Metricsの興味深い調査結果を載せておく。大規模な調査である。欧米の主要国と中国のモバイルユーザーを対象にしたアンケート調査である。代表的なモバイルサービスを,モバイルユーザーの何%が利用しているかを調べている。モバイルSNSを米国で4%が,EUで3%がアクセスしていた。日本では20%を超えているはず。やっぱり,小さなケータイキーボードに向かってすごい速度で連打するニッポン人は変なのかな?
◇参考
・MySpace plans for half of traffic from mobile users(NMA.co.uk)
・MySpace plans tactics to take over the world(Telegraph.co.uk)
・パソコンの“SNS疲れ”からケータイの“SNS元気”へ(メディア・パブ)
・98.4 million people in the United States and Western Europe are playing mobile games; but new downloads wane(M:Metrics プレスリリース)
・Thumbs Race as Japan’s Best Sellers Go Cellular (NYTimes.com)
全然、わたし門外漢で、あてずっぽうなのですが、日本と欧米諸国の子供たち(ハイティーン以上)のケータイの所有率比較って、どうなんだろう?とふと思ってしまいました。仮説としては見当違いですかね。。。
移動手段がほとんど車という国ですからね.仕事を持つような人は,携帯をいじっている時間が無いというのが実際のところでしょう.オフィスに行けばPCがありますし.家にもPCがありますし.
多くのティーンはフルキーボード付きの携帯を持っていて,日本の若者のようにコミュニケーションを取っているようです.ですので,5年後,つまり彼らの一部が社会に出るころには状況も変わるのかもしれません.
いますぐ出せる数字がありませんが、欧米の携帯端末によるブラウザ系のアプリケーション利用は、速度がまだまだ遅いということと、料金体系がまだ日本のように安くなっていないこととがあり、ごく一部の人の利用に留まっているようです。(スマートフォンがほとんどで、携帯電話端末経由のブラウザ利用はごくまれな模様です)
欧州では端末自体がまだほとんど2Gです。米国ではHSDPAを始めた会社がありますが、これは例外中の例外で、カバレッジは1ケタ台のはず。
とは言え、日本の速くて安い携帯データ通信をどのキャリアもベンチマークにしているので、早晩、日本と同じか、それよりもすごい状況が訪れることは確かです。端末メーカーのスケールが違うので、GoogleのAndroidなどとあいまって、日本とは異なった進化が見られると思います。
日本のケータイ事情が突出して進んでいるのはそれとして、世界から見るとその事実こそが異常であって、「ガラパゴス」と揶揄されているのはご存知かと思います。
キモはスピードや機能の問題ではないはずです。そのうえで、欧米が日本に追随する。。。。と思われる、ということなのでしょうか?