クラウドコンピューティング環境が,コンシューマーユーザーだけではなくて企業ユーザーにも急速に浸透しようとしている。"consumer cloud"はコンシューマーに無料のWebサービスを提供するとともに,巨大なアドネットワークのインフラにもなっていくのだろう。"enterprise cloud" はどこからでも共同作業が可能なオフィスソフトやSaaS (software as a service)を企業ユーザーに有料で提供していこう。
企業ユーザーは,自前のサーバーが不要になり,ソフトをクライアントマシンにほとんどインストールしなくてもよい。つまり,ハードやソフトのメンテからも解放される。これはクラウドコンピューティングの売り文句であるが・・・。調査会社のIDCも, "hosted applications," 市場が2012年まで年率16%の高成長を続けると占っている。
ともかく,クラウドコンピューティングの流れが生まれてきたのは間違いない。MSがYahoo買収に乗り出した背景にも,クラウドコンピューティング市場での戦いがあったようだ。MSは1年半前から巨大なデータセンターの構築を急いでおり,最近の四半期だけでも2万台ものサーバーを増設したという(CNNMoneyより)。(MS+Yahoo)連合の誕生の動きに,Googleが危機感を抱いたのか。GoogleはIBMとクラウドコンピューティング推進で提携を進めていたのだ。でも結局,MSとYahooとの話は破談。片やGoogleはIBMと組むことにより,クラウドコンピューティングの体制は強固になってきた。早くも,(Google+IBM)連合がクラウドコンピューティング分野で寡占するのではとの声も出てきた。英Times Onlineでもそのように報じている。
興味深いのは,昔のIBMのビジネスモデルとクラウドコンピューティングとが似通っていることである。中央処理のメインフレームがクラウド(巨大な分散コンピューター)に置き換わったようにも見えるからだ。でも大きく違うのは,クラウドが開放的であること。
ユーザーは,Googleが提供するApp Engineにより,同社のクラウド(分散コンピューティングインフラ)で実行できるWebアプリケーションを開発できるようになった。分散データベースのBigTableや,並列処理ができるインタープリタ言語のSawzallなどが利用できる。
でもGoogleとIBMとが本気で組むと,クラウドコンピューティング市場を独占してしまうのではとの警戒も一部で出始めている。GoogleやIBMが提供するソフトやサービスが優位に展開し寡占するのではとの懸念である。完全な開放ではなくて,壁を設けるかもしれないとの心配も。あちら側がGoogle一色になっては面白くない。クラウドコンピューティングが競争市場となるために,MSにも対抗してももらわないと。それに先週のように,YouTubeがダウンすることもあるし。
◇参考
・Cloud computing(Times Online)
・GoogleとIBM,クラウドコンピューティングで提携強化(メディア・パブ)
・Ballmer: Microsoft's Web Strategy Doesn't Stop With Yahoo (InfomationWeek)
・Google's Cloud(Fobes)
・グーグルのデータセンター,アジアも含め世界各地に次々と配備(メディア・パブ)
・Microsoft May Wander Into The Clouds As Yahoo Fades Away(CNNMoney.com)
・ Cloud Computing Casts Shadow on Walled Gardens (Virtualization)