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2018年09月19日

動画配信のソーシャル系プラットフォーム、グローバルで抜きん出ているのは「YouTube」か「FB」か「Instagram」か

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 テキストから写真・イラストに、そして今や動画へと、ネット上のコンテンツの主役が変わってきている。その動画コンテンツが2~3年後には、世界のインターネットトラフィックの80%以上を占めるという。さらに、動画コンテンツを爆速に配信する携帯5Gサービスもいよいよ離陸しようとしている。

 すでに、動画コンテンツを作りインターネットに投稿し配信するのは、パブリッシャーのみならず、ブランド企業や個人でも、当たり前になってきている。こうした動画コンテンツがいち早く、幅広いネットユーザーに視聴されるようになってきた背景に、ソーシャル系のプラットフォームの役割が大きい。

 動画メディアの調査会社である米Tubular Labsが、動画配信のプラットフォームであるSNSにおいて視聴回数の多いパブリッシャー(クリエーター)のランキングを毎月公表しているが、今年8月の結果を図1に示す。ここではグローバルに動画配信に利用されている主要SNSの「Facebook」、「YouTube」、「Instagram」において、どれくらい視聴されているかを示している。


動画Tubular201808視聴回数Publisher01.png
図1 SNSで視聴回数の多いパブリッシャーのランキング。トップ25のパブリッシャーと、ランク外から6パブリッシャーについて、それぞれのSNS別の視聴回数を示している。Twitterなどのプラットフォームでの視聴がここでは示されていない。このため実際の視聴回数はもっと多いはず。


検索性のYouTubeと拡散性のFacebook

 トップ25に入るパブリッシャーともなると、SNSだけで月間10億回近く視聴されている。多くのパブリッシャーは、複数のSNSで動画コンテンツを配信して多くのユーザーに閲覧してもらうために、分散型メディアを採用している。だが実際には図1に示すように、特定のSNSに依存している場合が目立つ。

 かつては、動画配信といえばほとんどYouTubeの独壇場であった。ところが数年前あたりから、モバイル化・ソーシャル化の追い風を受けて、パブリッシャーが次々とプラットフォーマとしてFacebookへの依存を強めていた。米欧だけではなくて新興国においてもだ。パブリッシャーのコンテンツの中心がテキストから写真・イラストに移るに伴い、Facebookはバイラルメディア環境を整え、オンラインメディアの主導権を握るようになっいた。続いてFacebookは次の一手として、パブリッシャーに対して動画コンテンツの投稿を強力に促した。コンテンツのエンゲージメントが大幅にアップすると売り込んだ。

 パブリッシャーもその働きかけに応じて、Facebookへの動画コンテンツの投稿に動き始めた。最初に大きく開花したのが短尺の料理動画である。例えばBuzzFeedのTastyは、3年ほど前に、月間視聴回数が20億回を突破する勢いを見せつけた(「月間ビュー数が億回超えの「料理動画メディア」が続出、レッドオーシャン化の兆しも」を参照)。料理に続いて、その他の分野の動画コンテンツも、世界中のパブリッシャーが競って投稿するようなり、動画配信プラットフォームとして、FacebookがYouTubeに対抗する存在になってきた(他国に比べFacebook普及率の低い日本はそうではない)。

 Tubularはこのほど、YouTube と Facebookのそれぞれにおいて、視聴回数の多かったジャンル別動画コンテンツのランキングを発表した。図2に、今年の第2四半期における視聴回数を示しているが、料理(Food & Drink)分野だけだはなくて、エンターテイメントやニュースの注目分野でも、FacebookはYouTubeと激しく競い合っている。


動画Tubular2018Q2YouTubeFacebook.png
図2 YouTube 対 Facebook。視聴回数の多かったジャンル別動画のランキング。2018年第2四半期の視聴回数(単位は10億回)。ここでの動画コンテンツはほとんど無料で広告やeコマースなどを収益源としている。映画やTVドラマ、スポーツ実況などの課金型の動画配信にもYouTube や Facebookは力を入れ始めており、Netflix、Hulu、Amazon、Appleなどの新たな競合相手との戦いがすでに始まっている。


 図1のトップ25のパブリッシャー(クリエイター)が活用している動画配信プラットフォームを見ても分かるように、パブリッシャーは戦略的にYouTubeとFacebookを使い分けしているようだ。

 音楽や子供向けなどの動画配信サービスを手掛けていたパブリッシャーは、やはりYouTubeに頼っている。トップ25の1位のT-Seriesは音楽や映画のプロモーション動画を配信しているが、今年8月には30億回もYouTubeで視聴されており、ほとんど100%に近くYouTubeに頼り切っている。4位の子供向け動画のCocomelonも、18億回以上の視聴すべてがYouTubeにおいてであった。賞味期間が長いストック型コンテンツは検索エンジンからの利用も多いことから、YouTubeが向いている。

 一方、ニュースメディアのように、数多く投稿する動画コンテンツを、次々とユーザーに消費してもらいたいパブリッシャーは、Facebookを優先して活用している。フロー型の動画コンテンツでも、拡散性が特徴のFacebookだと短期間に多くのユーザーに視聴される可能性がある。バイラル性の高い動画を次々と投稿しているトップ25の3位のLADbibleや同9位のUNILADは、投稿動画の視聴の大半をFacebookに頼っている。

 ただ、上の例のようにYouTubeあるいはFacebookの特定プラットフォームに頼り切るのは危険である。そこで最近、特定プラットフォームの依存から脱皮して、分散型メディアに変えていこうとするパブリッシャーが急増している。既に、DIY動画で人気ナンバー1の5-Minute Crafts(トップ25の3位)は、8月の視聴回数がFacebookで8.7億回、YouTubeで8.6億回、Instagramで3.7億回とバランスよく分散させている。動物動画で日本でもファンの多いThe Dodo(13位)は、YouTubeやInstagramでの視聴を増やして、Facebookへの依存を減らしている。


動画配信でも勢いづくInstagram

 旬のInstagramが動画配信プラットフォームとして急成長していることも、見逃せない動きである。上で紹介した5-Minute CraftsやThe Dodoでも、Instagramでの視聴回数をこの2~3年一気に増やしてきている。若年層に的を絞って動画を提供したいパブリッシャーは、Instagramへの投稿に全力投球するのも効果的である。トップ25で2位のWorldStar Hip Hop // WSHHは8月にInstagramだけで約16億回、また同8位の9GAG: Go Fun The WorldはInstagramだけで約11億回も視聴されていた。


動画WorldStarHipHop201808.png
図3 InstagramのWorldStar Hip Hop // WSHHページ。約2000万人のフォロワーを擁している。今年8月の1か月間で、投稿した動画コンテンツがInstagram上で16億回も再生された

 
 今や動画配信の3大ソーシャル系プラットフォームとして、YouTubeとFacebookに加えてInstagramがのし上がってきたと言える。Facebook一辺倒で動画を提供していた新興パブリッシャーが、最近は相次いで、Facebookへの依存を減らす狙いもあって、InstagramやYouTubeでの視聴回数を増やす施策を講じている。例えば料理動画のTastyは、1年半ほど前までSNSでの動画視聴の約95%がFacebook上であったが、今年8月には約50%にも減っている(図1で示すように、Facebookが4.1億回、YouTubeが1.1億回、Instagramが2.9億回)。


Facebookを活用すれば、かつてのバイラルメディアのような急発進の可能性も

 先進国で若者を中心にFacebook離れが少し進んでいるといっても、日本市場と違って、けた違いの規模感と、今でも圧倒的なシェアを誇っている。それに広域に渡っての極めて拡散性が強いSNSである。このため動画サービスを手掛けるスタートアップでも、Facebookをプラットフォームとして活用すれば、短期間で信じられない規模の視聴回数を獲得する可能性がある。

 トップ25の15位に突如登場したFake Outrageは、日常生活の便利な道具(新製品)を紹介する短尺の動画サービスであるが、凄まじいロケット発射を成し遂げている。今年の6月まで投稿した動画はほとんど視聴されなかったのが、7月にはFacebookで約1億回視聴され、さらに8月には10倍近い9億4600万回も視聴された。Facebookの累積フォロワー数も、6月までほとんどいなかったのが、7月に3万4400人、8月に21万5000人(9月18日には219万人)と急増している。まさに5年ほど前に起こったバイラルメディアの再来なのか。Facebookが備えもつ恐ろしいまでの拡散性を再認識した。


図4 Fake Outrageの動画コンテンツ。Facebookを動画配信プラットフォームとして活用することにより、わずか2カ月の間に10億回近い動画視聴回数を達成。


 ここで見てきた3大動画配信プラットフォームであるYouTube、Facebook、Instagramはいずれも、開発途上国も含んでグローバルにかなり普及している。また動画コンテンツは言葉の壁が比較的低いし、最近ではテキストの説明やコメントなども自動翻訳が進んでいる。このため国境を越えたグローバルな動画サービスが手軽に実現できる環境が整ている。

 図1で示したトップ25のパブリッシャーも発信国には開発途上国も多い。1位のT-Series、6位のSET India、それに23位のZee Music Companyはいずれもインド産である。3位の5-Minute Craftsはキプロス、22位のnetd müzikはトルコ、24位のBadabun、25位のCanal KondZillaはブラジルが発信国である。



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posted by 田中善一郎 at 07:05 | Comment(0) | TV  ビデオ ラジオ
2017年07月01日

米国の「ポッドキャスト」事業、年2倍近い驚異的なペースで広告売上が急増

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  低迷から脱して勢いづいてきた米国のポッドキャスト、収益化でも上昇軌道に乗り始めたようだ。

 IAB(the Interactive Advertising Bureau)とPwC(Pricewaterhouse Coopers)から公表された“IAB Podcast Ad Revenue Study”によると、米国のポッドキャスト広告売上高は2017年に2億2000万ドルとなり、前年同期に比べ85%増となる見込みである。昨年(2016年)も、図1で示すように、前年比72%増と急成長していた。

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(ソース:IAB and PwC)
図1 米国のポッドキャスト広告売上高。ポッドキャスト広告会社のトップ20社の調査より、2017年売上高を推定。

 2015年第1四半期から2016年第4四半期までを見ると、四半期単位の平均成長率が19%と驚異的な伸びを示している(図2)。2017年に入って、成長率がさらに加速化しているようだ。

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(ソース:IAB and PwC)
図2 米国のポッドキャスト広告売上高(四半期単位)の推移。

 IABが強調しているのは、ブランド広告が伸びていることだ。図3のように、2015年にはブランド広告(Brand Awareness Ad)は全体の17%であったのが、2016年には25%に膨れ上がった。また2016年には、ブランドコンテンツ( Branded Content)も出稿され始めている。 売上規模がまだまだ小さいながら、いい形で展開し始めている。

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(ソース:IAB and PwC)
図3 ポッドキャスト広告キャンペーンの内訳の変化

 このようにポッドキャストが広告メディアとして注目され始めた背景には、まず、モバイル化に伴いポッドキャストユーザーが着実に増えてきていることがある。米エジソン研究所(Edison Research)が2017年1月から2月の間に実施した調査によると、図4に示すように、過去1か月間にポッドキャストを利用した米人(12歳以上)は6700万人、過去1週間のユーザー数は4200万人であった。

EdisonPoedcastListening2017.png
(ソース:Edison Research and Triton Digital)
図4 ポッドキャスト普及率の推移

 普及率はまだ低いものの、既存ポッドキャストユーザーの利用頻度は高い。米国人の14%は毎週利用しており、彼らは平均すると週に5回以上ポッドキャストを聴いている。かなり熱量が高い(図5)。

PodcastListeningNumber2017.png
(ソース:Edison Research and Triton Digital)
図5 過去1週間にポッドキャストを聴いたユーザーの利用頻度。平均では週に5回利用している。

 さらに、広告主にとって関心深いのは、デモグラフィック属性である。Nielsenの調査によると、図6のように、若年層、高学歴、富裕層が多いのが特徴である。また、ポッドキャスト番組のジャンルとしては、教育(学習)、ニュース、政治、テクノロジーのような硬いテーマも目立つ。ニュースメディアも最近、ポッドキャスト番組を充実させいるのも頷ける。

NielsenPodcast2017.png
(ソース:Nielsen)
図6 ポッドキャストユーザーのデモグラフィック属性と、ポッドキャスト番組のジャンル

 ポッドキャスト番組は一般にターゲットが絞られており、さらにそのオーディエンスが、若年・高学歴・裕福で熱量の高い人が多いとなると、ニッチながら広告メディアとして成長していきそうである。

 ということで、米国のインタラクティブ広告業界団体であるIABは今回初めて、ポッドキャスト広告売上高を調査し、その結果を公表した。IABはまた、4月に発行した“IAB internet advertising revenue report”の中で初めてデジタルオーディオ広告売上高を公表し、2016年に11億ドルに達したことを明らかにした。

 この背景にも、モバイル化の浸透で、オンラインラジオが急成長を続けていることがある。図7に米エジソン研究所によるオンラインラジオの普及率推移を掲げておく。

EdisonOnlineRadio2017.png
(ソース:Edison Research and Triton Digital、Pew Research)
図7 米国のオンラインラジオの普及率推移。

 このようにオーディオメディアの雄であるラジオもデジタルシフトが進んでいることもあって、米国で最も国民にリーチしているメディアは、TVではなくてラジオである。図8は、Nielsenが18歳以上の成人を対象に2016年第4四半期に実施した調査結果である。ラジオは、米国のどの年齢層においても92%以上の人が少なくとも週に1回、ラジオを聴いている。

RadioRearch2017.png
(ソース:Nielsen)
図8 週当たりのリーチ。各メディアの年齢層別に利用率を示している。

 このように米国では車社会であることもあってか、オーディオメディアがどっしりと根付いている。またこのような下地があるからこそ、ポッドキャストが活気づき、音声操作のAIスピーカー(音声アシスタント)市場が立ち上がろうとしているのだろう。

◇参考
・IAB Podcast Ad Revenue Study: An Analysis of the Largest Players in the Podcasting Industry(IAB)
・STATE OF THE MEDIA:AUDIO TODAY 2017(Nielsen)
・米国で盛り上がるオーディオメディア、再熱する「ポッドキャスト」と着火した「音声アシスタント」(メディア・パブ)
・Audio and Podcasting Fact Sheet(Pew Research Center)
・Nielsen: Marketers Are Rediscovering Radio’s Power.(Insideradio)

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posted by 田中善一郎 at 16:46 | Comment(0) | TrackBack(0) | TV  ビデオ ラジオ
2017年06月18日

ニュースメディアにも「動画コンテンツ」ラッシュの波、エンゲージメント向上を狙う

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 スマホでインターネットを利用していて近頃目立つのは、モバイル化・ソーシャル化の流れに乗ってショートフォーム(短尺)動画がやたらに増えてきたことである。フェイスブック(FB)のニュースフィードをスクロールしていても、動画コンテンツが次々と現れる。少し前から、動物(ペットなど)や料理(レシピ)、ファッション・美容、DIYなどの短尺の動画コンテンツが溢れ出してはいたが、いよいよオンラインのニュース記事にも動画ラッシュが始まったようである。

 1週間前にも、以下のような動画に出くわした。

図1 NYタイムズの6月3日付の動画ニュース記事。

 これは、NYタイムズが配信したトランプ大統領発言の事実確認記事”Fact Check: Trump’s Exit From the Paris Climate Accord”である。このニュース記事は投稿してから6日間でフェイスブック上で約200万回も再生され、いいよ!が約2万2000人、シェアが約1万8700件、コメントが約2000件も獲得した。"ファクトチェック"の硬い政治記事にもかかわらず、このように多くの人に注目され視聴されている。動画であったことが効いたのだろう。

 このようにニュースメディアでも動画シフトが米国を中心に活発化してきた。メディア分析会社NewsWhipの調査によると、CNNやFox News、BBC News、Voxなどの主要ニュースパブリッシャーのFBページにおいては、投稿ニュース記事のうち動画の割合が明らかに増えてきているという。また動画系ニュース記事のほうが一般に、テキスト系ニュースや写真系ニュースに比べオーディエンスからより多くのリアクションを得ているようだ。

 実際に、代表的なニュースパブリッシャーのFBページを対象に、それぞれのFBページに投稿された動画ニュースが、どれくらいオーディエンスからのシェア件数を得てきているかを、NewsWhipの調査結果から見ていこう。図2は2017年1月時点で、動画の月間シェア数が多かったFBページのランキングである。月間シェア数が2016年1月からの1年間でいずれも急騰している。動画コンテンツによりエンゲージメント数(シェア数)の拡大を狙っているのだ。

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(ソース:NewsWhip)
図2 動画ニュースの月間シェア総数の多いFBページ。ニュースメディアに分類されていたFBページが対象。各FBページの上段に2017年1月の月間シェア数を、下段に2016年1月の月間シェア数を示す

 NewsWhipはまた2017年4月時点で、動画ニュースのエンゲージメント数(ここでは、いいね!数+コメント数+シェア数)を多く獲得したFBページのランキングも、図3のように公表している。いずれもニュースメディアに分類されているFBページが対象である。


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(ソース:NewsWhip)
図3  ニュースメディアに分類されているFBページにおける動画ニュースのエンゲージメント数(いいね!数+コメント数+シェア数)。2017年4月の月間エンゲージメント数によるランキングである。


 顔ぶれでは、テレビ/ケーブル系や新聞系の伝統ニュースメディアが目立つ。テレビ/ケーブル系の伝統メディアも少し前まで、オンラインニュースサイトにおいては、テキストや写真中心のニュース記事が中心であった。ブロードバンド化の浸透と動画配信のプラットフォームが整備されるに伴い、本業の動画ニュースの投入を加速化させている。

 さらに注目すべきは、新興のニュースメディアが動画ニュースを武器に勢いを増していることだ。2011年設立のMic、2012年設立のNowThis、2014年設立のATTNは、ミレニアル世代をターゲットに、かなり良質の動画ニュースを配信している。政治ニュースにも力を入れ、分散型メディアの代名詞的存在になっているNowThisは、基幹のFBページのNowThisに加えて、新たにNowThis PoliticsとNowThis Futureというブランド名のFBページを立ち上げた。いずれも、図3に示すように、早くもトップ10入りし、驀進している。

 そのほか、世界のローカル動画を集めたThe Epoch Timesや、中国内の動画を紹介する英語版のShanghaiistも面白い。

 動画ニュースのエンゲージメント数でトップ15入りしたFBページが、それぞれどれくらいの動画ビュー数を達成しているかを、以下の図4に掲げる。オンライン動画の解析会社のTubular Labsが2017年4月に測定した結果である。

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(ソース:Tubular Labs)
図4 代表的なニュースメディアにおける動画ニュースの月間ビュー数(再生回数)。2017年4月の1か月間に、フェイスブックとYouTubeでそれぞれ視聴された回数を示している。

 ニュースメディアが動画ニュースを配信する場合、NowThisの分散型メディアのように、複数の動画配信プラットフォームを活用するのが当たり前になっている。Facebook、YouTube、Instagram、Twitter、Vineあたりが常連のプラットフォームである。ところが分散型メディアと言いながら、欧米では実際には、ほとんどの動画ニュースがフェイスブックで視聴されている。図4の表の右端で、分散型メディアでの視聴回数のうちフェイスブックで再生された割合を示している。

 『月間ビュー数が億回超えの「料理動画メディア」が続出、レッドオーシャン化の兆しも』でも示したように、フェイスブックが圧勝しているのだ。また、『ニュース接触の主戦場が「フェイスブック」か「グーグル検索」か、記事のトピック別で大きく分かれる
』で紹介したように、ニュースメディアを含めたオンラインメディアは、特に米英ではフェイスブックに依存してきている。コンテンツがテキスト中心から写真中心に、さらには動画中心に移ろうとも、フェイスブック離れが難しいといえる。フェイスブックは巧みにニュースフィードのアルゴリズムを変えて動画コンテンツを優遇するので、なおさらである。

 ただ、ニュースメディアが一斉に動画一辺倒に走っているわけではない。日常的に重要なニュース記事を次々と消費したいユーザーにとっては、テキストや写真・グラフ中心のニュース記事のほうが有難い。必然性のない動画ニュースで時間をつぶしたくない。高級新聞のNYタイムズや調査報道でも注目され始めたBuzzFeed Newsも、必然性のある動画ニュースは別にして、むやみに動画を増やしてはいない。このため、2017年4月の動画ニュースの月間ビュー数も、NYタイムズが約5000万回、BuzzFeed Newsが1億2000万回と、図4のトップ15と比べるとやや少ない。

 ただし、両メディアとも動画開発には先行している。例えば、NYタイムズは、360度動画、VR、ドローン撮影など最新テクノロジーを駆使した動画ニュースの開発に熱心である。1年半前(2015年10月27日)に驚かされた覚えがある。グリーンランドで氷河が解けて激流となっている様子をドローン撮影した動画ニュースである。氷河の先端部が海に崩れ落ちる映像はよく見かけるが、このNYタイムズの動画は地球温暖化の深刻さをこれまで以上に訴えていた。


図5 ドローン撮影の動画ニュース。

 またNYタイムズは昨年秋から、360度動画を届ける「The Daily 360」(http://nyti.ms/2eQ5vAm )を開始している。記者にサムソン製 360度カメラ Gear 360を持たせて、毎日、360度動画を配信している。

 一方で、動画ニュースはバイラル性が高いので、けた違いのビュー数を獲得できる場合がある。ビュー数の最大化を狙って、バイラル性の高そうなテーマに絞るニュースメディアも出てきている。ランキングトップに上り詰めた英Daily Mailは、動画版バイラルメディアと言えそうだ。


 以下、目についた動画ニュースをエンベッドしておく。

図6 NowThis Futureの動画ニュース。ゼラチン製のペットボトルで、飲み終えた後に食べてしまえるので、ゴミにならない。環境にやさしい水筒だが、3年前にも話題になっていたニュースである。このように新しい技術をビジュアルに紹介する動画の人気も高い。


図7 AJ+(英語版Al Jazeera)の動画ニュース。中東の紛争や難民の悲惨な現実を伝える生々しい動画が毎日のように配信されている。海外にとっては身近なニュースなのだろう、高いビュー数を得ている


図8 ATTNの動画ニュース。北朝鮮すら署名しているパリ協定を離脱したトランプ政権に対し、非難している動画。ATTNはミレニアル世代向けの動画ニュースを売りにしている。


図9 Shanghaiistの動画。おじいちゃんと孫の競演。このように、エンターテイメント性の高いコンテンツだと、再生回数が1億回近くになることも。上海などの中国内の動画を英語で配信。



図10 Daily Mailの動画ニュース。大衆受けするバイラル性の高い動画コンテンツで高いビュー数を獲得している。バイラル性の高そうなコンテンツに絞って、配信している。

◇参考
・The top engaging Facebook videos of April 2017(NewsWhip)

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posted by 田中善一郎 at 14:19 | Comment(0) | TrackBack(0) | TV  ビデオ ラジオ
2017年03月23日

米国で盛り上がるオーディオメディア、再熱する「ポッドキャスト」と着火した「音声アシスタント」

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 オーディオメディアが再び米国で盛り上がっている。

 オンライン音楽サービスを別にすれば、ネット時代のオーディオメディア・サービスはやや精彩を欠いていた。伝統のラジオ放送に代わって、インターネットラジオやポッドキャストがかなり前から飛び出してはいたが、ここしばらく伸び悩んでいた。ところが2年ほど前から米国でポッドキャスト・ブームが再熱していると、何度か聞かされている。確かに最近、主要なニュースメディアもこぞって、動画コンテンツとともに、ポッドキャストによるオーディオニュース・コンテンツも充実させている。

 またオーディオメディアと言えば、今年1月のCES(Consumer Electronics Show)で最大の目玉となった音声アシスタント機能によるサービスも気になる。爆発的に開花するのではとの期待が膨らむ。

 その「ポッドキャスト」や「音声アシスタント」が、米国の消費者に現時点でどの程度受け入れられているのかを知りたい。ちょうどその望みに応える調査を米エジソン研究所(Edison Research)が2017年1月から2月の間に実施し、このほど公表していたので覗いてみた。

 調査は、12歳以上のアメリカ人2000人を対象に、RDD方式(Random Digit Dialing:ランダムに発生させた電話番号に電話をかけて調査する手法)で実施した。その調査レポートから「ポッドキャスト」と「音声アシスタント(Smart Speaker)」について紹介する。

 まず、ポッドキャストから。回答者の24%が、先月の1か月間にポッドキャストを利用していた。6700万人の米国人が少なくとも月に1回、ポッドキャスト番組を聴いていることになる。年推移のグラフを見ても分かるように、確かに2年ほど前から利用者が増え始めている。

AudioEdison201703a.png
(ソース:Edison Research、Toriton Digital)
図1 ポッドキャスト普及率の推移


 次の図2は世代別の利用状況である。スマホでの利用が増えてきたこともあって、若い人への普及が広まっている。注目したいのは、働き盛りの25歳〜54歳の年齢層の利用が目立って増えていることだ。硬派のニュースメディアがポッドキャストによるコンテンツに力を入れているのも頷ける。

AudioEdison201703b.png
(ソース:Edison Research、Toriton Digital)
図2 ポッドキャストの世代別普及率 

 普及率はまだ低いものの、既存ポッドキャストユーザーの利用頻度は高い。回答者の14%は毎週利用しており、彼らは平均すると週に5回以上ポッドキャストを聴いている。かなり習慣化している。

 車社会の米国では通勤中や通学中が主な利用場所と思われるが、調査結果によると、次のように自宅や仕事中でもよく利用されていた。

・At Home:80%
・In a car/truck:47%
・At work:29%
・Walking around/On foot:28%
・At a gym/Working out:20%
・Riding public transportation:19%
(ソース:Edison Research、Toriton Digital)
図3 ポッドキャストの利用場所(複数回答) 


 次は音声アシスタントの調査について。人工知能を搭載する音声アシスタントの「Amazon Echo(Alexa)」と「Google Home」について、どれくらい認知されているか、そしてどれくらい所有されているかを調べた結果を図3に示す。新しいタイプの製品であるが、発売が始まっている米国では一般の人にもかなり知られているようだ。

 販売で先行したAmazon Alexaは回答者の57%に商品を知られており、既に5%の人に所有されている。後発のGoogle Homeは回答者の45%に認知されており、 昨年末に販売が開始され、2%の人が入手している。発展途上のサービスであるが、若年層に支持されているようである。

Alexa vs Home.png
(ソース:Edison Research、Toriton Digital)
図3 音声アシスタントの認知率と所有率。ここで「Amazon Alexa」とあるのは、Alexa音声サービスを使っているAmazon Echoあるいは Amazon Dotをさしている。


 ◇参考
・The Infinite Dial 2017(Edison Research、Toriton Digital)
・「音声アシスタント」を使っていますか? 世界の若年層ネットユーザーの半数が利用(メディア・パブ)
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posted by 田中善一郎 at 13:01 | Comment(0) | TrackBack(0) | TV  ビデオ ラジオ
2017年03月04日

月間ビュー数が億回超えの「料理動画メディア」が続出、レッドオーシャン化の兆しも

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 モバイル化、ソーシャル化の潮流にのって、 料理動画フィーバーが一昨年後半あたりから燃えに燃えている。

 オンラインの料理動画サービスが、メディアパブリッシャーにとって"美味しい"市場として急浮上しているのだ。桁違いのビュー数の獲得が期待でき、また収益性の高いスポンサード動画や各種バイプロダクトも仕掛けやすいからである。ソーシャルメディアの拡散力を活用して、極めて短期間で成果を上げた料理動画メディアが相次いで生まれてきている。

 まず、桁違いのビュー数を獲得した料理動画と、スポンサード動画の実例を見ておこう。図1の例は、2億5000万回も再生された料理動画である。このように億回以上も視聴される大ヒット動画は頻繁には登場しないが、1000万回レベルの動画となると海外では毎日のように投稿されている。また図2のようなスポンサード動画も、料理動画のネイティブ広告として盛んに投稿されてきている。この例では商品広告が入った動画にも拘わらず2300万回も再生されている(スポンサード動画の動向については、ブログ「スポンサード動画が昨年から爆発的に急増、広告なのにビュー数が1000万回超えも続出」で紹介)。


図1 Food NetworkがFacebookに投稿した料理動画「ピザ・ポット・パイ」  



図2 TastyがFacebookに投稿したスポンサード料理動画「ウォッカ・パイナップル・ソフトクリーム」。スポンサーである多国籍農業・食品企業Doleと一緒に制作した動画である

2年ほどの短期間でグローバルに一気に開花

 このような料理動画に特化したオンラインブランド(メディア)が、本格的に登場し始めたのは2年前あたりからである。Facebookに投稿された料理動画の総ビュー数の推移(図3)をオンライン動画の解析会社のTubular Labsが公表していたので、それを見てみよう。2015年の年初には総計でも月間数億ビューしかなかったのが、同年半ば頃から爆発的に立ち上がり、15年の年末には一気に100億ビュー台に乗せた。その上昇気流に乗って、月間ビュー数が億回を超える料理動画メディアが次々と生まれてきた。その中から抜きん出たトップ4が「Tasty」、「Tastemade」、「Delish」、「Food Network」である。これらは単体で、早くもビュー数が毎月5億回を超えている。

FoodVideoTop4.png
(ソース:Tubular Labs)
図3 Facebookに投稿された料理動画の総ビュー数。月間の総ビュー数の推移を示している。 

 ここで代表的な料理動画メディアの月間ビュー数の推移を見てみよう。Tubularが毎月測定したデータをプロットしたのが図4である。ここで取り上げたメディアはいずれも、少なくとも毎月2〜3億ビュー数を得ている。

図 cookingRanking 201612a.png
(ソース:Tubular Labs)
図4 代表的な料理動画メディアの月間ビュー数(視聴回数)の推移。Tastyグループには、旗艦の「Tasty」のほかに「Buzzfeed Food」、「Bien Tasty」(スペイン語)、「Proper Tasty」(英国)、「Tasty Demais」(ブラジル/ポルトガル語)が、またTastemadeグループには旗艦の「Tastemade」のほかに「Tastemade Brasil」、「Tastemade Español」が上位に名を連ねている。

 先頭を独走しているのはBazzFeedが運用する「Tasty」で、断トツのビュー数を誇っており、昨年前半には月間20億ビューを突破していた。その後を追ったのが「Tastemade」である。両メディアはまた、別ブランド名を立てて海外にも進出し、競い合っている。共に昨年、日本にも上陸した。その先行した2強を追って、米大手出版社ハーストの「Delish」と料理専門CATVの「Food Network」は、手薄になっていた若いユーザーを狙って、ソーシャル動画にも参入してきた。図4を見れば分かるように、ビュー数が頭打ちになっている先行の2強に対して、昨年の後半あたりから追い上げてきている。今年1月には、「Delish」が月間ビュー数で8億回を超え、初めて「Tastemade」を追い抜いた(下の図6)。

Facebookが仕掛け、BuzzFeedが素早く対応

 このように、桁違いの月間ビュー数を達成する料理動画メディアが、この1〜2年の短い間に、相次いで生まれてきたのである。

 もともとメディアパブリッシャーにとって、料理は定番の人気分野である。テレビでも雑誌や新聞でも料理コンテンツはよく見かけるし、インターネット時代でも変わらない。料理をテーマにしたWebサイトは多い。料理専門の人気ユーチューバも活躍しているように、すでにネット上には料理動画がふんだんに流れている。だが、最近登場してきた料理動画メディアは、これまでのコンテンツとはちょっと違う。生まれた経緯を振り返ってみよう。

 ソーシャルサイトをプラットフォームとした動画ブームの仕掛け人は、やはりFacebookである。数年前からFacebookは、メディアが投稿する記事がより拡散するようにアルゴリズムを変えていき、バイラルメディア・ブームのプラットフォームとなってきている。そしてBuzzFeedに代表されるバイラルメディアが続々と台頭してきた。Facebookはさらに3年ほど前から、「これからは動画時代」と見据えてアルゴリズムを動画コンテンツ優先に変え、メディアパブリッシャーに動画コンテンツの投稿を強烈に働きかけた。

 その働きかけにいち早く応えたのが同じくBuzzFeedであった。まず2014年に、動画に特化したブランド「BuzzFeed Video」を新たに立ち上げた。そこに投稿した料理動画がユーザーから高いエンゲージメントを得るのを確認し、ビュー数も100万回を超える人気動画が増えてきた。料理動画ビジネスはブレイクするとの声が一段と高まる。そこで2015年に入ってすぐに、今度は料理動画だけに絞ったブランド「BuzzFeed Food」を立ち上げる。ニューヨークのスタジオから毎日のように複数本のレシピの料理動画を投稿し始めた。

 「BuzzFeed Food」は期待通り大ブレイクする。立ち上げて半年も経たない2015年6月には、投稿動画のFacebookでのシェア数(月間)が663万件となり、Facebook動画メディアで断トツのトップに躍り出る(2位が279万件)。その6月にFacebookに投稿したレシピ動画「スモアディップ(S'mores Dip)」は、その6月だけで8000万回も再生され、210万人がシェアした(2年後の現在、累積で1億2900万回再生され131万人がシェア)。


図5 「BuzzFeed Food」がFacebookに投稿した動画「S'mores Dip」。焼いたマシュマロとチョコレートをクラッカーに乗せて食べる簡単なおやつ。プロダクトプレイスメントの動画でもあり,マシュマロにNestle製を使っている。

 「BuzzFeed Food」が配信した料理動画は、主にモバイル向け/ソーシャルサイト向けを前提とした。そのため、ニュースメディアが配信する記事のように、コンテンツは短く(ショートフォーム)して次々と制作した新鮮な動画を流すことにする。早送りで極めて短尺にしたオリジナルなレシピ動画を、撮影用のキッチンがあるスタジオで制作し、毎日のように数本近くをFacebookやYouTubeに配信したのである。

 図5の動画も、長さが16秒と短い。BuzzFeed Foodが15年6月に配信した料理動画の平均長は、一本当たり24秒と非常に短かった(最近の動画動画は1分前後が多い)。テキパキと手際よく料理をしていく動画が、次々と投稿されていった。視るだけでも楽しいが、視聴者自身もスマホを見ながら思わず作ってみたくなる。このため視聴者のリアクション(エンゲージメント)も高く、実際に料理を試みた人からのコメントなどで賑わう。図5の例では、瞬く間に210万人によりシェアされた。すごい速さと勢いで拡散していくのも、視聴者のリアクションが大きいためである。

 このBuzzFeed Foodの躍進を見て、その同じスタイルを踏襲した料理動画メディアが、グローバルで一斉に登場してきた。BuzzFeed自身も、さらに力を入れて展開するために別ブランドの「Tasty」を2015年7月に立ち上げ、新しいロサンゼルスの動画スタジオから投稿し始めた。そして一気に、料理動画メディアのトップに躍り出ることになる。

分散型メディアをうたい上げているが、実際はFacebookに依存 

 こうした料理動画メディアの特徴の一つは、ほとんどが分散型メディアを採用していることである。YouTube 、Facebook、Instagram、Vine、Twitterなど、複数のソーシャル系プラットフォームを用いて、動画を配信している。より多くのユーザーにリーチするために複数のプラットフォームに投稿しているにもかかわらず、実際に視聴されるている場は大半がFacebookとなっている。

 トップ4の料理動画メディアにおけるプラットフォーム別月間ビュー数を比べても明確である。図6は今年1月における月間ビュー数とフォロワー数である。いずれも90%以上の動画がFacebookで再生されている。「Delish」に至っては、視聴回数(ビュー数)の99%がFacebookである。トップ4以外の有力メディアでも、特定プラットフォームに依存しすぎるリスクを避けるために分散型メディアとうたっていても、実際にはFacebookに絞って投稿している場合が少なくない。

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(ソース:Tubular Labs)
図6 トップ4の料理動画メディア。2017年1月現在のフォロワー数と月間ビュー数。Tastyの今年1月のビュー数が総計で16億1779万となっているが、そのうちの95%近くがFacebookで視聴されている。

 Tastyの場合で、主要プラットフォーム別の投稿動画数および総ビュー数の累計を図7にまとめた。動画1本当たりのビュー数も付け加えた。ここでも圧倒的にFacebookに依存していることが、はっきりと出ている。かつては、YouTubeが最もよく利用されていたが、今では影が薄くなっている。それよりも、料理動画の中核ユーザーのF1層に人気の高いInstagram(Facebook傘下)のほうが、YouTubeよりも多く視聴されている。

FBvsYouTubeTasty201724.png
(ソース:Tubular Labs)
図7 Tastyの総ビュー数/投稿動画数/投稿動画1本当たりの平均ビュー数。三つのSNS別に計数している。Facebookにこれまで1173本の動画を投稿し、それらの動画の総ビュー数が286億回となっている。つまり動画1本当たり平均すると2380万回も再生されている。

 海外では日本と違って、Facebookが断トツに幅広く利用されており、さらに抜群の拡散力を備えているため、Facebookへの一極集中が進んでしまっている。追われる立場のYouTubeは視聴時間が1日当たり10億時間を突破したり、有料のYouTube TVを発表したりして、攻勢を強めている。ただYouTubeの動画は、比較的ロングフォーム(長尺)が中心で、アーカイブ的であり、検索エンジンからの利用に向いている。でもニュースのようにフロー的に、デイリーに次々と投稿される短尺動画で、拡散性に頼る配信では、やはりFacebookが優位になっている。

楽しくてシェアしたくなる

 爆発的に急発進したソーシャル料理動画市場も、図3のように、早くも天井感が見え始めている。生き残るためのシェア争いが激化しそう。コンテンツの編集力が今まで以上に重要になる。目立つための話題作りも必要だ。

 例えば、昨年7月にポケモンGOサービスが始まると、そのフィーバーにあやかって、すぐにポケモン・カクテルが現れた。まず、その動画を視聴してみよう。

 
図8 ポケモンGOサービスの開始直後に投稿されたポケモン・カクテル

 これは、「Tipsy Bartender」(酔っぱらいのバーテンダー)がFacebookに投稿した動画である。Tipsy Bartenderは、Skyy John氏がインターネット上で運用しているカクテル作りのショーである。彼のユーモアたっぷりの指導を受けながらゲストの美女がカクテルを楽しそうに作る様子を手短にまとめた動画などが投稿されている。彼は人気ユーチューバーとしてYouTubeを活躍の場としていたが、一昨年あたりからFacebookへの投稿にも力を入れ始め、現在1950万人のフォロワーを抱えている。シーズンの夏には月間ビュー数が5億回近くになることもある。

 次の図9は、ニュージーランド生まれの寿司バズーカを用いた太巻きつくりの動画である。この寿司バズーカは寿司本場の日本に逆輸入されている。不器用な筆者でも、"巻く"じゃなくて、"撃って" 、恵方巻きを作れそう。


図9 話題の「寿司バズーカ」を用いた太巻きの作り方

 ライブの料理動画の挑戦も興味深い。「Tasty」、「Tastemade」、「Food Network」が始めている。例えば、「Tasty」が2016年10月にFacebookで実施したライブ動画の「Slow  Bake Cookie」は、実際には1時間31分もの長時間の動画になった。ゆっくり焼いていくクッキーを観察する動画であるが、これまで1614万回も再生されている(全部を視聴した人はいないと思うが)。いいよ!が33万件、コメントが12万件,シェアが6.5万件となっているので、話題にはなったのだろう。 


日本市場も過熱化、国産メディアに黒船メディアが挑む

 最後に日本の動きを。日本市場では2015年9月設立のエブリーが運営する「DELISH KITCHEN」が先行し、昨年は「Kurashiru」などが立ち上がる。また米国でトップ4に入る2メディアが、「Tasty Japan」、「Tastemade Japan」のブランド名で上陸してきた。そこで図10に、これら4ブランドのフォロワー数を、プラットフォーム別にまとめた。ビュー数は不明。

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図10 日本の代表的な料理動画メディアのフォロワー数。代表的なソーシャルサイト別に示している。

 日本市場では海外のようにFacebookのシェアが圧倒的でない。そのため、海外市場のようにフォロワー数がFacebook一辺倒となっていない。それでも、いずれもFacebookが一番多い。その中のトップが、230万人を抱える「Tasty Japan」である。同じBuzzFeedが運用する「Bien Tasty」(スペイン語)のフォロワー数が2017年1月に1500万人を越え、Facebook上での月間ビュー数が4億6239万人となっている。それに比べ日本市場の料理動画メディアは規模が小さく、まだ成長期なのかもしれない。

◇参考 
・5 Secrets to How Food Videos Go Viral on Social(NewsWhip)
・スポンサード動画が昨年から爆発的に急増、広告なのにビュー数が1000万回超えも続出(loglyブログ)
・State of Online Video: Facebook 2016 in Review ( Tubular Labs)

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posted by 田中善一郎 at 09:43 | Comment(0) | TrackBack(0) | TV  ビデオ ラジオ
2016年11月18日

利用時間でデジタルがTVを追い抜く日、米国は2013年、ドイツは17年、日本は18年

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 「TV離れ」と「PCV離れ」が進んでいる。

 eMarketerが先ほど日本とドイツにおける、主要メディアの利用時間の推移を発表。先に明らかにしていた米国の調査結果と合わせて、日米独のメディア利用時間の違いを追ってみた。

 まず日本のTV(テレビ)利用時間とデジタル利用時間は図1のように推移している。いずれも18歳以上の大人の1日当たりの平均利用時間である。2018年ころに、デジタルの利用時間が3時間17分となりTVに追いつくと予測している。時期が遅いのは、高齢者が多いせいだろう。

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(ソース:eMarketer)
図1 日本におけるテレビ利用時間とデジタル利用時間の推移。

 ドイツの場合は、図2のように、2017年にはデジタルの利用時間が3時間44分となり、日本より一足早くTVを追い抜くという。

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(ソース:eMarketer)
図2 ドイツにおけるテレビ利用時間とデジタル利用時間の推移。

 一方、米国では、図3に示すように、2013年にデジタルの利用時間が4時間48分となり、3年前に早くもTVの利用時間を抜き去っていた。

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(ソース:eMarketer)
図3 米国における主要メディアの利用時間の推移

 ここで目立つのは、米国人のデジタルおよびTVの利用時間が、日本やドイツを大きく引き離していることだ。ソーシャルメディアと接触している時間が長かったり、面白いTV番組が多いためかもしれないが、それにしてもデジタルとTVの利用時間の総計が今年は毎日10時間近くにも膨れ上がっている。これでは、他に何もやれないのではと心配する。でも図4のエリクソンの調査結果が示すように、多くの人はTVを観ながら、インターネットを利用するようになってきているのだ。つまり,ながら族である。

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(ソース:eMarketer、データ:Ericsson)
図4 テレビを観ながら、インターネットを利用する人が増えてきている

 eMarketerは同時に、PC(デスクトップ/ラップトップ)およびモバイルの利用時間の推移も調査した。各国の結果は、日本は図5に、ドイツは図6に、そして米国は先の図3に示されている。モバイルの利用時間がPCの利用時間に追いつく時期が、米国が2013年とやはり早く、ドイツが16年前に、日本が16年に入ってからとなっていた。

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(ソース:eMarketer)
図5 日本におけるモバイル利用時間とPC利用時間の推移。

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(ソース:eMarketer)
図6 ドイツにおけるモバイル利用時間とPC利用時間の推移。

◇参考
・Adults in Japan Focus Media Time on TV
(eMarketer)
・Adults in Germany to Spend More Time with Digital than TV Next Year (eMarketer)
・Growth in Time Spent with Media Is Slowing(eMarketer)
・More People Are Multitasking While Watching TV(eMarketer)

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posted by 田中善一郎 at 13:18 | Comment(0) | TrackBack(0) | TV  ビデオ ラジオ
2016年08月10日

パブリッシャーが相次ぎ「Facebook Live」に挑む、トップ500のメディア社の半数がライブ動画を配信

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 ライブ動画ストリーミングをめぐる動きが慌ただしい。

 そのライブ動画で注目したいのが、やはりFacebook Live。米国でサービスが立ち上がって半年少々しか経っていないし、大半のパブリッシャーにとってまだ試行錯誤の段階である。にもかかわらず、すでに社会を揺り動かすメディアになっているのである。

 最も衝撃的であったのが、1カ月ほど前の7月6日の出来事である。米ミネソタ州で、運転していた黒人男性を警官が射殺した事件で、同乗していた彼の恋人が射殺される様子をスマホで動画撮影しFacebook Live機能でフェイスブックに投稿したのだ。射殺の瞬間が、約10分の動画で生中継の形で流れたのである(恋人のLavish Reynoldsさんが投稿したライブ動画はこちら)。悲惨な現場で動画撮影すること自体に衝撃を受けたが、同時に一般のフェイスブックユーザーでもFacebook Liveでライブ動画を投稿する状況になっていることにも驚いた。

 一般のユーザーだけではない。パブリッシャーやブランド(企業)は、Facebook Liveのビジネス利用に関心を寄せるている。たとえば既にABC Newsは、7月下旬に開催された大統領選候補者選出の共和党および民主党の全国大会現場から、Facebook Liveでライブ動画配信を実施した。両大会合わせて期間中に累計74時間ものライブストリームを投稿し、2800万回以上も視聴された(図1)。ABC Newsのようなテレビ局にとって、テレビ離れが進む若者対策が課題になっており、フェイスブックなどのソーシャルプラットフォームを介して若者へリーチを拡大しようと躍起になっている。ABC Newsのフェイスブックページには880万人のフォロワーを抱えているので、そこに投稿するライブ動画はかなり多くの若者にリーチするはずだ。

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図1 ABC Newsのライブ動画 左のライブ動画は360度動画である。

 Facebook Liveのような動画メディア配信に意欲を示すパブリッシャーは、動画メディアを本業とするTV局だけではない。非TV系のパブリッシャーも、動画メディアに注力し始めている。その背景として、これからのメディア・コンテンツの主役が動画になると見込んだフェイスブックが、パブリッシャーに動画コンテンツ投稿を強力に薦めていることが大きい。そのために、フェイスブックは動画コンテンツをニュースフィードに優先して表示させるようにしている、最近になって特にライブ動画を優先しているようで、それに応じてパブリッシャーも競ってライブ動画を投稿し始めている。

 Socialbakersの調査でも、パブリッシャーのフェイスブックページへの投稿で、ライブ動画コンテンツが急増していることを明らかにしている。トップ500のパブリッシャーおよびトップ500の企業(ブランド)を対象に、それぞれのフェイスブックページに投稿された月間ライブ動画数総計を測定した。その推移を、今年1月から6月までの期間に渡って示したのが図2である。パブリッシャー・ページに投稿されたライブ動画数は急増しているが、企業ページへのライブ動画の投稿はまだ少ない。ただ目立たないが、多くの企業はライブ動画によるプロモーションを試しており、今後急展開しそうである。

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図2 大手パブリッシャーのフェイスブックページおよび大手企業のフェイスブックページに、それぞれ投稿されたライブ動画数の推移

 トップ500のパブリッシャーの何%がライブ動画を投稿しているのか、それを示したのが図3である。今年の6月には、パブリッシャーの約半分もがライブ動画をフェイスブックに投稿するようになっている。

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図3 ライブ動画を投稿しているパブリッシャーの割合

 また今回のSocialbakersの調査結果で興味深かったのは、Facebook Live動画を利用しているパブリッシャーに、米国外のメディア社が目立って多いことであった。そのため、ライブ動画で使かわている言語が英語以外のパブリッシャーが全体の70%も占めていた。

 Facebook Live動画を探すには、投稿者(パブリッシャー、企業、個人など)を世界地図上に表示した「Facebook Live Map」(デスクトップのみ)が便利であるが、その Live Mapも米国以外の全世界に分散してライブ動画投稿者が現れていることを明示してくれている(図4)。

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図4 Facebook Live Map 当然だが、日中の時間帯の国からのライブ配信は増えるが、深夜の時間帯になると激減する。

 Live Mapであてもなくライブ配信中の投稿者を追ってみた。8月6日から8日にかけて観て回ったのだが、オリンピックが開催されたこともあって、ブラジルからのライブ動画の配信が増えていた。アジアのパブリッシャー、特にテレビ局やニュースメディア社のライブも目に付いた。アジアのベトナム、タイ、台湾、フィリピンでは個人の投稿者も多かった。ところが、日本には地図を拡大してもあまりライブ投稿者が現れなかった。パブリッシャーだけではなくて個人の投稿者も少ない。たまたま見つけた個人の投稿者のライブ動画を観ると、発信者は東南アジアの人だったりした。日本でFacebook Liveの投稿者が少ないのは、ツイキャスやLINE LIVEが浸透しているためかもしれない。

 Live Mapを適当に観て回る中で、目に留まったライブ動画を、以下の図5〜図10に掲げておく。

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図5 ベトナムのメディア・パブリッシャーYAN Newsのライブ動画。6日にリオ五輪の開催式を、Facebook Liveで同時中継していた。フェイスブック・ページのフォロワー数は1160万人。音声はベトナム語なので、海外にいるベトナム人でも、母国語でオリンピックのライブ中継をスマホで楽しめる。

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図6 バングラディシュのラジオ局ABC Radio FM 89.2のライブ動画。ディスクジョッキーの番組をライブ動画で配信していた。DJと視聴者がリアルタイムでやり取りしながら進行している。同局のフェイスブック・ページのフォロワー数は394万人。

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図7 Al Jazeera Channelのライブ動画。1653万人のフォロワーを誇るAl Jazeera Channelは、動画ニュースを大量に配信しているが、新たにFacebook Liveを活用してライブも増やしてきている

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図8 英国の女性サッカーチームManchester City Womenのライブ動画。8月7日に行われたMan City Women v Doncaster Bellesの試合をライブ中継していた。リーグ戦の試合はFacebook Liveでいつも実況中継しているようだ。同チームのフェイスブック・ページのフォロワー数は454万人。


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図9 エミレーツ航空(Emirates)のライブ動画。エアバス社から80機目のA380を受領したイベント時の生中継である。エミレーツ航空のフェイスブック・ページのフォロワー数は621万人で、このライブ動画の再生回数は73万回(ライブ配信後に保存された動画コンテンツの再生回数も含む)。

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図10 女優・歌手のイディナ・メンゼル(Idina Menzel)のライブ動画。彼女は新アルバム制作のために少女たちと一緒にキャンプしており、その練習の現場からライブ中継を実施した。8月7日にライブ配信し、30万人が視聴していた。


 以上の事例からも分かるように、グローバル(フェイスブックが普及していない中国とロシアは除いて)でほぼ同時にFacebook Liveによるライブ動画が盛り上がってきているようだ。

 ただ、ライブ動画は想定外のハプニングが起こりやすいので、企業(ブランド)は慎重になるのではと思った。だが図9のエミレーツ航空のように、先進的なネットマーケッティングに取り組んでいる企業は、ライブ動画も先んじて活用しようとしている。そのような先進企業を以下に紹介する。それぞれの企業のリンク先に、最近配信したライブ動画が観れるようにしたので、どのような取り組みをしているかが少しは理解できるであろう。

・Benefit Cosmetics
・McDonald's
・Dunkin' Donuts
・Popeyes
・Airbnb


 ソーシャルプラットフォームでのライブ動画市場でも主導権を握ろうとするフェイスブックは、Twitter(Periscope)やGoogle(YouTube)と対抗していくためにも、有力パブリッシャーの囲い込みに必死になっている。そこで同社は、有力なパブリッシャーやセレブとライブ動画制作で契約した。契約者にライブ動画を配信してもらうために、総額5000万ドルを支払ったとWSJは報じている。

 契約件数は約140件。その中には、BuzzFeed(受領額310万ドル)、NYタイムズ(300万ドル)、CNN(250万ドル)、Huffington Post(160万ドル)など、有力パブリッシャーが名を連なっている。非TV系メディアのNYタイムズなどが、ライブ動画にどう取り組むかは興味深い。幸い、NewsWhipが6月の30日間、NYタイムズが配信したライブ動画を測定してたので、その結果を追ってみる。

 その30日間で、高いエンゲージメントを得たトップ5のライブ動画記事は次のとおりである。いずれも比較的長尺な動画であり、再生回数(ビデオビュー数)からもある程度注目された記事と言えそう。ソーシャルメディアに投稿される動画コンテンツは短尺なものが増えてきているが、時間的制約が緩いライブ動画では比較的長尺なものも受け入れられるようだ。

1. Interview with Orlando shooting survivor: 31分19秒、再生回数157万
2. A Times editor explains what happened in the shooting: 11分2秒、再生回数43万
3. Drone footage of Chinese national park: 17分21秒、再生回数22万
4. A Times journalist reports on flooding in Paris: 18分14秒、再生回数29万
5. A Times journalist reports from New York’s Pride Parade: 12分、再生回数27万

この中で気に入ったのは3番目のライブ動画(図11)。中国の桂林の上空から、ドローンを使った撮影のライブ中継である。今まで不可能であった視点からの絶景を楽しめる。

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図11 NYタイムズのライブ動画。Above China's Li Riverとのタイトルが付いた記事で、桂林上空からドローンで撮影。他にも、ゴビ砂漠からドローン撮影のライブ中継も配信していた

 4番目は豪雨でパリ・セーヌ川が氾濫した時、5番目はNY市で催されたゲイのパレード時に、それぞれのニュース現場から記者がレポートしたライブ中継である。必ずしもNYタイムズならではのライブ動画ではないかもしれないが、一般のニュース記事のページビュー数よりも多いビデオビュー数を稼げるのであろう。

 そのほかに、試みとして面白かったのは‘smarter than a New York Times journalist‘ とのタイトルが付いたライブ動画である。現役の記者二人が登場したクイズ番組で、視聴者にも参加させて、どちらが賢いかを競わせるゲームである。クイズ好きの米国人向けには、ライブ動画版がいろいろ考えられそう。ともかくこれからの新聞記者は、動画メディア、それもライブにも駆り出されかねないということか。

 このように、多くのパブリッシャーがライブ動画に取り組み始めている。当面の課題は、マネタイジングの見通しである。フェイスブックがライブ動画事業に異常なまでに注力するのは、巨大なテレビ広告の受け皿になることを狙っているからだ。そのための準備を進めている。最近、同社は、配信中のライブ動画ストリームの途中にミッドロール動画広告を組み込むテストを始めることを明らかにした。ライブ開始の5分以降に15秒以内の動画広告を組み入れるようにする。先に紹介した、契約した有力パブリッシャーやセレブのライブ動画で試していきたいという。


◇参考
・Facebook Live Videos Take Off In 2016(Socialbakers)
・また警官が黒人を射殺。恋人が一部始終をFacebookライブで撮影 米セントポール(Huffington Post)
・ABC News Serves Up 28 Million Facebook Live Video Streams During Political Conventions (EXCLUSIVE)(Variety)
・What We Learned From Analysing 30 Days of Facebook Live Videos
(NewsWhip)
・Facebook Signs Deals With Media Companies, Celebrities for Facebook Live(WSJ)
・Facebook Is Testing Mid-Roll Video Ads in Facebook Live(AdAge)
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posted by 田中善一郎 at 16:28 | Comment(0) | TrackBack(0) | TV  ビデオ ラジオ
2013年09月27日

TVコマーシャル、リーチは頭打ちだが売上増続き「広告の王座」を堅守

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 TV広告の天下がまだまだ続きそうだ。

 先進国では、ラジオ、雑誌、新聞といった伝統メディアの各広告費が、次々とインターネット広告費に追い抜かれてきた。そして次はテレビ広告費もネット広告費に屈し、近いうちにトップの座から引きずり落ろされると思われたのだが・・・。確かにインターネットの台頭によって、米国でも消費者のテレビ離れが始まり、それに応じてTV放送のリーチも縮小傾向が続いているのだが、それにもかかわらずTV広告費は一貫して増え続けているのだ。

 米国のTV広告費およびTV視聴者数について、四半期単位の成長率(前年同期比)の推移を示すグラフを見てみよう。最近の8四半期続けて、TV視聴者数はマイナス成長になっている。つまりTV広告のリーチは狭まっている。それなのにTV広告費は、一貫してプラス成長を継続しているのである。

TVAdUS.png
(Marketing Chartsより)

 なぜTV広告費は増え続けるのか。消費者が商品購入などで最も影響を及ぼす広告メディアとして、TV広告が未だに抜きんでているからのようだ。多くの調査ではっきりと示されている(こちらの記事で調査事例が数多く紹介されている)。たとえばテレビ離れが進んでいると見らる大学生でも、以下のBarnes&Nobleの調査結果グラフのように、最も影響を受けるメディアとして回答者の42%がテレビをあげていた。20%の学生は購入決定にメディア広告の影響を受けないと答え、10%は雑誌広告、8%はフェイスブック広告をあげていた。

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(Marketing Chartsより)

 このため米国の広告主は、TV視聴者1人当たり平均で年間225ドルも投じているのに対して、オンラインユーザー1人当たり144ドルに抑えている。PricewaterhouseCoopers (PwC)のデータをもとにMarketing Chartsがまとめた広告メディア別の市場規模の予測でも、TV広告の市場規模は2012年の638億ドルから2017年の816億ドルと、今後も増え続けると見ている。2017年のインターネット広告の市場規模を694億ドルとはじいているので、TV広告は依然としてトップを走ることになりそう。

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(Marketing Chartsより)


◇参考
・Data Dive: US TV Ad Spend and Influence (Updated – Q2 2013 Data)(Marketing Charts)
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posted by 田中善一郎 at 20:54 | Comment(0) | TrackBack(0) | TV  ビデオ ラジオ
2013年09月25日

オンラインビデオ広告の閲覧数、米国で今年に入って爆発的に急伸

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 オンラインビデオ広告の閲覧本数が、米国で急増している。comScoreによると、アメリカ人は8月にビデオ広告を月間で228億回も閲覧した。今年1月の月間閲読回数が91億回だから、約2.5倍も急伸したことになる。

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(データソースはcomScore)

 オンラインビデオ広告が人口の55.6%にリーチし8月も着実に浸透しているのだが、ここで特に注目すべきは視聴者一人当たりの閲覧頻度が急増していることだ。以下のグラフのように、1月には58.4回であったのが、8月には2倍以上の132.2回と増えている。 

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(データソースはcomScore)

 サイト別に見れば、Googleがトップで8月には約32億回の広告を配信している。2位はビデオ広告配信ネットワークのADAP.tvが24.5億回で続いている。その後は、BrightRoll (23.9 億回), LIVERAIL (22億回), Specific Media (16.7億回)となっていた。8月に、10億回以上のビデオ広告を配信したサイトは8つあった。


OnlineVideoAdRankingComScore2013Aug.png


 最後に、オンラインビデオ配信サイトのユニークユーザー数ランキングを見ておこう。Google(YouTube)がやはり独走しており、8月のユニークユーザー数は1億6700万人でトップに。続いて、AOL (7120万人), Facebook (6220万人), NDN (5070万人)、 VEVO (4940万人)が追っている。

OnlineVideoRankingComScore2013Aug.png

 AOLがFacebookやVEVOを追い抜き2位に躍り出たのが話題になっている。セレブ、ニュース、エンターテイメントなどのビデオに力を入れ、攻撃的なキャンペーンを実施した。 AOL Onも勢いが感じられる。

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◇参考
・comScore Releases August 2013 U.S. Online Video Rankings(comScore)
・Online Video Ad Views Reach New Heights, as Per-Viewer Frequency Jumps(MarketingCharts)
・AOL Climbs to Second Spot in August comScore Video Rankings - Streaming Media Magazine(Strereming Media)
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posted by 田中善一郎 at 14:50 | Comment(0) | TrackBack(0) | TV  ビデオ ラジオ
2012年09月02日

クラウドソーシングの字幕作成、公共放送サービスPBSが多国語字幕を提供

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 米国の公共放送サービスのPBSが、ビデオ番組PBS NewsHourに多国語の字幕提供を始めている。

 グローバルな人々に視聴してもらうために、翻訳プラットフォーム会社Amaraと提携して、現在、PBS NewsHourを対象に最大52カ国語の字幕を提供している。Amaraは、ボランティアを募ってクラウドソーシングの字幕作成プットフォームを実施しており、PBS NewsHourのほかに、TED talksやNETFLIX filmsなどにも字幕を提供している。

 PBS NewsHourのビデオでは政治関連ビデオを主に対象としており、現在は大統領選のキャンペーンニュースや、投票者への街頭インタビューなどが多い。

AmaraPBSNewswire.jpg

 以下に貼り付けたビデオは、タイトルが“Watch President Obama's Remarks on New Immigration Policy”で、現在、下の13カ国の字幕(あるいは翻訳)が用意されている。(百分率)は字幕作業の達成率。
英語 (100%)、アラビア語 (75%)、イタリア語 (100%)、インドネシア語 (100%)、
スペイン語 (100%)、スペイン語、メキシコ (100%)、ドイツ語 (100%)、
フランス語 (100%)、ベトナム語 (100%)、ペルシア語 (30%)、
ロシア語 (one: 33行 other: 33行)、日本語 (100%)、韓国語 (61%)



  字幕の提供はボランティアに頼っているため、ビデオごとに字幕の対応言語は異なる。最も頻繁に字幕で登場している言語は、英語以外では、スペイン語、フランス語、インドネシア語、中国語、韓国語である、とPBS NewsHour の担当者が語っている。クラウドソーシングの字幕サービスは他でも行われているが、同じような傾向が見られる。日本語への対応が相対的に減ってきている。留学生や移民者も減ってきているし、翻訳するボランティアも少ないだろうし、それに海外のニュースを知りたい日本人や知らなければならないビジネスパーソンも少なくなっているのかもしれない。

 以下はPBS NewsHourで人気のあったタイトルにおける字幕対象言語を参考までに。
"PBS NewsHour on the Khan Academy"(15カ国語)
English (100%)、Arabic (100%)、Chinese, Traditional (1%)、
Czech (100%)、Dutch (100%)、German (13 Lines)、
Indonesian (100%)、Italian (96 Lines)、Korean (100%)、
Polish (100%)、Portuguese (100%)、Portuguese, Brazilian (100%)
Serbian (100%)、Spanish, Mexican (100%)、Vietnamese (100%)


"Florida Voter Gabe Higgins 'This Election Is About Debt'"(9カ国語)
English (100%)、Arabic (100%)、French (100%)、
German (100%)、Hebrew (100%)、Indonesian (100%)、
Korean (100%)、Portuguese (100%)、Spanish (100%)、


◇参考
・PBS NewsHour’s viewers are translating its videos into 52 languages (and counting)(NiemanJournsalismLab)
・多言語字幕対応の動画サイト“dotSUB”,ボランティアユーザーが字幕を投稿(メディア・パブ)
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2011年09月11日

音楽のFlipboard版、「Groovebug」が無料iPadアプリで提供

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 音楽のFlipboard版がついに出てきた。

 雑誌風レイアウトを施したパーソナライズド・ニュースアグリゲーターが、タブレットやスマートフォン向け人気アプリとして台頭してきている。Flipboardを筆頭にZite、Pulse、News.meなどが出しているiPadアプリが特に注目を浴びている。ユーザーが登録しているRSSフィードやTwitter、Facebookなどの利用履歴を参考にして、そのユーザーにパーソナライズしたコンテンツを雑誌のようなメリハリの効いたレイアウトで表示するのが“売り”となっている。

 そこで音楽分野をターゲットにしたパーソナライズド・ミュージック・マガジン(アグリゲーター)のモバイルアプリが、ようやく出てきたわけだ。シカゴのスタートアップGroovebugが、iPadアプリを9月8日にリリースした。ユーザーの好みに合ったアーティストや音楽が、雑誌スタイルで表示されていくのだろう。Echonest(約1億人の音楽ファンにリーチ)やYouTubeなどの協力を得ている。

 とりあえず、GroovebugのiPadアプリをダウンロードしてみた。そのアプリを起動すると次のような画面が出てきた。

groovebug1.jpg


 何の設定もしていないデフォルトの状態で、My ArtistsにStevie Wonderが表示されていたので、そこをクリックすると、彼のベストコレクションが日本語で現れた。

groovebug2.jpg

 最初の「迷信」をクリックする、その曲のYouTubeビデオがすぐに視聴できた。

groovebug32.jpg

 まだパーソナライズされていない状態なので何とも言えないが、iTunes Previewにおけるユーザー評価(Customer Ratings)では、評価者がまだ少ないながら4.5点と極めて高い点を取っていた。

 デモビデオを貼っておく。



 これまでのFlipboardのようなテキスト中心のパーソナライズドマガジンから、音楽を対象にしたパーソナライズドマガジンに、さらにFlipboardも準備中のテレビ番組や映画を対象にしたパーソナライズドマガジンへと、マルチメディア・コンテンツアグリゲーターのモバイルアプリが次々と出てきそうである。


◇参考
・Groovebug Aims to Be the Flipboard of Music(PCMAG)
・Groovebug Aims to be Flipboard For Music - It's a Start...(ReadWriteWeb)
・Spotify Gets A Music Recommendation Engine (Sort of) With Echofi(ReadWriteWeb)
・Social media magazine Flipboard pursues TV, films(Reuters)
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posted by 田中善一郎 at 12:51 | Comment(0) | TrackBack(0) | TV  ビデオ ラジオ
2011年08月30日

中国の動画配信サイトも急成長、ハリウッド映画や韓流ドラマ、オリジナル作品が充実

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 中国で今爆発的に成長しているソーシャル系サービスと言えば、マイクロブログサービスと動画配信サービスとなる。米国産サービスが上陸を事実上阻止された中国市場では、中国の国産サービス同士が競合することになる。

 Weiboと称するマイクロブログは中国版Twitterと言われているが、Facebook風機能も備えているサービスが主流である。「Sina Weibo」と「Tencent Weibo」の2強が競り合っている。もう一方の動画サービスは、投稿動画が共有できるため中国版YouTube と呼ばれているが、最近ではNetflix風/Hulu風にテレビ番組や映画の動画配信に力を入れている。「Youku」を先頭に「Tudou」と「Sohu」が加わった3強のつばぜり合いが目立つ。

 Weiboについては3月の記事で紹介したので、今回は動画配信サービスについて追ってみる。ここでは中国の動画サービス市場でトップを走っているYouku(優酷網)の動きを見てみよう。

 中国の動画サイトは少し前まで、個人の投稿ビデオに加えて、違法コピー(海賊版など)のテレビドラマや映画で溢れていた。日本のテレビドラマやアニメなども数多く散見された。だが、久々にYouku(優酷網)サイトを覗いてみての印象は,かなり様変わりしている。昨年12月に実施した米国(NYSE)上場に合わせて、内外のコンテンツプロバイダーとライセンス契約を結び、違法コピー対策を講じるようになっている。Youkuのコンテンツの70%はライセンスをプロの作品か自前で制作したオリジナル作品で、残り30%がユーザーが生成したコンテンツとのことだ。

 久々にYouKuにアクセスしたのは、中国の高速鉄道事故が起こった7月23日であった。事故直後から次々と事故関連の動画ニュースがアップされ、特設コーナーが置かれた。現在でも特設コーナーは残されており、視聴できる。


youkuRailway20110723.jpg


 今朝(8月30日)は日本の新首相になる野田氏の動画ニュースをトップに掲載するなどニュースを充実させているが、やはり目玉は映画やテレビドラマであろう。今年に入って一段とエンターテインメントコンテンツの整備に力を入れている。特にハリウッド映画の拡充が目立つ。今年6月にはWarner Bros Entertainmentと契約し、今後3年間に400〜450タイトルのWarner Bros映画を提供していく。すでに同社は昨秋にDisneyから259エピソードを購入している。また昨日(8月29日)にはDreamWorks Animation とも契約し、中国で絶大な人気を誇る "Kung Fu Panda"をオンラインで配信していく。

 映画スクリーン数を人口3億人強の米国が4万も配備しているのに対し、人口約13億人の中国ではわずか4200スクリーンしか存在しない。どうしてもオンラインへの期待が大きい。映画コンテンツはペイ・パー・ビュー(pay-per-view略:PPV)が多いが、月額定額制(20RMB)や、無料サービス(広告付き)も用意されている。人気映画が で50セントから1ドル相当あたりのPPV料金でオンラインで観ることができるようだ。先のKung Fu Pandaも、Youku's premium on-demand serviceで1ドル以下で提供される予定。1.5ドル以上要する海賊版DVDよりも安く済むというのも売りか。

 8月17日には以下のようなHollywood Movies Channelを新設し、2000タイトル以上のハリウッド映画を集めている。無料のタイトルもあれば、有料のタイトルもある。

youkuHollywoodMovies.jpg


 テレビドラマも人気が高い。国内だけではなくて海外、特に韓国ドラマを充実させている。博報堂の調査からでも明らかなように、最近では日本のドラマよりも韓国ドラマの人気が高まっている。そこで、今年4月に韓国のテレビ局SBSとも契約を交わし、約200シリーズ(総計6000エピソード)の韓流ドラマを提供していく。SBS以外のKBSやMBCなどの韓国テレビ局とも手を組み、1000エピソード以上のドラマを用意する。

 もちろん国内の数多くのコンテンツ提供会社やテレビ局と契約しているが、最近ではオリジナル作品の制作も増えている。注目されるのは、企業スポンサーと組んで制作された作品である。中国で人気の高いアニメシリーズMiss Puff(泡芙小姐)は、今年の作品でGM, Sony Ericsson, そしてLenovoと組んだ。またPhilipsと組んで始まっているOne Step Aaway(幸福59厘米)も話題になっているという。



 
 ところが競争が激化する中国動画配信サービス市場では、動画タイトルの拡充合戦も厳しくなる一方で、ライセンス料が膨らみ、またオリジナル作品の製作費も嵩んできた。このため、動画配信サービス会社の多くは赤字経営から抜けなせないでいる。Youkuは、2011年第2四半期の売上高が3060万ドルと前年同期比178%も伸ばしたが、435万ドルの赤字となっている。だが、有料コンテンツの拡充とユーザー数の増加で、早い時期での黒字化が期待されている。

 McKinseyの予測によると、オンライン動画コンテンツの中国のユーザー数は、2015年には7億人に達する。

ChinaOnlineVideo.jpg
(ソース:McKinsey)
 
 現在でも4億人以上のユーザーを抱える巨大市場であるが、収益化はこれからが本番かもしれない。広告売上に加え有料コンテンツの課金売上がどこまで伸びるかが鍵である。中国のオンライン動画市場の売上高は、2011年第2四半期で約15億元で、前年同期に比べ倍以上も増えている。

ChinaOnlineVideoRevenue.jpg

 オンライン動画の広告売上高は約10億元で、シェアは次のようになっている。

YoukuVideoAdShare2011q2.jpg
(ソース:TechNode)

 最後のトピックスとして見逃せないのは、Youkuを追うTodou(土豆網)が、8月17日にナスダック上場を果たしたことである。


◇参考
・The State of American and Chinese New Media(Penn Olson)
・Succeeding in China’s online video market( McKinsey Quarterly)
・Charts: China Online Video Market Update Q2 2011(China Internet Watch)
・China to Have over 700 Million Online Video Users by 2015(China Internet Watch)
・Youku and Partners See Success with Sponsored Original Content(PR Newswire)
・Youku Extends Financial Lead Over Tudou(TechNode)
・China : Advertising Season Drives up Revenue of Online Video(2Chinable)
・Youku, Tudou and Sohu Lead China’s Online Video Advertising Market(TechNode)
・Youku’s Cash Flow – Sources and Uses of Cash(Chinavestor)
・Youku.com Q2 loss narrows on another revenue surge(Total Telecom)
・Chinese video site Youku to launch animated web series, Miss Puff(Penn Olson)
・China's Youku.com To Buy 200 Television Series From South Korea's SBS(China Tech News)
・Youku’s New Hollywood Films Channel(Youku Buzz)
・博報堂Global HABIT調査 アジア10都市における日・韓・欧米コンテンツ受容性比較(宣伝会議)
・DreamWorks Animation partners with China's leading online video site(LA Times)
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posted by 田中善一郎 at 15:45 | Comment(0) | TrackBack(0) | TV  ビデオ ラジオ
2011年01月09日

「第三の男」や「武器よさらば」など、オンラインで無料視聴可能な映画275本がリストアップ

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 「第三の男」や「武器よさらば」など、ネットで無料で見ることができる名画が少なくない。Open Cultureが昔の名画を中心に、オンラインで無料視聴可能な映画275本をまとめてくれている。

 とりあえず試してみた。今回の一覧表275 Free Movies Onlineのトップは「A Farewell to Arms (武器よさらば)」。ゲイリー・クーパーとヘレン・ヘイズが主演の1932年版なので、以前映画館で見た1957年版(主演:ロック・ハドソン、ジェニファー・ジョーンズ)とは違う。リンクの飛び先は有名なInternet Archiveであった。"embed this"と記されていたのでクリックすると、貼り付けるためのコードが現れ"Simply copy the code below and paste it into your webpage"となっていたので、以下に貼り付けておく。



 今回の一覧表「275 Free Movies Online」には、Chaplin, Hitchcock, Coppola, Welles, Godard, Kubrickなどの巨匠の作品のほかに、ドキュメント作品やインディーズ系映画も含まれている。昔の名画は著作権切れ作品が中心のはずと思ったのだが、必ずしもそうではなさそう。 映画「羅生門」もリストアップされているが、日本での著作権期間は延命になったはず。


 「275 Free Movies Online」の中から、目に付いた作品を適当にリストアップしてみた。

・The Third Man (1949): directed by Carol Reed, and starring Orson Welles.
・The Wizard of Oz (1910)
・Yellow Submarine (1968):The animated feature film based on the music of The Beatles.
・A Woman(1915): With Charlie Chaplin.
・Downhill (1927): by Alfred Hitchcock.
・Buena Vista Social Club (1999): Cuban music legends play with Ry Cooder
・Last Tango in Paris (1972): with Marlon Brando.
・Muhammad Ali(1969): Stars Muhammad Ali, Sonny Liston and Angelo Dundee.
・Olympia (1938): Leni Riefenstahl’s film of the Berlin Olympic Games
・One Eyed Jacks(1961):directed by Marlon Brando.
・Panic in the Streets (1950): directed by Elia Kazan
・Paradise Canyon (1935): Starring John Wayne.
・Rashomon(1950): director Akira Kurosawa.
・The Snows of Kilimanjaro(1952): With Gregory Peck.

 ただし、「Buena Vista Social Club」 や「Last Tango in Paris」などは、米国内からでないと見ることができない。「Buena Vista Social Club」ならば字幕がなくても楽しめるのに、日本からは無料でアクセスできない。


 リストアップされている映画のアーカイブ先は、Internet ArchiveやYouTube、Huluなど良く知られているサイトが多いが、それ以外のサイトからも多く収集している。そうしたFree Movie Sitesもリストアップされている。ほとんど字幕なしの英語の映画が大半なので、残念ながら利用する気にはなれないのだが。でも、映画の内容が脳に刷り込まれている「第三の男」だと、チター演奏に癒されるためにも見ることがあるかもしれないので、以下に貼っておく。







◇参考
・275 Free Movies Online: Great Classics, Indies, Film Noir & More(Open Culture)
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posted by 田中善一郎 at 11:44 | Comment(0) | TrackBack(0) | TV  ビデオ ラジオ
2010年09月18日

TV番組と同期するiPadアプリ、米ABCが無料で提供

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 米ABCが、同社のテレビ番組と同期する新しいiPadアプリを提供している。

 どんなことができるかは、下のビデオを視聴してもらったほうが分かりやすいだろう。
 


  ABC’s My Generation Sync と称するiPadアプリをダウンロードすれば、ABCのショー番組「My Generation」とiPadアプリとがリアルタイムで同期することになる。TVの視聴者はiPadからショー番組の出演者の紹介を見たり、投票に参加したり、クイズに答えたりと、番組と双方向のやり取りができるようになる。

 次はiPadのスナップショット例。

abciPadMyGeneration.jpg

 ABCとNielsenの共同発表になっているのは、今回のシステムがNielsen’s new Media-Sync Platformをベースにしているため。広告の展開も注目すべきか。TV受像機にiPadが2番目のスクリーンとして加わることにより、TVプログラムや広告を介して視聴者との双方向性が実現する。


◇参考
・An iPad App that Stays in Sync with Your TV(ReadWriteWeb)
・Nielsen and ABC’s Innovative iPad App Connects New “Generation” of Viewers(nielsenwire)

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posted by 田中善一郎 at 01:26 | Comment(0) | TrackBack(0) | TV  ビデオ ラジオ
2010年08月14日

3DTVに最も無関心な国民は日本人? 最も関心度が高い国民はアラブやアフリカの人たちか

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 3DTV(3Dテレビ)が、パナソニックを皮切りにソニー、シャープ、それに東芝、三菱電機から発売されていく。日本は3DTVの先進国として、いち早く市場が立ち上がりそうだし、国民の関心も比較的広がっているように思えたのだが・・・。

 ところが、とんでもないNielsenの調査結果がMarketing Chartsに出ていた。世界各国のオンラインユーザー2万7665人を対象に、3DTVのownership/interest levelsを調べたところ、3DTVの購入に高い関心を示すのはアラブ、南米、アフリカの開発途上の国で、逆に日本は最下位となっていた。調査は今年の3月に実施している。

3DTVNielsen201003.jpg

 開発途上国の国民のほうが先進国よりも、娯楽としてテレビの人気が高いのは理解できるとしても、どうして日本が断トツでレベルが低いのはなぜ?調査対象がオンラインユーザーなので、3DTVの動画よりもオンラインでYouTubeとかニコニコ動画を楽しみたいのかな。
 

◇参考
・Middle East Leads 3DTV Ownership, Interest(Marketing Charts)
・Middle East, Latin American Nations Show Most Interest in 3DTV(MediaBuyerPlanner)

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posted by 田中善一郎 at 01:07 | Comment(6) | TrackBack(0) | TV  ビデオ ラジオ
2010年03月25日

マードックのニュース・コーポレーション、有料のモバイル・ビデオ・サービスをまもなく開始

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 ニュース・コーポレーションの子会社Fox Mobile Groupが、近く有料のモバイル・ビデオ・サービスを始める。サービス名はbitbop。月額9.99ドルで、スマートフォンユーザーにTV番組や映画のフルコンテンツを提供する。

 ラスベガスで開かれているCTIA Wireless会議で発表された。サービス開始日は明らかにしていないが、ホームページでは以下のように今春からとなっている。動画は、ストリーミングとダウンロードの両方で配信されるもよう。人気ブログGigaOMによると、コンテンツはFoxだけではなくて、 NBC Universalと Discoveryからも提供されるという。ブログ界隈では、Huluのモバイル版と見られ始めている。

bitbop20100324.jpg

 だが、今後の展開で幾つかの問題が浮上しそうだ。まず、ブランドが確立したHuluを拡張した形でモバイルサービスを提供するのではなくて、なぜ新たにbitbopを立ち上げるのかである。噂であるが、HuluはHulu iPhone appを開発中という。おそらく、Huluの動画をiPadでも視聴できるようにしたいはず。HuluのCEOの Jason Kilar 氏も、GigaOMのインタビューで、動画サービスをiPadを含むマルチプラットフォームで展開していきたいという。Huluはニュース・コーポレーション(News Corp.)とNBCユニバーサル(NBC Universal)の合弁ベンチャーとして設立された。そのNews Corp.傘下のFoxがHuluとは独立にモバイルTVサービスを立ち上げようとしているのだ。


◇参考
・New Bitbop Mobile Video Subscription Service Delivers a Wealth of Premium Content to the Smartphone(ニュースリリース)
・Fox Mobile Offers Hulu-like Subscription Service for Smartphones(GigaOM)
・Hulu’s Plans for the iPad, the Mobile Internet(GigaOM)
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posted by 田中善一郎 at 08:15 | Comment(0) | TrackBack(0) | TV  ビデオ ラジオ
2010年03月06日

YouTube、英語動画を字幕可能に

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 YouTubeは、英語動画すべてに字幕表示を実現させたいようだ。

 YouTubeは、サイトにアップロードするすべての英語動画を対象に、自動的に字幕表示できるキャプション機能を加えていきたいと発表した。これは難聴者に朗報である。また騒音の中で動画を視聴する場合とか、英語のヒアリングが苦手な人にとってもありがたい。

 音声分析(音声認識)してテキストを自動的に変換する技術は必ずしも完璧ではない。特に音声がクリアでない場合、動画のオーナーは必要に応じてダウンロードして修正しなければならないかもしれない。技術は日々改良しているという。また50ヶ国語に翻訳できるようにしていきたいようだ。

 自動キャプション機能は昨年から手掛けていたが、これから本格的に多くのチャンネルで自動キャプション機能を備えていく。

YouTubeAutoCaption.jpg 


 最近の事例を,以下に貼り付けておく。チリ地震についてのオバマ大統領のスピーチビデオである。右下のCCアイコンにカーソルを合わせて、字幕表示を指示したり、翻訳を指示できる。ここではアイスランド語に翻訳させることができる。


YouTubeCaption1.jpg
  







◇参考
・The Future Will Be Captioned: Improving Accessibility on YouTube(Official YouTube Blog)
・スタートガイド: キャプションの追加/編集(YouTubeヘルプ)
・YouTube adds video captions(Telegraph.co.uk)


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posted by 田中善一郎 at 00:54 | Comment(0) | TrackBack(0) | TV  ビデオ ラジオ
2010年02月14日

17歳のロシア高校生が仕掛けた最もホットで奇妙なサービス“Chatroulette”

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 先週あたりから,米国のマスメディアでも話題になり始めたサービスがChatroulette。ネット業界の人気ブログSilicon Alley Insiderが, super hot(超ホット), super ridiculous(超バカバカしい), and super voyeuristic(超のぞき見)のWebcamサイトとして紹介している。

 
 ビデオチャットのサービス。チャットの相手として世界中の見知らぬ人がランダムに選ばれる。ボタン一つでどんなハプニングが起こるかわからないので,ロシアンルーレットのようだとも。1か月前ころからマニアックなユーザーの間で人気が高まっているという。マスメディアでおそらく最初に大きく紹介したのがNew York Magazineである。2月5日の記事見出しが“The Human Shuffle”。

 そこで気になるのが,このように物議を醸し出しているサービスを,どこのどいつが仕掛けたかである。それに答えたのが,NYタイムズの記者ブログBitsである。仕掛け人は,17歳のロシア人 Andrey Ternovskiyくんである。モスクワの高校生だ。昨年末には一日当たり300人近くが利用していたのが,今年の2月初頭で10万人が,そして最近では20万人以上が。NYTの記事が出てからは,マスメディアが一斉に報じ始めているので,さらにユーザーが爆発的に増えるかもしれない。先ほど(日本時間2月14日11時)にChatrouletteサイトにアクセスしてみると,2万人以上がオンラインで使っていた。すでにVCが食指を伸ばしている。

 以下の二つの動画を視聴すれば,Chatrouletteがどんなものかが理解できるであろう。 








 ABC Newsもニュースサイト(Talk to Strangers with Chatroulette(ABC News))で騒いでいる。




 英語でチャットすることが多いので,日本ではほんの一部のマニアしか飛びついていないのかな。このサービスの騒ぎ方は,YouTubeが出現したときを思い出してしまうのだが。でも,注意が必要である。パーソン・ツー・パーソンのビデオチャットだから,プライバシーが守れると勘違いして,変な動画を送ったりしていると,世界の恥さらしになる危険も。ともかく相手は見知らぬ人である。ビデオチャットのコンテンツをYouTubeに投稿する者もいるからだ。YouTubeでChatrouletteを検索してみると,すでに投稿が盛んである。


◇参考
・The Human Shuffle(New York Magazine)
・Chatroulette’s Creator, 17, Introduces Himself(Bits,NYTimes.com)
・CHATROULETTE CREATOR REVEALED! He's A 17-Year-Old Russian Kid(Silicon Alley Insider)
・Talk to Strangers with Chatroulette(Guardian)

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posted by 田中善一郎 at 11:16 | Comment(0) | TrackBack(0) | TV  ビデオ ラジオ
2010年01月22日

中国のEC最大手「アリババ」のバイラルビデオ,イラク記者の靴投げ事件をパロディー化

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 中国の電子商取引最大手であるアリババ(Alibaba.com)のバイラルビデオが興味深い。

 まず,そのビデオを。



 このビデオを観て,思い起すのが一昨年末の出来事。イラクを電撃訪問したブッシュ米大統領(当時)が,記者会見中にイラク人記者から靴を投げつけられたハップニングである(その時のビデオ)。投げられた靴をうまくかわして,何食わぬ顔を装って会見を続けていた事件だ。

 だがアリババのパロディー化したビデオは違っている。好戦的な大統領が靴を投げ返して反撃に出て,ついには激しい靴の投げ合いに発展。テロリスト風の男たちが武器となるデカイ靴を確保するために,電子商取引のAlibaba.comを利用するというパロディー動画である。

 このビデオは昨年の5月に公開された。作成者は胡戈氏で,中国では影響力のあるフィルム・クリエイターとして知られている。今はフリーで活躍している。彼は,中国の大作映画『プロミス』や中国中央テレビ(CCTV)のような権威を皮肉るパロディー動画を制作し,それを動画共有サイトに投稿し,多くの大衆から支持されているという。

 このバイラルビデオの存在を知ったのは,今週の火曜日(19日)に経団連会館国際会議場で開催されたシンポジウム「ネットが変える中国,ネットで変わる日中関係」(北海道大学主催)に出席したからである。このシンポジウムには,中国の著名なインターネット関係者が参加していたのだが,その中の一人が胡戈氏で,彼の報告でアリババのバイラルビデオを紹介した。

 このシンポジウムについては,明日にでも記事で。

◇参考
・ネットが変える中国、 ネットで変わる日中関係
(主催: 北海道大学大学院メディア・コミュニケーション研究院附属東アジアメディア研究センター)

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posted by 田中善一郎 at 10:35 | Comment(0) | TrackBack(0) | TV  ビデオ ラジオ

YouTubeとHulu,動画配信サービスも「無料」から「有料」の流れが

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 無料視聴で人気の高いYouTubeやHuluも,有料課金サービスにも力を入れることになりそう。動画配信サービスにも 'free' から 'fee'への流れが。

 YouTubeは映画のオンラインレンタルを始める。最初は,48時間レンタルで料金3.99ドルで始めるもよう。また映画スタジオが料金だけではなくて,レンタル期間も1日間から90日間までを設定できるようになるようだ。

 HuluはTV番組の課金サービスを始めたいようだ。Huluはコメントを避けているので明らかではないが,LA Timesによると,次のような案が出ているという。TVドラマの最新の5エピソードは無料で視聴できるが,それ以上の古いエピソードを視聴するには月間4.99ドルのサブスクリプションが課せられる。

 動画配信サービスも,「フリーミアム」時代へ。


◇参考
・At Hulu, 'free' may soon turn into 'fee'(LA Times)
・YouTube getting into movie rental business(AP)




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posted by 田中善一郎 at 08:21 | Comment(0) | TrackBack(0) | TV  ビデオ ラジオ
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