ソーシャルリリースは一般にブログのような体裁をとっている。コメントやトラックバックを受け付けたり,また音声や写真,動画のマルティメディア機能も大抵備えている。発表内容の理解を助けたり,また掘り下げて調べることができるように,ネット上の関連情報へのリンクを張ったりもしている。また音声はポッドキャスティングサイトに動画はユーチューブに配したりして,企業が伝えたいメッセージがより幅広くソーシャルメディア内を伝播するようにしている。もちろんパーマリンクやRSSフィードは欠かせない。
米国のPRNewswireやBusiness Wireなどのプレスリリース配信会社も,プレスリリースにこうしたソーシャルメディア対応機能を少しずつ付け加え始めている。その成果か,これまでブロガーなどに見向きもされなかったプレスリリースが,ソーシャルメディア系サイトでかなり頻繁に引用され始めているのである(こちらを参照)。
これまでのマスメディア全盛時代では,プレスリリースを用意したとしても一般の中小企業が発表した製品やサービスがマスメディアで取り上げられることは極めて稀であった。だが,ソーシャルメディア時代では中小企業でもうまくソーシャルリリースを発信すれば,ソーシャルメディアを介して企業が伝えたいメッセージが多くの消費者に届く可能性が出てきたのだ。つまり,ロングテール企業でもリリースでビジネス機会が得られるということか。でも,独自に「ソーシャル・メディア・ニュースルーム」を構えるのは,中小企業には荷が重そう。たとえ立ち上げても,ソーシャルリリースがほとんど気づかれずに埋もれたままになりそうだ。
そこで中小企業としては,リリースをソーシャルメディアに広く伝播させてくれる専門業者に任せたい。それに応えたソーシャルリリース配信会社が国内にも存在する。ニューズ・ツー・ユーである。News2u.netと称するサービスを実施している。

同サービスでは,企業の発表リリースを「プレスリリース」と言わずに「ニュースリリース」と呼んでいる。マスコミへのリリース配信代行も実施するが,ユーザーやソーシャルメディアにリリースが届くことに注力しているからだ。
企業のニュースリリースは,ニュースリリースポータル「News2u.net」に置かれるとともに,約25サイトの提携先情報ポータルにも掲載される。提携先サイトには,Yahoo!オンビジネス,cyboze.netなどのビジネス関連や,excite,goo,Infoseek楽天などの総合ポータル,それにCNET JapanなどのIT関連が含まれる。中小企業のリリースでも,こうした多くのサイトで露出されることにより,一般の人の目に触れる機会も増えることになろう。
ニッチな,あるいは特殊なキーワードに対応するニュースリリースだと,検索で上位に表示される場合が多くなるという。また各ニュースリリースはパーマリンクの形でニュースリリースポータルに置かれる。このため,各ニュースリリースは発表直後だけではなくて,かなり後になってもアクセスが多いのが特徴のようだ。平均すると,アクセス数の半分は発表してから1週間後という。
このサービスの利用料は年間契約の場合で月額10万5000円(税込み)となっており,配信本数に制限がない。これまで累積で1.050社が利用し,投稿されたニュースリリースが2万9973本も溜まっている。
利用企業は中小企業だけではない。大企業も増えているようだ。これまでのプレスリリースは全社的な公式発表となるため,どうしても障壁が高くなる。たとえば事業部単位でいろんなキャンペーンを実施したくても,臨機応変にリリースを出せないことが多かった。そこで,事業部単独でこのサービスを利用している大企業も少なくない。
ただし,こうしたソーシャルリリース配信サービスを利用して,ネット上でリリースの露出を増やしたとしても,必ずしも(ソーシャル)ニュースリリースへのアクセスが多くなるとは限らない。ニュースリリースの内容がつまらないと誰も振り向いてもらえない。企業が魅力あるニュースリリースを発信していくには,特徴ある製品やサービスを出すなりして,ユーザーが関心を抱くイベントを仕掛けていく必要があるのだ。おもしろそうなニュースリリースを出し続けていけば,ニュースリリースの閲覧数も増え,そしてその企業のウェブサイトへのアクセスも増ることになる。ニュースリリース閲覧者の約25%が,そのリリースからのリンクで企業サイトに訪れているという。
◇参考
・Electrolux launches a social media newsroom(weconverse)
・MEET MINNEAPOLIS LAUNCHES SOCIAL MEDIA NEWSROOM(PRNewswire)
・ソーシャルメディア向けニュースリリースが定着の兆し(メディア・パブ)
・Web2.0時代の企業ニュースリリース,ソーシャルメディア向けに発信を(メディア・パブ)
・「ソーシャル・メディア・ニュース・リリース」の採用,米企業が次々と(メディア・パブ)
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