米国のみならず欧州の検索サービス市場でも,以下の表のようにGoogleが圧勝している。世界市場を制覇したかに見えるのに,どうして検索サービスのキャンペーンをわざわざ行うのだろうか。

(ソース:comScore Releases March 2008 European Search Rankings )
実は日本を含めたアジア主要国やロシアでは,Googleの検索サービスはナンバーワンでない。特に,中国のBaidu,韓国のNever(NHN),ロシアのYandexといった純国産サービスの前に,外来のGoogleは後塵を拝しているのだ。comScoreのデータで,Baiduが世界3位,Neverが同5位,Yandexが同9位と,世界市場でも存在感を増している。

(ソース:Baidu Ranked Third Largest Worldwide Search Property by comScore in December 2007)
この中で最近,注目を浴びているのがロシアのYandexである。ロシア市場では47%も占め,31%のGoogleを圧している。欧州市場でも頭角を現しており,Yahooを抜いて3位に浮上してきた。

(ソース:comScore Releases Russian Web Site Rankings for February)
さらにYandexはNasdaqでのIPOを準備している。 Silicon Alley InsiderのTHE SAI 25: THE WORLD'S MOST VALUABLE STARTUPSによると,30億ドルの価値があるとのことだ。
*未上場ネット企業の価値(ソース:Silicon Alley Insider)
Rank. Company: Valuation
1. Facebook: $9 billion
2. Wikipedia: $7 billion
3. Craigslist: $5 billion
4. Betfair : $5 billion
5. Mozilla Corp: $4 billion
6. Yandex : $3 billion
7. Webkinz : $2 billion
8. LinkedIn: $1.3 billion
9. Habbo : $1.25 billion
10. Oanda : $1.2 billion
勢いを増してきたYandexを,Googleとしては今のうちに叩いておきたいのだろう。Googleは“Moscow2.0”と称した屋外広告キャンペーンを打ち,ロシア検索市場のトップ奪回を狙うことになった。
Google自身は,事業としても屋外広告に力を入れ始めている。伝統的なメディア4媒体(TV,新聞、雑誌、ラジオ)広告の成長が鈍ってきているのに対し,以下のようにオンライン広告とともに屋外広告市場が成長株と見られているからだ。

(ソース:Outdoor Advertising: A New Look)
GoogleはAdWords/AdSenseのアドネットワークのノウハウを生かして,デジタル屋外広告のネットワークを構築したいのだろう。そのための特許も取得している。そのGoogleが広告主として,月に25万ドルほど費やしてモスクワ市内約5000ヶ所で屋外広告を打つというからおもしろい。特に興味深かったのは,以下の写真に示す電子ディスプレイ付きベンチだ。58ヶ所のディスプレイ付きベンチを利用する。これって、デジタルサイネージなんかな。

(ソース:Google вышел на улицы Москвы)
◇参考
・Russia's Yandex plans up to $2 bln NY IPO - source(Reuters)
・2008年最大のハイテクIPOはロシア発:検索エンジンのYandexが最大$2B調達へ(
TechCrunch Japanese)
・ Google、ロシアで野外広告に月25万ドル
・Google Launches Outdoor Advertising Campaign in Russia (Quintura blog)
・Google Patent Filing Hints at Digital Billboard Ad Network ( ClickZ)
・2007年の米広告市場,オンラインシフトがくっきりと,オフラインでは屋外広告が元気(メディア・パブ)