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2018年07月28日

勢いが続く「LINE」「Instagram」「YouTube」「Twitter」、勢いが陰る「Facebook」

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 ソーシャルメディアの勢いは、日本国内でもまだ衰えそうもない。「LINE」「Instagram」「YouTube」「Twitter」のいずれも、ユーザー数が増え続けている。でも有力SNSのなかで「Facebook」だけが、ユーザー数が減り始めているようだ。

 総務省が先週公表した「平成29年情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」で明らかにした主要ソーシャルメディアの利用率推移からも、主要SNSの勢いの違いが読み取れる。今回の調査は、平成 29 年 11 月 11 日(土)〜17 日(金)に13 歳から 69 歳までの男女 1,500 人を(性別・年齢 10 歳刻みで 2017 年 1 月住民基本台帳の実勢比例)を対象に実施した。本調査研究は、総務省情報通信政策研究所が東京大学大学院情報学環との共同研究の形で行っている。

 同調査では2012年から代表的なソーシャルメディア系サービス(画像等の共有サイトも含む)の利用率を調べている。ここでは、その中からLINE、Facebook、Twitter、それに画像系のYouTube(2014年以降)、ニコニコ動画(2014年以降)、Instagram(2015年以降)の利用率推移を取り上げて、図1〜図6に掲げる。全世代および年代別の推移を示している。

 まず注目すべきは、LINEが2017年末に全世代通しての利用率が75.8%と前年の67%から大幅にアップし、YouTubeを抜き去ってトップに躍り出たことである。年代別で見ても、10代以外のすべての世代で最も高い利用率となっている。中でも、50代が53.8%から67.1%へ、60代が23.8%から39.8%へと、この1年間における高齢者の急増が際立った。

2017soumuLINE.png
(ソース:総務省)
図1 LINEの利用率の推移(全世代と年代別)


 Facebookは、世界の大半の国でナンバー1に居座っているのに日本では伸び悩み、とうとう昨年末に全世代通しての利用率が31.9%と前年の32.3%よりも減ってしまった。最も熱心なユーザーが多いはずの20代と30代で減り始めているのが厳しい。2018年第2四半期の決算発表でも、北米のDAU(Daily Active User)が前四半期比横ばい、欧州のDAU 数が同微減となっており、先進国での勢いに陰りが見え始めている。

2017soumuFacebook.png
(ソース:総務省)
図2 Facebookの利用率の推移(全世代と年代別)


 一方のTwitterは、グローバルに見ても日本がもっとも勢いのある国になっている。全世代通しての利用率が31.1%と増えており、Facebookと肩を並べている。10代や20代の若年層に至ってはTwitterがFacebookを大きく上回っていた。

2017soumuTwitter.png

(ソース:総務省)
図3 Twitterの利用率の推移(全世代と年代別)


 YouTubeは、LINEと同じように、若年層だけではなくて、高齢層の利用も増えている。全世代通しての利用率も72.2%と着実に高くなっている。10代(13歳以上)の利用率が93.5%とは凄い。

2017soumuYouTube.png
(ソース:総務省)
図4 YouTubeの利用率の推移(全世代と年代別)


 今や旬のInstagramの勢いもすさまじい。20代の利用率が52.8%となり、親方のFacebookの52.3%を上回った。全世代の利用率を男女別で見ると、女性が31%で男性が19.4%であった。女性の利用率も、Instagram(31%)がFacebook(30%)を追い抜いている。女性パワーがさく裂している。


2017soumuInstagram.png
(ソース:総務省)
図5 Instagramの利用率の推移(全世代と年代別)


 動画系のニコニコ動画は、有料のプレミアム会員数が減り続け先行き不安が膨らんでいるが、昨年末の利用率は再びプラスに転じている。本格的な回復基調に戻れるかどうか。

2017soumuニコニコ動画.png
(ソース:総務省)
図6 ニコニコ動画の利用率の推移(全世代と年代別)


 先週、FacebookとTwitterの決算発表の後、両社の株価が暴落した。その背景として、米国や欧州でユーザー数が頭打ち、あるいは減る傾向が見られたことがある。そこで早くも、ソーシャルメディア全盛時代が終ろうしているとの声も出始めている。

 そこで、米国における主要ソーシャルメディア系サービスの利用率の推移を見ておこう。今年1月にPew Reseach Center実施した2018年調査結果を加えたグラフを図7に示す。FacebookやTwitterのような先行SNSに成長の鈍化が見られるものの、その間に後発のInstagramやSnapchatが急成長し、さらに日本では鳴かず飛ばずのPinterestやLinkedInがそれぞれ29%、25%の高い利用率を維持している。このように多様なSNSを複数、用途に応じて使い分けしており、主要SNSの利用率の総計では図に示すように増え続けている。

 また先進国で先行SNSで天井感が出てきているが、若年の人口層が厚い開発途上国では、ソーシャルメディア系サービスの利用率はしばらく増え続けるだろう。先週のFacebookの決算発表時のデータを見ても、例えばアジアパシフィック地域のFacebookのDAUが5億4600万人と、1年前の4億5300万人から大幅に増やしている。ソーシャルサービスが失速し始めたというのは早すぎそう。


Pew2018SNS.png
(ソース:Pew Research Center)

図7 米国におけるソーシャルメディア系サービスの利用率の推移。利用率が20%を超えるサービスが増えている。 


 最後に、グローバルに人気の高いソーシャルメディア系サービスのFacebook、YouTube, Twitter, Instagramの利用率が、日米でどう違うかを見ておこう。Facebookを除けば、ほぼ同じ傾向を示している。グローバルにはローカルSNSであるLINEが、日本ではFacebookにとって代わる地位を確保してきているということか。
SNS日米比較2018.png
(データ:総務省、Pew Research Center)

図8 ソーシャルメディア系サービスの利用率の比較(日本と米国)。日本は総務省が2017年11月中旬に13歳以上の人を対象に実施した調査結果。米国はPew Research Centerが2018年1月上旬に18歳以上の成人を対象に実施た調査結果。




◇参考
・平成29年情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書(概要)(総務省情報通信政策研究所)
・Social Media Use in 2018 (Pew Research Center)



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posted by 田中善一郎 at 10:51 | Comment(0) | Web2.0 SNS CGM
2018年06月01日

高年層のSNS利用が増える一方で、若中年層のSNS離れが始まったのか

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 若中年層のSNS利用に陰りが・・・。

 総務省は先週末(平成30年5月25日)に平成29年通信利用動向調査の結果を公表し、年齢層別のソーシャルネットワーキングサービス(SNS)の利用状況を明らかにしたが、その中で気になったのが若年層と中年層でSNS利用率が前年比マイナスとなっていたことである。

 まずその結果を示すグラフを図1に。

平成29年通信利用SNS状況.png
(ソース:総務省)
図1 SNSの利用動向。各年齢層のインターネット利用者のうちSNSを利用している割合を示している。平成28年と平成29年の調査結果である。平成29年の調査は平成29年11月〜12月に実施。全国約4万世帯に郵送で調査票を配布し、回収率41.1%の16,117世帯から有効回答を得た。


 SNSを最も頻繁に利用している年齢層である13〜19歳、20〜29歳、30〜39歳において、揃って昨年のSNS利用率がわずかながらマイナス成長となっている。一方でSNSを利用している割合がまだ低い50歳以上の高年齢層や6~12歳の低年齢層では、SNS利用の割合がこれまで通り上昇している。

 図2に示す過去4年間(平成26年〜29年)のSNS利用動向を見ても分かるように、平成28年までは10代〜60代のすべての年齢層において、SNS利用の割合は増え続けていた。例えば、20〜29歳では71.4%(26年)→72.1%(27年)→76.6%(28年)と、30〜39歳では62.6%(26年)→65%(27年)→70.5%(28年)と、毎年着実に増えていた。ところが平成29年には10代〜30代の年齢層で急ブレーキがかかり、前年比で初めてマイナスに転じたのだ。


平成26~29年通信利用SNS状況a.png
(ソース:総務省)
図2 平成26〜29年におけるSNS利用状況。

 最もSNSを活用している若中年層において陰りが見えてきたのはなぜか。一昨年あたりから、20代や30代のSNS利用率が70%前後が達してきたが、早くも天井感が出てきたのだろうか。

 そこでSNS先行国の米国はどうなっているかを探ってみた。米シンクタンクのPew Research Centerは、毎年、18歳以上の米国成人のSNS利用率を観測してきている。今年1月末の2018年調査結果を含めて、これまでSNS利用率がどのように推移しているかを図3に示す。18〜29歳、30〜49歳、50〜64歳、65歳以上の四つの年齢階層別に示されていてる。


Pew SNSUsage2018.png
(ソース:Pew Research Center)
図3 米国における年齢階層別のSNS利用の割合。少なくとも一つのSNSを利用している米国成人の割合を示している。2018年調査は2018年1月に実施。

 SNSはもともと若者向けのコミュニティーサービスとして生まれてきた。その揺籃期から爆発的に急成長し始めた時期(2006年〜2008年:Myspace時代)において、SNSに夢中になったのは18〜29歳の若者だけで、30代以上の中高年者の大半からは白い目で見られるか無視されていた。若者の文化として開花したSNSは、2008年には18〜29歳の若年層でSNS利用率が早くも70%近くに達していた。

 ところがFacebookが、これまでトップを独走していたMyspaceを一気に追い抜いた2009年頃から、SNSの世界が様変わりしてきた。家族間のコミュニティーの場としても浸透してきたFacebookが、30代以上の年齢層にも広く利用され始め、年々、利用の輪がより高い年齢層へと拡大していったのだ。

 圧倒的なシェアを占めたFacebookが牽引する形で発展してきたSNSの勢いは、グローバルにもまだまだ衰えていない。若者の間でFacebook離れが目立ち始めているが、代わりにInstagramやSnapchatなどのSNSに新たに飛びつき、複数の多様なSNSを使い分ける個人が増えてきている。

 ただしSNS利用率で見ると、図3のPewのグラフからも読み取れるように、米国の若中年層において3年前あたりから伸びが急に鈍ってきている。18〜29歳で90%近くで、また30〜49歳で80%近くで、天井感が出てきている。また50~64歳の高齢者層も最近は、利用率が65%近くで伸びが鈍化し始めている。SNSの普及する時期も天井感が出る時期も、若年齢層から始まり次第に高齢者層で起こっている。天井の位置は、高齢層ほど低くなっている。

 このような米国におけるSNS利用率のトレンドが、日本でもある程度の時差を持って現れ始めたといえる。日本では、若中年層のSNS利用率で早くも天井感が出てきているように見える。70%前後とは天井が低すぎるように思える。国民性や文化の違いか。また平成29年調査では、調査票の回収率向上のため従来とは違う簡易調査票も用いており、その影響でマイナス成長に下振れしたのかもしれない。今回の調査でも、インターネット利用上の個人的な不安を問うと、87.7%と一番高かったのが「個人情報やインターネット利用履歴の漏えい」であった。これもSNSから敬遠される要因になったのかも。


 一方で、日本では50歳以上のSNS利用率がまだしばらく勢いよく上昇していきそう。同じ総務省の調査によると、50代のインターネット利用が昨年初めて90%を超えた。日本の人口構成は世界で例を見ない「棺桶型」と言われているようだが、人口のボリュームゾーンである上部の高齢者のインターネット利用率が若年層と同じ90%台に乗せ始め、SNS利用率も増えていきそう。リアルの世界だけではなくて、ネットの世界でも少子高齢化が日本は先行するのか。


◇参考
・平成29年通信利用動向調査 ポイント(総務省)
・平成 29 年通信利用動向調査の結果(概要)(総務省)
・平成28年通信利用動向調査 ポイント(総務省)
・Social Media Fact Sheet(Pew Research Center)
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posted by 田中善一郎 at 06:18 | Comment(0) | Web2.0 SNS CGM
2018年05月21日

金融新聞「FT」までがFBからインスタグラムへ注力シフト、絵文字を用いたりしてエンゲージメントが大幅アップ

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 インスタグラム(Instagram)は、美容やファッション、食、旅行などをカバーする軟らか系パブリッシャーにとって、今や最も注力するソーシャルプラットフォームとなっている。さらに驚くことに、インスタ映えと縁がなさそうな硬派系の金融専門紙フィナンシャル・タイムズ(FT)までも、プロモーションの有効な場としてインスタグラム対策に力を入れている。

 メディア分析会社のNewsWhipによると、FTがインスタグラムに投稿した記事の平均エンゲージメントが、フェイスブックへの投稿記事よりも13.4倍も高かったいう。英国の代表的な新聞サイトがこの1年間(2017年4月〜2018年4月)にインスタグラムおよびフェイスブックに投稿した記事を対象に、それぞれのSNSにおける記事一本当たりのエンゲージメント数(ここではコメント数、いいね!数といったリアクションの合計)を計数した結果が、図1である。

FT201804InstagramvsFB.png
(ソース:NewsWhip)
図1 インスタグラム投稿記事 vs フェイスブック投稿記事。英新聞系の8ニュースサイトが投稿した記事1本当たりの平均エンゲージメント数を示している。FTとGuardianはインスタグラム投稿記事のエンゲージメントが高い。バイラル性の高い記事を売りにする大衆新聞Daily Mailはフェイスブック投稿記事のエンゲージメントが高い。


 FTがフェイスブックに投稿した記事の平均エンゲージメントが201だったのに対して、インスタグラムに投稿した記事はその13倍以上の2,703の高スコアを得ている。インスタグラムのオーディエンスのほうが、FTの投稿記事に対して圧倒的に高い反応を示しているのだ。なぜFTの記事が、インスタグラムのオーディエンスに受け入れられているのか。

 上の図1を見ても分かるように、インスタグラム投稿記事のエンゲージメントが高いパブリッシャーと、フェイスブックのほうが高いパブリッシャーとに分かれる。各パブリッシャーの投稿記事のコンテンツの違いにもよるし、パブリッシャーの力の入れ方の違いにもよる。ただこれまで、日本は別にして、大半の国のパブリッシャーはフェイスブックに高く依存し、その対策に努めてきた。フェイスブック批判の嵐が吹き荒れている今日でも、ほとんどのパブリッシャーは大量の記事をフェイスブックに未だに投稿し続けている。

 ニュース系パブリッシャーからすれば、フェイスブックにはテキストや写真、さらには動画であろうと、これまでのスタイルのニュース記事を投稿できるので、多くの記事を提供できる。一方インスタグラムには写真や動画コンテンツが中心となり、それもインスタ映えするモノでないと埋没しかねないだけに、提供できる記事が限定される。 

 そのため、図1の各新聞系パブリッシャーでも、投稿記事数ではフェイスブック向けがインスタグラム向けよりもけた違いに多くなっているい。そこで、
総エンゲージメント=投稿記事数×1記事当たりのエンゲージメント
で比較すると、FTも含めてすべてのパブリッシャーで、フェイスブックの総エンゲージメントのほうが高くなる。

 ただ現状のままでは、フェイスブックのニュースフィード・アルゴリズムの変更次第でパブリッシャーが大打撃を被りかねないだけに、パブリッシャーからすればフェイスブックへの過度な依存から脱したい。その一環として、同じフェイスブック傘下であっても、いま旬のインスタグラムをもっと活用していきたくなる。

 FTは他の欧米の有力ニュースメディアに比べると、フェイスブックへの依存度は高くない。提供する硬い経済金融記事は一般にバイラル性が弱いため、フェイスブックではエンゲージメントが低くなってしまう。それに有料記事はpaywallに阻止される。それでも本流の記事を中心に投稿して、若いオーディエンスにリーチし認知してもらっていた。だが、若年層のフェイスブック離れが起き始めている昨今、若年層へのリーチを進めていくにはインスタグラムの更なる活用も必要になったのだろう。

 そこで、FTのインスタグラム・ページを覗いてみた。


FT20180520Instagram.png
図2 FTの公式ページ(インスタグラム)

 毎日、3〜5件の写真/動画/イラスト(漫画)/グラフのコンテンツが投稿されていた。ハリー王子の結婚式の写真(左上)は1万5000件のいいね!と71件のコメントを、プーチン氏から花束プレゼントを受けるメルケル氏の写真(右上)は4608件のいいね!と97件のコメントを、ヨガに関するグラフ(左中央)は4490件のいいね!と295件のコメントを受けていた。どの投稿コンテンツも、少なくとも1000件以上のいいね!を獲得しており、常連のファンを掴んでいるようだ。FTのブランド力も効いて、安心して閲覧できるのだろう。

 FT Photo Diary や漫画イラスト、グラフなどの定番のコンテンツを毎日数件、丁寧にまとめられている。簡潔なテキストが添えられているだけで、毎日数件のコンテンツなら、つかの間に閲覧できてしまう。インスタグラムではリンクを張れないこともあって、特定のFT記事と関連付けさせていないところも、押しつけがましさがなくて好感が持たれているのかも。

 また、話題になっているのが、コンテンツのテキスト文に絵文字を使っていることである。絵文字採用なんて当たり前のように思えるが、お堅い金融パブリッシャーが採用するとなると、話題になるのだ。FT Photo Diaryにカメラの絵文字を挿入する程度のことだが、インスタグラムユーザーに少しでも親しみを持ってもらおうとする姿勢が伺える。

 こうした、インスタグラムへの取組がうまくいったのか、月間の総インスタグラム・エンゲージメントが、図3に示すように、約2倍に跳ね上がっている。
FT201804InstagramEngagement.png

(ソース:NewsWhip)

図3 FTのインスタグラム・エンゲージメントの総計。この1年間で約2倍に。

 ついでに、FTのフェイスブックページも覗いてみた。インスタグラムページのフォロワー数が69万人に対して、フェイスブックページでは5倍強の380万人近くのフォロワーを抱えている。でも、フェイスブックページでの投稿記事1本当たりのリアクション(いいね!+コメント)は、インスタグラムページの13分の1以下しか得られていない。


図4 FTのフェイスブック・ページ

 インスタグラムページでは投稿記事すべてを簡潔に閲覧できる。一方フェイスブックページでは投稿記事はほとんどがFT記事と直結したリンク情報で、全文を閲覧するにはFTサイトに飛ばなければならない。フェイスブックユーザーのほうが満足度が低くなるのは仕方がない。

 分散型メディアを採るパブリッシャーは、ソーシャルプラットフォーム別に適した役割分担を持たせる必要がある。

◇参考
・How the Financial Times switches tactics to win big on Instagram(NewsWhip)
・Financial Times CEO John Ridding explains how to make people pay for media(recode)

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posted by 田中善一郎 at 13:13 | Comment(0) | Web2.0 SNS CGM
2017年08月18日

過熱するインフルエンサー・マーケッティング、「インスタグラム」が断トツの人気

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 最近のインスタグラムの躍進ぶりはすさまじい。特に若い女性向け商品を扱うブランドにとって、インスタグラムが最も重要なソーシャルメディアにのし上がってきた。そのプロモーション手段として、インフルエンサーによるスポンサードポスト(スポンサード投稿)の人気が沸騰している。インスタグラムのインフルエンサー・マーケッティングの市場規模は、今年にも10億ドルを突破する勢いを見せつけている。

 スポーツ選手、ミュージシャン、モデル、映画俳優などの有名人の多くは、インターネット上でも影響力の大きいインフルエンサーとして活動している。そのために、ブログで発信したり、さらに台頭著しいソーシャルメディアに公式アカウントを立ち上げてセルフプロモーションに精を出している。ただソーシャルメディアにおいては、有名なセレブだけではなくて一般人から浮上してきた大多数のインフルエンサーも、活躍の場を拡大してきている。インスタグラマーと称される人気インフルエンサーが爆発的に増え続けている。
 
  こうしたインフルエンサーはたいてい複数のソーシャルメディアにポストしているが、彼らに今最も注力しているソーシャルメディアはどれかと問うと、インスタグラムと口をそろえて答えるようになってきた。米国のマイクロインフルエンサー・マーケッティング会社Hashoffが顧客のインフルエンサーを対象に実施した最新調査によると、回答者のほとんどがインスタグラムを最優先のソーシャルメディアと見ている。図1にその結果を示す。また彼らが今投稿しているソーシャルメディア(複数回答)は、インスタグラムが99.3%、フェイスブックが67.1%、スナップチャットが50.8%、ツイッターが43.1%、ユーチューブが27.8%、ピンタレストが27.8%となっている。

スポンサードポストのエンゲージメントが急上昇


InfluencerTopSNSInstagramA.png
(ソース:Hashoff)
図1 インフルエンサーが投稿しているソーシャルメディアはどこか?
 
 インスタグラムの人気が沸騰しているのは、現在最も勢いのあるソーシャルメディアであるためであろう。全世界の月間アクティブ利用者数(MAU)が今年の4月末に7億人を突破し、その前のわずか約4か月間で1億人も増えたのだから、その勢いは目を見張る。年内に10億人の大台に乗せそうとの声も聞かれる。

 インフルエンサー・マーケッティングに乗り出しているブランド(企業)にとっても、インスタグラムは最も注目したいソーシャルメディアとなってきた。実際、インスタグラムのインフルエンサーを活用したスポンサードポストが急激に増えている。メディア分析会社NewsWhipの調査によると、インスタグラムに投稿されたスポンサードポストのエンゲージメント数(=ライク数+コメント数)の総数が最近の5か月間で3倍以上にも膨れ上がっている。図2に示すように、3月前半には10日間で約1000万件であったのが、最近の10日間では約3000万件に上昇している。ここでNewsWhipが計測対象としたスポンサードポストは、
#paid, #ad, #sponsored, #spon, #promoted, #ambassador 
などのハッシュタグが付き、ペイドコンテンツであることを明記した投稿(ポスト)である。


InstagramSponsored201707a.png
(ソース:NewsWhip)
図2 インスタグラムに投稿されたスポンサードポストの総エンゲージメント数。10日間単位で計数した総エンゲージメントの推移を示している


 このように、インフルエンサーもブランドもインスタグラムになびくのは、インフルエンサーを起用したスポンサードポストが高いエンゲージメントを得ているからである。もともとメインコンテンツが写真や動画であるインスタグラムがの方が、テキスト中心のフェイスブックやツイッターよりも高いエンゲージメントが得やすい。海外の調査でも、インスタグラムポストがフェイスブックポストやツイッターポストに比べて、ケタ違いに高いエンゲージメントを得ている、との報告をよく見かける。

ブランドポストよりもスポンサードポストを

 そのため、ブランド(企業)自身も相次いで公式インスタグラム・アカウントを立ち上げ、そこへ自社商品のプロモーション/キャンペーンのためにポストしている。ただブランドからのポストだけだとオーディエンスからあまり反応が得られないかもしれないので、インフルエンサーにスポンサードポストを頼むことになってきている。図3に、インスタグラム・マーケッティングに取り組んでいる大手ブランド5社がそれぞれ、ブランドポストおよびスポンサードポスト当たりどれくらいの平均エンゲージメントを得ているかを示している。

InstagramSponsored201707b.png
(ソース:NewsWhip)
図3 Urban Decay、Nordstrom、Wendy's、JetBlue、Postmatの各ブランドが、インフルエンサー・ペイド・ポストおよびオウンドポストのそれぞれで獲得した平均エンゲージメント数を示している。Influencer paid post(スポンサードポスト)の平均エンゲージメントは2017年6月に計測し、Owned Post(ブランドポスト)の平均エンゲージメントは2017年7月に測定した結果である。

 ブランドのポストよりもインフルエンサーのポストのほうが、明らかに高いエンゲージメントが得られている。例えばアメリカの格安航空会社のジェットブルー航空(JetBlue)は自社ブランドの公式アカウントでポスト当たり平均で2363件のエンゲージメントを得ているが、セレブのインフルエンサーを起用したスポンサードポストでは24万件と100倍以上のエンゲージメントを獲得していた。

InstagramSponsored201707c.png
図4 インストグラムで1310万人のフォロワーを擁する女優のVictoria Justiceが、航空会社のJetBlueのためにペイドコンテンツをポストした。スポンサードポストであることを明らかにするために、#adと#jetblueのハッシュタグを付けている。

 インスタグラムのインフルエンサー・マーケッティングの例としては、Airbnbが実施したスポンサードポストも話題になった。歌手のMariah Careyを皮切りにトップクラスのセレブを起用したスポンサードポストを、2015年7月からの2年間で37回も行った。超セレブのインフルエンサーにAirbnbで予約できる豪華な宿泊地に泊まってもらい、セレブに楽しんでいる写真をポストしてもらう。今年2月にヒューストンで開催されたスーパーボウルのハーフタイムに出演したLady Gagaには、ヒューストンの豪華ホテルをAirbnbが用意した。そこに泊まった彼女は図5で示すスポンサードポストを発した。Airbnbのホテルに泊まったことが多くのメディアで伝えられた効果も大きかった。
 

Thank you @airbnb for the gift of the gorgeous home in Houston for #SB51

A post shared by xoxo, Gaga (@ladygaga) on Feb 6, 2017 at 7:01am PST



図5 Airbnbのインフルエンサー・マーケッティング・キャンペーンで起用されたLady Gagaのスポンサードポスト。

 このようにセレブのスポンサードポストが牽引する形で、インスタグラムのインフルエンサー・マーケッティングは今年にも10億ドルの大台に達する勢いで拡大している。そこで最近の3週間(2017年7月1日〜21日)において、インスタグラムのスポンサードポストで多くのエンゲージメントを集めたインフルエンサーのランキングを見てみよう。図6にエンゲージメントの多いトップ7のインフルエンサー・アカウントを掲げる。これもNewsWhipの測定結果である。

InfluencerEngagementFollower.png
(ソース:NewsWhip)
図6 スポンサードポストで多くのエンゲージメントを得たトップ7のインスタグラム・インフルエンサー。2017年7月1日から21日までの間に獲得したエンゲージメント(ライク数+コメント数)総数に合わせて、各インフルエンサーが擁するフォロワー数も示している。トップの Chiara Ferragni さんは、7月の3週間に彼女が発したスポンサードポストで571万のエンゲージメントを得ている

 サッカー選手のCristiano Ronaldo(@cristiano)のように有名なセレブが多く選ばれているが、インターネット生え抜きのインフルエンサーも上位に顔を出している。ネットの世界で最も影響力があると言われているファッションブロガー Chiara Ferragni さん(@chiaraferragni)は、インスタグラムのスポンサードポストでも最も多くのエンゲージメントを獲得したトップインフルエンサーとなっている。

膨大なフォロワーを抱えたセレブよりも、エンゲージメント率の高いマイクロインフルエンサーを
 
 よく知られているセレブともなると、これまでのリアルワールドでのファンも流れて公式アカウントで膨大なフォロワーを抱えている場合が多い。このためセレブを起用したスポンサードポストなら、先のAirbnbの例のように幅広くリーチできるはず。だが、超セレブを起用するとなると膨大な経費がかさむため、限定されたブランドしか仕掛けられないだろう。それに、図6の1億人以上のフォロワーを誇るRonaldoの例で見てもわかるように、超セレブのアカウントは一般にフォロワー数の多さの割にエンゲージメント数が少ない傾向が出ている。いわゆる、エンゲージメント率が意外と低いのだ。ここでは、
 エンゲージメント率=(ライク数+コメント数)÷フォロワー数
とする。

 それよりも、図6のFerragni さんのように、ネット業に特化したネット生え抜きのインフルエンサーのほうが、テーマを絞っていることもあって、セレブほどファン数が多くなくてもエンゲージメント率がおおむね高い。さらにフォロワー数が1万人を切るインフルエンサーでも、テーマを絞ることによって、非常に高いエンゲージメント率を上げている場合が少なくない。インフルエンサーマーケッティングが盛り上がっているのも、ブランドが用意したメッセージ(写真や動画)よりも、消費者でもある一般のインフルエンサーが生活目線で撮った写真や動画のほうが、オーディエンスの大きい反応が得られるからである。そのため、フォロワー数が少なくても高いエンゲージメント率を得るポストを連発する、いわゆるマイクロインフルエンサーがスポンサードポスト市場の主役になってきているのだ。

 ニッチなテーマに絞ったマイクロインフルエンサーの例として、子育ての写真や動画をインスタグラムにポストしているママさんインフルエンサーを見てみよう。NewsWhipが取り上げていたアカウント例を図7に示す。

子育てインフルエンサー201707.png
図7 子育てをテーマにしたインフルエンサー。ポスト数、ライク数、コメント数は4月1日から7月1日までの期間で測定した値。それぞれのアカウントは、@taza、@mother_of_daughters、@mommyshorts、@bluebirdkisses。

 子育て関連の商品やサービスを提供しているブランドが、このようなママさんインフルエンサーを起用したスポンサードポストを多く依頼するようになってきている。そのスポンサードポストの例を、図8に。

Guys, while I'm not totally ready to say goodbye to summer and let these kiddos go off to school in just a few weeks (I'm selfish like that. Could the school year start in November, maybe?!), I've partnered with @DSWShoeLovers on my blog today to show you two styles that I'm wearing into Fall. Swipe left to see both looks and click the link in my bio for the full post! #MyDSW #sponsored

A post shared by Naomi Davis // Love Taza (@taza) on Aug 11, 2017 at 11:45am PDT



図8 子育ての写真や動画を投稿しているNaomi Davisさん(愛称taza)のスポンサードポスト。このポスト例では、靴販売会社DSWがスポンサーで、#sponsoredのハッシュタグを付けている。もちろん、彼女の子供たちはDSWの靴を履いている。彼女はlove TAZAのブランドで事業展開している


◇参考
・How Instagram influencers drive 100x the engagement for brands
(NewsWhip)
・Instagram Dominates Influencer Marketing (Report)(Adweek)
・Micro-Influencers Are More Effective With Marketing Campaigns Than Highly Popular Accounts(Adweek)
・Influencer Marketing Prices Rising in the UK(eMarketer)
・Making $15,000 PER POST. Why Instagram Is Now The Best Social Network For Online Retailers(Bitcatcha)
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posted by 田中善一郎 at 11:18 | Comment(0) | Web2.0 SNS CGM
2017年07月27日

フェイスブックの売上高成長率が鈍化していると言っても、前年比で45%増とやはり凄い

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 ソーシャル化・モバイル化の上昇気流に乗って、フェイスブック(FB)の業績は相変わらず調子が良い。2017年第2四半期(4月〜6月)決算でも、純利益が39億ドルと前年同期に比べ71%も増やしている。

 ところが、前回の四半期決算発表時あたりから、このような高度成長も厳しくなってきていると語り始めている。ニュースフォード(タイムライン)に流していく広告が打ち出の小槌となっているが、満杯になってきており割り込ませる広告にも限界に達してきているのだ。

 同社売上高のほとんどが広告売上に頼っており、その四半期単位の売上高の成長率も確かに鈍り始めている。2015年第2四半期から売上高成長率が、図1に示すように、
59.23%→55.77%→50.81%→49.24%→45%
と、四半期ごとに成長率が減り続けているのだ。

 でも、成長率が鈍っているといっても、2015年第2四半期の売上高は前年同期比45%増の93.2億ドルとなっている。アナリストの予想の92億ドルをも上回っている。贅沢な心配にも思えるのだが・・。

FBRevenueGrowth2017Q2.png
(ソース:Facebook)
図1 四半期単位の売上高成長率の推移

 売上高や利益を順調に伸ばしているだけではなくて、旗艦のFacebookを核に、MessengerとWhatsAppそれにInstagramといった各ソーシャルサービスのユーザー数を着実に増やし続けている。MAU(月間アクティブユーザー)で見ても、先月20億人を突破させたFacebook(FB)を先頭に、それぞれ12億人を超えたMessengerとWhatsApp、また急成長で7億人に達したInstagramと、勢いが止まらない。こうしたユーザーの行動から膨大な個人情報(ビッグデータ)を収集し、それが同社のサービスの強力な武器となっている。

 FBのMAU(月間アクティブユーザー)とDAU(デイリーアクティブユーザー)の推移は、図2と図3に掲げる。MANが20億人、DAUが13億人を超え、いずれも前年比で17%増となった。

FBMAU2017Q2.png
(ソース:Facebook)
図2 MAUの推移。前年比17%増で、20億人を突破した。

FBDAU2017Q2.png
(ソース:Facebook)
図3 DAUの推移。前年比17%増で、13.2億人が毎日利用している。ユーザー数を増やす一方で、DAU/MAUが66%を維持

 ここで注目すべきは、世界中でとてつもない規模のユーザーを相手にサービスを提供しながら、月間アクティブユーザーのうち日々のアクティブユーザーの割合を示すDAU/MAUがグローバルで66%を維持していることだ。また完全に天井を打った見られている北米(US&Canada)市場でも、この1年間でMAUを1000万人増やす一方で、DAU/MAUを前年より1%増の77.5%とエンゲージメントをアップさせている。

 最近のインターネットユーザーは、複数のSNSを使い分けしている。だから、たまにしか使っていないユーザーも多く含まれやすい。そこでDAU/MAUのような指標が意味がある。いかに習慣化して使っているかを知る上でも重要だ。昨年、Pew Research Centerが米国の成人が代表的なSNSがどれくらい頻繁に利用されているかを調査していたので、その結果を図4に掲げる。FBが最も頻繁に利用されている。ユーザー数そのものが圧倒的に多い上に、一人当たりの利用頻度も高いのである。いかにFBが日常的に頻繁に利用されているかが読み取れる。

PewSNS2016DailyWeekly.png
(ソース:Pew Research Center)
図4 毎日のように利用されるSNSとたまにしか利用されないSNS


◇参考
・Facebook Reports Second Quarter 2017 Results(Facebook)
・Quarterly Earning Slides:Second Quarter 2017(Facebook)
・Social Media Update 2016(Pew Research Center)


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2017年07月18日

勢い増す「LINE」と「Instagram」、頭打ちの「Facebook」と「ニコニコ動画」

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 「LINE」と「Instagram」が勢いを増している一方で、「Facebook」と「ニコニコ動画」の勢いに陰りがちらついてきた。総務省が先週公表した「平成28年情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」で明らかにした主要ソーシャルメディアの利用率からも、その明暗が浮き彫りになっている。

 毎年公表される同報告書では、2012年から代表的なソーシャルメディア(画像等の共用サイトも含む)の利用率を提示しており、2016年データは同年11月26日〜12月2日に13〜69歳の男女1500人を対象に調査した結果である。ここでは、その中からLINE、Facebook、Twitter、それに画像系のYouTube(2014年以降)、ニコニコ動画(2014年以降)、Instagram(2015年以降)の利用率推移を、図1〜図6に掲げる。

 まず、LINEから。圧倒的な利用率を誇り、2016年末でも全世代通しての利用率が67%となり、前年に比べさらに7%も大きくアップしているから驚きである。20代と30代では90%を超え、事実上ほとんどの人が利用していることになる。また60代の高齢者が急増していることも見逃せない。


2016soumuLINE.png
(ソース:総務省)
図1 LINEの利用率の推移(全世代と年代別)

 LINEとは対照的に、日本におけるFacebookは勢いが今一つである。世界で20億人が毎月利用し今でも増え続け、ほとんどの国で利用率が70%を超えているのに、日本では約30%あたりで伸び悩んでいる。これからの成長を期待したいところだったのに、10代と20代の若者の利用率が前年を割り込み、早くも全世代で見ても頭打ちとなってしまっている。中高年者向けのSNSとして落ち着いてしまうのか。
 
2016soumuFacebook.png
(ソース:総務省)
図2 Facebookの利用率の推移(全世代と年代別)

 Twitterは一気に話題を拡大できる手軽さが受けたのか、日本での利用率は高い。グルローバルに見ても特出しており、本場米国をも上回っている。特に10代と20代で50%を超えており、若者への人気は衰えていない。

2016soumuTwitter.png
(ソース:総務省)
図3 Twitterの利用率の推移(全世代と年代別)

 動画系プラットフォームとしては、YouTubeは不動の地位を確保している。全世代での利用率も70%近くとLINE並みに使われている。

2016soumuYouTube.png
(ソース:総務省)
図4 YouTubeの利用率の推移(全世代と年代別)

 同じ動画系のニコニコ動画は、有料のプレミアム会員数が昨年前半をピークに減少し始めていたが、今回の総務省の利用率でも、減速し始めている。もともと、マニアックな男性ファンに偏っている傾向が強く、利用率が20%に達しなくても熱量の大きいユーザーに支えられて勢いがあったのだが・・。スマホシフトに出遅れたりして、10代を中心にニコニコ動画離れが出てきている。

2016soumuニコニコ動画.png
(ソース:総務省)
図5 ニコニコ動画の利用率の推移(全世代と年代別)

 動画系で勢いが凄まじいのがInstagram 。都市に住む20代〜30代の購買職力のある女性が飛びついているようだが、確かに10代〜30代の利用率の急伸が目立つ。しばらくInstagramフィーバーが続きそう。

2016soumuInstagram.png
(ソース:総務省)
図6 Instagramの利用率の推移(全世代と年代別)



◇参考
・平成28年情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書(総務省):東京大学大学院情報学環との共同研究
・Social Media Fact Sheet(Pew Research Center)
・【最新版】2017年6月更新! 11のソーシャルメディア最新動向データまとめ(Social Media Lab)
・「ニコ動」有料会員、さらに減少続く(ITmedia)

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2017年04月05日

若者が占拠していた「スナップチャット」にも、"おじさん"と"おばさん"が押し寄せてきた

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 若者に圧倒的に支持されている「スナップチャット(Snapchat)」。上場を果たし、今や米国で最も上り調子のSNSとなっている。そのスナップチャットに興味深い動きが出てきた。見向きもしなかった中高年層の人々までも、昨年あたりから次々と仲間入りし始めているのだ。

 若者たちがはまっているソーシャルサイトのスナップチャットで、中高年層ユーザーの割合が急上昇している。そのような分析結果を、米comScoreが2月末にリリースした“2017 US Cross-Platform Future in Focus”で明らかにした。そのレポートの中で、米国のスナップチャット・ユーザーの年齢層別分布が2016年の1年間でどのように推移したかを、図1のように示している。

Snapchatミレニアル世代中高年層201703.png
(ソース:comScore)
図1 スナップチャット・ユーザの年齢分布の推移
 
 2015年12月にはスナップチャット・ユーザーの46.8%が18〜24歳の若者で占められていたのが、1年後の16年12月には28.5%へと急速に減っている。ミレニアル世代(18〜34歳)で見ても,その1年間で76%から54.1%へと縮小している。一方、45歳以上の中高年層の割合が、15年12月の11.2%(=7.7%+3.5%+1.0%)から1年後の16年12月には30%(=13.5%+12.4%+4.1%)へと急拡大している。明らかに、これまで若者で賑わっていたコミュニティーの場に、中高年者が流れ込んでいる。

 ただ誤解してもらいたくないのは、決して若者のスナップチャット離れが起こっているわけではないことだ。それどころか、若者への浸透は今も進んでいる。図2に示すように、18〜24歳の米国人でスナップチャット・アプリを利用している割合は増え続けており、2016年12月には78%に達している。
 
SnapchatAppPenetration.png
(ソース:comScore)
図2 スナップチャット・モバイルアプリの若年層への浸透率

 これまでも、学生仲間のコミュニティサイトとして立ち上がったフェイスブックや、ブログ全盛時代に140文字以下の情報発信サービスとして立ち上がったツイッターは、サービス開始時から若者の琴線に触れていたようだが、中高年層からは「なんで夢中になるのか、さっぱりわからん」と無視されていた。スナップチャットも同じ道を歩んでいるようだ。テキストではなくて動画や写真でチャットし、しかもすぐに消えてしまう。動画や写真は記録として残して置くものと思い込んでいる中高年者にすれば、動画や写真を瞬間的なメッセージとして使い捨てするやり方に、ついていけない。

 にもかかわらず、フェイスブックが中高年層にも浸透し始めたきっかけは、若者(子供)と両親・祖父母との家族間の交流ツールとして使われたからと言われている。スナップチャットも同じように、外出している若者(子供)が両親に居場所を知らせるツールとして使われだしており、それに伴って中高年者のスナップチャットユーザーが増え始めているようだ。スマホのキーボードからテキストチャットでやり取りするよりも、スマホのカメラで撮った動画や写真で交流するほうが、手軽だし実感が伝わると、高齢者も認識しはじめてきたのか。「書く」「読む」から「撮る」「視る」への流れが加速化している。

 このように、若者だけのものと思われた新しいネットカルチャーも、当初は見向きもしなかった中高年層にも浸透していく。図3は、代表的なSNSにおけるユーザーの年齢別分布である。2016年12月に調査した時のデータである。学生向けのSNSとしてスタートしたフェイスブックも今では、全年齢層にくまなく浸透している。米国人口分布に似通った形で、フェースブックが浸透しているのだ。ミレニアル世代の割合が特出しているとは言えなくなっている。ツイッターもトランプ爺さんが使っているように、中高年層にかなり利用されいる。最後発のスナップチャットは、ユーザーの53.4%がミレニアル世代に占められているように、まだ若者が幅を利かせているが、これからどれくらいの勢いで中高年層が増え続けるか注目される。

Snapchat20170401b.png
(ソース:comScore)
図3 主要SNSのユーザ年齢分布

 スナップチャットはまだ発展途上のSNSである。代表的なSNSのモバイルアプリについて、それぞれのユニークビジター数(2016年12月)と成長率を、図4に示す。同じくcomScoreが調べた結果である。2016年12月のユニークビジター数が前年比で最も伸びたのがスナップチャットで、断トツの114%増もの成長率を誇った。

SnapchatMobileApp201704.png
(ソース:comScore)
図4 主要SNSのモバイルアプリのユニークビジター数(2016年12月)と成長率


◇参考
・ Cross-Platform Future in Focus report (comScore)
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2016年08月25日

ソーシャル化とモバイル化でも、「日本の特異性」が一段と進む

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 ソーシャル化とモバイル化が加速し、インターネットの世界がこの数年の間にすっかり様変わりしてきた。先進国だけではなく新興国も含めてである。世界中のインターネットユーザーが今や、モバイル端末(主にスマホ)からSNSを介してネットに接するのが当たり前になってきたのだ。

 かつてソーシャルやケータイのサービスで先行していた日本が、「ソーシャル+モバイル」時代においてもトップランナーとして突っ走ているに違いない。と思っていたのだが、どうも日本はいつもの特異性を発揮して、少し他国とは違った道を歩んできているようである。

 インターネットユーザーのうち、SNSを利用している割合を国別に見てみよう。英調査会社GlobalWebIndex(GWI)によると、グローバルのオンラインユーザー(16〜64歳)の93%は、少なくとも一つのSNSアカウントを有しているとレポートした。注目すべきは、図1で示す国別(34カ国)のSNS利用率である。日本は、グローバル平均より20%も下回る約70%と、特出して低いことだ。面白いことに、インド、インドネシアなどのアジア諸国、ブラジル、アルゼンチンなど南米諸国、サウジアラビア、UAEなどの中近東諸国では、ほとんどが95%前後と極めて高い。つまり、多くの新興国・開発途上国では、事実上、「インターネットユーザー=ソーシャルメディアユーザー」となっている。

GWIAtLeastOneSocialMediaAccount2016.png
(ソース;GWI)
図1 インターネットユーザーのSNS利用率。国別で比べると、日本の低さが際立っている

 こうしたインターネットユーザーは、平均すると異なった7種類のソーシャルメディア・アカウントを保有するという。先に紹介した新興国・開発途上国では、図2に示すように、一人当たり8種類以上のアカウントを持っている。一方日本では、約2種類とずば抜けて低い。バーチャルなソーシャルメディアに寄り付かずにリアルワールドを満喫している高齢者が多いせいかもしれない。


GWISocialMediaAccount2016new.png
(ソース:GWI)
図2 インターネットユーザー一人当たりのSNSアカウント保有数。Facebook、YouTube、Facebook Messenger、Twitter、Google+、WhatsApp、Instagram、LinkedIn、Pinterest、Line、Snapchatなどの中から、何種類のアカウントを保有しているかを示している。ほとんどの国のユーザーは平均で6〜9個のアカウントを有しているが、日本では約2個と非常に少ない。

 国別のSNS利用率を、総務省が発行した「平成28年版 情報通信白書」でも調べていたので、図3と図4で紹介する。日本以外に米国、英国、ドイツ、中国、韓国も調査し比較しているが、やはり日本が最も低い。確かに日本の高齢者(60代)のソーシャルメディア無視が目立つ。図1のGWIの調査では、世界中の高齢(45〜64歳)のネットユーザーの85%がソーシャルメディアのアカウントを持っていることになっているのだが。ただ図4に示すように、最もSNS利用に熱心な20代〜30代でも、日本は他国に比べて低い。

情報通信白書平成28年SNS利用率.png
(データソース:平成28年版 情報通信白書)
図3 国別のソーシャルメディア利用率。20代、30代、40代、50代、60代のそれぞれの回答結果を、各国の各世代の人口比で加重平均したもの。

情報通信白書平成28年年代別SNS利用率.png
(データソース:平成28年版 情報通信白書)
図4 日本、米国、中国における年代別のソーシャルメディア利用率

 このように日本人ネットユーザーはソーシャルメディアを利用する割合が低いだけではなくて、さらに一人当たりの利用時間も短いようだ。GWIなどの調査結果(2016年1月)でも、日本人の一日当たりのSNS利用時間は、図5のように、0.3時間(約18分)と他国と比べて極端に短い。他国はすべて1時間以上となっており、多くの新興国では3時間前後となっている。日経新聞でさえも、"Japanese spend least time on social media worldwide"と伝える。GWIの調査法を精査していないので何とも言えないが、日本人の利用時間はもう少し長いように思える。

TimeSpentonSocialMedia201601無題.png
(ソース;GWI,we are social)
図5 国別SNS利用時間

 日本でもSNSの利用が年々活発化しているのだが、グルーバルに見れば活発度が相対的に極めて低いのは間違いなさそう。その流れを支えるモバイル環境でも日本は特異性を発揮している。同じくGWIが、モバイル端末からのインターネット利用時間を国別で比較していたので、図6に掲げておく(PCからのインターネット利用時間も示されていたが、ここでは省く)。

TimeSpentonTheInternetThroughMobile.png
(ソース;GWI,we are social)
図6 モバイル端末からのインターネット利用時間

 日本人のモバイル端末からのインターネット利用時間は、0.6時間(36分)と短い。他国では1時間から4時間までとバラついているが、日本と比べると圧倒的に長い。特に目立つのは、新興国の多くは3時間前後と長いことだ。つまり新興国では、
「モバイル利用時間=インターネット利用時間=SNS利用時間」
となっている。

 日本を含むネット先進国では、「固定通信網+PCインターネット」時代から始まり、「低速モバイル網+フィーチャーフォン・インターネット」との長い並走を経て、最近の「高速モバイル網+スマートフォン・インターネット」時代に入っている。このため高齢化でも先行する先進国では、PCインターネットを主に利用する人が多く、また馴染みのフィーチャーフォンを使う高齢者も少なくない。

 一方、新興国・開発途上国では、「固定通信網+PCインターネット」時代を事実上バイパスし、一気に「モバイル網+スマートフォン/フィーチャーフォン・インターネット」時代に突入している。このため、インターネットユーザー=モバイルオンリーユーザーとなっている。ネットサービスも、ポータル全盛時代をバイパスしてソーシャルメディアを享受することから始まっている。新興国のほうが先進国よりも、モバイル端末やSNSの利用率が高くなっているのもうなずける。

 日本が新興国だけではなくて先進国と比べても、ずば抜けてSNS利用率が低くモバイル・インターネット利用時間が短いのは、超高齢化と保守性、それに既得権者を大事にする政策のためなのか。今年の情報通信白書で調べた、スマートフォンおよびフィーチャーフォンの利用率でも、日本が際立っていた。フィーチャーフォンからスマートフォンへのシフトが鈍くなってきており、フィーチャーフォンの利用率が40%と他の先進国と比べても高止まりしている。。逆にスマートフォンの利用率が60%前後と伸び悩んでいる。先進国では、スマホ利用率とSNS利用率が連動する傾向にあるだけに、日本でSNSが幅広く定着するのはもう少し先か。

情報通信白書平成28年スマホ.png
(データソース:平成28年版 情報通信白書)
図7 国別のスマートフォンおよびフィーチャーフォンの利用率。ふだん、私的利用のために利用しているモバイル端末を質問した結果である。

 

◇参考
・GWI Social: Q2 2016(GlobalWebIndex)
・Digital in 2016(we are social)
・「平成28年版 情報通信白書」の概要(総務省)
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2015年10月18日

米国の10代、急激にフェイスブック離れが進む一方で、インスタグラムとスナップチャットの人気急騰

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 若者のフェイスブック離れが進み、それに代わって写真共有のインスタグラムやスナップチャットの人気が急上昇している。2年ほど前からいくつかの調査で明らかになってきていたが、このほど実施された投資会社Piper Jaffrayの10代市場調査(2015年秋版)でも、この傾向が一段と加速化していることが明白になった。

 Piper Jaffrayは毎年春と秋の年2回、米国10代の消費動向や人気ブランドを調べており、今秋は13歳から19歳までの9400人(男性比率が56%)の若者を回答者として実施した。図1は、主要SNSを対象に、最も重要なSNSは何かを指名させた調査結果である。各SNSに対して、回答者の何%が最も重要と見たかを、2012年秋から15年秋までの推移で示している。

PiperJaffray2015fSNS.png
図1 10代の米国人が最も重要とみているSNSは? Piper Jaffrayの調査より


 フェイスブックを最も重要なSNSと見た回答者の割合が、2012年秋に42%もあったのが15年秋には15%へと激減している。一方インスタグラムは、12年秋に12%であったのが15年秋に33%と3倍近くも増え、フェイスブックよりもはるかに重要なSNSと位置付けられているのだ。さらに生まれて4年ほどのスナップチャットも19%とフェイスブックを一気に追い抜いている。実際に最も頻繁に利用しているSNSとしてはまだフェイスブックがトップのようだが、ただ大人が主導のフェイスブックから離れたいという若者の思いが急速に膨らんでいるのは間違いない。

 このファイスブック離れの流れは20代にも波及している。18歳以上の米成人を対象にSNS利用調査を実施しているPew Research Centerが、大人のオンラインユーザーがどのSNSを利用しているかを調べた結果を図2に示す(複数のSNS利用も含む)。フェイスブックに利用率は微増しているものの、大人全体では72%あたりで天井感が出ている。30-49歳層のフェイスブック利用率を見ると、2014年春に63%であったのが15年春には79%と増えており、中核ユーザー層の高齢化が一段と進んでいる。ところが18-29歳の若年層のフェイスブック利用率は、14年に87%であったのが15年に82%へと落ちていた。20代の若年層ではフェイスブック離れが始まっているのだ。一方で大人の世界でもインスタグラム人気は28%と年々増えてきているが、ここでも18-29歳の若年層のインスタグラム利用率は55%と若い人たちの間での人気度が際立っていた。

PewSNS201508.png
図2 米国成人の主要SNS利用率の推移。 Pew Research Centerの調査より

 Pew Research Centerも珍しく13-17歳の10代を対象にしたSNS利用調査を、14年秋から15年春にかけて実施していた。それによると、米国の10代が最も頻繁に利用しているSNS(単一回答)は、フェイスブックが41%、インスタグラムが20%、スナップチャットが11%と、フェイスブックがトップを維持していた。同時に世帯所得額階級別に10代が最も頻繁に利用しているSNSも調べていた。図3に示すように、富裕層ほどフェイスブック離れが進み、インスタグラムやスナップチャットの利用率が高くなっているという興味深い結果が出ていた。10代特有の現象か。富裕層家庭の若者ほど、自慢したいファッションや美容、美食などの写真をたくさん撮っているせいかもしれない。

PewSNSTeen2015.png
図3 世帯別所得により、10代のSNS利用率が異なる。  Pew Research Centerの調査より 

 Piper JaffrayとPew Research Centerの両調査から、10代を中心に20代も含めてフェイスブック離れが加速化しているといえよう。ただ、まだフェイスブックが利用率の最も高いSNSとなっているのは、学生や社会人となると付き合い上使わざる得ないためかもしれない。でもPiperの調査結果のように、10代の間で大切なSNSとしてフェイスブックからインスタグラムやスナップチャットなどへのシフトが急激に進んでおり、気持ちの上でのフェイスブック離れが止まりそうもない。一方で、フェイスブックの中核となる中高年層は逆に増えてきているようで、気持ちの上でもフェイスブックから離れなれなくなっている中年が多そう。

 Piper Jaffrayが実施している米国10代の消費動向調査は、30回目を迎えており、今秋も興味深いデータを多く提示してくれている。例えば上のインスタグラムやスナップチャットと関連する消費では、GoRroの調査があった。GoRroカメラを所有している10代の割合は、今春の17.9%から今秋の19.8%と増えていた。GoRroで撮った動画も、若者はインスタグラムやスナップチャットで共有しているのだろう。 


◇参考
・Taking Stock With Teens - Fall 2015( Piper Jaffray)
・Survey Finds Teens Prefer Instagram, Twitter, Snapchat for Social Networks(WSJ)
・More Denim, Netflix and YouTube; Less Handbags and Broadcast Media, According to Survey of 9,400 Teens( Piper Jaffray)
・GoPro: Piper Cuts to Hold; Teens Show Little Interest in the Camera(Barron's)
・Mobile Messaging and Social Media 2015(Pew Research Center)
・Teens, Social Media & Technology Overview 2015(Pew Research Center)
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2015年08月13日

ソーシャルログイン利用率、Facebookの寡占化が進む一方で、日本ではヤフーが独走

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 ソーシャルログインでも、Facebookが圧倒的に利用されている。Gigyaの調査によると、米国を中心にほとんどの国において、Facebookの利用率が群を抜いて高く、シェアをさらに拡大している。一方日本では、フィードフォースによると、Yahoo ID(Yahoo Japan)がシェア56.5%で独走している。

 Gigyaネットワークのソーシャルログインのシェア推移は図1のようになる。Facebook利用のログインの割合が増え続け今年第2四半期には66%と、全ソーシャルログインの2/3を占めるようになった。逆に、Google+やYahooがシェアを落としている。

図1 Gigyaネットワークのソーシャルログインのシェア推移
SocialLoginGIGYA1.png
(ソース:Gigya)

 分野/業界別のシェアでもFacebookの人気が際立っている(図2)。モバイルデバイスで77%と、モバイル時代でのFacebookの優位性を見せつけている。どの業界でも、Facebookのログインシェアが60%を超えていた。

図2 分野/業界別シェア
SocialLoginGIGYA2.png
(ソース:Gigya)

 グローバルな州別のシェアでも、Facebookのシェアはダントツで、一番小さいアフリカ/中東で63%も占めていた。図3で北米、欧州、アジア・パシフィックのの各州におけるシェアを掲げておく。

図3 北米、欧州、アジア・パシフィックのシェア
SocialLoginGIGYA3.png
(ソース:Gigya)


 日本のソーシャルログイン・シェアはフィードフォースが公開していたので、図4で紹介する。Yahoo IDの今年5月のシェアは56.5%と、Facebookの22.1%を大きく引き離していた。昨年9月からのシェア変動がほとんどなかった。

図4 フィードフォースの「ソーシャルPLUS」における日本国内シェア
SocialLoginJapan1.png
(ソース:フィードフォース)

 業界別シェアを図5で示す。注目されるのはメディア分野で、Yahoo ID(Yahoo Japan)のシェアが64.2%と一段と高いことである。日本のオンラインニュース市場でYahooニュースが独占してきたという特殊性を反映しているのかもしれない。

図5 日本国内の業界別
SocialLoginJapan2.png
(ソース:フィードフォース)


◇参考
・The Landscape of Customer Identity: Facebook Dominates, Payment Providers on the Rise(Gigya)
・国内ソーシャルログイン利用率はYahoo! JAPAN IDが56.5%でシェアNo.1!ソーシャルログイン利用者の6割がモバイルユーザーという結果に。(フィードフォース)

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2015年07月30日

フェイスブックの決算、モバイルシフトの成果をさらに押し上げる

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 Facebookの第2四半期(4月〜6月)決算によると、売上高が前年同期比39%増の40億4000万ドルと、アナリストの予測(39億9000万ドル)を上回った。

 Facebookのグローバルのトラフィック指標は、2015年6月時点で次のようになった。アクティブユーザー数の伸びに鈍化の兆しがちらつくものの、おおむね順調に成長を続けている。ユーザー数が15億人近くと巨大になりながらも、アクティブ率(DAUs/MAUs)を65%維持しているのは凄い。このFacebookの勢いを支えているのが、やはりモバイルシフトの成功であろう。月間モバイルアクティブユーザーは13億人を突破し、Facebookユーザーの9割近くがモバイルデバイスからも利用していることになる。さらにモバイルデバイスからしかアクセスしないユーザー(Mobile-Only MAUs)は、1年前の3億9900万人から6億5500万人と爆発的に増えた。年内にも、Facebookユーザーの半数が、モバイルオンリー・ユーザーになりそうだ。

 以下に代表的なトラフィック指標と、最近の推移を示すグラフを掲げておく。

Daily active users (DAUs) : 9億6800万人(前年同期比17%増)
Mobile DAUs: 8億4400万人(前年同期比29%増)
Monthly active users (MAUs) : 14億9000万人(前年同期比13%増)
Mobile MAUs:13億1000万人(前年同期比23%増)



Facebook2015Q2MAU.png


Facebook2015Q2DAU.png


Facebook2015Q2MobileMAU.png


Facebook2015Q2MobileOnlyMAU.png


 モバイルシフトにより、売上高も順調に増え続けている。以下の四半期単位の売上高推移からも明らかなように、同社の売上高のほとんどは広告に依存している。その広告売上高の76%がモバイル広告であるのだ。1年前(2014年第2四半期)の62%から、一段とモバイル依存を高めている。当然だが、今年の第1四半期の73%からも増えている。

Facebook2015Q2Revenue.png

 ここで注目したいのは、モバイルユーザーが増えるだけではなくて、モバイルユーザーあたりのモバイル広告売上も伸び続けていることだ。QUARTZが、モバイルDAUあたりのモバイル広告売上高をプロットしていたので、以下に掲げておく。1年前の2.63ドルから3.45ドルへと増えている。

Facebook2015Q2MobileAdRevenueperMobileUser.png


◇参考
・Facebook Reports Second Quarter 2015 Results(Facebook)
・Facebook Q2 2015 Results(Facebook)
・Facebook is about to pass 1 billion daily active users(QUARTZ)


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2015年05月25日

フェイスブックの年代別利用率、日米では大きく違う

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 フェイスブックは今や約14億人近い利用者数(月間アクティブ利用者数)を抱え、グローバル市場で圧倒的なシェアを誇るSNSとなっている。普及が出遅れていた日本でも、この数年の間に急成長を続け、すっかりメジャーなSNSとして定着してきたようだ。その日本での利用率の調査結果を、先週、総務省が「平成26年情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」の中で公表していたので、覗いてみた。

 また、米国内でのファイスブック利用率はPew Research Centerから公表されていたので、年齢別利用率を日米間で比較してみた。

FacebookUsersUSJapan.png

 総務省の調査は、2014年11月に13歳から69歳までの1500人を対象に実施した結果である。10代から60代までの年代別回答者の利用率を示しているが、グラフでは10代の利用率(25%)を除いている。

 米国のPew Research Centerのフェイスブック利用率調査は、2014年9月に18歳以上のインターネットユーザー1597人を対象に実施した結果である。18-29歳、30-49歳、50-64歳、65歳以上の各年齢層別の利用率を計数している。非インターネットユーザーも含めた場合の利用率は、調査結果よりも10%〜10数%ほど差し引いて見たほうがよさそう。

 それを勘案して日米で年齢層別利用率を比べるべてみても、やはり中高齢者層で大きな差が見られた。米国では中高年齢層でも利用率がかなり高いのに対して、日本では高齢者の利用率が極端に低くなっていた。米国民(大人)の55%がフェイスブックを活用し、そのうちの7割が毎日利用しているというから、米国社会に及ぼす影響力が極めて大きいといえる。それに比べ日本では若年層を中心に利用者が限定されており、高齢化社会なのにほとんどの高齢者がまだ使っていないのが現況である。

 ただ日本のSNS市場ではラインにも注目したい。フェイスブックを上回る勢いで成長しているからだ。総務省調査によるライン利用率を先のグラフに付け加えてみると、以下のようになる。全年代に渡って、ラインの利用率がフェイスブックを凌いでいた。米国内のフェイスブック利用率と比較しても、50歳までの年齢層においては、日本国内のライン利用率の方が高いのではなかろうか。

FBLINEUsers2014.png

 利用率でラインがフェイスブックを上回っていたり均衡している国としては、日本以外では台湾やタイが知られている。グローバルに見れば多くの国でフェイスブックが圧倒的に市場を制覇している。

◇参考
・Social Media Site Usage 2014(Pew Research Center)
・「平成26年情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」(総務省)

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2015年04月05日

米国で爆発的に成長しているメディアサイトとモバイルアプリとは

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  ネット産業は相変わらず、ソーシャル旋風とモバイル旋風で沸き立っている。ネット先端国の米国でも、2〜3年ほど前に調査会社などが立てた予測を上回る速度で、ソーシャル化やモバイル化が進んでいる。この1年ほどを振り返っても、その激動ぶりがすさまじい。

 comScoreが公開したレポート「2015 U.S. Digital Future in Focus」でも、加速化するソーシャル化とモバイル化の流れの中で、最近のデジタルメディア・ビジネスの変容ぶりを定量的に伝えている。そのレポートの中で目に留まったグラフを二つ、紹介する。

 最初のグラフ(図1)は、2014年にユニークビジター数が急増したデジタルメディア・サイトを示している。月間ユニークビジター数が2000万人を超える規模のメディアサイトを対象に、昨年1年間で40%以上の高度成長を遂げた人気急上昇サイトだけをピックアップしている。それでも17サイトも選ばれているからすごい。

comScoreDigitalMedia2014d.png
(ソース:comScore)
図1 2014年に急成長したデジタルメディア・サイト。2014年末までに、ユニークビジター数が2000万人を超えたサイトだけを選んでいる。

 同レポートでも明らかにしていたが、米国人がデジタルメディアに接触する時間が、2010年12月から2014年12月までの4年間で、157%も急増している。それを後押ししたのは、当然のことだが、スマホに代表されるモバイル端末の普及がある。スマホによるデジタルメディア接触時間はこの4年間で394%も増え、全デジタルメディア接触時間の半分近くを占めるようになった。図1で選ばれたサイトも、多くがスマホ対応で成果を上げたのだろう。

 顔ぶれを見て興味深いのは、新興サイトだけが飛び出しているのではなくて、比較的歴史のあるサイトも選ばれていることだ。ソーシャルメディア(SNS)では、今話題のSnapchat(+67%)やVine(+58%)に加えて、LinkdIn(+68%)と、驚くことにMySpace(+469%)までが突如現れている。数年前までSNSのトップランナーであったのに今や忘れられた存在になっていたMySpaceだが、昨年末のWSJのブログ記事で、昨年11月の月間ユニークユーザー数が前年同月比575%増の5000万人を突破したと伝えられ,大騒ぎになっていた。音楽コンテンツを充実させ、月間ビデオビュー数が3億回超え、若い音楽ファンが飛びついたようだ。ソーシャルゲームで息を吹き返したミクシィと似通った復活劇なのかな。

 ニュース系メディアでは、 BuzzFeed(+43%)を先頭に、Refinery29(+198%), Vice(173%), Business Insider(+55%) の新興サイトが昨年大暴れしたが、今年も勢いを増しそう。また10年以上も生き延びてきたブログパブリシャーのGawker Media(+42%)も踏ん張っている。さらに老舗メディアのサイトでも、WashingtonPost(+71%)や、BBC(+46%)、NYPost(+105%)が頑張っているのも注目したい。それなりの手を打っているのだ。たとえばWashingtonPostは、多くの地方新聞などと提携し、それぞれの読者にWashingtonPostの有料記事を無料で閲覧させるプログラムを実施している。このパートナー企画が功を奏し、同紙発行人によると、サイトの2015年2月の月間ユニーク数が前年同月比63%増の4800万人に、うちモバイルビジター数が同80%増の3100万人に、ページビュー数が同109%増の5億になったという。

 つぎの図2は、2014年にユニークビジター数が急増したモバイルアプリをピックアップしている。月間ユニークビジター数が100万人を超えるアプリサービスで、年間の成長率が200%超を示したアプリを選んでいる。

comScoreDigitalMedia2014e.png
(ソース:comScore)
図2 2014年に急成長したモバイルアプリ。2014年に、ユニークビジター数が200%増えたアプリを選んでいる。

 大都市の交通サービスに新風を吹き込んでいる配車アプリのUber(+440%)とLyft(835%)が、やはり際立っている。新しい出会い系サービスのアプリTinder(+737%)の躍進も目立つ。大手小売店チェーンのKOHL'S(+793%)とWalmart(+342%)の各アプリの集客急増も見逃せない。Walmartのアプリは同店の多くの購買者に欠かせなくなっている。同店での購入価格が競合店より高い場合、その差額分をキャッシュバックしてもらえるSavings Catcherをアプリから実施できるからだ。

 デジタルメディアやモバイルアプリの市場は参入障壁が低く競争が激しいだけに、それなりの新しい仕掛けが必要なようだ。新興企業だけではなくて、老舗企業にも活躍の場が出てきたのかもしれない。
 

◇参考
・2015 U.S. Digital Future in Focus(comScore)
・A Digital Update, By the Numbers(comScore)
・Publisher Frederick J. Ryan Jr. sends note to Washington Post staff about 2015(washingtonpost.com)
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2015年03月13日

若者がなびくSNSと離れいくSNS

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  インターネットの最先端国の米国でも、未だにソーシャルメディアの利用率が増え続けている。 Edison ResearchとTriton Digital が実施した最新の調査によると、12歳以上の米国人の73%がソーシャルメディアを利用しているという。1年前の67%から6%も利用率がアップしている。スマホからの利用が底上げしているのだろう。

  この8年間のソーシャルメディア利用率の推移は次のようになる。今年の調査は2015年1月6日から2月10日までに実施、12歳以上の米国人2002人を対象に電話でインタビューした。 

SNSEdison2015CurrentlyUse.png
図1 12歳以上米国人のソーシャルメディア利用率

 現在利用しているソーシャルメディア・サービスの利用率は次のようになった。新しいサービスが誕生してきており、複数サービスを利用している人が増えている。今回(2015年)と1年前(2014年)において、8種類のソーシャルメディア・サービスの各利用率を示している。成長が鈍化しているサービスも見られるが、概ねまだ伸びている。Pew Research Centerが毎年18歳以上の米国インターネットユーザーを対象に実施している調査でも、主要ソーシャルメディア・サービスは勢いよく伸び続けている。

SNSEdison2015a.png
図2 主要ソーシャルメディア・サービスの利用率

 ところが、ソーシャルメディアを最も頻繁に利用している若年層の利用状況を見ると、変調が見え始めている。確かに図3のように、12歳から24歳までの10代中心の若者に絞ると、主要ソーシャルメディア・サービスの利用率は今でも一段と高くなっている。図2と比較しても明らかに、若者の利用率が低かったのはビジネスパーソン向けSNSのLinkdInだけであった。

SNSYoungAmericans201502.png
図3 12歳から24歳までの若年層が利用しているソーシャルメディア・サービス

 この1年間の若者の利用率の変化を見ていくと、変調の兆しが現れてきている。下の図4は、Edison Researchなどの調査結果をMCがグラフ化したものである。ここで注目すべきは、ソーシャルサービスの御三家とも言えるFacebook(80%→74%)、Twitter(36%→32%)、Google+(34%→26%)の利用率がこぞって落ちたことだ。一昨年あたりから話題になっている"若者のFacebook離れ"の動きが顕在化している。でもPew Research Centerが昨年発表した若年層の利用率変化(2013年と2014年)を見ると、Facebookが71%から71%、Twitterが18%から24%と落ちてはいなかった。ただPewの場合の若年層の範囲が18歳から29歳までとなっており、社会人が中心である。社会人ともなると、Facebookから簡単に離れられないのかもしれない。一方、Edison Researchの調査での若年層は12歳から24歳までの非社会人が中心なので、新しい面白いソーシャル系サービスが登場すれば、気軽に乗り移っていくのだろう。10代でのFacebook離れがジワジワ進んでいるのは間違いなさそうだ。

SNSYoungAmericans201502a.png
図4 若年層のソーシャルメディア・サービス利用率の変化

 一方で若年層がなびくSNSも顕在化してきた。上図で見逃せないのが、Instagram(53%→59%)とSnapchat(45%→57%)の2サービスが共に利用率が高く、さらに伸び率も高いことだ。特にSnapchatは欧州でも利用率が高まり、最近になって企業価値も150億ドルと急上昇し台風の目となっている。ところで日本に目を向ければ、10代を中心とした若年層が利用するソーシャルメディアはLINEの独壇場なのか。


◇参考
・Snapchat Rising in Popularity With Youth(MC)
・the infinite dial 2015(Edison Research)
・Young Americans Haven't Abandoned Facebook (Yet)(statista)
・The Most Popular Social Networks For Young Americans [CHART](Hypebot.com)
・Social Media Update 2014(Pew Research Center)

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2015年02月15日

ソーシャルメディアでシェアされる人気コンテンツ、サイトによってこんなにも違う

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  パブリッシャーが発するコンテンツを知る場として、ソーシャルメディアの役割が大きくなっている。特に若い人は、ソーシャルメディアで話題になっているコンテンツを閲覧する機会がますます増している。

  そこで、ニュースやエンターテイメントコンテンツを提供するメディアサイトでは、いかにして彼らのコンテンツがソーシャルメディアでより多くのユーザーに共有してもらうかが重要になってきた。ところがソーシャルメディアのタイプによって、拡散しやすいコンテンツが異なるはずだ。ソーシャルメディア対策に力を注がなければならなくなったパブリッシャーにすれば、どのようなコンテンツがどのソーシャルメディアで拡散しやすいかを定量的に知りたいところだ。

 そこでメディア分析会社NewsWhipは、パブリッシャーサイトが発する各記事が代表的なソーシャルメディアでどれくらい共有されているかを計測している。同社は毎月、フェイスブックとツイッターについて、それぞれで共有数の多かった上位パブリッシャーサイトを公表している。今回は、フェイスブックとツイッターにリンクトインとピンタレストを加えたソーシャルメディアのそれぞれにおいて、どのような記事が共有数が多いかを比較している。2014年10月から12月までの3か月間でパブリッシャーが発信した各記事の共有数を計数した。

 各ソーシャルメディアにおいて、共有数の多かったトップ100の記事を取り上げ、比較している。驚くことに、各ソーシャルメディアにおけるトップ100の記事にほとんど重なりがなかったのだ。以下の表では、特定のソーシャルメディアで選ばれたトップ100本の記事がどれくらい、他の三つのソーシャルメディアのトップ100に入っているかを示している。例えばフェイスブックで選ばれたトップ100本の記事は、ツイッターやピンタレストで1本しかトップ100に入っていない。リンクトインにいたっては、1本も選ばれていない。ある程度、棲み分けが進んでいるとは思っていたが・・・・。(注:本文では表と食い違っていて、フェイスブックとリンクトインのトップ100に同じ記事が2本入っていると説明していた)

図1 主要ソーシャルメディア4サイトのそれぞれの間で、共にトップ100に選ばれた記事数
NewsWhipSharedTopSNS.png
(ソース:NewsWhip)


 NewsWhipの毎月のレポートを見ていても、フェイスブックとツイッターにおいて、拡散しやすいパブリッシャー・コンテンツの違いは読み取れる。フェイスブックでは感情に訴えた記事や、エンターテイメント性の高い記事、それに最近ではクイズ記事が盛んに共有される。そこに集中的に注力したのがBuzzFeedに代表されるバイラルメディアである。フェイスブックで選ばれたトップ100の記事のほとんどが、バイラルメディア発の記事である。一方、ツイッターでは速報性のあるコンテンツ(記事)がリツイートされる。このため新聞などの伝統メディアがツイッターを活用する場合が目立つ。

 リンクトインとピンタレストは日本国内では今一つパッとしないが、米国ではパブリッシャーが無視できないソーシャルメディアとなっている。リンクトインはビジネスパーソン向け、ピンタレストは女性向けで、共に中年ユーザー層が厚いのが特徴である。それぞれのソーシャルメディアの反応を見ながら、パブリッシャーは共有しやすいコンテンツを発信しているのだ。

 NewsWhipのレポートで、リンクトインで共有数の多いコンテンツを分析していたので、フェイスブックとの違いを見てみよう。ちなみに、Pew Research Centerが昨年9月に実施したソーシャルメディア利用率調査によると、米成人(18歳以上)のオンラインユーザーのうち、71%がフェイスブックを28%がリンクトインを使っていた。またリンクトインユーザーの86%は、フェイスブックも併用していた。

 次の図2で示した表は、リンクトインにおける人気の高いパブリッシャー・ランキングである。2014年10月の1か月間に各パブリッシャーが発信した記事ずべての共有数を総計し、その共有数の多いパブリッシャーの順位である。ビジネスパーソン向けのコンテンツを発信しているパブリッシャー・サイトがズラリと並んでいる。ファイスブックの方がユーザー数や利用時間が圧倒的に多く、リンクインのビジネスユーザーもファイスブックも利用しているのだが、フェイスブックで埋没してしまうビジネス向けコンテンツが、リンクトインでは脚光を浴びるわけである。逆に、ファイスブックで巨大な共有数を誇り上位に陣取るバイラルメディア・サイトは、リンクトインでは姿を現していない。あのBazzFeedすら影が薄いのだ。

図2 リンクトインで共有数の多いパブリッシャー・ランキング。2014年10月のトップ20。
NewsWhipLinkdIn201410.png
(ソース:NewsWhip)

 次はリンクトインで共有数の多い記事一覧。2014年9月の調査である。やはり、キャリアアドバイスや自己啓発関連の記事の人気が高い。逆に、フェイスブックで人気記事ランキング(共有数の多い記事)で上位をほぼ独占しているクイズ記事が、リンクトインでは相手にされない。

図3 リンクトインで共有数の多い記事一覧。2014年9月のパブリッシャー発の記事が対象
NewsWhipLinkdIn201409.png
(ソース:NewsWhip)

 このように米国のパブリッシャーにとって、棲み分けを考慮したソーシャルメディア対策を講じやすい。日本ではフェイスブックがリンクトイン的な役割も果たしており、米国のような棲み分けははっきりと起こっていない。というか、仕事と遊びの場を曖昧にしておきたいのかな。

◇参考
・The Most Shared Stories On Different Social Networks Are Very Different(NewsWhip)
・The Biggest LinkedIn Publishers Of October 2014(NewsWhip)
・Four LinkedIn Lessons From Six Months Of Exclusive Data(NewsWhip)
・Social Media Update 2014(Pew Research Center)
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2015年01月12日

米国の主要ソーシャルメディア、この1年間で高齢者ユーザーがほぼ倍増

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 ソーシャルメディアは若い人中心のコミュニティーサービスのはずだが、米国ではこの1年間、高齢者ユーザー数の成長率が際立って高かった。Pew Research Centerの調査によると、主要ソーシャルメディアの年齢層別成長率を比べると、驚くことに各サイトでこぞって65歳以上の高齢者層が一番高かったのだ。ユーザー数そのものはまだ少ないものの、多くのサイトで1年前に比べて2倍近くも増えている。

 毎年実施しているPewの調査は、昨年は9月に米国の18歳以上成人のインターネットユーザー1597人を対象に実施した。米国のオンラインユーザーが、代表的なソーシャルメディアをそれぞれ何%利用しているかの結果が、次のグラフである。5サイトにおける2012年、2013年、2014年の利用者率の推移を示している。Facebookが圧倒的にユーザー数が多いのは変わらないが、成長率が完全に鈍化しており、2014年は前年とほぼ同じユーザー数となった。一方、LinkedIn、Pinterest、Instagram、およびTwitterでは、2014年の成長率がさらに高まっておりユーザー数を着実に増やしている。これは、Facebookも含めて複数のサイトを利用する人が増えてきたためという。

図1 米国成人のオンラインユーザーのソーシャルメディア利用者率。
PewSocial201501a.png
(ソース:Pew Research Center)

 ここで、4段階の年齢層別に、各ソーシャルメディア・サイトの利用者率を見ていこう。2013年と2014年の利用者率を掲げた表とグラフを以下に示す。

図2 年齢層別の利用者率(表)
PewSocial201501e.png
(ソース:Pew Research Center)

図3 年齢層別の利用者率(グラフ)
PewSocial201501b.png
(ソース:Pew Research Center)

 米国におけるFacebookは早くから、家族間のコミュニケーションのためによく利用されているため、若年層だけではなくて中高年層のユーザーも多い。ところが図1のように、全体の利用者率が頭打ちになってきた。でも例外的に65歳以上年齢層の利用者率は、2013年の45%から2014年の56%へと大きく増え続けている。また欧米で若い10代のFacebook離れが報告されてきているが、18-29歳の若年層の利用者率は落ちなくて、昨年は3%アップしている。若年層でも成人となると、Facebookなしでは社会生活を過ごせないと言うことか。

 高齢者にはあまり縁がないと思われたInstagramやTwitterも含めて、Facebook以外の有力ソーシャルメディアの4サイトでも、65歳以上・高齢者層の利用者率の伸びが、以下のグラフのように昨年はアップしたのだ。日本の団塊の世代が属する年齢層だが、同じような現象が起こるのだろうか。

図4 65歳以上・高齢者層の利用者率の伸び
PewSocial201501c.png
(ソース:Pew Research Center)


 有力ソーシャルメディアの5サイトの各ユーザーが、どれくらいの頻度でサイトを利用しているか、その調査結果のグラフを以下に掲げる。

図5 利用頻度
PewSocial201501f.png
(ソース:Pew Research Center)

 Facebookユーザーの70%が毎日利用している。一昨年の63%から7%も増えており、利用頻度が高まっているのだ。さらに昨年は45%のユーザーは一日当たり数回、Facebookをアクセスしていた。米国のオンラインユーザーのFacebookユーザー数がダントツに多い上に、各ユーザーの利用頻度も極めて高い。Facebookの独走はまだ続きそう。

◇参考
・Social Media Update 2014(PewResearch Internet Project)
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2014年07月15日

伝統メディアのニュースサイトも、フェイズブック対策に本腰

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  新興のバイラルメディアだけではなくて、伝統メディア(新聞/TV/雑誌)のニュースサイトでも、ソーシャルメディア・サイト経由のアクセスが増えている。中でも注目すべきは、フェイスブックからのトラフィックが際立って増え始めていることである。

 バイラルメディアに代表される新興のニュースサイトの多くは、フェイスブックなどのソーシャルメディアからのトラフィックに大きく依存している。そのバイラルメディアのトップランナーであるBuzzFeedでは、総トラフィックのうち75%以上がソーシャルメディアから流入している。ところが伝統メディアのニュースサイトは、各記事にソーシャルメディアの共有ボタンを添えたり、ソーシャルメディアに公式アカウントを設けたりしているが、ソーシャルメディアで話題になる記事つくりに新興ニュースサイトほど専念してこなかった。だが最近になって、ソーシャルメディア対応に本腰を入れ始めたようで、伝統メディアサイトのニュース記事もソーシャルメディアで共有されかなり拡散するようになってきた。

 ニュースサイトへの流入トラフィック量を見ていくと、多くのソーシャルメディアの中でやはりフェイスブックからのトラフィックが群を抜いている。そこで、主要ニュースサイトの記事がそれぞれ、どれくらいフェイスブックで共有されているかを調べてみた。アイルランドのメディア分析会社NewsWhipは、ニュースサイトなどのパブリッシャーサイトの記事がフェイスブックでComment/Share/LikeされたInteraction回数を計数し、その総計(Interaction=Comment+Share+Like)を定期的に公表している。毎日、約25万本の英語ニュースを対象に測定している。

 ここで、代表的なニュースサイトを対象に、それぞれの月間Interaction回数(表のTotal FB)と月間記事本数(表のArticle Count)を掲げる。Interaction回数が多ければ、フェイスブックへの参照トラフィックが増えていくことになろう。以下の表では、2013年10月、14年2月、14年6月の推移を示す。14サイトを選んだ。やはり目立つのはバイラルメディアである。BuzzFeedやUpworthyのようなバイラルメディアは、記事本数が少ない割にInteraction回数(Total FB)が多い。ただし、バイラルメディアは容易に立ち上げられることもあって乱立気味で、戦国時代に入っている。開設間もない新顔のサイトでも月間Interaction回数が100万回を超えることもある一方で、いくつかのサイトはいつの間にか消えてしまったりしている。

FacebookPublisher201310201406.png
(データソース:NewsWhip)


 この1年近くの大きな動きは、フェイスブックからのトラフィック急増の追い風に乗ってHuffingtonPostとBuzzFeedの2大サイトの躍進が加速化し、伝統メディアの旗頭であるNYタイムズのサイトをユニークビジター数で一気に抜き去り、さらに差を拡大していることだ。新興の両巨人サイトと代表的な伝統メディアサイトのInteraction回数の推移を、折れ線グラフで示すと、次のようになる。

FacebookNewspaperInteraction2014a.png
(データソース:NewsWhip) 追記:プロットミスがありましたので、7月16日にグラフを差し替えました

伝統メディアのサイトも目立たないが、月間Interaction回数を着々と底上げしている。Guardianは、昨年10月の458万回から今年6月には993万回と倍増させた。保守急先鋒のTV系Foxnewsも、538万回から1940万回へと急増させている。代表的な新聞サイトの、今年1月から4月までのInteraction回数総計は次のようになる。大衆新聞のDaily MailやUSA Todayの記事がネットで持てはやされるのは当然かもしれないが、高級新聞とみなされるGuardian、NYT、WaPoの記事もフェイスブック上で話題になる機会は増えているのは確かなようだ。フェイスブック対策をほとんど講じなかった公共メディアのBBCも、ソーシャルメディア向けの” this 17-second time-lapse video”のようなビデオクリップを試したりしている。

FacebookNewspaperInteraction2014.png
(ソース:NewsWhip)

 こうしたニュースサイト動きを、フェイスブックも後押ししている。昨年暮れからニュースフィードの掲載アルゴリズムを一部変え、質の高いニュースを優先して掲載するようにしたという。こうした後押しもあってか、NewsWhipが測定対象としているパブリッシャーサイトのニュース記事の総Interaction回数は、以下のグラフのように、今年1月の3億9400万件から4月の4億8300万件と、4か月間で23%も増えているのだ。

FBInteractionWhip2014a.png
(ソース:NewsWhip)

 月間Interaction数が100万件を超えたパブリッシャーサイト数は、2013年8月に25サイトであったのが、今年5月には80サイトにも急増した。UpworthyやDistractifyに代表されるバイラルメディアが爆発的に急成長した時期とも重なる。ニュースをファイスブックなどのソーシャルメディアを介して探すという行為は、少なくとも若年層では完全に主流となってきている。

FBInteractionWhip2014b.png
(ソース:NewsWhip)

 伝統メディアの中で注目したいのは、大手雑誌社のハースト(Hearst)である。一つ前の記事で紹介したように、同社の雑誌サイト(18サイト)の総トラフィックの25%は、フェイスブックからの参照トラフィックである。1年前の4%から、すごい伸びである。今やグーグルサーチからのトラフィックをはるかにしのぐようになった。特に主力雑誌のCosmopolitanは流入トラフィックの45%、Harper’s Bazaarは59%もが、フェイスブックからである。グーグル対策よりもフェイスブック対策に注力しているのだ。

 ただし伝統メディアは一般に、トラフィックの質を気にする。バイラルメディアのようにトラヒックの量が急増しても、ニュースサイトのブランディング向上や収益化に結びつかなければ、意味がないと見ているのである。PewResearchCenterのレポートによると、流入トラフィックのパスによって、ニュースサイトのエンゲージメントに大きな差が生じていると報告している。ニュースサイトのホームページに直接アクセスするユーザーは、当然のようにサイトへのエンゲージメントが高いファンが中心である。訪問当たりの滞在時間が長く、閲覧ページ数も多く、訪問回数も多い。一方、フェイスブック経由でアクセスするユーザーは、逆に滞在時間が短く、閲覧ページ数は少ない。サーチエンジン経由で訪れるユーザーよりもサイトへのエンゲージメントが低い結果となっていた。

ReferralTrafficFacebookPew.png
(ソース:Pew Research Center)

 伝統メディアとしては、バイラルメディアのような量的拡大一辺倒のサイトとページビューやユニークビジター数の量で競っても分が悪いのは確か。それでも、これまでリーチしづらかったユーザーとの接点を増やすために、ソーシャルメディアの参照トラフィックを増やす抜本的な対策を講じるべきだろう。飛んできたユーザーに対し、いかにサイトへのエンゲージメントを持たせるかの仕掛けが必要となる。またニュース記事も分野やテーマによっては、ニュースサイトのユーザーよりも、ソーシャルメディアのユーザーを主ターゲットすることも増えそう。


◇参考
・People Are Sharing More News Than Ever On Facebook(WhipBlog)
・NewsWhip: Interaction with news content on Facebook up 23 percent in three months(Pointer)・
・The 30 Most Viral Stories Of 2014 Will Make You Shake Your Fists And Scream, 'Why?!'(BusinessInsider)
・The Biggest Facebook Publishers of June 2014(Whip Blog)
・Social, Search and Direct(PewResearch)
・How Hearst learned to play with emotions to drive Facebook traffic(Digiday)

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2014年05月09日

ピンタレストがツイッターを上回る、Webサイトにもたらすトラフィック

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 ネットマーケターにとって、ソーシャルメディアの重要性が高まっているのは言うまでもない。その中で気になっていたのが、フェイスブックは別格にして、米国においてソーシャルメディアの2番手として意外にもピンタレスト(Pinterest)が飛躍してきたことだ。日本では今一つパッとしないピンタレストであるが、米国市場では多くの分野でツイッターなどを引き離し、2位の地位を確保してきているのである。

 ピンタレストの影響力を見せつけているのが、Shareaholicのソーシャルメディア・レポートである。Webサイトへの各ソーシャルサイトからの参照トラフィックシェアの推移が示されている。以下に最新のレポート結果を掲げる。30万を超えるWebサイトに4億人強のユニークユーザーがどこからビジットしているかを調べ、それぞれのシェアを計数した結果である。Webサイトへの全トラフィックにはダイレクト・トラフィックや検索エンジンからのトラフィックなども含まれているが、ここでは代表的なソーシャルメディア・サイトだけを示している。2013年12月から2014年3月までの各月のシェア推移を見ても明らかなように、フェイスブックが飛びぬけており、その後をピンタレストが追い、ツイッター以下を大きく引き離している。この4か月間のシェアの伸び率も、上位2サイトが際立って高く、ピンタレストは48.36%と一番大きな伸びを示した。

SocialMediaTrafficRef201403b.png

上の表をグラフ化したのが次の図である。

SocialMediaTrafficRef201403a.png

ピンタレストは、ユーザーがネット上のお気に入りの画像を投稿(pin)し共有できるソーシャルサービスである。魅力ある画像が多いファッション、美容、ヘルス、フード/ドリンク、旅行、生活雑貨、アート、趣味などの分野に人気が集まり、女性ユーザーの支持が極めて多いのが特徴である。女性のショッピング欲を刺激するサイトにもなっている。AddShoppersの調査(こちらを参照)でも、ピンタレスト経由で訪れる消費者による小売店サイトでの売上が大きく伸びているという。

また興味深い動きとして、ピンタレストを本格的に活用する雑誌社が出てきたことも見逃せない。有力なコンシューマー雑誌を数多く発行しているハースト(Hearst)社は、各雑誌サイトでピンタレスト対策を講じ、ピンタレストからの参照トラフィックを増やしてきている。Country Living, Delish, Elle Decor, Good Housekeeping, Harper’s Bazaar, House Beautiful, Marie Claire, Redbook, Veranda , Woman’s Dayなどの各雑誌サイトへの流入トラフィックでは、いずれもツイッターからよりもピンタレストからのビジット数が多くなってきたという。Elle Decor, Good Housekeeping ,Harper’s Bazaarの女性誌サイトでは、全トラフィックのうち5%から10%がピンタレストの参照トラフィックになっているとのことだ。

いくつかの雑誌サイトを眺めてみて驚いたのは、掲載画像(主に写真)の多くにPinボタンが置かれており、ワンクリックでその画像をピンタレストに投稿できるようになっていることであった。ハーストの雑誌/雑誌サイトでは写真が”売り”で、外部で勝手にコピーされたくないはずだった。プロの写真家が撮った写真が多いし、被写体にセレブが登場している写真も多いから尚更だ。ところが掲載写真をピンタレストに投稿できるようにしたということは、その写真のコピーを容認したことになる。それどころか、リピン(投稿された画像を他の人が再投稿する)、つまりコピーによる画像の拡散を勧めることにもなる。

実際の雑誌サイトの例を見ておこう。最初はCosmopolitanのサイトの掲載記事“18 Signs You’re With the Man You Should Marry,”である。この記事の画像は、ユーザーによって2300回以上もピンタレストに投稿されていた。その記事がツイートされた回数が約800回なので、ここでもツイッターを凌いでいた。


CosmopolitanPinterest.png


次の例は、Harper’s Bazaarのサイトである。取り上げたのはお馴染のセレブに関する記事だが、セレブが写った写真上にカーソルを動かすと、ピンボタンがポップアップした。そのボタンを押すだけで写真を投稿できるわけだ。


BazaarPinterest.png


さらに、各雑誌はそれぞれ独自アカウントを備えている。膨大な雑誌サイトの画像などをうまく分類してピンすることにより、フォローするユーザー(フォロワー)を増やしてきている。4つの雑誌について、それぞれのフェイスブックLike数、ツイッター・フォロワー数、そしてピンタレスト・フォロワー数を掲げておく。既に460万人以上のピンタレスト・フォロワーを抱えているHarper’s Bazaarの画像ボード(こちらを参照)を見れば、その充実ぶりが読み取れる。投稿された画像の多くが、さらにリピンされている。

HarperMagSocialMedia2014.png


このようにピンタレストサイトでは、ハーストの各雑誌の画像が数多く投稿されいき、さらにリピンされて拡散することになる。こうした画像を見たユーザーが、その画像をクリックすれば、その画像を掲載した記事に飛んで行ける。これが雑誌サイトへのトラフィックとなるわけだ。ハーストの雑誌に掲載されている画像には商品写真も多いので、ユーザーをショッピングページに誘導させることもできる。


◇参考
・Facebook and Pinterest are the King and Queen of Social Referrals (Shareaholic Blog)
・How Hearst uses Pinterest to boost traffic(Digiday)
・How Pinterest tops Facebook in e-commerce(Internet Retailer)


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posted by 田中善一郎 at 01:26 | Comment(0) | TrackBack(0) | Web2.0 SNS CGM
2014年04月24日

フェイスブックのモバイルシフトが加速化、広告売上の59%がモバイル

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 モバイルシフトがうまく推移したお蔭で、フェイスブックの2014年1〜3月期の売上高が前年同期比72%増の25億200万ドルと快調に推移している。ウォールストリートのアナリストが予測していた23億6000万ドルを大きく上回っている。総売上の91%が広告売上高となっているように,広告に非常に高く依存している。その広告事業でもモバイルシフトが急激に進んでおり、今四半期の広告売上高の59%までもがモバイル広告からの収入で占められるようになった。

 フェイスブックの利用環境は3年近く前まで、デスクトップ(PC)が中心であったが、2年ほど前から猛烈な勢いでモバイルへのシフトが進んできた。世界の月間アクティブユーザー数(MAU)は前年同期比15%増の12億7600万人となっているが、そのうち79%の10億800万人はモバイル端末からもアクセスしている。モバイルMAUが10億人を突破したのだ。全ユーザーのうちモバイルユーザーの割合が、2年前の54%、1年前の68%、そして今期の79%と急増してきているのだ。

*フェイスブックの月間アクティブユーザー数
Facebook2014Q1MAU.png


*モバイル利用の月間アクティブユーザー数
Facebook2014Q1MobileUser.png

 フェイスブックのグローバルのMAUは今も増え続けている。最初のグラフでもわかるように、欧米地域で伸びが鈍化している一方で、アジアなどの新興国地域で急成長しているからだ。特に新興国での特徴は、デスクトップ(PC)と有線によるインターネット利用をバイパスして、最初からモバイル環境によるインターネット利用から入る人が多いことである。このため、モバイル端末からしかフェイスブックを利用しないユーザーが、次のグラフのように一気に増え始めてきた。現在3億4100万人がモバイルオンリー・ユーザーで、この1年間でほぼ倍増した。(ただし別の見方をすれば、PCからもフェイスブックを利用しているユーザーが世界で9億3500万人も存在していることになる)

*モバイル端末からしかフェイスブックを利用しない月間アクティブユーザー数
Facebook2014Q1MobileOnlyMAU.png

 モバイル環境での利用が増えるに伴い、売上もモバイル分野へのシフトが進む。全売上高の9割以上を占める広告売上高が急成長しているのも、モバイル広告がけん引しているからである。(Q4'13が多くなっているのは年末の季節要因のため)

*広告売上高の推移
Facebook2004Q1AdRevenue.png

 広告売上高のうちモバイル広告が占める割合は以下のように急激に増えている。1年前には30%であったのが、今期は59%に跳ね上がっている。売上高で見ると、3億7400万ドル(Q1'13)から13億3600万ドル(Q1'14)へと爆発的に増えている。

*フェイスブックの広告売上高のうちモバイル広告の占める割合
Facebook2014Q1MobileAdRevenuePercent.png
(ソース:GIGAOM)

 ただしグローバルで見ると、これからも成長し膨大なユーザー数も抱えるアジアなどの新興地域市場における売上高は、相対的に高くない。つまりARPU(ユーザー1人あたりの月間売上高)は低い。逆に、アジアなどに比べユーザー数が少なく成長も鈍化している北米や欧州市場での広告売上高は大きい。以下の地域別のARPUの推移を見ても、ARPUが際立て高い北米市場においては、四半期広告ARPUがこの1年間で2.86ドル(Q1'13)から5.16ドル(Q1'14)と倍近くも増やしてきている。これからも北米や欧州市場において、ユーザー数が頭打ちであっても広告売上高を増やしていかなければならないだろう。それを後押しするためにも、近くフェイスブックがモバイル版アドネットワークを立ち上げると見られている。4月末に開かれるFacebook開発者向け会議で計画が発表されるようである。

*地域別のARPU(ユーザー1人あたりの月間売上高)
Facebook2014Q1Arpu.png


◇参考
・Facebook Quartely Earning Slides Q1 2014(Facebook)
・Facebook's Q1: Mobile Contributed 59% Of Ad Revenue In Q1(AdExchanger)
・Facebook’s Q1 earnings beat analyst expectations, CFO David Ebersman resigns(GIGAOM)
・Facebook CFO Ebersman to Depart Social Networking Giant − Will Likely Focus on Health Care Space(re/code)


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posted by 田中善一郎 at 23:59 | Comment(0) | TrackBack(0) | Web2.0 SNS CGM
2013年10月17日

ピンタレストがツイッターを上回る、パブリッシャーにもたらすトラフィック

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 ピンタレスト(Pinterest)はツイッターよりも多くのトラフィックをパブリッシャー・サイトにもたらしている。Shareaholicのソーシャルメディア・レポートによると、パブリッシャーへのソーシャルサイトからの参照トラフィックシェアで、ピンタレストがフェイスブックに次いで2位にランクされている。

 1週間ほど前のブログ記事で紹介したAggShopperでも、小売サイトにおける売上貢献度でピンタレストがフェイスブックやツイッターとほぼ肩を並べている。日本市場から見るとやや意外な動きであるが、米国のマーケターにはピンタレストが大きな存在になってきている。

 Shareaholicはパブリッシャーの20万サイト(月間ビジター数は計2億5000万人)からデータを収集し、ソーシャルサイトからのアクセスを計数した。参照元のソーシャルサイトからのビジット数シェアを、昨年9月から今年9月まで毎月プロットした結果が次のグラフである。

SocialMediaTrafficTrends201309.png

 月次のビジット数シェアを表で示すと、次のようになる(一部だけを表示)。

SocialMediaTrafficShareaholic.png

 パブリッシャー・サイトにどのソーシャルサイトからアクセスしてきたかを示しているのだが、全トラフィックの15.22%をフェイスブック、ピンタレスト、ツイッターの3ソーシャルサイトで占めている。昨年9月から今年9月までのシェア成長率も、 フェイスブックが58.81%、ピンタレストが66.52%、ツイッターが54.12%と、3サイトの伸びが目立つ。逆に、StumbleUponが-24.7%でRedditが-35.16%とマイナス成長になっている。

 それにしても、ピンタレストからのパブリッシャーへのトラフィックが多いのには驚く。comScoreの米国サイトのユニークユーザー数ランキング(トップ50)を見ると、ピンタレストは8月に月間ユニークビジター数が2566万人に達し、初めて49位とランクインしたばかりで、決して他のソーシャルサイトに比べて月間ユニークビジター数が際立って多いわけではない。

comScore201308a.png

 ただピンタレストの特徴は、熱烈な女性ファンを抱えていることだ。ファッションや美容関連の画像に魅かれてピンタレストサイトから外部のパブリッシャー・サイトや小売サイトに飛び回っている女性が多い。サイトのユニークビジター数の割には外部へのトラフィックが多いのもそのせいであろう。

 ソーシャルサイトを活用した効果的な事業展開を目指す外部サイトのマーケターにとっては、ソーシャルサイトのユニークビジター数なんかよりも、自分のサイトに顧客をどれくらい誘導してくれるかのほうが重要である。米国のマーケターにとって、ピンタレストがフェイスブックやツイッター並に重視すべきソーシャルサイトになってきたということか。


◇参考
・Facebook, Pinterest, Twitter, and YouTube referrals up 52%+ in past year [REPORT](Shareaholicの公式ブログ)
・comScore Media Metrix Ranks Top 50 U.S. Web Properties for August 2013(comScoreの公式ブログ)
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posted by 田中善一郎 at 12:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | Web2.0 SNS CGM
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