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2018年10月17日

激しく責め立てられる「フェイスブック」に、なぜ世界のパブリッシャーは頼り続けるのか

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 米国や欧州のメディアによるフェイスブック(FB)批判は、凄まじい。米大統領選のトランプ当選や英国のEU離脱に端を発して、この1〜2年、FB叩きは過熱化する一方である。

 フェイクニュースやロシア疑惑、さらには個人情報の不正利用や流出と、FBを舞台にした不祥事が途絶えないから当然かもしれないが、どうしてここまで1企業の不手際に厳しく延々とメディアが責め立てるのか。それはFBが、今や世界中の人々の個人生活や社会にとって測り知れないほどの大きな影響を及ぼしているからだろう。世界の22億人以上の人々が毎月利用し、その66%にあたる15億人近くが毎日FB上で情報のやりとりをしている。先進国だけではなくて新興国も含めて、ほとんどの国で人々の生活に深く根付いたFBに対して、メディアが社会的責任を問い直すのももっともである。

 だが、メディアがしつこくFBを責め立てるのにはそれだけではなくて、別の理由もありそうである。この数年の間に、ソーシャル化とモバイル化で急変するオンラインパブリッシングの世界でFBが主導権を握り始め、パブリッシャーのメディアビジネスがFBの優位な形で展開せざる得なくなってきている背景がある。こうした流れに不満を募らせているブリッシャーとしては、FBとの交渉力を高めたいという思惑もあって、ここぞとばかりに自分たちのメディアを通してFBの問題点追及に力がこもるのも当然かもしれない。

 こうしたFBにまつわる騒動は、日本にとってほとんど縁のない動きである。ただ、海外のほとんどの国では現時点でも、パブリッシャーに対するFBの影響力は大きい。NYタイムズのような伝統的な二ュースパブリッシャーにとっても若中年層を開拓するためにFBが必須のプラットフォームになってしまっている。消費者(オーディエンス)も、FBを介してメディアコンテンツと接する機会を増やすようになっている。

 日本と海外においてFBの影響力に大きなギャップがあることは、いくつかの海外の調査データからも明らかである。英ロイター(Reuters Institute)が今年の1月から2月にかけて、36か国のニュースユーザー7万人(各国約2000人)を対象に実施した調査結果を見てみよう。各国の回答者のFB利用率(一般)と、FBをニュースメディアの接触の場として利用している回答者の割合(ニュース)を、国別に示したのが図1である。 

FBReutersMedia2018.png
図1 日常的にFBを利用しているユーザーの割合(一般)と、過去1週間にFBを介してニュースメディアの記事に接した人の割合(一般)を、国別に示している。 (ソース:Reuters Institute)


 ここでは、FBの利用が国内で禁止されている中国は調査対象外になっているため、日本だけが極端に、FB上でニュースメディアに接触する人の割合が9%と低くなっている。またメディア先進国以上に新興国において、メディア接触の場としてFBを利用している割合が高くなっているのも興味深い傾向である。こうした日本と海外との差異が、メディア社のFB対応にもはっきりと反映されている。

世界の主要パブリッシャーがFBの手のひらに

 各国の主要ニュースパブリッシャーのFBページが抱えるフォロワー数を図2に示す。海外の大手ニュースメディアが500万人〜4000万人規模の大多数オーディエンスからフォローされているのに対し、日本の主要ニュースメディア(日本語版)はわずか5万人〜35万人くらいしかフォローされていない。1桁どころか2桁くらいの差がついている。

NewsmediaFBFun20180923.png
図2 代表的な総合ニュースメディア(デジタル版)のFBページのフォロワー数(2018年9月23日のデータ)。ここでは、メディアブランドの旗艦FBページだけのフォロワー数を示している。


 海外の主要パブリッシャーがFBに飛びつくのは、グローバルに若年層を含んだ巨大な潜在ユーザーにリーチできるからである。ほとんどの国で、有力パブリッシャーがFBを頼っている。さらに拡散性が極めて高くて、一気に多くのオーディエンスを獲得できる強力な飛躍台にもなりうるため、新興メディアにとっても立ち上げ時にはFBの利用が欠かせなくなっている。

 国際展開するパブリッシャーも、FBは格好のプラットフォームになっている。英国の公共メディアのBBCは、図1に示したように英語版の旗艦FBページ(BBC News)が4755万人のフォロワーを擁しているほかに、各国の現地語版FBページにも多くのフォロワーを抱えている。例えばベンガル語版BBC Newsは1223万人ものフォロワー数を誇っている。逆にやっぱりというか日本語版のBBC News Japanでは約2000人からしかフォローされていない。

中国の国営メディア、国内使用禁止のFBをフル活用

 FBを活用した国際展開で目立つパブリッシャーとなると、中国国営テレビ放送局CCTV(China Central Television)の躍進が見逃せない。中国国内では利用を禁止されているFBを、一転して国際展開ではフル活用しているのだ。英語版CCTVのFBページ(CCTVcom)のフォロワー数は、この1年間だけで約600万人も増えて約4800万人に達し、英語版BBCを追い抜いた。さらにCCTV傘下のCGTN(China Global TV Network)も、TV(動画)コンテンツを中心にFB経由で世界中に配布し、オンラインで視聴できるようにしている。図3で示すように、FBだけではなくて、TwitterやYouTubeでも配信しているが、フォロワー数から明らかにFBへの依存が圧倒的に高い。FBページのフォロワー数は、英語版のCGTNが6800万人で、フランス語版、アラビア語版、スペイン語版のCGTNでそれぞれ1500万人前後も抱えている。中国にとって都合の良い国際世論作りを狙って、FBを利用してコンテンツを世界中に効率よくばらまいているのである。最近では一帯一路に関する記事が目立つ。

CGTNFollower20180925.png
図3 中国国際テレビCGTNのFBページのフォロワー数。旗艦の英語版に加えて、フランス語版、アラビア語版、スペイン語版のそれぞれが擁する主要SNSのフォロワー数を示している。

パブリッシャー、ユーザー、広告主にFB離れの兆しが

 このように世界中の主要パブリッシャーがFBをプラットフォームとして活用していたのだが、そうしたパブリッシャーからFBが社会の敵と言わんばかりに噛みつかれている今、今後の成り行きが気になるところだ。すでに、いくつかのパブリッシャーはFBページの投稿数を減らし、FB依存から脱皮する動きが出始めている。ブラジル最大の新聞、Folha de S.Pauloのように、FBページへの投稿を止めたパブリッシャーも。ニュースフィード・アルゴリズムの変更で、良いニュースが減りフェイクニュースが増えているFBには、投稿したくないと発表した。同新聞サイトのFBページのフォロワー数は今でも約600万人も抱えているが、今年の2月上旬以降、記事を全く投稿しないままだ。ただし、636万人のフォロワーを擁するTwitterには記事の投稿を続けている。

 同じような理由で、ブランド毀損を警戒して一部の大手広告主も、FBへの広告出稿の中止に動いている。FBの収益源の大半を占める広告売上は一本調子で伸びていたが、ここにきて市場調査会社が一斉にFBの広告売上予測を下方修正した。さらに、消費者(オーディエンス)であるFBユーザーも、#DeleteFacebookと掛け合ってFBアカウントの削除に動き始めている。米Pew研究所の調査(今年5月末〜6月上旬)でも、米人の26%がこの1年間でスマホのFBアプリを削除したとなっている。

 このように八方ふさがりで追い詰められるFBは打撃を被るのは避けられない。でもどうも表向きはそうでも、実際はちょっと違うようだ。影響力のある有力パブリッシャーも、厳しくFBをこき下ろすくらいなら、投稿数を大きく減らしてFB離れの行動に出ればいいのに、実際にはほとんどこれまで通りFBページの投稿に力を入れている。その結果として、例えばNYタイムズのFBページのフォロワー数は、この1年間だけで200万人以上も増えて現在1655万人を超えている。また図4に示すように、FBへの投稿記事もオーディエンスの反応が落ちるどころか高くなっている。メディア分析会社NewsWhipはFB掲載記事の月間エンゲージメント(いいね!数+コメント数+シェア数)総計を公表しているが、NYタイムズなどの有力ニュースパブリッシャーの月間エンゲージメントは、FBの悪評記事が氾濫している間でも、総じて上向いている。ジャーナリズムを標榜するNYタイムズやワシントンポストは、硬い記事が多いにもかかわらず、FBのオーディエンスから高いリアクションを得ているのだ。

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図4 主要ニュースブランドの月間エンゲージメント総数の推移 (データソース:NewsWhip)


 FBは今年1月にも、ニュースフィード・アルゴリズムに変更を加えていた。ニュースフィードには友達のコンテンツを優先して表示し、メディアコンテンツの表示回数を減らしてきている。信頼できるパブリッシャーからの優れた記事に絞ってニュースフィードに表示しているという。その煽りを食って、FBへの依存度が高い新興メディアの中には、アルゴリズム変更でエンゲージメントとトラフィックが激減し、閉鎖に追い詰められるパブリッシャーブランドも出てきた。一方で影響力のある伝統ニュースパブリッシャーは、アルゴリズムの変更でも冷遇されることがなかったのか、上で述べたように、月間エンゲージメントがかえって増える傾向が見られた。

 社会的に影響力のある有力パブリッシャーは結局、FBと断交しないで、これまで通りFBに頼り続けることになるのだろう。グローバルなソーシャルプラットフォームとして利用せざる得ないのが現実だ。またユーザーも、ネットサービスの好感度調査では決まって、FBサービスの人気をGAFA(Google、Apple、FB、Amazon)の中で最も低く見ているが、実際には利用者数も利用時間も減っていなくて上位を走り続けている。確かに先進国のZ世代(10代)を中心にFB離れが見られるものの、グローバルには成人のFB人口が新興国を中心に増え続けており、特に毎日利用するDAUはまだ伸び勢けている。

嫌でも離れられない

 要するに、パブリッシャーもユーザーも、嫌であってもFBから離れられないということか。この流れを読み取って市場調査会社も、下方修正していたFBの広告売上予測を、ここにきて上方に再修正し始めている。もともと同社の広告売上高は、デジタル広告市場の追い風に乗って、伸び率が少々鈍ったとしても増え続けている。ただ勢いを知るにはシェアがどうなっていくかが重要である。例えばeMarketerは昨年まで、FBのデジタル広告売上の米国市場シェアが、今後ともアップしていくと予測していた。ところが今年3月の予測では、2017年の19.9%から2018年の19.8%、さらに2020年には19.3%と、初めて下降線をたどると発表していた。それが最新のシェア予測では、2018年に20.6%、2020年に20.8%へと上昇すると上方修正している。広告主もFBから離れられないのか。

 グローバルなソーシャルプラットフォーマーとしてFB天下がまだ続く勢いを失っていない。でも、ここまで深刻な個人情報の流出が続くと、各国の公的機関は何らかの規制を課せざるえないだろう。その規制対策で膨大なコストが嵩み、またサービスの魅力が色あせることになるかもしれない。 

◇参考
・ The top Facebook publishers of September 2018(NewsWhip)
・ Amazon Is Now the No. 3 Digital Ad Platform in the US(eMarketer)



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posted by 田中善一郎 at 17:04 | Comment(0) | メディア
2018年06月30日

TVニュースだけではなくてオンラインニュースも「NHK」が支配していくのか

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 NHKブランドが日本国内において、ニュース分野でも圧倒的な存在感を示している。伝統メディア(TV、ラジオ、プリント)のみならずオンラインメディアにおいてもだ。

  前回のブログで紹介したロイターの「Digital News Report」2018年版でも 、日本人回答者2033人に伝統メディアやオンラインメディアでどのニュースブランドに接しているかを問うており、その結果でもNHKブランドが特出していた。ここで言うニュースブランドは、オリジナルのニュースコンテンツを作り出しているニュースパブリッシャーである。オンラインでのアグリゲーターやソーシャルメディアは対象としていない。

 日本のニュースユーザーがよく接するニュースブランドが、伝統メディアでは図1のように、オンラインメディアでは図2のようになった。メディア環境が激動した2年間の変化を追うために、2016年と2018年の調査結果を掲載した。

 伝統メディアでは、テレビ局ブランド(青色)が上位を占め、その後を新聞ブランド(黄色)が続いている。2年前の2016年には、トップを走っているNHK newsに回答者の57%が週(Weekly)1回、回答者の25%が頻繁(main)に接していた。それが2年後の今年は、週1回程度接する人の割合は変わっていないが、頻繁に(週に3回以上)接する人は44%とほぼ倍増している。NHK newsの人気はともかく高くなっている。

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(ソース:Reuters Institute)
図1 伝統メディア(TV、ラジオ、プリント)の人気ニュースブランド。背景の青色がテレビ局ブランド、黄色が新聞ブランド。



オンラインニュースでもNHKブランドがトップに

 次にオンラインメディアを見ていこう。今年のロイターの調査は世界37か国のニュースユーザーを対象に同時期に一斉に実施しているが、ニュースブランドの利用調査では日本を含めYahoo! Newsもニュースパブリッシャーとして分類していた。米国などのYahoo! Newsではオリジナルコンテンツの割合が高いためであろう。でも米トラフィック解析会社Parse.lyのようにYahoo! Newsをアグリゲーターとして分類している会社も少なくない。日本のYahoo! Newsもオリジナルコンテンツに注力し増やしてきているが、まだまだアグリゲーターの役割が大きい。そこで、オンランメディアのニュースブランド・ランキングで、図2のようにYahoo! Newsがトップに立っているが、ここではアグリゲーターと見なして外すことにした。

 そこでランキングを見直すと、オンラインメディアでも上位にテレビ局ブランド(青色)が占めている。ここでも、この2年間で一段と人気急上昇したNHK news onlineがトップを独走している。オンラインニュースサイトでは新聞ブランド(黄色)が先行していたはずなのに、テレビ局ブランドが上位を占めているとは・・・。動画コンテンツが充実していることや、TVニュース番組と連携することもあるので、テレビ局ブランドがオンラインでも目立ってきているのか。また日経ビジネスや東洋経済のような雑誌ブランドが顔を出してきたのも興味深い。

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(ソース:Reuters Institute)
図2 オンラインメディアの人気ニュースブランド。背景の青色がテレビ局ブランド、黄色が新聞ブランド



人気ニュースブランドが頻繁に利用され一段と躍進

 図1と図2のロイター調査で興味深かったのは、この2年間の激動のニュースメディア環境において、人気ニュースブランドを頻繁に利用するユーザーが増えていることだ。これは海外でも同様の傾向が見られ、ニュースニーズが確実に増しているのであろう。

 そこで、頻繁に利用される、つまり週に3回以上利用されるニュースブランドのランキングに着目してみた。図3に伝統メディアのランキングを、図4にオンラインメディアのランキングを示した。グラフでも示したように、この2年間で、人気ニュースブランドを頻繁に接するユーザー数が急増している。

 伝統メディアでは、NHKブランドが2016年の25%から2018年の44%に、TV朝日ブランドが同8%から25%へと躍進している。またオンラインメディアでは、NHKブランドが5%から13%に、日経ブランドが4%から7%へとアップしていた。


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(ソース:Reuters Institute)
図3 伝統メディアで頻繁に利用されるニュースブランドは? 世界のトップクラスの発行部数を誇る保守系新聞の読売新聞(856万部)は回答者の10%しか、またリベラル系新聞の朝日新聞(626万部)は回答者の12%しか、頻繁に閲読されていなかった。完全に、TV局ブランドの後塵を拝している。



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(ソース:Reuters Institute)
図4 オンラインメディアで頻繁に利用されるニュースブランドは? 新聞の日経ブランドが2位に。twitterフォロワー数ランキングでも、297万人の日経新聞に256万人のNHKニュースが迫ってきている。


公共放送の信頼性を武器にTVニュースの視聴率で圧勝し、オンラインでも優位に

 TVニュースでNHKが圧勝していることは疑いの余地がない。ビデオリサーチ社の視聴率(6月11日(月)〜6月17日(日)でも、関東地区の報道部門の視聴率ランキングのトップ10は、テレビ朝日の報道ステーションを除いてすべてがNHKブランドであった。NHKニュースおはよう日本・首都圏やNHKニュース7が常連で、約11%〜約15%の世帯視聴率を得ている。

 伝統メディアでは、NHK以外の民放ブランドもプリントの新聞ブランドよりも多くの人に接触されている。ビデオリサーチのデータを見ても、コメント中心の民放のニュース番組の人気は高く、教育・教養・実用【関東地区】部門で、TBSのサンデーモーニング、日本テレビの真相報道バンキシャ!、テレビ朝日の羽鳥慎一モーニングショーといった番組は10%台の視聴率を得ていたりする。バラエティーなども含む全番組のランキング(例えば「放送研究と調査」)でもニュース番組が数多く上位に食い込んでおり、TVニュースの人気は根強い。
 TVニュースが人気が高いのは、なんやかんや言われながらも、信頼されているということか。ロイターの調査でニュースブランドの信頼度ランキングを国別に発表していたが、日本で最も信頼度の高いニュースブランドはNHKとなっており、テレビ局ブランドも上位にランクされている。新聞系は日経と地方紙は高かったが、全国版一般紙の新聞ブランド、特にリベラル系はあまり信頼されていない。

 NHKは2~3年前までは、前会長の「政府が右というを左といえぬ」発言もあって、信頼性が揺らいだ時期が続いた。だが最近は、優れたドキュメンタリーを連発し、NHKコンテンツの信頼感がぐんと高まっている。図3と図4のように、オーディエンスのNHKブランドに接する頻度が上昇しているのもそのせいであろう。

 予算や人材が潤沢な公共放送だからできる技かもしれない。ヨーロッパの主要国でも、英国のBBCのように公共放送のニュースが大きな役割を果たしてきた。英、独、イタリア、オランダ、スウェーデンなどでは、伝統メディアで人気トップのニュースブランドは、公共放送ブランドとなっている。でも公共のメディアブランドが、伝統メディアだけではなくて新しいオンラインメディアまでも支配する国となると少ない。自由なオンラインメディアでは、公共ブランドが劣勢に立たされれても不思議でない。たとえば ドイツでは、伝統メディアは公共のARDがトップであるが、オンラインメディアでは雑誌ブランドのSpiegelなどが優位に展開している。

 でも英国のBBCは、伝統メディアだけではなくてオンラインメディアでも圧倒的に優位に立っている。視聴料を払っている国民から信頼を得るために、絶えず政権から距離を置き独立性を堅持しようと努めている。同じように日本のNHKも、今年のロイターの調査結果によると、伝統メディア(TVニュース)だけではなくてオンラインメディアも支配する勢いを見せている。政治報道に偏りが見られるとの批判もあるが、日本人は権威を信頼する傾向が強いとロイターに言われるように、オンラインニュースもNHKに支配されていくのか。 

 NHKとしても、 若者のTV離れ伴い、若者のTVニュース離れ対策も打たなければならない。NHKの目玉のNHKニュース7の視聴率(2017年)は、50代男性が8%、50代男性が14%、70歳以上男性が33%と高齢者に支持されているものの、10代~30代男性の視聴率が1%〜2%に落ち込んでいる。NHKも若年層にはオンラインで攻めるほかはないのだ。


オンラインニュース利用がTVニュース利用を下回る

 モバイル化、ソーシャル化が加速するに伴いオンラインニュース利用が増え続け、一方で、TV離れに伴いTVニュース利用が減っている。グローバルに共通のトレンドと思っていたのだが・・・。ところが国によっては、必ずしもそうではなさそう。 

 どうも日本ではTVニュースの利用が相対的に多そうだ。ロイターの調査でも、先週接したニュースのソースがどのメディアであったかを問うたところ、65%の回答者がTVメディアと答え、59%のオンラインメディアを上回った(複数回答)。

 図5にここ数年の推移を示しているが、目に付くのがオンラインでニュースに接する利用者比率が2013年の85%から今年の59%と下降線を辿っていることだ。この背景については、「日本人のニュースメディア接触、先進国の中で際立つ特異性、ロイター調査が浮き彫りに」で述べたが、スマホ・ソーシャル全盛時代を迎える前まで、日本のオンラインメディアはパソコン主体のヤフーポータルが完全制覇していたことが響いている。スマホ化、ソーシャル化が加速するに伴い、パソコン中心のオンラインメディアの利用比率が下がっていった(利用時間は必ずしも減っていない)。


ロイター2018Japan01.png

(ソース:Reuters Institute)
図5 日本人回答者が先週、どのメディアを介してニュース・ソースに接したか?(複数回答)。TVメディアが65%と最も多く、オンラインメディアを上回った。


 日本以外の大半の国では、オンラインでニュースソースに接する人の割合が約80%〜90%の高レベルに維持させている。ここ数年、ソーシャルメディアを介してニュースソースに接する人が急増しているからだ。ソーシャルメディアを飛躍台にしてニュースパブリッシャーが育っていく環境が、海外ではかなり整備されてきたといえる。

 一方で日本は、ソーシャルメディアを介してニュースソースに接する人の割合が21%と、今年のロイター調査の対象国37か国の中でもずば抜けて低かった。その結果としてオンラインでニュースソースに接する人も最も低い59%となっている。低いのに、オンラインによるニュースソースの接し方が特異で、アグリゲーターの利用が極端に多いことだ。Yahoo! Newsやスマートニュース、グノシーなどのアグリゲーターを介してニュースソースに接している人が40%と、今年もロイターの調査でトップを独走している。海外のユーザーのようにコミュニティーを通してニュースに接するよりも、お勧めのニュースを受動的に接するほうを好むということか。

 この日本のニュースアグリゲーターの特徴はユーザーの高齢化が顕著なことだ。Yahoo! Newsは言うまでもなく、スマートニュースは50代以上が5割以上を占め(20代以下は11.9%)、グノシーのニュースパスは50代以上が45%(20代以下は9%)となっている。選ばれるニュースも、本来の報道モノよりも、エンターテイメント性の高い情報ものが増えている。アグリゲーターでニュースっぽいコンテンツを楽しむ一方で、真っ当なニュースを受動的だがNHKブランドで抑えておく。高齢者が多数派の日本では、オンラインでもNHKに頼っていくという流れになるのか。



◇参考
・Reuters Institute Digital News Report 2018(Reuters Institute)
・テレビ・ラジオの視聴の現況〜2017年6月全国個人視聴率調査から〜、放送研究と調査、Sep.2017



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posted by 田中善一郎 at 12:36 | Comment(0) | メディア
2016年10月07日

「動画メディア」に急傾斜するニュースパブリッシャー、だが若者は動画よりもテキストニュースを欲している・・

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 動画メディア・ブームが真っ盛りだ。フェイスブックのニュースフィードに現れるコンテンツを見ていても、動画さらにはライブ動画の割合がどんどん増えているのが実感できる。

 米国の伝統新聞や新興のニュースメディアも、動画ニュース記事の割合を競って増やしている。最近ではライブ動画をフェイスブックなどに投稿するのが日常化してきた。さらに、360度動画、VR、ドローン撮影など最新テクノロジーを駆使した動画ニュースも頻繁に配信されるようになっている。確かにテキスト記事に比べ、動画ニュースのビュー数が一般に大きく上回っている。オンラインでも、ニュースを読む時代から視る時代にシフトすると見込んだのか、米国のニュースパブリッシャーはこぞって、動画ニュースを充実させるために多くの人と金を投入しているのだ。

 ところが、この動画ニュース・フィーバーに少し水を差すような調査結果を、Pew Research Centerがこのほど発表した。若者(18〜29歳)にニュースをテキスト系で読みたいか、動画で視たいか、それとも音声で聴きたいかを選ばせると、図1のように42%がニュースを読みたいと答え、動画ニュースを視たい38%を上回っていた。もともと若者よりも高齢者ほどテレビなどの動画ニュースを好んでいるのは理解できるが、新聞離れが猛烈に進んだ若年層はビジュアル志向が高そうなので、テキストニュースよりも動画ニュースを好むと思われていたのだが・・。


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(ソース:PewResearchCenter)
図1 「読むニュース」と「視るニュース」と「聴くニュース」。

 同じPew Research Centerの調査によると、米国の若者(18〜29歳)でニュースに熱意をもって接する人の割合が、中高齢者に比べ圧倒的に低くなっている。ニュースコンテンツと接する時間をあまり持ちたくない若者が多いのだ。短時間で浅く広くニュースに接するにはテキストのほうが向いている。若者にとって、エンターテイメントコンテンツなら動画に飛びついても、動画ニュースは時間がかかり面倒くさいということか。

 ところが、米国のニュースパブリッシャーは「視るニュース」に重心を移そうとしているのだ。ミレニアル世代などの若年層は、新聞離れとテレビ離れが顕著で、ほとんどオンラインでしかニュース記事に接しない人が増えている。特に、フェイスブックのようなソーシャルプラットフォームがニュースに接する場となってきている。そこで、パブリッシャーはニュース記事に無関心な若者も振り向かせるためにも、動画ニュースを増産し、ソーシャルメディアに投稿してきているのである。だが、今回の調査からは、動画ニュースが必ずしも若年ユーザーを惹きつける切り札になるとは言いきれない。もっと魅力あるテキストニュースを配信するほうが重要かもしれない。

 ロイター(Reuters Institute)が毎年発行する「Digital News Report」の2016年版の著者の一人であるAntonis Kalogeropoulos氏は、「オンラインのニュース動画が急増しているのは、コンシューマーからの強い要求があったからというよりも、テクノロジーやプラットフォームそれにパブリッシャー側からの要望が大きかったからである」と説く。確かに、オンライン動画広告で主導権を握りたいフェイスブックが、ニュースパブリッシャーにより多くの動画ニュースの投稿を強く働きかけ、多くのパブリッシャーがそれに応えているのが現状である。


◇参考
・Younger adults prefer to get their news in text, not video, according to new data from Pew Research(NiemanLab)
・Younger adults more likely than their elders to prefer reading news(PewResearchCenter)

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posted by 田中善一郎 at 14:40 | Comment(0) | TrackBack(0) | メディア
2016年06月13日

分散型メディアで月間10億回の動画再生を一気に達成した「INSIDER」、意外な次の一手とは

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  分散型動画メディア「INSIDER」がアッと言うまに、月間10億回の視聴数を達成した。同メディアの概要を把握できる64秒間のプロモーション動画があったの、参考までに以下に貼っておく。

Exciting news: INSIDER is launching a website.
Introducing https://t.co/litFRoTPTs!https://t.co/WaBX17qd7q

— INSIDER (@thisisinsider) 2016年5月25日


図1 INSIDERのプロモーション動画

 大流行の分散型動画メディアの中でも、見逃せないのが「INSIDER」である。昨年8月に立ち上がった動画メディアであるが、今年に入って急激に再生回数を増やし、4月に10億回の大台を突破した。メディア/ニュース/出版分野の動画メディアでトップを走っていたNowThisを一気に追い抜いた。

 動画コンテンツはうまく拡散し始めると、とんでもない視聴数が得られるようだ。INSIDERが2か月前に投稿した「スパイダーキャッチャー」の動画は、フェイスブックで1億回以上の再生回数と、123万件のシェア数、41万人からのいいよ!を得て、爆発的に拡散した。蜘蛛を殺さずに捕らえる製品を紹介した動画で、以前から存在していた類の製品に過ぎないのだが、40秒間でまとめてうまく制作しており、思わず見入ってしまう。

 こうした興味深い動画コンテンツを連発することにより、4月には単月で1億人にリーチし、配信先のソーシャルプラットフォームでのフォロワー数が1000万人を超えたという。誕生してからわずか8か月で、このような実績をあげたのだから、やはりすごい。

硬いビジネス分野パブリッシャーが、軟らかい非ビジネス分野をゼロから始める
 
 「INSIDER」の誕生の背景を見ていこう。同メディアを立ち上げたのは、ビジネス/テクノロジー分野の新興ニュースメディア「ビジネスインサイダー」(BI)である。BIはアメリカで生まれて7年目となるサイト(前身のSilicon Alley Insiderからは9年目)で、仕事向けの高品質コンテンツを提供するパブリシャーとして知られている。このBIが日本でも話題になったのは、ドイツの大手メディアのアクセル・シュプリンガーに買収されたからだ。昨年春にアクセル・シュプリンガーは「フィナンシャル・タイムス(FT)」の獲得に動いたが、日本経済新聞との買収合戦に負けたため、その後すぐにBIを買収したのだ。

 ドイツ社の傘下に入った後もBIは、ビジネス分野のBusiness Insiderにテクノロジー分野のTech Insiderを加えたニュースメディアとしてグローバル展開している。それぞれのフェイスブックページは、Business Insiderが536万7495人、Tech Insiderが490万6254人ものフォロワー数(ファン数)を擁し、ミレニアム世代向けビジネス情報メディアとしてそれなりの地位を確保している。他にBIインテリジェンスが、有料の調査レポートを発行している。

 このようなビジネス向けの硬派メディアであるBIが、非ビジネス向けのライフ分野にも新たに進出しようとしたのだ。一般にこうした場合、現在抱えているビジネスユーザーに新たに非ビジネスコンテンツも提供する形でスタートすることが多い。つまり初めはBusiness InsiderやTech Insiderのビジネスユーザーに向けて、旅行やアート、料理(食)などのオフビジネス(ライフ)情報も提供していこうとするのが、普通のアプローチであろう。

 ところがBIの取った戦略は違った。ライフ分野サービスの対象者層のすそ野は巨大だ。一方、BIの現ユーザーは絞られたビジネスパーソン層である。BIのWebサイトからのアプローチでは、巨大なライフ分野の潜在ユーザーにリーチできないままに終わりかねない。

 そこでBIは、ライフ分野のサービスでは、自前のWebサイトを持たないようにした。そして分散型メディアを採用することにした。外部の幾つかのソーシャル・プラットフォームに投稿したほうが、桁違いに多くのオーディエンスにリーチできる可能性が高いからだ。またライフ分野のコンテンツは動画とした。テキストや写真に比べ動画のほうが拡散しやすく、圧倒的に多くのアクセスを獲得することが期待できるからだ。

 そして昨年8月に「INSIDER」のブランドでライフ分野サービスを開始した。Webサイトを持たずに、フェイスブックやユーチューブ、インスタグラムなどの外部ソーシャル・プラットフォームに、動画コンテンツを配信していった。同ブランドのフェイスブックページの例を、図2に掲げる。そのページに短めの動画を次々と投稿していった。カバーするライフ情報は現在、art, health, people, food, travel, design, cultureの7領域に広がり、各領域対応に独立のフェイスブックページも増設している。


InsiderViralVideoFBPage.png
図2 INSIDERのフェイスブックページ 


分散型メディアで、幅広くオーディエンスにリーチ

 これまでのBIのリソース(Business InsideやTech Insider)にあまり頼らないで、分散型動画メディアに賭けた戦略は順調に進んだ。特に今年に入ってからの成長はすさまじい。フェイスブックがユーチューブ対抗で動画配信に猛烈に力を入れていることもあって、フェイスブックでの動画再生数の急増が際立った。

 そこでフェースブック・ページのフォロワー数を見ていこう。以下は昨日(2016年6月11日)のデータである。
INSIDER:4,366,458人
INSIDER food:1,806,885人
INSIDER design:2,244,283人
INSIDER art:460,695人
INSIDER people:667,813人
INSIDER travel:1,233,882人
INSIDER pop culture:493,600人
INSIDER health:85,750人

  旗艦のINSIDERに約450万人のフォロワーが付いているのに加え、バーティカルな7領域の各ページにも多くのフォロワーが集まっている。フォロワー数の総計が冒頭のプロモーション動画でも誇示しているように、1000万人を突破している。すでに本流の(Business Insider:536万7495人 + Tech Insider:490万6254人)と肩を並べるファン数を擁しており、現在は追い抜いているはずだ。

 多くのフォロワーをバックに、動画の視聴数(再生回数)も急上昇している。動画のトラフィック調査会社Tubular Labsによると、図3に示すように、視聴数が今年2月に1億2000万回程度であったのが、4月には9億回を超えている。現在は10億回を超えているとBIが主張しているが、間違いないであろう。また、INSIDERの動画を視聴したオーディエンスは単月で1億人を超えているという。

ViralVideoINSIDER201604.png
図3 INSIDERの月間視聴数の推移

 BIとしては、質を優先してきた従来のビジネス情報サービスに対して、非ビジネス情報サービスではとりあえず量を優先しているのかもしれない。本格的な収益化はこれからであろうが、foodやtravel、healthのバーティカルな領域では、動画のネイティブ広告が期待できそう。

 また分散型メディアなので、各プットフォームでの視聴数の違いも気になる。 Tubularの測定では、フェイスブックの視聴数が群を抜いて多かった。図4に示すように、INSIDERだけではなくてNowThisにおいても、全視聴の99%以上が、フェイスブックで再生されていた。

ViralVideoInsiderNowThis.png
図4 INSIDERとNowThisのプラットフォーム別月間視聴数


ホームレスだとやはり心配なので、拠点のホームを構築


分散型動画メディアでは、NowThisの成功事例もあって、Webサイト(ホームページ)を備えないで複数の外部プラットフォームだけに投稿していくスタイルが増えてきた。こうした「ホームレス・メディア」が先進的であると見なされたりしている。INSIDERもホームレス路線で、短期間に爆発的な成長を遂げきた。

 ところが驚くことに、5月末にINSIDERのWebサイト(thisisinsider.com)が立ち上がったのだ。以下の図5は、Webサイトのスナップショットである。10か月間のホームレス生活を放棄して、昔のスタイルに戻るかのようにホーム(Webサイト)を構築したのである。

INSIDERWebPage20160610.png
図5 INSIDERのWebサイト「thisisinsider.com」

 無くても良いはずのWebサイトを、なぜわざわざ立ち上げたのか。外部のプラットフォームでは、編集や広告などの進め方でいろいろと制約を受けることがある。より深いライフ分野のコンテンツを、コンパクトな動画だけではなくて、テキストや写真で自由に編集したい場合も出てくるだろう。分散型動画メディアといっても、INSIDERの場合、図4で示したように、ほぼ100%フェイスブック上で展開している。つまり事実上、フェイスブックの手の平でメディア活動を実施しているのだ。これでは、ニュースフィードのアルゴリズムや編集/広告の取り決めを次第で、大打撃を被る心配がある。実際これまでも、フェイスブックがアルゴリズムを変更したことにより、痛い目にあったパブリッシャーやメディアサイトが少なくない。

 INSIDERとしては、1000万人以上のフォロワーを確保したのだから、そうしたファンを自前のWebサイトに誘導することにより、自由に仕掛けた各種イベントやECに招いたり、自由なフォーマットの広告と接触させることもできよう。INSIDERとバーティカルな7領域のフェイスブックページを先ほどチェックして分かったのだが、動画以外にテキスト/写真系記事もかなり多く投稿されていた。面白いことに、そのテキスト/写真系記事がフェイスブック推奨のインスタント記事ではなくて、リンク情報であったことだ。つまり、Webサイト(thisisinsider.com)に来てもらって、記事全文を閲覧させようとしているのだ。フェイスブックからthisisinsider.comへの流入トラフィックがどれくらい得られるかが興味深い。 


◇参考
・Business Insider Launches ‘Insider’ Lifestyle Website(WSJ)
・Business Insider Launches Lifestyle Site ‘Insider’(FishbowlNY)
・The rise of "homeless" media(Digital Content Next)

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posted by 田中善一郎 at 00:27 | Comment(0) | TrackBack(0) | メディア
2016年02月06日

米国民の大統領選の情報収集、最も役立つニュースソースはTV系

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 4年毎に開かれる米大統領選。今年もお祭り騒ぎで盛り上がっているが、国民も参加意識を持てるのか、米大統領選ニュースの情報収集にきわめて熱心だ。

 Pew Researchが1月18日〜27日に3760人の成人(18歳以上)を対象に実施した調査によると、91%もの米国民が過去1週間に米大統領選の情報をメディアから得ていた。その米大統領選の情報を収集していた人に、最も役立つニュースソースを答えさせた結果が、図1のようになった。11種のニュースタイプから一つを選ばせた結果であるが、Fox、CNN、MSNBCのケーブルTVが24%と他をかなり引き離してトップになっていた。ローカルTVなど他のTV系メディアも中上位を占め、激しい討論会を動画で伝えるTVメディアの人気は根強い。一方で、若年層を中心にソーシャルメディアやニュースサイト/アプリのオンライン系メディアの人気が高まっている。紙媒体の新聞を最も役立つとニュースソースと答えた人は、少なくなっている。

Pew2016USPresidentialElection01.png
(ソース:Pew Research Center)
図1 大統領選ニュースで最も役立つソースはどこか。

 最も役立つとニュースソースのランキングを年齢層別に見ると、図2に示すようにかなり異なっている。ソーシャルメディアは、18〜29歳の若年層では35%と高い支持を得ているが、50歳以上の高齢者からはあまり期待されていない。逆にケーブルTVは65歳以上の高齢者から43%と圧倒的な人気を得ており、30歳以上の中年層でも一番人気となっている。悲惨なのが新聞メディアで、若年層にはほとんど無視されており、50歳以上の高齢者の間でも10%前後と優先度はあまり高くはない。

Pew2016USPresidentialElection.png
(ソース:Pew Research Center)
図2 年齢層別の役立つニュースソース・ランキング

 実際にはほとんどの人は、単独のニュースソースだけではなくて、複数のニュースソースをチェックしている。今回の調査でも回答者の約半数に相当する45%の人は、5タイプ以上のニュースソースに接触していた。3あるいは4タイプのニュースソースを見た人も35%と多い。単独のニュースソースしか見ていない人はわずか9%であった。

 そこで、過去1週間に接触したすべてのニュースソースを答えさせた結果では、タイプ別ソースの利用比率が図3のようになった。ここではTV系、デジタル(オンライン)系、ラジオ、新聞紙のそれぞれの利用比率も示されている。回答者の78%は、TV系のどれかのメディアを接触していた。全年齢層で見れば、TV系メディアがデジタル系メディアよりもまだ人気が高いことになっている。新聞紙読者の特徴は、新聞メディアしか接触しない割合が約半分と高く、他のメディアにあまり関心を寄せない人が多いことである。

 ソーシャルメディアから情報を収集した人が回答者の44%となっていたが、新聞紙(地方紙や全国紙)に接触した人は36%とソーシャルメディアよりも下回っていた。新聞紙メディアの影響力が低下しているのは確かだが、ニュースサイトやソーシャルメディア内で新聞コンテンツと接触する機会は増えている。 

Pew2016USPresidentialElection02.png
(ソース:Pew Research Center)
図3 TV系、デジタル(オンライン)系、ラジオ、新聞紙の利用比率

 ソーシャルメディアから大統領選関連の情報を収集する人は増えてきているのだが、どのソーシャルメディア(SNS)と接触したかの調査結果を、次の図4に掲げる。フェイスブックの利用者が多いのは当然だが、複数のSNSと接触している人も多い。

Pew2016USPresidentialElectionSocialMedia.png
(ソース:Pew Research Center)
図4 情報収集のために過去1週間で接触したSNS


◇参考
・The 2016 Presidential Campaign – a News Event That’s Hard to Miss(PewResearchCenter)
・Around half of newspaper readers rely only on print edition(PewResearchCenter)
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posted by 田中善一郎 at 12:54 | Comment(0) | TrackBack(0) | メディア
2015年12月04日

フェイスブックの分散型メディア「インスタント・アーティクルズ」、一気にアジアや南米のグローバル展開に突入

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 分散型メディアの動きが、米国では一段と活発になってきている。その中で注目したいのが、やはり分散型メディアの本命とされるフェイスブックの「インスタント・アーティクルズ」の展開である。

 フェイスブックは以下の9社のパブリッシャーと提携して、今年の5月から実験サービスを始めた。
The New York Times
National Geographic
BuzzFeed
The Atlantic
The Guardian
BBC News
Spiegel
Bild

 ただこの実験段階において、各パブリッシャーがFacebookサイトにホストした記事は、日常的に提供している一般の記事ではなくて、「インスタント・アーティクルズ」プロジェクトに向けた特別な大型記事が多かった。対話型のリッチメディア・コンテンツなどの検証を試みていた。だが、各パブリッシャーからホスティングされた記事は1本だけで、それから長い沈黙が続いたので、インスタント・アーティクルズが挫折したのではと懸念する声も出始めていた。

 そうした心配を打ち消すかのように、9月から提携パブリッシャーを増やし、本番に近いサービスに入った。少なくとも以下のパブリッシャーが新たに加わることになった。9月からのサービスでは、提携パブリッシャーも毎日のように一般記事をホストするようになってきた。

The Blaze
Bleacher Report
Business Insider
Bustle
CBS Interactive
Complex
The Dodo
Gannett
Hearst
The Huffington Post
IJ Review
Major League Baseball
Mashable
Mic
Moviepilot
National Basketball Association
Time Inc.
Vox Media 
The Washington Post

 今週に入ってABS-CBN Newsも参加したことを表明したように、これ以外の米国や欧州のパブリッシャーとの提携も着々と進んでいるようだ。さらに一気にグローバル展開にも突入した。最近、アジアやラテンアメリカの海外市場での同サービスの立ち上げを発表し、地元パブリッシャーとも相次ぎ提携し始めている。アジア地区では、中国のCCTVNEWS、インドの Aajtak、韓国のSBS News、シンガポールのThe Straits Timesなど、以下のような11か国の25パブリッシャーが早くも「インスタント・アーティクルズ」対応のニュース記事を、Facebookサイトにホストし始めているのだ。

China: CCTVNEWS
Hong Kong: Ming Pao Daily News
India: Aajtak, Hindustan Times, India Today, The Indian Express, The Quint
Indonesia: Kompas.com, Merdeka.com
Korea: SBS News
Malaysia: Sin Chew Daily
Philippines: ABS-CBN News, GMA Network, GMA News, INQUIRER.net, Rappler
Singapore: The Straits Times
Taiwan: Apple Daily Taiwan, Chinatimes.com, ETtoday, Next Magazine Taiwan
Thailand: Kom Chad Luek
Vietnam: VnExpress, WebTretho

 以下は、台湾のApple DailyおよびインドネシアのKompas.comの、それぞれの「インスタント・アーティクルズ」対応の記事例である。すでにこれらの国々のフェイスブックのスマホユーザーは、自分のニュースフィードに現れた自国パブリッシャーのニュース記事全文を、フェイスブックサイト内で即座に閲読できるようになってきたのである。わざわざ時間をかけてパブリッシャーサイトに飛ばなくてもよいのだ。

InstantArticlesAsia201212.png
図1 台湾のApple DailyおよびインドネシアのKompas.comの、「インスタント・アーティクルズ」対応の記事例。稲妻マークでインスタント・アーティクルズ対応の記事であることを知らせている。

 さらに中国のChina Dailyなど、以下のパブリッシャーも間もなくインスタント・アーティクルズ対応記事をフェイスブックサイトにホストする予定だ。

China: China Daily
Hong Kong: Apple Daily, Oriental Daily News, The South China Morning Post
Indonesia: detikcom, Liputan6.com, Tribunnews
Malaysia: Astro AWANI, Berita Harian, China Press, Harian Metro, Malaysiakini, New Straits Times, Oriental Daily News Malaysia, The Star Online
Taiwan: Sanlih E-Television News, United Daily News Group, Vogue Taiwan
Thailand: Dailynews, Kapook.com, Khao Sod, Nation TV, Prachachat, Matichon, MGR Online, Thairath
Vietnam: Thanh Niên, Tuoi Tre, Zing.vn

 ラテンアメリカ市場での準備も着々と進めている。ブラジル、アルゼンチン、チリ、コロンビア、メキシコから40パブリッシャーと組んで、近くサービスを始めるという。すでに Telemundo, Adoro Cinema, Bolsa de Mulher, Capricho、Esporte Interativoなどの有力パブリッシャーと提携することになっている。

 すでにグローバルで、200以上のパブリッシャーが「インスタント・アーティクルズ」を活用していると、フェイスブックは語っている。でもまだ、日本のパブリッシャーの名前が見当たらないのだが・・・・。

◇参考
・Facebook Instant Articles: More Media Partners, More iPhone Users Coming(Adweek)
・Facebook Partners With 50 Publishers To Launch Instant Articles In Asia(Techcrunch)
・Facebook Instant Articles rolls out across Asia(Facebook)
・Facebook brings Instant Articles to iOS users in Latin America(TNW News)
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posted by 田中善一郎 at 11:06 | Comment(0) | TrackBack(0) | メディア
2015年04月27日

「広告側の圧力で編集記事を削除した」、米バズフィード編集長がついに白状

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  バズフィード(BuzzFeed)は、激変するニュースメディア産業で台風の目となっている。バイラルメディアとして一気に時代の寵児としてのし上がり、今やNYタイムズを凌ぐほど話題を振りまく存在になっている。 

BuzzFeedNYTgoogleTrend.png
図1 Google検索におけるBuzzFeedとNYタイムズの人気比較推移。グーグル・トレンドより。


 新しいことに果敢にチャレンジするバズフィードは、大きな成果を上げる一方で、いろんな問題も引き起こしている。今月に露見したトラブルも、オンラインメディア界に格好の議題を提供している。

 事の起こりは、4月8日の午後にバズフィードサイトに投稿された編集記事である。ダヴ(Dove)のキャンペーンが女性消費者を見下していると批判した記事である。

BuzzFeedDoveArticleBeforeDelete.png
図2 Doveのキャンペーンを批判したBuzzFeedの編集記事(最初に掲載された削除前の記事)

 30万ビュー数に達するほど人気を集めた記事なのに、掲載されて1日も経たない9日の朝に、この記事がサイトから削除されてしまったのだ。編集長がスタッフにBuzzFeed Life欄にふさわしくない記事だからと説明して、消させたという。

 このように記事が突然消えることは、これまでもバズフィードでは何回も繰り返されてきた。でも今回は奇妙なことに、削除された記事が同じ9日の23時に、次のようにアップデートと称して本文がそのまま再掲載されたのだ(図3にスクリーンショット)。記事の削除が外部メディアにすぐに指摘され、騒ぎが大きくなったためドタバタ劇に発展した。アップデートした理由として、たまたま記者個人の意見が不適当だったので削除してしまったが、この削除行為は我々の編集基準に違反しており再掲載に至ったということである。


BuzzFeedDoveArticleAfterDelete.png
図3 Doveのキャンペーンを批判したBuzzFeedの編集記事(削除後に再掲載された記事)

 この記事を執筆したバズフィードの女性記者Arabelle Sicardi氏は、この問題が起こった後すぐにバズフィードを辞めた。「辞めたのはホントよ」と、彼女はツイッターでも以下のように報告している。

BuzzFeedLeavingDove201504.png
図4 Doveを批判したBuzzFeed編集記事のライターであるArbelle Sicardi氏が、TwitterでBuzzFeedを退社したことを報告


 この一連の流れはすっきりしない。何らかの圧力があったのではとの疑いが拭いきれない。ダヴはボディソープや石鹸などトイレタリー製品のブランド名で、あのユニリーバが保有する。ユニリーバともなると巨大な広告予算を抱えたグローバル企業だけに、バズフィードにとっても非常に大事していきたい広告主である。すでにダヴ・ブランドのネイティブ広告が、図5のようにバズフィードに掲載されているだけに尚更である。

BuzzFeedDoveNativeAd.png
図5 Doveブランドのネイティブ広告


 実は今回、削除から再掲載に至った編集記事には、ダヴ(Dove)の記事だけではない。続いて玩具メーカーのハスブロ(Hasbro)を批判した記事も同じ経緯をたどった。ハスブロもバズフィードのネイティブ広告の顧客であったのだ。顧客を批判した編集記事を一度取り下げたのは、広告主に配慮したためと疑われても仕方がない。

  バズフィードのネイティブ広告コンテンツは、ブランド(広告主)と密接に協同しながらバズフィードのクリエイティブ部門が制作している。編集記事と同様のバイラル性の高いコンテンツに仕上げ、それを月間ユニーク数2億人以上もカバーするリーチ力を生かして配信するので、ネイティブ広告主の満足度は高いとされている。そのせいか既に顧客として有力な企業(ブランド)が図6のように目白押しである。昨年は1億ドル以上も売り上げた。実は、バズフィードは売上のほとんどをネイティブ広告に依存している。そのネイティブ広告では、ブランドが望むメッセージ性の高いコンテンツを発信しているだけに、ビジネス担当者(ネイティブ広告担当者)としてはブランドを批判するような編集記事を掲載してもらいたくない。その強い声に応えたのか、ともかく広告主ブランドを批判した記事がいったん取り消されたのだ。

BuzzFeedNativeAdBrand.png
図6 BuzzFeedのネイティブ広告を出稿しているブランド例


 ところが、削除だけでうやむやに済ませられなくなってきたのだ。昨年の初めにバズフィードは、過去記事4000本以上も断りもなく削除したことがあった。多くの非難を浴びたが、編集基準に合わなかったとの理由だけで再掲載しないままで終わらせていた。当初から同サイトではバイラル性の高いリスト記事が目玉の一つとなっており、そこではネット上のコンテンツをアグリゲートしてまとめ上げることも多く、カット&ペーストに頼った盗用と見なされる記事も多く指摘されるようになった。2012年1月にバズフィードに入り編集長に就任したBen Smith氏は、巨大になってきた同サイトを社会的にもっと認められるサイトに育て上げたかった。収益源としてのネイティブ広告事業を大きく伸ばそうとしている時だけに広告主からも信頼されるサイトにする必要があった。そこで、主に2012年以前の過去記事で、盗用や誤りのあるとみられる記事4000本を突然サイトから取り払ったのである。

 でも真っ当なメディアサイトなら、いったん掲載した記事を削除するには、根拠のある理由を提示すべきだろう。Ben Smith編集長も、そのこともあって新しい編集規約を今年(2015年)1月に定めた。彼としてはバズフィードを、単なるバイラルwebコンテンツのクリエイターやアグリゲーターではなくて、デジタル・ニュース・メディアに変身させようと、編集体制を整えかったのだ。その新しい規約では、記事の内容に関する理由だけで決して削除しないとも明記した。だから、今回のダヴやハスブロを批判した記事を衝動的に誤って削除してしまったが、編集規約に従ってすぐに再掲載したということである。その時、広告サイトからの圧力で削除したのではないと編集長は言い張った。また両広告主から編集記事に対する抗議もなかったと言う。

 その後、外部からの追及が激しくなる中で、投稿記事の内部調査を実施した。その調査結果のメモが4月18日にスタッフに送られたのだが、それによると、次のような各種理由で1,112本の記事がさらに削除したことを明らかにした。今度は、各削除理由の説明も加えられていた。

Editorial decisions (100本)
Advertiser complaints (3本)
Copyright issues (65本)
Technical error (263本)
Duplicated already published work (122本)
Community user deletions (140本)
On-edit staff deletions and unidentified bylines (377本)

 その中で驚くべき事実を白状したのだ。新たに3本の編集記事を”Advertiser complaints”と言う理由で削除したことを明らかにしたのだ。否定していたはずの広告側の圧力があったのだ。ブランド(広告主)と協働しているビジネスサイドのバズフィード社員からの抗議を編集側が受け入れ、記事を削除したと説明したのである。

 広告側の圧力で削除した編集記事は、先の2本とは違って、新たな3本である。マイクロソフト、ペプシ、それにAxe ボディスプレー(ユニリーバの製品)のそれぞれが提供している、製品や広告を批判した記事である。いずれも有力なバズフィードのネイティブ広告主である。

 このように明らかにせざるえなくなったのは、外部のメディアからの圧力があったからである。特に厳しく責めたのがGawker Mediaであった。同メディアの創立者でもあるNick Denton氏はオンラインメディアの暴れん坊としても有名だが、バズフィードを無益なメディアとこき下ろし続けている。多くのユーザーを獲得するためには、なんでもOKで邁進する姿勢に我慢ならないようである。ブログネットワークで成功し新興ニュースメディアの雄として君臨してきたGawkerも、今ではバズフィードの台頭で影が薄くなてきたことに対する、やっかみがそうさせているのかもしれない。ともかくGawkerは4000本の過去記事削減問題を始め次々と徹底した追跡記事を書きまくった。最近では編集長のBen Smith氏にCEOのJonah Perettiを加えた単独インタビュー記事で責めたてた。さらに、Do You Work at BuzzFeed?と題する記事で、バズフィードの現スタッフや元スタッフに情報提供を募るなど、攻撃がエスカレートしている。

BuzzFeedvsGawker201504.png
図7 BuzzFeed 対 Gawker。新たな編集規約の下に高成長を続けるBuzzFeedのロゴに対して、メディアとしての信頼性を失い堕落しているとGawkerはこき下ろす。

 こうした大量の記事削減行為は、揺籃期のYouTubeを思い出す。ユーザーからのネット上動画の無断投稿で人気が急上昇していったが、マネタイズの時期を迎えると、一転して無断投稿動画の削除に動いたのと似ている。また編集の独立性についても、ユーザーは必ずしも厳しく要求していないようである。ネイティブ広告に対するユーザー調査を見ても、NYタイムズのような高級な伝統メディアに対しては編集の独立性が強く望まれているが、バズフィードに対しては面白ければ良くて編集の独立性を気にしていないユーザーが多い。今回の問題も、ユーザーからの批判の声はあまり大きくなくて外部のメディア屋さんが騒いでいる傾向が強い。

 ただバズフィードの編集の進め方に変化が現れそう。ネイティブ広告主のブランドに触れた編集記事の投稿前のチェックを徹底させていくのだろう。伝統メディアと違って何のしがらみもなく自由に企業などの組織の製品や行動を批判できたのが、自己規制が働いて面白みが減らなければいいのだが。

◇参考
・BuzzFeed Deleted Posts Under Pressure from Its Own Business Department(Gawker)
・BuzzFeed Deletes Post Critical of Dove, a BuzzFeed Advertiser(Gawker)
・BuzzFeed Restores 2 Posts Its Editor Deleted(NYTimes)
・BuzzFeed Says Posts Were Deleted Because of Advertising Pressure(NYTimes)
・The BuzzFeed Editorial Standards And Ethics Guide(BuzzFeed)
・Why Gawker Media's Nick Denton Is Constantly Attacking BuzzFeed And Its CEO Jonah Peretti(Business Insider)
・Ben Smith and Jonah Peretti: The Gawker Interview(Gawker)

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posted by 田中善一郎 at 10:03 | Comment(0) | TrackBack(0) | メディア
2015年01月21日

信頼できるニュースメディア、新聞やソーシャルよりも「検索エンジン」が

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 検索エンジンは、新聞やテレビそれにソーシャルメディアよりも信頼できるニュースソースである。エデルマン(Edelman)が公表した「2015 Edelman Trust Barometer – Global Results」によると、検索エンジンが最も信頼できるニュースソースとの調査結果になっている。この結果は今日(21日)から始まる世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)でも発表される。

 一般ニュースや情報を探すとき、どのタイプのソースを信頼しているか。その調査結果のグラフは次のようになった。ニュースソースのタイプ別に最近4年間の信頼度推移が示されている。2015年に検索エンジンを信頼できると答えた人の割合が64%となり、初めて伝統メディアを抜き去ってトップに立った。ソーシャルメディアやオウンドメディア(企業のメディア)も信頼され始めているが、まだ相対的には低い。

TrustEdelman2015a.png
(ソース:Edelman)

 若いミレニアム世代(1980〜2000年生まれの14歳〜34歳)となると、検索エンジンが72%で伝統メディアが64%と、両者の差がさらに大きく開いている。また当然のように、ソーシャルメディアやオウンドメディアを信頼している割合が若い人の間では高くなっている。

  未だに検索エンジン経由のニュースの信頼が高いということは、幅広くニュースソースをカバーしていることと、目的のテーマのニュースや情報に手軽にたどり着くからであろう。信頼のおけるニュースや情報を探すとなると、ソーシャルメディアの優先順位がまだまだ低いということか。

 一般ニュースやブレーキングニュースを探すときに最初に接するメディアは何か、またニュースを確認するときに最も利用するメディアは何か、も調査した。その結果は次の通りである。接するタイプ別メディアとしては、オンライン検索、テレビ、新聞の3種としている。

TrustEdelman2015b.png
(ソース:Edelman)

 いずれの局面でも、オンライン検索が最も利用され、新聞の接触が減っている。

 それにしても、ニュースや情報を探すときに、オンライン検索を利用する人の割合が増えてきているという結果は、グーグルは喜びそうだが、ちょっと意外である。

 今年度の「Edelman Trust Barometer」のオンライン調査では、27カ国の3万3000人の成人(18歳以上)を対象に実施したが、上のメディア信頼性調査に関しては20カ国の知識層(Informed Public)に絞って行ったようだ。知識層には特定の目的をもって能動的にニュースや情報を探している人が多いということで、検索エンジンの人気が高くなったのかもしれない。

◇参考
・TRUST AROUND THE WORLD(Edelman)
・Google is now a more trusted source of news than the websites it aggregates(QUARTZ)

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posted by 田中善一郎 at 15:43 | Comment(0) | TrackBack(0) | メディア
2014年10月21日

米国民共通の信頼すべきニュースメディアが存在しないのか

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 ニュースメディア、さらにはソーシャルメディアが、米国民のイデオロギー分断を加速化させているようだ。リベラル派も保守派も含めた米国民共通の信頼できるニュースソースが事実上存在しない。

 米国民がイデオロギーの違いによって、どのニュースソースを信頼しているか、あるいは信頼していないかを、Pew Research Centerが調査した。以下はその結果を色分けしたグラフである。

TrustLevelNewsSource2014Pew.png

 回答者を、Consistently liberal(いつもリベラル)、Mostly liberal(概ねリベラル)、 Mixed(中間)、Mostly conservative(概ね保守)、Consistently conservative(いつも保守)の5層に分けて、それぞれの層の国民がどのニュースソースを信頼しているか、信頼していないかを調べた結果である。赤系色は信頼している人の割合が多い場合、灰系色は信頼している人と信頼していない人がほぼ同じ場合、橙系色は信頼していない人の割合が多い場合である。

 NYタイムズやワシントンポストのようなリベラル系新聞は、当然のように、リベラル派国民から信頼されているが、保守派国民からあまり信頼されていない。その逆でFoxニュースは、リベラル派国民から信頼されないが、保守派国民からは圧倒的に信頼されている。ここで興味深いのは、経済専門新聞のウォール・ストリート・ジャーナルを除いて、リベラル派から保守派までのどの層からも、より多くの人から信頼されているニュースソースがないことだ。米国民にとって海外メディアであるBBCとEconomistが、一部保守派を除けば、信頼されているのが目立つ程度である。

 またアラブ系メディアのAl Jazeera Americaは、一般の米国民から受け入れられにくいと見られていたが、リベラル派からはかなり信頼されているようだ。BuzzFeedは面白い話や泣ける話などを期待されているものの、政治的な話はまだ信頼されていない。

◇参考
・Political Polarization & Media Habits(Pew Research Center)
 
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2014年09月18日

伝統ニュースメディアの信頼、米国でも凋落

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 米ギャラップ(Gallup)が毎年実施しているマスメディア信頼調査が公表された。新聞、テレビ、ラジオなどの伝統メディアを十分に信頼している国民の割合は40%に落ち込み、米国でも長期低落傾向が止まりそうもない。

図1 米国人のマスメディア信頼度推移
GallupMediaTrend2014a.png
(ソース:Gallup)

 ブッシュ前大統領が再選した2004年に、同じギャラップ調査でマスメディア信頼度が前年の54%から44%に暴落した。その後リバウンドで信頼度が持ち直したように見えたが、再び長期低落が続いている。さらにソーシャルメディアの台頭により、マスメディアの信頼度がさら落ち込む可能性は高そう。

 次は、民主党支持派、共和党支持派、独立派のそれぞれが、マスメディアをどの程度信頼しているかの結果である。米国のマスメディアは一般にリベラル色が強いだけに、民主党支持者はマスメディアをかなり信頼してきた。逆に共和党支持者の多くのマスメディアを嫌い、特定の保守的なFOXニュースなどに頼ることになっていた。ここで注目すべきことは、民主党支持派からも共和党支持派からも、マスメディア信頼度をこの1年間で6%も失ていることだ。これもソーシャルメディアの影響を受けたせいか。ソーシャルメディア内で同じ支持政党派仲間で話し合っているほうが居心地が良いのだろう。

図2 政党支持者別のマスメディア信頼度
GallupMediaTrend2014b.png
(ソース:Gallup)

 次のグラフは、マスメディアのバイアスについての認識調査の結果である。リベラル過ぎると答えた人が44%に対して、保守過ぎる答えた人は19%であった。これでも、マスメディアがリベラル過ぎると見ている人の割合が減り、保守過ぎる見ている人の割合が急増している。マスメディアも世界的な保守化傾向に乗っているのかも。

図3 メディアバイアスの認識結果
GallupMediaTrend2014c.png
(ソース:Gallup)

 今年の調査は、2014年9月4日から7日まで、ランダムに選んだ18歳以上の大人1018人を対象に、電話インタビューを全米50州で実施した。

◇参考
Trust in Mass Media Returns to All-Time Low(GALLUP Politics)


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2014年08月13日

バイラル記事が氾濫、バイラルメディア・サイトが打つ次の一手は

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 米国のバイラルメディア・ブームはまだ峠を越えていないようだ。

フェイスブックにおけるパブリッシャーサイトのバイラル度ランキングを、メディア分析会社NewsWhipが発表しているが、その最新版(7月データ)で米国のバイラルメディアの動向を探ってみた。記事のバイラル性の指標としては、Interaction総数(=Comment数+Share数+Like数)を用い、各パブリッシャーサイトについて1か月間に投稿した全記事のInteraction総数(表のTotalFB)をはじき出している。トップ25のパブリッシャーランキング表を、最新の2014年7月版に加えて10カ月前の2013年10月版も以下に掲げた。


図1
FacebookPublisher201407New.png
(ソース:NewsWhip)

トップ25のInteraction総数は14年7月には2億6240万件となった。13年10月の1億3840万件の約2倍である。トップ25のパブリッシャーが配信した記事本数総計はほとんど変わっていなかったので、この10カ月の間に、記事1本当たりのInteraction総数が約2倍になったことになる。バイラル記事に特化したバイラルメディア・サイトがトップ25に新たに登場してきたことが大きいが、新聞やTV系の伝統メディアサイトもフェイスブックで拡散しそうなバイラル性の高い記事を意識して発信するようになったことも無視できない。


トップのHuffingtonPostは生粋のバイラルメディアと言うよりも新興のニュースメディアであるが、この10か月間でInteraction総数を2.5倍に増やしたことからも分かるように、バイラル記事の提供に力を入れている。例えば7月の初めにはバイラル記事の定番である絶景写真のリスト記事を投稿していた。”The Top 50 Cities to See in Your Lifetime”は、100万件以上のLike数と20万件以上のShare数を得ており、かなりのトラフィックをフェイスブックから呼び込んだようだ。どうもこれは旅行コミュニティー会社のネイティブ広告のようである。


図2
HuffingtonPost201407Viral.png

高級新聞とも言えるGuardian も、Interaction総数を昨年10月の458万件から今年7月には1061万件と倍以上に増やした。最近では、パレスチナやウクライナ、イラクのような紛争関連記事が以前に増してフェイスブック上でも議論されるようになってきている。次の記事”'The world stands disgraced' - Israeli shelling of school kills at least 15”も見出しと写真で読者の感情に訴え、25万件のInteractionを獲得した。このような悲惨なストレートニュース記事でも、7月のフェイスブックのバイラル記事トップ100に入るようになってきた。


図3
Guardian201407Viral.png

フェイスブックで話題になるバイラル記事を盛んに配信しているサイトとなると、やはり目立つのはBuzzFeedに代表されるバイラルメディア・サイトである。今も新規参入が続いているが、一方で淘汰も始まっている。先のパブリッシャーランキング表に選ばれているトップ25の顔ぶれを見ても、バイラルメディアの場合、浮き沈みが激しい(図1の黄色で示したパブリッシャー)。昨年10月と今年7月の両月に顔を出しているサイトはbuzzfeed.comだけであった。昨年末からトップ25の常連であったupworthy.comやdistractify.comは、7月にランク外に落ちた。


 逆に最近トップ25入りしたバイラルメディアの新顔としては、次のようなサイトが浮上してきている。

・ijreview.com:保守系政治ニュース

・iflscience.com:サイエンス分野特化

・elitedaily.com:Y世代向けHuffingtonPost

・boredpanda.com:バイラルフォトが中心(本社がリトアニア)

・playbuzz.com:クイズコンテンツが中心

playbuzzは7月に外れたが、最近Interaction総数が100万件を超えるクイズコンテンツを連発しているので、8月にはトップ25の上位に返り咲くと見られている。


 興味深い流れとしては、ijreview.com、iflscience.com、elitedaily.comのように、カバー分野や対象ユーザーを絞って、”売り”を明確にしたバイラルメディアが勢いを増していることだ。iflscience.comはサイエンス分野のバイラルメディアで、たとえば最近では今話題のスーパームーンの記事がフェイスブックで25万件のShareを得ていた。また同サイトのフェイスブックページには1775万人からのLikeを得ているように、米国に多いマニアックなサイエンスファンを虜にしているようである。


図4
IFLScience201307Viral.png
図5
IFlscience2014Facebook.png


 こうした個性あるバイラルメディア・サイトの寿命は比較的長いかもしれないが、この1年近くの間に雨後のタケノコのように湧き出たバイラルメディア・サイトは厳しい競争にさらされ始めている。多くのサイトから配信されるバイラルビデオとかバイラルフォトとかクイズコンテンツがネット上に溢れかえっており、また同じ素材を集めた似通ったリスト記事も目立って増えてきている。それでも今のところバイラルメディア・サイトの熱気はまだ続いている。Quantcastが米国ユーザーを対象にした調査によると、トップ25から外れたupworthy.comもdistractify.comも、モバイルWebブラウザーからの月間ユニークユーザー数は次のようになっており、まだ健在と言える。

buzzfeed.com      48,406,448

playbuzz.com      24,155,696

distractify.com     15,800,889         

ijreview.com        12,177,381

upworthy.com      11,902,440

(公表されているバイラルメディア・サイト)


ただバイラルメディアも、今のようなコンテンツだけでは食傷気味となりいずれユーザーの熱気も冷めてしまうだろう。これまでのバイラルメディアが主対象としなかった、政治やサイエンスなどの分野に絞ったサイトが登場してきたのも、その対策であろう。そしてついに、バイラルメディア市場で質的にも量的にも独走しているBuzzFeedまでも、これまでのバイラルメディアからの脱皮を宣言したのだ。


BuzzFeedの目玉記事は、クイズコンテンツや、ペットや絶景などを対象にしたリスト記事であった。ニュース記事なども力を少し入れ始めていたが、実際には付け足しの脇役的な存在でしかなかった。新しいBuzzFeed編集では、これまでのバイラル記事(Buzz)と一線を画したニュース記事(News)とライフ記事(Life)も配信していくという。編集チームも独立した、BuzzTeam、BuzzFeed News, BuzzFeed Lifeに分かれる。BuzzFeedのニュース記事やライフ記事が、新聞やテレビの伝統メディアと競合するのは必至である。人も資金も本格的に注ぎ込むようだ。これまで培ったバイラル編集を活用したニュース記事となるはずだ。


対する伝統メディアも、冒頭で触れたようにフェイスブックでのInteraction総数を増やす記事を多く配信しようとしてきている。つまりニュース記事のバイラル化に注力し始めている。BuzzFeedが目指そうとするニュース記事と同じなのかもしれない。


図6
BuzzFeedNews20140812.png

◇参考
・The Biggest Facebook Publishers of July 2014(NewsWhip Blog)
・保守系政治ニュースのバイラルメディア「IJReview」、米国で一気に頭角を現す(メディア・パブ)
・Higher-Brow Viral Media Site Ozy Gets to 3 Million Uniques a Month(re/code)
・With $50 million, BuzzFeed growth calls for sharper lines between news and the other stuff(Nieman Journalism Lab)



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posted by 田中善一郎 at 08:14 | Comment(0) | TrackBack(0) | メディア
2014年06月06日

意外なメディア接触時間、TV接触が長い先進国とスマホ接触が長い新興国

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  世界中の多くの人にとって、接触時間の最も多いメディアはテレビ(TV)であった。でも先進国では若者を中心に「テレビ離れ」が進んでいるとされている。それに代わって、インターネットメディアが台頭している。特に最近では、ネットメディアに接触するデバイスとして、スマートフォンなどのモバイル端末が爆発的に普及してきている。先進国だけではなくて新興国においてもだ。

 ところが、英国のある調査会社の報告によると、TV接触時間の国別ランキングでは上位に先進国が並び、スマホ接触時間のランキングでは上位を逆に新興国が独占していた。「ほんまかいな」と突っ込みたくなる結果である。

 この結果は、Mary Meeker氏が先日公開した「KPCB Internet trends 2014」の中でも、紹介された。Meeker氏のレポートの中で利用されているデータは、他の組織で以前公表されたものが少なくない。以下のグラフも、英MillwardBrownが実施した調査「AdReaction」の結果で、今年の3月末に公開されていた。

  「AdReaction」の調査は、2013年11月から12月に、世界30ヵ国(文末で対象国を掲載)、16歳から45歳までの約12、000名を対象に実施した。ただし調査対象は全員、テレビを所有し、かつスマホかタブレットのモバイル端末を所有している人としている。今や消費者の多くは、TV、PC、スマホ、タブレットなど、複数のスクリーンを通してメディアと接触している。つまりマルチスクリーンユーザーである。最初のグラフは、各国のマルチスクリーンユーザーが、平均して毎日、TV、PC,スマホ、タブレットのそれぞれとどれくらいの時間接触しているかを調査した結果である。もちろん、複数のスクリーンと同時に接している場合もそれぞれの時間を加えている。

KPCB2014a2.png

 マーケターにとっても、テレビが最も優先度の高いメディアであった。でもこれからは、マルチスクリーンユーザー化している消費者に向けて、急激に接触時間が増えだしているモバイル端末、特にスマホへの対応が重要になっている。そこで、AdReactionの調査結果より、TV接触時間が長いトップ10か国とスマホ接触時間が長いトップ10か国をリストアップした。

TV接触時間が長いトップ10か国
(1日当たりの時間:単位は分)

UK,148

USA,147

France,134

Kenya,132

Indonesia,132

Nigeria,131

Germany,129

South Korea,127

Japan,125

Australia,125


スマホ接触時間が長いトップ10か国

(1日当たりの時間:単位は分)

Nigeria,193

Saudi Arabia,189

Indonesia,181

Philippines,174

Kenya,174

China,170

Vietnam,168

Thailand,167

Argentina,166

Colombia,165


 調査対象者はマルチスクリーンユーザーであるが、ほとんどがスマホも利用しているTV所有者のはずだ。そこでなぜ、TV接触時間が長い国に先進国が多く並び、スマホ接触時間が長い国に新興国一色となっているのだろうか。先進国では、米国のように、スポーツ、ドラマ、ニュースなど楽しめるTV番組が充実しているためかもしれない。一方、新興国では、TV番組が先進国ほど量・質とも整っていないのに対し、スマホだと国境を越えて音楽やゲームなどをいくらでも楽しめるし、また人気の高いSNSもたっぷり利用できる。現在の先進国では約50年ほど前に、増え始めた中流階級がこぞってテレビに飛びつき、テレビに首ったけになった。ところが50年後の今は、新興国で台頭してきた中流階級がスマホに飛びつき首ったけになっていることということか。

 ところが、メディア接触時間の長短だけで、広告メディアとしての優先度を決められない。今回の調査でも、メディア別の接触時間に加えて、各メディア広告に対する消費者の好感度も調べている。以下の表で、TV接触時間あるいはスマホ接触時間が長いトップ3国、および日本における、TV広告の好感度とスマホ広告の好感度を示しておく。

Adreaction2014TVsmart.png

 英国や米国、フランスのような先進国の人たちは、今もTVをよく視聴しているようだが、広告そのものに対しては必ずしも好ましいと見ていない。さらにまだメディアとして未熟なスマホの広告についてはかなり厳しく、好ましいと感じている人の割合がわずか10%台である。一方、ナイジェリアなどの新興国では、広告に対しておおようなのか、TV広告だけではなくてスマホ広告についても、かなりの割合で好ましいと感じている人が多い。日本は、テレビ広告を好ましいと感じる人の割合が先進国の中で最も高かったが、逆にスマホ広告に対しては好ましくないと多くの人が見ている。スマホが安心で安全なメディアとして十分に認知されていなく、スマホ広告もあまり信用されていない結果となっている。

*「AdReaction」の調査対象国一覧                         Italy、 France、 Japan、 Hungary、Slovakia、 Canada、 Germany、 South Korea、 Poland、 India、Mexico、 Turkey、 Spain、 Australia、 Kenya、 UK 、Argentina、 Russia、 Czech、 South Africa、 Saudi、 Thailand、 Colombia、 Nigeria、 USA、 Vietnam、 Brazil、 China、 Phillipines、 Indonesia

◇参考

・KPCB Internet trends 2014

・AdReaction 2014 | Marketing in a multiscreen world

・テレビ広告を好ましいと感じる人の割合が高い日本(KANTAR、プレスリリース)

・How the World Consumes Media−in Charts and Maps(Atlantic)

・Ronaldo World Cup Ad Goes Global as Web Starts to Trump TV(Boomberg)



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posted by 田中善一郎 at 21:59 | Comment(0) | TrackBack(0) | メディア
2014年05月26日

勢い付く新興メディアのBuzzfeed,Quartz,BIがインド版を立ち上げ

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 「BusinessInsider(BI)」に続いて、「 Buzzfeed」と「Quartz」の米国新興メディアが間もなくインド版を立ち上げる。

 今日(26日)新政権が発足するインドでは、モディ新首相が打ち出す経済政策に期待が高まっている。その流れに合わせるかのように、ニュースメディアの台風の目となっている米国生まれの新興ニュースの3サイトがインドで旗揚げするのだ。

Buzzfeedはムンバイにオフィスを構えることを今年の3月に明らかにしていたが、5月2日にFacebookページを開設した。以下のようにモディ氏関連のニュースを多く流している。Buzzfeed Indiaの立ち上げは秒読みに入ったようだ。


*Buzzfeed IndiaのFacebookページ

IndiaBuzzfeedFacebook.png


 Quartzは6月にインド版を立ち上げることを、Tumblr上で発表した。Atlantic Mediaが2012年9月から発行しているQuartzは、トラフィックの4割以上が米国外からで、海外トラフィックで一番多い国がインドである。

*Tumblrで告知したQUARTZ Indiano創刊案内IndiaQuartz201406.png


 一足早くBusiness Insiderは、メディアコングロマリットのTimes of Indiaと組んで、 2013年9月にBI Indiaを立ち上げている。

Business Insider Indiaのトップページ

IndiaBusinessInsider.png


 すでにインドにも、バイラル/キューレーションメディアの波が打ち寄せている。インド版Buzzfeedと呼ばれているSCOOP WHOOP(http://www.scoopwhoop.com/)などが迎え撃つ。同サイトを覗くと、「13 Places You Should Visit In India Before You Visit Their Counterparts Abroad」との見出しの記事に出くわした。海外の絶景地に行かなくてもインド国内にも素晴らしい絶景地があるよ、とのBuzzfeed風の記事だが、この記事だけで約10日間で13万5000件がネット上でシェアされていた。

 米国の新興メディアがなぜ一早くインドに上陸するのか。MediaBriefingが示す次の四つの図を見れば、その背景が納得できる。まず英語をしゃべる人口が、世界で二番目に多い国であることだ。
*英語スピーカーの人口。世界で米国に次いでインドが2番目に多い
IndiaMedia1.png

 次はインターネット人口が爆発的に伸びていることである。次の二つの図は2012年までの推移だが、昨年あたりからは安価なスマホが出回り始めており、インターネット人口の伸びがさらに加速化している。

*インドにおけるインターネット人口の推移
IndiaMedia2.png


*インドのインターネット普及率
IndiaMedia3.png


 多くの低所得者層を抱えていたインドであるが、現在の5000万人しかいない中間所得者層の人口が10年後には5億8300万人に膨れ上がると予測されている。今後、インターネットを活用した消費者が爆発的に増えるということである。


*所得階層別の割合の推移
IndiaMedia4.png


 このように膨大な潜在市場が擁するインドのインターネット市場は、メディア産業も含めて期待が持てる。また新政権には、景気刺激策を講じてくれるとの期待も大きい。インターネットを含めたメディア事業で何かと制約の多い中国に比べ、インドのほうがやりやすそう。そう思っていたのだが・・・。先ほど米国のBuzzfeedサイトに次のような記事が上がていた。モディ新政権をメッセージで批判した学生グループがバンガローで逮捕されたらしいという記事である。ヒンズー至上主義者として知られているモディ氏側が動いたのかも。やはり、インドでビジネスを行う場合は、宗教の関することはタブーである。    

IndiaBuzzfeedModi20140526.png


◇参考
・4 charts that show why publishers are launching in India(MediaBriefing)
・Hello, India(QUARTZ on Tumblr)


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2013年12月24日

爆発的に急成長するバイラルメディア、バブルなのか本物なのか

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  UpworthyやDistractifyなどの新興バイラルメディアが、驚異的な成長を示している。特にこの2か月の間の伸びは異常なほどだ。代表的なバイラルメディアである、BuzzFeed、Upworthy、Distractify、ViralNova、FaithItの月間ユニーク数が、この2か月弱の間にどれくらい増えたかを、以下の表で示す。いずれもQuantcastのデータである。

ViralMediaSite201312.png

    バイラルメディアは、ソーシャル系サイトでユーザーが共有したくなるコンテンツを発信し、一気にネット上で拡散させることにより、膨大なトラフィックを獲得しようとするメディアサイトである。旬の話題を興味深くまとめた記事や、お涙ちょうだい話、可愛い動物や世界の絶景の写真など、感情的に読みたくなるコンテンツが主流である。読まずにいられなくなる見出しでユーザーを引きつけている。思わず、いいね!やツイートして、友達とシェアしたくなるということだ。また人気急上昇のバイラルメディアのコンテンツを見ると、ネット上の記事や画像などを利用(キューレート)しているものが多い。センスの良い編集者なら少人数でも立ち上げることができるのも特徴。こうした海外のバイラルメディアについては、佐藤氏がブログ「メディアの輪郭」でわかりやすく紹介している。

  上の5つのバイラルメディア・サイトの月間ユニーク数の推移を、Quantcastのグラフで示す。1年間のレンジで示しているが、DistractifyやFaithItは立ち上がって間もないので2か月弱のレンジしかない。はっきりしているのは、この2か月間弱の間に成長がさらに一段と加速化していることだ。

ViralBuzzfeed201312.png



ViralUpworthy201312.png


ViralDistractify201312.png



ViralNova201312.png



ViralFaithit201312.png

 ここで取り上げたバイラルメディアで注目すべきは、モバイルユーザーの比率が高まっていることと、ソーシャルメディアでも特にフェイスブックからの流入トラフィックが急膨張していることだ。たとえばDistractifyは、全ユーザーの約6割がモバイルユーザーで、流入トラフィックの約9割がフェイスブックからとなっている。

 つまり、フェイスブックのニュースフィードで表示されている記事リンクからメディアサイトへ飛んでいくトラフィックが多くなっているのだ。成長が加速化している背景としては、フェイスブックがメディアサイトとの連携を強化していることがある。メディア記事リンクの投稿などを、ニュースフィードで優先的に表示しているようである。その結果として、この1年間でメディアサイトへのトラフィック流入が170%も増えたと、フェイスブックは発表している。12億人の巨大ユーザーを抱えたフェイスブックで、メディア記事リンクの投稿とニュースフィードでの露出が増えれば、感情に訴えるタイトルを見つけてクリック(タップ)しバイラルメディア・サイトに飛びつくユーザーも増えてくるのだろう。それに合わせて、バイラルメディア側でも、どのような記事に仕立てればより多くの人にフェイスブックで共有してもらえるかと、学習し磨きをかけているのだ。

 以下の表は、有力ソーシャルメディア(Twitter、LinkdIn、Pinterest、Facebook)で共有される記事を多く発信しているメディアサイトのトップ10である。メディア分析会社NewsWhipのデータである。Huffington PostやBuzzFeed、Upworthyのような新興メディアの記事が、伝統メディアの記事よりもソーシャルメディアで話題になる頻度が高くなってきている。さらにBuzzFeed、Upworthyのようにフェイスブック対策を講じたバイラルメディアは、フェイスブック上でやり取りされたアクション総数(いいね!、コメント、シェア)で伝統メディアを圧倒している。

有力ソーシャルサイトにおけるアクション数:2013年11月の総アクション数
ViralNewsSiteRanking201312.png
ソース:NewsWhipのSpike


 こうした動きの中で見逃せないのが、フェイスブックがニュースフィードの表示アルゴリズムを12月2日に変更したことである。ニュースフィードに表示される投稿が増えてくると、多くの投稿が目立たなくなり大事な情報も見逃すことになっていく。そこで今回の変更では、リンク情報を優先して掲載するようにし、またそのリンク情報にいいね!やシェアなどのアクションが多いとその情報を目立つ上位に配置していくという。また重要なニュース記事リンクの場合、そのニュースと関連のある他記事のリンクも表示するようになった。

  アクション数が多いバイラルメディアにとって、今回のアルゴリズム変更は追い風になり、フェイスブックからの流入トラフィックをさらに増やしていけるかもしれない。BuzzFeedやUpworthyに続けと、バイラルメディア・サイトが次々と生まれてきており、中には1カ月少々で数百万ユーザーを獲得するサイトも登場している。まだしばらくブームが続きそうだ。でも一方で、今のようなバブル状態がはじけるとの見方も出てきている。

 フェイスブックがニュースフィード掲載アルゴリズムを変更したのは、バイラルメディアを支援するためではない。狙いは、フェイスブック自身をユーザーにとってより価値のあるソーシャルメディアとして育てていくためで、ニュースフィードに質の低いコンテンツをなるべく掲載させないようにしたいのだ。品の高いニュースや楽しいコンテンツをフィードの目立つ位置に掲載していきたいのである。

 2年ほど前にグーグルが、低品質なコンテンツを大量生産するコンテンツ工場対策として、検索アルゴリズムを変更したことがあった。システマティックに低コストで大量に作り上げる低品質記事などの検索結果順位を下落させたりした。今回のフェイスブックのニュースフィード掲載アルゴリズムの変更も、質の低いバイラルコンテンツ工場対策も視野に入れているようである。グーグルの検索アルゴリズムと同様、フェイスブックのニュースフィード掲載アルゴリズムもこれから度々、変更を加えていくことになろう。メディアサイトもアルゴリズムの変更に対応していかなければならない。特にフェイスブックからの流入トラフィックに大きく頼るバイラルメディアはなおさらだ。今後、フェイスブックのアルゴリズムに受け入れられるバイラルメディアが生き続け、逆に遮断されるバイラルメディアは淘汰されそう。

◇参考
・Suddenly, Upworthy Clones Are Everywhere And Millions Of People Are Reading Them(Business Insider)
・The Most Viral Publishers of November 2013(The Whip Blog)
・More Ways to Drive Traffic to News and Publishing Sites(Facebook)・
・Does Facebook Think Virality Mills Are The New Content Farms?(Forbus)
・How Facebook could kill the new wave of viral media(WashingtonPost)
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2013年08月02日

メディア接触のトップ交代、TVからデジタルメディアへ、PCからモバイルへ

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 メディア接触が激変しているなか、メディア接触時間でデジタルメディアがTVを、モバイルデバイスがPCを追い抜く。eMarketerの調査によると、2013年の米国大人の1日当たりメディア接触時間でデジタルメディアが5時間を突破し、TV接触時間の4時間半を初めて追い抜く。またデジタルメディア接触の内訳でも、モバイルデバイス(非音声)が2時間21分となり、やはり初めてPC(デスクトップ/ラップトップ)の2時間19分を抜き去る。

 主要メディアの接触時間とシェアの推移(2010年から2013年まで)は次の通り。

USMediaTimeSpent2013a.png

USMediaTimeSpent2013c.png

 一日当たりのメディア接触時間が2010年の10時間46分間から2013年の11時間52分間と増え続けている。例えばタブレットを使いながらTVを視聴している場合、TV接触時間とモバイル接触時間の両方をダブルカウントしていることが響いている。さらにスマホなどの普及により、いつでもどこでもメディアに接触できる環境が整備されてきたことも大きい。ということは、まだメディア接触時間は増え続けるのではなかろうか。

 特に、デジタルメディアの接触時間が2013年には5時間9分間とすごい勢いで成長しているのが目立つ。2010年の3時間14分から約2時間、2012年の4時間31分から約30分間も増えている。TVの視聴時間はそれほど減りもしていないのだが、一気にデジタルメディアに追い抜かれ、早くも30分以上も差を付けられているのだ。そのデジタルメディアの成長エンジンとなっているのが、モバイルデバイスである。デジタルメディアの接触時間の内訳を見ても、2013年のモバイルデバイス(非音声)の接触時間は2時間21分間と、2010年の約10倍、この1年間だけでも約1時間も驚異的に増えている。少し前までインターネット利用の中心であったオンライン(デスクトップやラップトップのPCが中心)のメディア接触時間もあまり減りもしてないのだが、2013年にモバイルデバイスにものすごい勢いで抜き去られることになる。

 かつてのメディアキングであった新聞や雑誌のプリントメディアは悲惨だ。読者の紙離れが今も終わることなく続いている。2013年は新聞紙接触時間は18分間に、雑誌は14分間に落っこちた。


 次にデジタルメディアのデバイス別に、利用サービス(ソーシャルネットワーキングとビデオ)の推移を見ていこう。

USMediaTimeSpent2013d.png

 米国では、スマホと同様、タブレットの接触時間が急増している。スマホではソーシャルネットワーキングの利用時間が多いが、タブレットでは画面が大きいだけにビデオの利用時間も多い。ソーシャルネットワーキングの利用ではPCからスマホへ、ビデオの視聴ではPCからタブレットの流れが、本格化しそう。

 最後にモバイルデバイス別のメディア接触時間のシェア推移を。先に触れたように、米国ではタブレットの活用が際立つ。フィーチャーフォンによる非音声サービスの利用時間は非常に少なく、多くのサービスがフィーチャーフォンを対象にしなくなりそう。

USMediaTimeSpent2013b.png


◇参考
・Digital Set to Surpass TV in Time Spent with US Media(eMarketer)
・US Time Spent on Mobile to Overtake Desktop(eMarketer)
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2013年02月11日

オンラインメディアから消費者が得る価値、オフラインメディアを上回っている

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 今やオンラインメディアは、これまでのオフラインメディアを凌ぐ価値を消費者にもたらしてくれているようだ。ボストン・コンサルティング・グループ(BCG:Boston Consulting Group)の調査によると、オンラインメディアがアメリカの消費者にもたらす価値は、オフラインを上回っているという。

 メディアから得られる価値は、経費をかければ多く得られるのは当然である。平均的なアメリカの消費者は、年間にして1132ドルの価値があると見られるオンラインメディアに165ドルをつぎ込み、その結果960ドルの価値を得ている。一方、オフラインメディアには1600ドルの価値に対して696ドルも使い込んでいるので、正味で904ドルの価値しか得られていないことになる。

USMediaConsumerSurvey1.jpg

 今回の調査では、メディアを次の7カテゴリーに分けて、メディアの価値をはじき出している。
Books,
Radio and music,
U.S. newspapers and magazines,
TV and movies,
Video games,
International newspapers and magazines,
User-generated content(UGC) and social networks

 それぞれのカテゴリー別に、オンラインからとオフラインから得られる正味の価値を示したのが、次のグラフである。

USMediaConsumerSurvey2.jpg

 オンラインユーザーにとって有難いのは、FacebookやYouTubeのようなUGCやSNSからの価値が事実上コストゼロで得られることだ。つまり、年間にして311ドルの価値をタダで貰っているのである。


◇参考
・Online Media Value Outpaces Offline's in U.S.(conversationagent.com)
・Study: Online Media Pays Off for Consumers More Than Offline(All Things D)
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2013年02月04日

調査報道の担い手、主流マスメディアからNPOへ

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 メインストリームメディア(MM)から非営利組織(NPO)へ。アメリカでは調査報道の担い手が代わってきている。

 先週も、調査報道で2003年にピューリツア賞を獲得したNYタイムズのJoseph Sexton氏が、調査報道NPOのProPublicaに転職し2月からシニア編集者として活躍の場を変えるとの発表があったばかりである。CNNも調査報道部隊を閉鎖するという。新聞やTVなどの主流マスメディアは経営状況が年々厳しくなっており、ここ数年はレイオフラッシュが続いている。ニュースルームの記者や編集者も例外ではない。多くの人と時間を拘束しがちな調査報道に、メインストリームメディアが力を入れる余裕がなくなってきているのだ。

 日本ほどではないにしても、米国でも本格的な調査報道が減り、受動的な発表記事やエンターテイメントやゴシップの軽い記事が幅を利かせている。オンラインメディアの台頭がその流れを加速化させている。その結果もあって、たとえば新聞の信頼度調査でも、長期低落が続いている。以下はギャラップの調査結果である。

GullupNewspaperConfidence.jpg


 能動的な調査報道を夢見てジャーナリズムの世界に飛び込んだメディアパーソンにすれば、MMは居心地が悪くなっているのだろう。また調査報道が弱体化するのは、メディアの危機であるとの意識も高い。先のNYタイムズの記者も、同社がニュースルームの経費節減に向けて30人削減を実施するとの呼び掛けに応えて、NYTに見切りをつけ、調査報道NPOの代表格であるProPublicaに転職したわけだ。調査報道を続けるためにMMからNPOへ転職する流れは、この数年盛んになっている。このため、調査報道NPOの設立も相次いでいる。アメリカ国内だけではない。世界の政治や経済、社会が混とんとしている中で、グローバルな調査報道の必要性が高まる一方である。

  CIMA(Global Investigative Journalism Network )によると、調査報道NPOの団体数は2007年に26ヵ国39組織であったのが、2012年には47ヵ国106組織に膨れ上がっている。NPO間の情報交換や連携も増えそう。でも残念ながら、日本にはCIMA公認の調査報道NPOが存在しない。

InvestigativeJournalismNonprofitsWorldwide.jpg 


  ただ、調査報道NPOも資金難の問題を抱えている。個人中心の寄付金に大きく頼っているだけに台所事情は厳しい。年間予算の多いアメリカの調査報道NPOのトップ10は次のようになる。断トツのProPublicaでも年間予算は1000万ドル程度である。CIR(Center for Investigsative Reporting)やCPI(The Center for Public Integrity)でも、約500万ドルである。中小の調査報道NPOでは、スタッフが5、6人程度で予算が約5万ドルしかない団体も珍しくない。

NOPInvestigativeJournalismBudget.jpg

  調査報道NPOの多くは、自前のサイトを用意し調査報道記事を発信している。以下に、CIRとCPIのスナップショットを掲げておく。

CPI20130203.jpg


CIR20130203.jpg

 また調査報道NPOの記事は、新聞社サイトや通信社にも原則無償提供されており、主要新聞社サイトでも見かけることが多くなっている。さらに最近目立つのは、調査報道NPOに在籍している記者が、NYタイムズやワシントンポストなどの有力新聞社サイトのコラム(主にブログ)を請け負っている例が増えていることである。アメリカでは生涯一記者を貫く専門性の高い記者が多く、また名刺よりもパーソナルブランドを武器にしているだけに、調査報道NPOにも優秀なメディアパーソンが流入していくのかもしれない。


◇参考
・Investigative journalism is alive and well outside mainstream media(Watchdog.org)
・Tricky Times target、Layoffs likely without 30 voluntary buyouts(NYPost)
・NY Times Sports Editor Joe Sexton Leaving to Join ProPublica (Updated)(WRAP)
・Global Investigative Journalism: Strategies for Support(CIMA)
・Americans' Confidence in Television News Drops to New Low(Gallup)
・「特集 調査報道の現実」、(Journalism、2012年10月号、朝日新聞社)
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2013年02月03日

衰退する伝統メディアと躍進するオンラインメディア、人も組織も浮き沈みがくっきりと

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 伝統メディアからオンラインメディアへ。アメリカのメディア産業に携わる人や組織は、活躍の場をシフトさせている。アメリカ労働統計局(BLS;the Bureau of Labor Statistics)が発表したレポート“Media and Information”によると、衰退する伝統メディアに関わる労働者や組織数は年々大きく減り続けているのに対して、インターネットパブリッシングの労働者や組織数は増え続けている。

 アメリカの情報(メディア)産業の労働人口は、2001年あたりをピークにして下げ止まらない。多くの雇用を生み出していたパブリッシング分野(新聞や雑誌/本のプリントメディアなど)やテレコム分野における労働者の減り方が大き過ぎるためである。

USLabor01a.jpg

BLSは情報産業を次の56分野から成るものと定義している。各分野の2001年と2011年の労働者数は以下の表のようになる。ただ一つ労働者数が増えている分野であるOther information servicesは、「Internet publishing and broadcasting and web search portals」が中心となっており、つまりオンラインメディア分野である。この分野も2001年のネットバブル崩壊で労働人口は一時急落したが2005年ころから増え始めている。ただし、2011年になっても16万人前後と規模が小さく、テレコムなどの他分野の落ち込みを全く補えていない。やはりオンラインメディアの台頭は、メディア全体の労働人口を減らす方向に働いているのか。

USMediaInfo2011.png


 またBLSは次の8分野について、この10年間の労働者数と組織(会社など)数の推移をグラフで示している。ここでは4分野のグラフを掲げておく。
 
Internet publishing
Television broadcasting
Motion picture and video production
Motion picture and video exhibition
Radio broadcasting
Newspaper publishing
Sound recording industries
Book, periodical, and music stores


 新聞産業は2005年ころから、労働者数だけではなくて組織数も急落している。
USLabor03.jpg

 音楽メディア産業も、インターネットの台頭で、労働者数も組織数も下げ止まらない。
USLabor04.jpg

 本、雑誌、音楽の販売店で働いている労働者数も、そして店舗も、当然のように減り続けている。
USLabor05.jpg

 インターネットパブリッシング産業は労働者数も組織数も増えてはいるが、労働者数の増え方がこのレベルでは・・・。 
USLabor02.jpg


◇参考
・Media and Information(The United States Bureau of Labor Statistics)
・Gov. stats: Median salary for reporters $35K, $52K for editors(Poynter.)
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2012年09月07日

ピンタレスト経由のトラフィックが再び急伸、ヤフーを追い抜く勢い

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 ピンテレスト(Pinterest)からWebサイトへのトラフィックが再び急伸しており、米国では8月にヤフーを追い抜いた。 

 Shareaholicが実施している20万以上の米パブリッシャー・サイトへのトラフィック調査結果によると、誘導元サイト(トラフィックソース)のシェアは次のようになった。ピンタレストからWebサイトへの誘導トラフィックの割合が8月には1.84%となり、1.37%のヤフーを大きく追い抜いた。

AllTrafficSource2.JPG

 トラフィックソースの主要サイトの中から、ピンタレスト、ヤフー、Bing、ツイッターの4サイトを選び、今年に入ってからのシェア推移を見てみよう。今春に足踏みしていたピンタレストが6月ごろから再び急伸しているのが目立つ。また、ツイッターが意外と伸び悩んでいるのも気になる動きである。最近のツイッタークライアント(フリップボードなども含む)では、わざわざリンク先に飛ばなくても済むことが多くなってきたためか。

AllTrafficSource3.JPG

 次は、最初の表をグラフ表示したもの。ソーシャルメディア全盛と言っても、グーグルの検索結果(Organic)経由や直接アクセスしてくるトラフィックがまだまだ多い。でもやはり、グーグル検索からのトラフィックの割合が、春ごろからはっきりと減り始めている。

AllTrafficSource1.JPG


◇参考
・Pinterest Beats Out Yahoo! Organic Traffic to Become 4th Largest Traffic Source in the World [REPORT](shareaholic)
・Pinterest Now Sending More Traffic Than Yahoo Search, Shareaholic Says(SearchEngineLand)
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posted by 田中善一郎 at 10:59 | Comment(0) | TrackBack(0) | メディア
2012年06月20日

米国のタブレットユーザー、61%が有料コンテンツを購入

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 タブレットが本格的に普及し始めている。ついに昨日は、マイクロソフトまでが自社ブランド製品でタブレット市場に参入することになった。

 現在、米国では、インターネットユーザーの31%に当たる7410万人がタブレットを使っているようだ。1年前は12%の2830万人であったから、急激に増えている。1年後は、インターネットユーザーの約半分である47%(1億1740万人)が使うようになると見込まれている。

TabletOPA2112f.jpg

 上のグラフを含めて、米国のタブレットユーザーの調査レポート“A Portrait of Today’s Tablet User – Wave II,”をOAP(The Online Publishers Association)が公表していたので、一部を紹介する。今年の調査は2012年3月19日から3月26日まで、2540人の米国のインターネットユーザーを対象に実施した。調査対象のユーザーは8歳から64歳までで、年齢や性別の分布は実際の米国の人口構成に合せるようにしたという。

 この調査結果で個人的に関心があったのは、有料コンテンツの利用状況。以下のグラフのように、タブレットユーザーの61%が、何らかの有料コンテンツを購入していた。39%の人が電子雑誌を購入したと答え、定期購読者は19%であった。電子書籍の購入経験者は35%であった。電子雑誌より割合が小さいのは、電子書籍をキンドルなどのeリーダーで購読する人が多いせいではなかろうか。一方、電子新聞購読者の割合は15%と低い。ニュースコンテンツは個別の電子新聞アプリに頼らなくても、FlipboardやZiteなどのソーシャル系アプリ(一般に無料)で十分なのかな。

TabletOPA2012a.jpg

 次のグラフは、タブレットユーザーがどのようなタイプの有料コンテンツを購入しているかを示している。

TabletOPA2012b.jpg

 次は日常的に利用しているサービスを示している。

TabletOPA2012c.jpg

 ユーザーは主にどこでタブレットを使っているのだろうか。自宅で夕食後にのんびりと、ソファーやベッドの上でエンタテイメント系コンテンツを享受するというのが、平均的な姿のようである。

TabletOPA2012e.jpg


◇参考
・A Portrait of Today’s Tablet User – Wave II(The Online Publishers Association)
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posted by 田中善一郎 at 10:57 | Comment(0) | TrackBack(0) | メディア
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