スマートフォン専用ページを表示

メディア・パブ

オンラインメディアをウオッチ
TOP / 市場
<< 1 2  3  4  5  6  7  8 >>
2014年12月24日

世界を席巻する勢いで巨大化する中国のEコマース市場、4年後にも先進9カ国の総売上を上回りそう

Tweet このエントリーをはてなブックマークに追加
 中国のEコマース市場は、まるで世界を席巻するかのような勢いで急成長している。

 米国の調査会社eMarketerが発表した世界の小売Eコマース売上高の国別予測を、グラフで見てみよう。これは、トップ10の先進国の売上高推移である。中国の売上高の伸びが際立って大きく、2018年には米国などの残り9カ国の売上高総計と肩を並べそうだ。2019年には先進9カ国が束になっても、中国の市場規模には追い付けなくなりそう。

図1 世界トップ10カ国の小売Eコマース売上高予測(旅行やイベントチケット販売は含まれていない)
ECranking20132018.png
(ソース:eMarketer)


 世界トップ10カ国における、2013年および2018年(予測)の小売Eコマース売上高を、eMarketerが次のようにはじき出している。

図2 2013年と2018年(予測)の国別小売Eコマース売上高。単位は10億ドル
ECranking20132018b.png
(ソース:eMarketer)

 2013年の売上高は中国が3158億ドルと、既に米国を抜いてトップに立っている。それでも、その他の先進9カ国の売上高を総計すると5616億ドルとなっていた。ところが、中国の成長率は2013年が47%、2014年が35%と群を抜いて高く、2018年の売上高は1兆ドル(10,113億ドル)を突破する見込みである。2018年の先進9カ国の売上高総額が10,251億ドルなので、図3のようにほぼ肩を並べることになる。2018年には中国の売上高が、全世界総計の40%以上を占めるとeMarketerは見ているのだ。その時の日本の市場規模は、中国の約1割となるのか。

図3 中国 対 先進9か国
ECChinaMarket2018.png
(ソース:eMarketer)


 今回のeMarketerの発表では、世界の小売売上高の総額および年成長率の推移も示されていたので、それも紹介しておく。今年は前年比6.1%増の22.5兆ドルとなる。

図4 世界の小売売上高の推移。単位は兆ドル
ECTotalRetailSalesWorldwide2018a.png
(ソース:eMarketer)

 小売売上高の総額の中で、オンラインの小売Eコマースがどれくらい占めているかを示しているのが、次の図である。 棒グラフが全世界のEコマースの売上高で、青の線グラフは小売売上総額の中でEコマース売上高の占める割合を示している。2014年のEコマースの売上高は1兆3160億ドルで、全小売売上高の5.9%となる。2018年には2兆4890億ドルとなり、全小売売上高の8.8%を占めるようになる。オンラインの成長率が高いが、当分は小売り全体の10%に届きそうもない。小売りの世界はオフラインが中心であることに変わりがないが、国や商品分野によって程度の差があるものの、オンラインシフトが進んでいるのも間違いない。また、オンラインとオフライン小売りの連携も欠かせなくなっている。

図5 世界の小売Eコマース売上高の推移。単位は兆ドル
ECTotalRetailSalesWorldwide2018b.png
(ソース:eMarketer)

 中国は、Eコマースの売上高が大きいだけではなくて、小売ビジネスの中でEコマースの割合が高い国であることも見逃せない。次の表は、全小売売上高の中でEコマース売上高の占める割合を示している。割合の高いトップ10カ国を取り上げている。 

図6 全小売売上高の中でEコマース売上高の占める割合
ECTotalRetailSalesWorldwide2018c.png
(ソース:eMarketer)


◇参考
・Retail Sales Worldwide Will Top $22 Trillion This Year(eMarketer)



この記事をブックマーク: このエントリーを含むはてなブックマーク この記事を検索: Google 検索
posted by 田中善一郎 at 15:45 | Comment(0) | TrackBack(0) | 市場
2014年01月26日

知っておきたい評価額10億ドル突破のスタートアップ36社

Tweet このエントリーをはてなブックマークに追加
 多くのネットベンチャーにとって、経営面では10億ドル・クラブへの入会が大きな目標となる。どのようなスタートアップ企業が10億ドルの評価を得ているかを見ておけば、ハイテク産業の動向を探ることもできる。

 バリュエーションが10億ドルを突破したスタートアップの一覧表は、時々、メディアで掲載される。そこでまず、今月22日(2014年1月22日)にWSJのブログ(Digit)にリストアップされていた、評価額10億ドル突破のスタートアップ36社の一覧表を掲げておく。オンライン分野だけではなくて、アパレル分野、医療分野、モバイルメーカーさらにロケットなどの宇宙分野も含まれている。国別では、米国が25社、中国が8社、欧州が3社である。

StartUp1billionClub201401.png

 今年中にこのうちの何社がIPOするかが楽しみだ。米国のスタートアップには、Dropbox、Pinterest、Uber、Square、Airbnb、Snapchat、Evernoteなど、日本でも知られている企業が顔を並べている。オンライン(クラウド)・ストレージ・サービス分野ではDropboxの他に評価額20億ドルでBoxも選ばれている。決済系では、日本でもサービスを開始したSquareに加えて、18億ドルの評価を得ているStripeがTwitterとの提携も噂されており、PayPalを追う台風の目となってきた。90億ドルもの評価を得ているPalantirは、NSA、FBI、CIAも顧客とするビッグデータ分析サービス会社で、テロリストネットワークを調べるための最も効果的なツールを提供していると言われている。最近話題になってきたFabは、ゲイ専門のSNSを止めて、デザイン商品に特化したオンラインショップで頭角を現し、12億ドルの評価を得るようになった。

 中国のスタートアップも気になるので、ザッと見ておく。100億ドル評価のBeijing Xiaomi Technology(小米、シャオミ)は、急成長しているスマホメーカーである。73億ドルのJingdongはオンライン通販サイト360buy.comを運営し、30億ドルのVANCL(凡客)は低価格のカジュアルウェアを中心にしたアパレル通販サイトである。捜狗(Sogou、ソゥゴゥ)はポータルサイトSohuが運営する中国検索エンジン会社。

 欧州からはスエーデンのSpotify。40億ドルの評価を得ている。ストリーム系音楽配信サービス会社で、日本でも間もなくサービスが始まる予定である。またゲーム"Angry Birds"で有名なRovioや、人気沸騰中のメッセージサービスを提供するWhatsAppが漏れているのは、最近資金調達を実施していないため。


 少し古いが、2013年10月30日にSilicon Valley Business Journalも評価10億ドル突破のスタートアップをリストアップしていたので、以下に示す。それ以降に上場したzulilyとTwitterも含まれていた。WSJのリストに載っていない5社を太字で示しておく。

Fab
Coupons.com
Theranos
zulily(既に上場)
Good Technology
MongoDB
Pure Storage
Evernote
Automattic
LivingSocial
Lending Club
Sapphire Energy
Woodman Labs (GoPro)
Airbnb
Bloom Energy
Fanatics
Square
Uber
Pinterest
Dropbox
Space Exploration Technologies(SpaceX)
Box
Palantir Technologies
Twitter(既に上場)

 Theranosは、薬局チェーンWalgreenで短時間で血液の分析結果が得られる血液検査サービスを提供している。AutomatticはWordPress.comの親会社で、ファイル共有サービスも提供している。LivingSocialはクーポン共同購入サイトを運用している。Lending Clubはオンライン上で個人間での資金の貸し借りを実現する消費者金融サイト。Sapphire Energyは 工業微生物を使ったGrenn Crudeを開発している。

◇参考

・Introducing WSJ’s ‘Billion-Dollar Startup Club’ Interactive(WSJ)

・24 billion-dollar startups:70% from Silicon Valley, San Francisco(Silicon Valley Business Journal)


この記事をブックマーク: このエントリーを含むはてなブックマーク この記事を検索: Google 検索
posted by 田中善一郎 at 00:39 | Comment(0) | TrackBack(0) | 市場
2013年05月30日

Mary Meeker氏の「2013年版インターネットトレンド」が公表

Tweet このエントリーをはてなブックマークに追加
 著名ベンチャーキャピタリストのMary Meeker氏がまとめたレポート「Internet Trends」2013年版が昨日(29日)、All Things D conferenceで公開された。米大手ベンチャーキャピタル(VC)のKPCBから提供される恒例のレポートであるが、インターネットのメガトレンドを俯瞰するのに格好のレポートとして、ネット業界のマーケッターやコンサルタントからもよく図表が引用されている。

 今回のレポートの特徴は、共著としてLiang Wu氏が加わり中国語版も用意されているように、中国関連のネット産業動向が詳しく紹介されていることだ。インターネットのトレンドを語るには、中国の影響がますます大きくなっているからであろう。

 今回のレポートのプレゼン資料は、この記事の最後に張り付けておいた。またAll Things Dにおける彼女の講演ビデオは、こちらで視聴できる。

 ここでは、このプレゼン資料の中から、面白しそうな図表を適当にピックアップして、見ていきたい。

 世界のインターネットユーザー数は24億人に達し、昨年2012年に比べ8%増えた。特にネット人口が増えた国は、イランやインドネシアなどの新興国である。次の表は、過去4年間でインターネットユーザーの純増数の多かった国のランキングである。

KPCB2013a.png

 米国を核にして発展してきたインターネットも、今や、世界のインターネット人口で見ると米国市場の占める割合が減ってきている。ただし、インターネットサービスを展開する企業となると、米国企業が圧倒的に強い。でも、今や世界一のインターネット人口を誇る中国市場では、海外企業に厳しい規制を課したりしているため、米国企業は大きく進出できず中国企業の成長だけが際立っている。事実上鎖国に近い中国市場は別にしても、インターネットユーザーが世界中に分散しているだけに、有力なインターネット企業とってグローバル展開が欠かせない。次のグラフは、月間ユニークビジター数の多いトップ10のインターネットサービス企業である。トップ10のうち、上位8社は米国企業である。でもユーザーの81%は米国外である。

KPCB2013c.png


 これからのネット産業をけん引するのはモバイル環境であることは間違いない。つぎのグラフで示すように、世界のインターネットトラフィックのうち、モバイルトラフィックの占める割合が急増している。2012には15%を占めていたモバイルトラフィックが、2年後の2014年には30%と倍増しそうだ。

KPCB2013x.png

 当然のことだが、モバイルメディアのユーザー接触時間や広告費が増えてきた。モバイルの立ち上がりが日本や韓国に比べ遅れていた米国でも、モバイル市場が明らかに上昇し始めている。メディア別の接触時間シェアと広告費シェアを示す次のグラフのように、両シェアともプリント(新聞、雑誌)が縮小し、モバイルが拡大している。 2年前の2010年と比較すると、インターネット接触時間シェアが25%(2010年)から26%(2012年)へ、インターネット広告費シェアが19%から20%へと、頭打ちの傾向にある。ところがモバイルの割合でみると、モバイル接触時間シェアが8%(2010年)から12%(2012年)へ、モバイル広告費シェアが0.8%から3%へと、急拡大している。ただ日本と比べると、米国のインターネット環境はまだまだパソコン中心に見える。   

KPCB2013b.png

 でもグローバル展開をする米国のインターネット企業では、海外でのモバイルシフトを米国市場以上に加速化させる必要に迫られている。例えばフェイスブックでは、デスクトップ向けサービス上での広告売る上げが完全に頭打ちになっているのに対して、モバイル広告を急増させている。先の決算報告では、広告売上高の30%をモバイル広告で占めていた。

KPCB2013h.png

 中国と米国におけるメディア接触時間の違いも興味深い。多様な娯楽やメディアサービスが充実している米国では、中国に比べてインターネット/モバイル接触時間が少ないのはうなずける。でも、モバイルメディア接触時間の割合が、中国が米国の2倍近いとは、やはりすごい。

KPCB2013i.png


 そのほか、このレポートには、最近急成長しているサービス分野にスポットを当ててくれているので、頭の整理にもなる。例えば、写真関連のソーシャルサービスの成長を示すグラフ。Snapchatはこんなにも写真のアップロード数を増やしているのか。10秒で消えていく気軽さが受けているのだろう。

KPCB2013d.png

 講座のオンラインコースも順調に伸び続けている。

KPCB2013k.png

 以下は、同レポートのプレゼン資料。

KPCB Internet Trends 2013 from Kleiner Perkins Caufield & Byers


◇参考
・KPCB Internet Trends 2013 from Kleiner Perkins Caufield & Byers(KPCB)
・Mary Meeker's Latest Masterful Presentation On The State Of The Web(BusinessInsider)
この記事をブックマーク: このエントリーを含むはてなブックマーク この記事を検索: Google 検索
posted by 田中善一郎 at 14:08 | Comment(0) | TrackBack(0) | 市場
2013年04月06日

PC市場は事実上死んでしまうのか、ガートナーの予測より

Tweet このエントリーをはてなブックマークに追加
  コンシューマー向けデバイスで、パソコン(PC)市場はますます影の薄い存在になってきた。ガートナーがこのほど発表した予測でも、今年の世界のPC出荷台数は3億1500万台で、昨年の3億4100台から7.6%も減るという。さらに2014年には3億200万台、2017年には2億7200万台と減り続け、長期低落が避けられそうもない。

 その落ち目のPCに代わって、今やデバイスの主役は、スマートフォンに代表されるモバイルフォンや、タブレット型のモバイルデバイスになってきている。タブレットの今年の世界での集荷台数は前年比70%増の1億9700万台、さらに2017年には4億6800万台となりPCを大きく引き離す。モバイルフォンの出荷も2017年には世界で20億台を超え、スマートフォンの割合が一段と高まる。

 セグメント別デバイスの出荷台数予測(単位:千台)は次のようになる。

GartnerPCDead.jpg

GartnerDeviceShipment.jpg


  OS別のデバイス出荷台数は次のようになる。Androidデバイスの出荷台数は2017年には15億台近くになるり、iOS/Mac OSデバイスの3倍近くになると予測されている。

GartnerDeviceOS.jpg

◇参考
・Gartner Says Worldwide PC, Tablet and Mobile Phone Combined Shipments to Reach 2.4 Billion Units in 2013(Gartner、プレスリリース)
・Gartner May Be Too Scared To Say It, But the PC Is Dead(readwrite enterprise)
この記事をブックマーク: このエントリーを含むはてなブックマーク この記事を検索: Google 検索
posted by 田中善一郎 at 13:18 | Comment(0) | TrackBack(0) | 市場
2013年02月27日

世界の音楽売上、1998年以降初めてプラス成長に

Tweet このエントリーをはてなブックマークに追加
  90年代後半から下げ止まらなかった世界の音楽売上が、2012年に久しぶりにプラス成長を示した。

 The International Federation of the Phonographic Industry(IFPI)によると、2012年のデジタル音楽の売上高の増加分が、CDやLPのパッケージ(フィジカル)音楽の売上高の減少分を上回り、世界の音楽売上全体が久しぶりにプラスに転じた。音楽産業の収益の柱であったCD売上高が下落し始めるのに合わせて、世界の音楽売上は1998年以降、マイナス成長が続いていた。

USMusicRevenue.jpg

 昨年のデジタル音楽の売上は56億ドルに対し、フィジカル音楽は94億ドルであった。デジタル音楽の成長に貢献している最近のサービスは、Spotifyのようなサブスクリプション方式(期間固定料金でストリーム音楽を聴き放題)で、昨年はサブスクリプション方式サービスの売上高が44%も増えた。 

◇参考
・IFPI publishes Digital Music Report 2013(IFPI)
・The music industry grew last year for the first time since 1998(Quarts)
この記事をブックマーク: このエントリーを含むはてなブックマーク この記事を検索: Google 検索
posted by 田中善一郎 at 12:49 | Comment(0) | TrackBack(0) | 市場
2013年02月26日

最もモバイルやインターネットが遅れているミャンマー、3年後にも有望なスマホ市場に

Tweet このエントリーをはてなブックマークに追加
 現在10%のテレコム(電話)普及率を3年近くの間に80%へと一気に引き上げたい。電話の普及が最も遅れている国と見られているミャンマーが、とんでもない目標を掲げている。

 ミャンマー政府は、移動通信(携帯通信)の普及率80%を2016年までに達成させるために、携帯電話事業の国際入札を実施すると、今年の1月初めに発表した。ミャンマー国内での携帯通信事業実施のライセンスを海外の通信事業者に与えるとあって、Singapore Telecommunications Ltd., Axiata Group Bhd.(マレーシア), ST Telemedia Pte 、 Telenor ASA (ノルウェー)などが一斉に入札に参加する。日本からはKDDIが加わった模様。6月にもライセンスが2社に付与され、更新を継続すれば20年間も携帯事業を運用できることになる。

 3年少々で電話普及率80%達成とは、かなり無謀な計画と思われるが、決してそうではない。確かにミャンマーの電話普及率は現在10%である。かつての固定電話網だと、各加入者に電話線(銅線など)を敷かなければならなかったので、電話の普及率を高めるのに非常に長い年月を要した。だが携帯電話網だと基幹網を核にして基地局を配していけばよいので、短期間にテレコム普及率を高めることが可能である(注1)。実際、開発途上国で、電話普及率が凄い勢いで伸びているのは、固定電話サービスを事実上バイパスし携帯電話サービス中心でまい進しているからである。同じように遅れていたカンボジアが70%、ラオスが87%の電話普及率を実現しているのも、こうした携帯電話網の台頭があるからだ。

 ミャンマーも電話普及率が現在10%となっているが、固定電話普及率はわずか1%しかない。一方の携帯電話普及率は9%となっており、既に携帯電話が中心となっている。80%の実現でも携帯電話が牽引することになる。またこの携帯電話プロジェクトで注目すべきは、モバイルインターネットを急速に立ち上げる起爆剤になりそうなことだ。

 インターネットの普及率でも現在のミャンマーは1%くらいと極端に低い。60%台のマレーシア、30%台のベトナムやタイに遠く及ばないのは仕方がないとしても、約10%のラオスや約5%のカンボジアと比べても大きく立ち遅れている。一昨年少し前まで、貧しいミャンマーの一般市民にとって、インターネットは無縁のサービスであった。電話(テレコム)の普及率が10%未満で通信インフラが整備されていないこともあるが、長い軍政下で鎖国状態に置かれていたミャンマーでは、ボーダレスのインターネットサービスは事実上ご法度であった。ところが2011年3月に新政権が生まれ、民主化の流れに乗って、インターネットの利用も大幅に開放されることになり、ミャンマーでもインターネット普及を阻害する壁が除かれてきた。

 先進国のインターネットは固定電話網とパソコン端末の組み合わせで立ち上がっていったが、新興国ではそうはいかない。固定電話網が十分に整備されていないし、一般国民にとってパソコンは高価であったからだ。ところが新興国では最近、固定電話網とパソコン端末の組み合わせをバイパスして、整備されてきた携帯電話網とモバイル端末の組み合わせでインターネットが急速に普及してきている。ミャンマーでも同じ流れが出てきそうだ。2016年までにテレコム普及率が80%に達する見込みのミャンマーでは、新たに4500万人近いモバイルユーザーが生まれことになる。その約半数の2000万人以上が、モバイル・インターネット・ユーザーになると期待されている。そのためのモバイル端末は、価格が急降下し始めたスマートフォンやタブレットが主流になりそう。

 ミャンマーの最大都市ヤンゴンを訪れば、すでにその兆しが見られる。スマホに見入っている人にそこらじゅうで出くわす。露店で賑わうダウンタウンでは多くの携帯電話販売店が立ち並んでいるのだが、主役製品は完全にスマホに交代している。政府の民主化政策に沿って海外とのネット接続が開放され、スマホで自由に海外ともやりとりができるようになったのだから、若者がスマホに異常なまでに関心を寄せるのも当然だろう。長い鎖国状態から解き放された今、スマホは自由化のシンボル的な存在になっているようだ。インターネットの通信環境が貧弱な今でも、スマホ人気が高まっているのだから、ネットインフラが整う2016年ころには、スマホ市場が大きく開花しているのではなかろうか。

 こうしたミャンマーのこれからの躍動を察知して、日本のネットベンチャーもミャンマーに進出を始めている。アライズ(代表取締役 小池 正行 )もその1社で、ヤンゴン市内にスマートフォンサービスの企画・開発に特化した子会社を2012年11月に設立した。現在11人体制でスタートしており、優秀なIT人材を確保し、教育し、オフショア開発拠点としての機能を充実させることが当面の目標。すでに現地では2月に入って社外向けAndroid開発セミナーを開催し、今後もAndroid開発やiOS開発などのセミナーを継続していく予定である。

 日本の企業が新興国に進出する動機の一つに、安い人件費が挙げられる。ミャンマーは1人当たりのGDPが800ドル程度の非常に貧しい国であり、従って人件費も安い。大卒IT 人材の初任給も、中国の約5 分の1、ベトナムの約3分の1 の水準にあるという。でもエンジニアの質は潜在的に高いと、関係者は声を揃えていう。向学心が高く、好奇心も旺盛である。さらに、ミャンマー語と日本語の文法が似ており、日本語を迅速に習得しているという。それに、お世辞かもしれないが、親日家が多いとも。

 アライドの計画では、2013 年6 月までに20 名体制、2016 年までに100 名体制へ拡大していく予定である。当面は安い人件費のオフショア開発に力を入れるが、そのオフショア開発を通して現地のITエンジニアのスキルを高めていき、2016年ころまでにはミャンマー市場向けの開発にも注力できるようにしていきたいと、小池社長は長期的な視野に立った抱負を語る。現地スタッフも当初は日本の先行した技術ノウハウなどの習得に精を出すだろうが、時期が来れば、日本市場向けだけではなくて、自国(ミャンマー)向けの開発に取り組みたくなるのは避けられないからだ。

 このように、ミャンマーでも本格的なモバイルインターネット市場の下地作りが始まった。ただし日本企業は、中国リスクが発生したように、ミャンマーリスクも視野に入れておく必要がありそう。民政移管後の現政権はまだ軍の影響下にあるし、軍が既得権を手離すとは思えないからだ。先週もテイン・セイン大統領が空軍トップのMyat Hein氏(写真)を通信情報技術の新大臣に任命したばかりである。同大臣が携帯電話網プロジェクトの事業者を6月にも決定し、またソーシャルメディアの利用などを規定する新テレコム法も策定すると見られている。また先週、ミャンマーの複数のジャーナリストは、彼らの電子メールアカウントが政府関係からアタックされているとの警報を、Googleから受けている。

 確かに現政権はまだ安定していないものの、進めている民主化の動きが逆流するとは思えない。すでに新聞などのメディアもかなり自由に報道できるようになっており、さらに今年4月から民間新聞も毎日の発行が許されることになった。日刊紙を出す予定のELEVENは、先の通信情報技術の新大臣任命のニュースでも、問題があることを指摘ししていた。ともかくこの1年間だけでも民主化が目に見えて進んでおり、その喜びを爆発させるかのように、昨年大晦日に10万人近くがヤンゴンに集まって開かれたカウントダウン・イベント(写真)は盛り上がった。

注1)Deloitteによると、2016年までに電話普及率80%を目指す今回の携帯電話システムの投資額は40億ドルを超えると試算している。数1000kmの光ファイバー基幹網と、1万5000個以上の鉄塔(現在は1800個)を敷設する必要があるという。

◇参考
・Myanmar Telecom Frontier Draw May Make It Costly: Southeast Asia(Bloomberg)
・Debate sparked over Myanmar's new telecoms minister(MyanmarTimes)
・Air Force boss to take over telecoms(MyanmarTimes)
・Eleven Media seeks green light to go daily(ELEVEN)
・Journalists targeted for “state-sponsored” Gmail hackings(ELEVEN)
・Global telcos eye big game in Myanmar(Business Standard)
・5 signs Myanmar is getting easier for travelers(CNN Travel)
・Asia - Mobile, Broadband and Digital Economy Overview(Budde Comn)
・Your next smartphone might come from Myanmar, not China.(Firstpost)
・Myanmar Gauges Telecom Internet(WSJ)
・アライズ、Arise Myanmar(アライズ ミャンマー)設立(日刊工業新聞)
・The mobile web atlas of Asia Pacific(Opera)
・5th top smartphone user, India gaining on China, US(BusinessLine)
・Myanmar bans social media use under telecoms bill(ELEVEN)
この記事をブックマーク: このエントリーを含むはてなブックマーク この記事を検索: Google 検索
posted by 田中善一郎 at 21:37 | Comment(0) | TrackBack(0) | 市場
2012年12月18日

荒稼ぎを狙う特許トロール、米国の特許訴訟の61%を仕掛ける

Tweet このエントリーをはてなブックマークに追加
 特許トロールが仕掛ける訴訟が急増している。今年は米国の特許訴訟の61%を上回るという。

 これは米サンタクララ大学法科大学院のColleen V. Chien教授の調査結果である。2006年から2012年までの各年の特許侵害訴訟数と、そのうち特許トロール会社から出た訴訟数の割合は次のようになっている。

PatentTroll2012.jpg
2006年:569件、19%
2007年:606件、23%
2008年:622件、25%
2009年:731件、27%
2010年:731件、29%
2011年:1509件、45%
2012年*:2544件、61%(*12月1日まで)

 10年に29%であったのが、11年には45%、そして今年(12月1日まで)は61%と、特許トロールが仕掛ける訴訟の割合が急上昇しているのだという。

 特許トロールは、外部から買い集めた特許権を武器にして特許事業を展開する専門会社である。手に入れた保有特許を利用して自ら製品やサービスを作ることはしない。それらの特許を利用して製造したりサービス提供したと見られる企業からライセンス料や損害賠償金を取り立てることを専門とした特許管理会社である。最初から、自らの製造や研究開発を目的としないで特許権を買い漁り、その特許権を振りかざして不合理な訴訟などで荒稼ぎを狙っているとして、特許マフィアとか特許ゴロと呼ばれことも少なくない。

 特許の専門会社である特許トロールは、特許紛争の戦いに長けている。また特許を使って製造したりサービスを提供しているわけでもないので、訴訟の戦いが長引いても構わないし、訴訟が失敗しても被害は大きくない。逆にこのような特許トロールに提訴された企業は、戦うよりも和解金を払って早く済ませたくなる。戦うと訴訟費用もかかるし、負けたりすると損害額が膨大になる心配もあるからだ。

 でもこのままでは、特許トロールから仕掛けられる特許訴訟数が増える一方になる。そこで、ハイテク企業を不当な特許紛争から守るために、たとえば特許トロールに提訴される企業に強いられる不利な和解が横行しないように、米議会に8月に対策法案が出された。特許トロールなどの特許権者が訴訟で勝てる見込みがないと裁判所が判断した場合、提訴された者の訴訟費用を提訴した者が負うという法案である。これが実現すれば、特許トロールによる悪質な訴訟が少しは減っていくのであろう。

 でも当然のことだが、特許管理業者すべてが悪質な特許トロールではない。保有特許のライセンス料などを取り立てるだけではなくて、新しい特許や発明を生み出そうとする特許専門業者も育ってきている。特定の研究テーマに対して世界中の優れた研究者/技術者がネット上で集まり、アイデアを出しあって特許を作り出し、それを企業にライセンスしていこうとしている。 

 また特許請求範囲などがあいまいなソフトウエア特許も増えてきており、ますます特許管理が難しくなっている。優れた特許プロが集まる特許管理業者が特許紛争の台風の目になってきている。モバイル分野もそうである(NYT掲載のモバイル特許戦争図で示されているEON)。

◇参考
・[Updated] The Patent Troll Tragedy(growthlogy)
・'Patent trolls' filing majority of U.S. patent lawsuits, Santa Clara professor says(MercuryNews.com)
・The Only Thing Worse Than the Patent Wars You Are Reading About Are the Ones You Aren’t Reading About(AllThingsD)
・New York Times leading group defense in patent suit over mobile texts containing Web links(washingtonpost.com)
・Patent Troll Vs The NY Times(dailywireless.org)
・Helferich Patent Licensing, LLC. v. New York Times Co.(Patent & IP news archive)
・Patent trolls and horse-powered boats: 8 highlights from Stanford’s IP conference(Yahoo Finance)
・Patent lawsuits becoming a scourge(Seattle Times)
・Patent 'Troll' Tactics Spread(WSJ.com)
・Stanford Technology Law Review、The Giants Among Us(Stanford Technology Law Review)
・Fighters in a Patent War(NYTimes)
・米PRX、パテントトロール対策の新サービス開始(IP-NEWS)
この記事をブックマーク: このエントリーを含むはてなブックマーク この記事を検索: Google 検索
posted by 田中善一郎 at 01:38 | Comment(0) | TrackBack(0) | 市場
2012年12月15日

日本人の好むコミュニケーション手段、対面よりも電子メールなのか

Tweet このエントリーをはてなブックマークに追加
 友人や家族とのコミュニケーションで、フェイス・ツー・フェイスよりも電子メールが好まれて使われている。日本人は欧米人以上に、友人や家族とのコミュニケーション手段として対面を避け電子メールに頼っているという。

 これは、前の記事で紹介したOfcom(Office of Communications:英国情報通信庁)発行の“International Communications Market Report 2012”の調査結果である。

 主要8ヵ国(英、仏、独、伊、米、日、スペイン、豪)の各国回答者(それぞれ約1000人)に投げた質問「友人や家族とのコミュニケーションで好んで利用している手段は?」に対し、フェイス・ツー・フェイス(対面)と答えた割合を、また電子メールと答えた割合を、各国別に示したのが以下のグラフである。

OfcomCommunicationMethod.jpg

 欧米先進国では、対面と答えた者が電子メールと答えた者の約4倍もいた。ネット時代になってもフェイス・ツー・フェイスのコミュニケーションを大事にしているという結果になっている。一方、日本人は欧米人に比べ、対面のコミュニケーションを好んで利用している割合が極端に低い結果となっている。その代わりか、電子メールの利用が非常に多い。調査結果のような極端な違いがあるとは思えないのだが。日本人は仕事で忙しすぎて、実際に会ってコミュニケーションを交わす時間があまり取れなくて、しかたなく電子メールで済ましていることが多いのか。フェイス・ツー・フェイスで会うのが仕事関係の人ばっかりなのか。ほんとうだと寂しい結果である。

◇参考
・International Communications Market Report 2012(Ofcom)
この記事をブックマーク: このエントリーを含むはてなブックマーク この記事を検索: Google 検索
posted by 田中善一郎 at 21:43 | Comment(0) | TrackBack(0) | 市場
2012年12月14日

ケータイとブロードバンド先行国だった日本、サービス分野では欧米先進国の後追いに

Tweet このエントリーをはてなブックマークに追加
  高速ケータイとブロードバンドの通信分野では、日本は韓国と共に世界のトップランナーであった。今でも日本はトップグループで突っ走しているはずだが・・・。スマートフォンは売れまくっているし、オンランショッピングは爆発的に伸びているし、ニコニコ動画などのオンラインTVも盛り上がっている。

 ガラパゴス島に安住し、国内市場が成長しておれば、激しく変化している海外に目を向けなくても済むのかもしれない。でも、昨日Ofcom(Office of Communications:英国情報通信庁)が発行した“International Communications Market Report 2012”を見ていると、モバイルインターネット化とブロードバンド化で激変する情報通信サービス関連分野で、欧米先進国の多くが日本よりも先行するようになっている。日本は人口が多いため、市場規模はまだ大きいが。でも少し前まで、ケータイ(3G)とブロードバンド後進国と見下していた欧米の主要国が、インフラ分野は別にしてサービス分野では主導権を握ってしまっていることを示している。

 Ofcomが毎年年末に出すレポートでは、2012年版も世界のメディアやテレコムの動向や現況が、数多くのグラフを駆使して紹介されていた。主に欧米先進国を調査対象にしているが、一部に日本や中国の市場データも提供されているので、日本と欧米主要国とを比較できるので有難い。339ページの長大レポートだが無料で入手できる。(英国の資料なので、通貨はすべてポンド。最近の円安で、現在の為替レートは1ポンド=約135円)。

 まず最初は、主要8ヵ国(英、仏、独、伊、米、日、スペイン、豪)における、デバイスの保有率とブロードバンドサービスの利用率である。調査対象国の回答者(各国約1000人)のうち、何%の回答者が該当デバイスを保有し、該当サービスを利用しているかを示している。フィーチャーフォンのケータイ電話機の保有率では日本がトップであるが、スマートフォンでは最下位となっていた(日本ではフィーチャーフォンで、スマートフォン的なサービスを享受できたことも要因であるが)。デジタルラジオも、生活環境の違いもあって日本は最下位であった。またデマンドTVやスマートTVなどのサービスの使用率でも最も低い。

OfcomPersonalDevice2012.jpg
(ソース:Ofcom)

 次は、B2Cのコンシューマー向けオンラインショッピングの1人当たりの消費額の比較であるが、日本は英国や米国、オーストラリアに比べ低い。このことは、日本市場がもっと加速化できることを示唆している。

OfcomEcommerce2012.jpg
(ソース:Ofcom)

 最後に取り上げたグラフは、現在日常的に利用している通信サービスやメディアについての調査結果である。ラジオの利用率が低いのは仕方がないが、急成長真っ只のスマートフォンの利用率がまだ低いのは、調査時期のせいかもしれない。でも欧米もサービスの多様化に向けて急成長時期にあり、日本はすぐに追いつくのは大変そう。

OfcomCommunicationmedai2012.jpg
(ソース:Ofcom)

◇参考
・International Communications Market Report 2012(Ofcom)
・A summary of Ofcom International report comparing consumer use of the Internet in 17 countries(SmartInsight)
この記事をブックマーク: このエントリーを含むはてなブックマーク この記事を検索: Google 検索
posted by 田中善一郎 at 14:22 | Comment(0) | TrackBack(0) | 市場
2012年12月07日

Wintel時代が終焉へ、モバイル時代へのシフトが加速化

Tweet このエントリーをはてなブックマークに追加
 Mary Meeke氏のスライドの最新版「Internet Trends(2012/12/3)」が、Slideshareで公開されていたので、その中から幾つかのグラフを紹介する。

 インターネットアナリストとして有名なMary Meeke氏は現在、KPCB(Kleiner Perkins Caufield & Byers)のパートナーとして活躍している。彼女は定期的に「Internet Trends」のスライドを発表しており、今回は半年前の「2012/5/30版」を更新したものである。ここで示されているメガトレンドは良く知られている話であるが、定量的に分かりやすくビジュアル提示されているので、頭の整理に役立つ。

 最初のグラフは、パーソナル・コンピューティング・プラットフォームのOS出荷ベース別によるグローバル市場シェアである。2005年ころまで95%近くも占めていたWintelが、2012年には35%にも激減している。代わって、モバイルOS(iOS+Android)が45%へと急増している。パーソナル・コンピューティング・デバイスの主役が、Windowsパソコンからモバイルデバイス(iOSやAndroid搭載のスマートフォンやタブレット)へと急シフトしているわけだ。企業の業績にも明暗がくっきりと。マイクロソフト、インテル、AMD、HP、デルなどの影が薄くなってきているのに対し、アップル、グーグル、クアルコム、ARM、サムソンなどの勢いが目立つのも当然か。

KPSB201212OSshare.jpg


 出荷ベースだけではなくてインストール台数ベースでも、2013年にもグル―バル市場で、モバイルデバイス(スマートフォン+タブレット)がPC(デスクトップ+ノートブック)を追い抜きそうだ。

KPCB2012MobileDeviceInstalledBase.jpg

 モバイルアプリやモバイル広告の売上も伸び始めている。順調に伸びているものの、2012年の成長率が2011年に比べやや鈍化しているのが少し気になるが。

KPCB201212MobileAppAd.jpg

 モバイルデバイスの普及に伴い、オンラインショッピングでもモバイル依存が一段と高まっている。米国の年末商戦のピークともなるBlack Friday(今年は11月23日)において、モバイルデバイスからのインターネット・ショッピング・トラフィックの割合が、以下のように急増していた。ここで注目すべきは、iOS搭載デバイスの比率が高いことだ。

KPCB201212OnlineShopping.jpg

 次は、米国がモバイル後進国からモバイル先進国に変身したことを証左するグラフ。6年前にはスマートフォンOSのシェアで米国産がわずか6%しかなかったのに、今年には88%も占めるようになっている。心臓となるモバイルOSを握った米国企業が、モバイル市場のルールを次々と策定している。

KPCB201212SamrtphoneOSshare.jpg


 最後に、ネット上で作られ共有される情報が爆発的に急増して様子を示すグラフを。この元データーはIDCのドキュメントである。Web2.0とかソーシャルメディアとかの流れの中で、誰もが気軽に写真やツイートなどの情報を作り出し共有できるようになってきた。モバイル時代においては、いつでもどこでも情報を作り、共有できてしまう。その情報量は2011年に1.8zettabytes (1.8 trillion gigabytes) であったのが、5年以内に約9倍に膨れ上がると予測している。(1zettaは2の70乗)

KPCB201212GlobalCreateShareData.jpg
この記事をブックマーク: このエントリーを含むはてなブックマーク この記事を検索: Google 検索
posted by 田中善一郎 at 15:45 | Comment(0) | TrackBack(0) | 市場
2012年11月26日

米国のオンラインショッピングの年末商戦、好調な滑り出し

Tweet このエントリーをはてなブックマークに追加
 米国の年末商戦が始まった。今年はモバイルのオンラインショッピングが牽引役を期待されているが、出足は順調なようだ。

 毎年11月の第4木曜日が感謝祭(Thanksgiving day)。その翌日の金曜日が年末商戦の開始日となり、最も大きく売上げを伸ばし黒字となるのでブラックフライデー(Black Friday)と呼ばれている。感謝祭やブラックフライデーにおける、前年との比較データが出てきているが、オンラインショッピングの売上高は明らかに今年は大きく増えそうである。

 感謝祭の22日における、ショッピングサイトのトラフィックをHitwiseが計数している。米国のトップ500のショッピングサイトに訪れたトラフィックは、1年前に比べ71%も増えたというから、かなり繁盛しているに違いない。トップ5のトラフィックは、次のようになる。Walmartは前年比92%と急増し、Amazonに肉薄している。

ThankgivingDay2012Retailsites.jpg

 IBMは感謝祭とブラックフライデーのそれぞれにおけるオンラインショッピングサイトの売上を時系列で追っている。最初のグラフは、感謝祭とブラックフライデーのそれぞれにおける今年の売上の時間推移である。ブラックフライデーは、文字通り黒字の金曜日であるだけに、売上も多い日となる。

ThanksgivingBlackHoliday2012.jpg

 次は、感謝祭とブラックフライデーのそれぞれについて、今年と昨年、それに一昨年の売上の比較である。今年の感謝祭のオンライン売上は、昨年よりも17.4%増と見ている。またブラックフライデーの売上はピーク時で昨年よりも20.7%増と見積もっている。

USRetailSalesThanksgivingBlackholiday2012.jpg


 次のグラフはブラックフライデーにおける、オンラインショッピングサイトのモバイル比率である。売上およびトラフィックのモバイル比率である。モバイル売上は前年比65.2%増、モバイルトラフィックは同67.8%増となっている。 またモバイル決済も軌道に乗っている。感謝祭日におけるモバイル決済額はPayPalが前年比173%増、GSI が同170%増, eBayが同133%である。

BlackHolidyaMobile2012.jpg

 モバイルが今年のオンラインショッピングの牽引役を果たしているのは間違いない。それだけにサイバーマンデーでの売り上げ増も期待できるかも。連休明けの月曜日に出勤してきたビジネスパーソンには、会社からオンラインショッピングに励む人が少なくないようだ。感謝祭から続いた連休明け月曜日にオンラインショッピングの売上が伸びるので、サイバーマンデーと呼ばれている。

◇参考
・Thanksgiving Day retail traffic increased 71% in 2012(Hitwise Blog)
・Thanksgiving 2012 mobile payments: PayPal sees 173% increase, GSI up 170%, eBay up 133%(TNW)
・Black Friday Report 2012、IBM Digital Analytics Benchmark(IBM)
この記事をブックマーク: このエントリーを含むはてなブックマーク この記事を検索: Google 検索
posted by 田中善一郎 at 01:59 | Comment(0) | TrackBack(0) | 市場
2012年11月11日

50年後の日本のGDP、中国の約1/9そしてインドの約1/6に:OECD予測

Tweet このエントリーをはてなブックマークに追加
 2060年の日本のGDP(国内総生産)は、中国の8.7分の1に、インドの5.7分の1になる。これは、OECD(経済協力開発機構)が発表した予測である。

 世界GDPの主要国別シェアが今後50年間に渡って、どう変化していくかをOECDが予測した。世界GDP(OECD加盟国34ヵ国と非加盟国8ヵ国とG20の、各国GDPの総計)の主要国別シェアが、2011年と2030年、そして2060年へと、どのように推移しているかを示している。GDPは2005年のPPP(purchasing power parity、購買力平価)ベースではじいている。

OECDGDPShift2060.jpg


 2011年、2030年、3060年のそれぞれの国別のシェアを、円グラフで示すと次のようになる。

OECD2011GDP.jpg

OECD2030GDP.jpg

OECD2060GDP.jpg

 中国とインドのGDPシェアが拡大していくのは予想通りの流れである。1人当たりのGDPが両国共に、2011年から2060年までの間に7倍に膨れ上がるとOECDは予測している。中国については、1人当たりのGDPが2011年の8,387ドルから2060年に約6万ドルに達するという。ちなみに米国の2011年の1人当たりのGDPは4万8,328ドルである。50年後には中国の1人当たりのGDPが、現在の米国よりも上回ることになるわけだ。

 ただし50年後には米国の1人当たりのGDPが13万6,611ドルに増えており、2060年時点では1人当たりGDPが中国の2倍強となる。個人レベルでは米国がまだまだ豊かということか。でも2011年時点で両国間の1人当たりのGDPが約6倍も大差が開いていたのに、50年後には約2倍に縮まっている。

 2060年を待たずに2030年前にも中国がグローバル経済の主導権を握るのは間違いなく、米国としては何とか2大経済大国(2G)の一角を確保したいところ。一方日本は経済小国との烙印を押されてしまったようだが、1人当たりのGDPが中国よりも多いことで満足すべきなのかも。50年後には、中国の世界CDPシェアは27.8%であるのに対し、日本は3.2%である。2060年の人口が中国が13億人前後で日本が8700万人前後とすると、50年後の中国の1人当たりのGDPは日本の6割近くになる。豊かになっていく巨大な13億人前後の中国人が、先進国とほぼ同じエネルギーや食料を消費していくのだから、今から世界各地で資源確保に中国が躍起になっているのも当然なのだろう。

 以下は、今回のOECDレポートの解説ビデオ。


◇参考
・Balance of economic power will shift dramatically over the next 50 years, says OECD(OECD)
・OECD Economic Policy Paper、Nov.2012(OECD):31ページのPDFファイル
・Good news! The next 50 years are going to be amazing(Washington Post)
この記事をブックマーク: このエントリーを含むはてなブックマーク この記事を検索: Google 検索
posted by 田中善一郎 at 21:33 | Comment(0) | TrackBack(0) | 市場
2012年07月30日

人気のサービスや装置、普及ペースがますます高速化

Tweet このエントリーをはてなブックマークに追加
 最近の人気サービスや装置は、普及ペースが年々加速化している。

 先週もNHN Japanは、提供しているスマートフォン向け無料通話アプリ「LINE」のユーザー数が399日で世界5000万人を突破したと発表し、すさまじい普及速度を誇示していた。2ヶ月ほど前には、Angry Bardsで有名なRovioは、同社の新ゲーム「Angry Birds Space」 を35日で世界5000万人がダウンロードしたと公表している。Angry Bardsの知名度が後押ししていると言っても、5000万人突破にわずか35日間とはすごい速度である。

 ハード装置となると増産しなければならないので、ソフトサービスに比べ普及に時間を要する。それでも普及ペースは目覚ましく速まっている。たとえば米国のスマートフォンは 2007年7月のiPhoneの登場で本格普及が始まったといえるが、ユーザー数が5000万人に達するのに3年しか要していなかった。2007年7月当時900万人に満たないスマートフォン所有者数が、5年後の現在は1億1000万人に達し、年内にもフィーチャーフォン所有者数を追い抜くと見られている。モバイル装置の主役交代が一気に進んでいるのだ。

 米国におけるコンシューマー向け装置やサービスが、5000万人に普及するまでどれくらいの年月を要したかを示すグラフを掲げておく。

Reaching50MilUsers.jpg

Telephone; 75 years
Radio; 38 years
Television ; 13 years
Internet ; 4 years
Facebook ; 3.5 years
iPod; 3 years
AOL ; 2.5 years
Draw Something app; 50 days
Angry Birds Space app ; 35 days
(ソース:by G. Kofi Annan)


 次に、過去にさかのぼって代表的なサービスや装置について、米国での普及率の推移を示したグラフがAtlanticで載っていたので、紹介する。以下に示すNicholas Feltron氏作成のグラフとKarl Hartig氏作成のグラフで、共に興味深いグラフである。リンク先に飛べば、グラフを拡大表示できる。

ConsumptionSpreadsFaster byNicholas Feltron.jpg

ConsumptionSpreadsFaster byKarl Hartig.jpg

 Nicholas Feltron氏のグラフから、代表的なサービスや装置の普及率が50%に達した西暦は次のようになる。

Electricity: 1924
Cars: 1925
Radio: 1931
Stove: 1937
Refrigerator: 1942
Telephone: 1946
Washing machine: 1964
Dryer: 1970
Color TV: 1972
Air conditioning: 1973
Microwave: 1985
VCR: 1987
Dishwasher: 1996
Computer: 1996
Cell phone: 2000
Internet: 2001
Smartphones: 2012 (different source)

 電気(電力サービス)は1880年代に開始しているが、米国の半数の人が電気を利用するようになったのは1920年代半ばであった。電話サービスは1870代から始まっているが普及率が50%を超えたのは、第二次大戦後の1946年であった。このように少し前まで、新しいサービスや装置の普及率が50%に達するのに、30年くらい要するのが当たり前であった。軍や企業向けで利用されていたコンピュータが、個人向けパソコンの出現で普及率50%に漕ぎ着けたのは1996年で、30年近くもかかった。

 でも、のどかな時代は終わった。インターネットの普及などにより、グローバル市場化が一気に拡大し、スピードに追い立てられる時代に突入した。そして産業のソフト・サービス化も加速した。今や、評価の高かったり人気のあるサービスや装置の存在は、SNSやツイッターで世界中に瞬時に伝わっていく。「LINE」や「Angry Birds Space」 のようにアッという間に、5000万人や1億人のユーザーを獲得するサービスが次々と生まれてくるだろう。一方で一世を風靡した人気サービスや装置の多くが、いつの間にか消え去ることになりそう。

◇参考
・Most People Didn't Have A/C Until 1973 and Other Strange Tech Timelines(Atlantic)
・Google+ hit 50 million users today,in less than 3 months(Google+Mania)
・「LINE」、登録ユーザー数が世界5,000万人を突破(NHN)
・RADIO TOOK 38 YRS TO GET 50 MILLION USERS, ANGRY BIRDS SPACE TOOK 35 DAYS [INFOGRAPHIC](Trickle-Up)
・Getting Smart: U.S. Smartphone Population Reaches 110 Million Consumers(comScore Data Mine)
この記事をブックマーク: このエントリーを含むはてなブックマーク この記事を検索: Google 検索
posted by 田中善一郎 at 07:45 | Comment(0) | TrackBack(0) | 市場
2012年06月20日

過去2000年間の世界経済史、小さなグラフで示すとこうなる

Tweet このエントリーをはてなブックマークに追加
EconomicHistry2000.jpg

 これは、約2000年に渡る世界の経済史を俯瞰したグラフである。JP MorganのアナリストPaul Kedrosky氏が作成した。

 主要国のGDPの世界シェアを示している。これからは中国、インドなどの新興国が飛躍する時代と言われている。だが実は西暦が始まってから1800年前まで、いま今以上に中国やインドのGDPシェアが高かったのだ。西暦1年ころは、世界の人口の1/3がインドで、1/4が中国であった。植民地時代や新大陸(米国)時代が立ち上がり、そして産業革命が本格化するまでは、1人当たりのGDPは国によってそれほど大きな差がなかったので、人口の多いインドや中国のGDPシェアが飛び抜けていたことになる。

 産業革命以降、欧米の工業先進国の1人当たりGDPがグングン伸び続けた。また1950年(朝鮮動乱)以降、日本のシェア(黄色)が急拡大していたのがはっきり表れている。ところがやはり歴史が繰り返すのか。人口が際立って多い中国やインドで、1人当たりのGDPが増え始めるにつれて、GDPシェアも急激に膨れ出している。中国が世界トップに躍り出るのは時間の問題である。

◇参考
・The Economic History of the Last 2,000 Years in 1 Little Graph(Atlantic)
この記事をブックマーク: このエントリーを含むはてなブックマーク この記事を検索: Google 検索
posted by 田中善一郎 at 02:20 | Comment(0) | TrackBack(0) | 市場
2012年05月25日

楽天が出資するピンタレスト、ECとの連携効果が「Shopify」でも実証

Tweet このエントリーをはてなブックマークに追加
  ピンタレスト(Pinterest)が再び熱気を帯びてきた。昨年後半からの爆発的な急成長で注目を浴びてきていたが、トラフィックの伸びが鈍ってきたこともあって、一時の騒ぎが少し収まっていた。それが、一週間前に日本の楽天がPinterestへの出資を発表したため、またまた騒々しくなりそうである。

 Pinterestはネット上の画像をソーシャルキューレートするSNSであるが、これから一段と飛躍していくには海外(米国外)展開と収益化が課題となっていた。そこで、女性向けファッションEC(Eコマース)との連携などに期待が寄せられていた。楽天も、海外展開や女性向けアパレルECに力を入れようとしているので、両社の組み合わせは楽しみである。

 Pinterestを活用したECの成功事例は、これまでも単発的に紹介されている。だがこのほどEコマース・プラットフォーム提供会社「Shopify」が、Pinterestとオンラインストアとの連携効果を定量的に評価していたので、追ってみた。

 まず、Shopifyの概要から。Shopifyは個人でもオンラインストアを構築できるECプラットフォームである。豊富なテンプレートや決済システムなどが備わっているので、手軽にオンラインストアを開設できるという。30日間の無料トライアルが用意されており、その後は次の4コースのどれかを選んで運用することになる。
Basic:月間29ドル(トランザクション料2%)
Professional:月間59ドル(トランザクション料1%)
Business:月間99ドル(トランザクション料1%)
Unlimited:月間179ドル(トランザクション料なし)

 Shopifyのデモビデオがあったので、貼っておく。


 Shopifyサービスを利用したオンラインストアは、世界で2万5000店以上も存在する。一般に無名の店舗が多いが、AngryBirdやTesla Motorsなどの旬の店も現れている。また日本のサイトでShopifyの広告バナーを見かけたことがあるが、日本でも海外向けのオンラインストアでShopifyを利用している人がいるようだ。

 最近のオンラインストアでは、FacebookやTwitterなどのソーシャルメディアとの連携は当たり前になってきている。それに加えてShopifyでは昨年後半あたりから、同社サービス利用のオンラインストアに対して、Pinterestとの連携を促してきた。その結果、今年の4月には、同社サービス利用のオンラインストアの16%近く(3879店)の商品写真が、Pinterest内に貼り付けられていた(Pin Itされていた)。そして4月には、Pinterest経由で同社サービス利用オンラインストアへのビジット(visit)が29万2943件に達した。一日当たりのビジット数は、2012年1月1日に比べ145%増となった。参照トラフィックの割合でも3.6%と、早くもTwitterと肩を並べている。ユーザー数がが圧倒的に多いFacebookは別格にすれば、Pinterestのオンラインストアへの集客力は高そう。

ShopifyPinterestA.jpg

 また、Pinterest経由で訪れたショッパーは他のソーシャルサイト経由で訪れた者に比べ、10%以上購入に至ったという。さらにPinterestから訪問して注文した人の平均購入価格は80ドルで、Facebookから来て注文した人に比べ約2倍であった。魅力的な商品写真に飛びついてオンラインストアに訪れたショッパーが、比較的高額な商品を注文したのかも。

ShopifyPinterestB.jpg

 Shopifyサービス利用のオンラインストアで最もPin数が多かったストアは、オーストラリアのEstherであった。4月時点でEstherの商品写真がPinterest内で2万5727箇所に貼り付けられていた。Esther自身もPinterestのアカウントを取り、以下のように自社向けのボードに商品写真をPinしているが、Pin数は限られる。
PinterestEsther1.jpg

 Estherのオンラインストアに、Pinterestユーザーが好みそうな魅力ある商品写真を載せ、その隣にPin itボタンを置くようにしている。より多くのPinterestユーザーが彼らのボードにPinしてもらうように仕掛けていくわけだ。Pinterest内ではバイラル性が高いので、一気にPin数が増えることもある。また自社向けボードに貼り付けた商品写真がRepinされたりもする。オンラインストアに掲載したり、自社向けPinterestボードにPinしている商品写真は、たえず更新しているようだ。

PinterestEsther2.jpg

 ECプラットフォームで人気の高いeBay傘下のMagentoも、Pinterestとの連携に力を入れようとしている。Pinterest自身も、ECサイトとの連携を強化するために、検索サービスやボード・カテゴリー、ギフト価格などに手を加えていくのではなかろうか。

◇参考
・Shopify Featured on World's Most Innovative Companies List(Fast Company)
・How Pinterest Drives Ecommerce Sales(Shopify)
・The Ultimate Pinterest Guide for Your Online Store(Shopify)
・Pinterest Could Become an E-Commerce Site(Fashion Wizard Ltd.)
この記事をブックマーク: このエントリーを含むはてなブックマーク この記事を検索: Google 検索
posted by 田中善一郎 at 00:08 | Comment(0) | TrackBack(0) | 市場
2012年05月22日

ブラウザの世界シェア、ChromeがIEを追い抜く

Tweet このエントリーをはてなブックマークに追加
  Webブラウザの世界シェアで、ついにマイクロソフトのIE( Internet Explorer)がトップの座を受け渡すことになったようだ。StatCounterの最新データによると、グーグルChromeの世界シェアが32.76%となり、31.94%のIEを抜き去っている。Windowsと抱き合わせを武器にIEがNetscape Navigatorを追い抜いたのは90年代後半だから、IEが世界トップのブラウザとして15年近くも君臨したことになる。

●代表的なブラウザの世界シェアの推移(2011年の20週目から2012年の20週目まで)。ソース:StatCounter
browserWorldwide2012.jpg


  だが日本国内ではIEが強く、StatCounterのデータでは今でも50%を越えており、FirefoxやChromeを大きく引き離して独走していることになっている。

●日本国内における代表的なブラウザのシェア推移(2011年の20週目から2012年の20週目まで)。ソース:StatCounter
BrowserJapan201205.jpg


 世界全体ではIEからChromeへとトップが入れ替わったが、Chromeが2位以下に甘んじている地域がまだまだ多い。北米では日本と同じくIEがトップに居座っている。また欧州やアフリカではFirefoxが首位に就いている。

●世界の州別のブラウザ・シェア。2012年20週目時点のシェアである。
BrowserWW2012.jpg

◇参考
・Google Chrome overtakes Internet Explorer as the Web’s most used browser(TNW)
この記事をブックマーク: このエントリーを含むはてなブックマーク この記事を検索: Google 検索
posted by 田中善一郎 at 00:21 | Comment(2) | TrackBack(0) | 市場
2012年03月18日

中国の国民総生産が2020年までに日本の2倍に:マッキンゼーのレポート

Tweet このエントリーをはてなブックマークに追加
 中国の国内総生産(GDP)は、2020年までに日本の倍近くになるという。これは、マッキンゼーのレポート「Meet the 2020 Chinese Consumer」で示された予測である。(44ページのレポートは登録すれば無料でダウンロードできる)。

 昨年の今ころGDPで日本を抜き、中国が世界第2位の経済大国にのし上がったというニュースを嫌と言うほど聞かされてきたが、それ以降中国と日本との差が拡大するのは当然だが、2020年に2倍の差が付くということである。

MaKinseyChinagrowth201203.jpg

 13億人以上の国民と巨大な国土を抱えた国と比較しても意味がないのだが、背中が次第に見えなくなっているのは事実。中国のGDPの成長率が鈍化していると言っても、2010年から2020年までのCAGR(年平均成長率)は7.9%となっている。ところが日本はCAGRが1.2%と、トップ10ヵ国中で際立って低くく見積もられている。悪い材料がいくらでも見つかるからであろうが。

 今回のレポートでは1万5000人の中国人にインタビューを実施し、消費者動向もまとめている。中国の1世帯当たりの年間可処分所得(平均)も、2010年の4,149ドルから2020年の8,185ドルへと約2倍になると予測されている。2020年の日本の1世帯当たりの年間可処分所得は29,714ドルと、平均で見れば日本の国民生活はまだまだ豊かということか。以下のグラフでは中国を含め6ヵ国について、所得階層を4段階に分けて、それぞれの階層の世帯数(単位100万)を示している。

McKinseyChineIncomeLevel201203.jpg


◇参考
・Meet the 2020 Chinese Consumer(McKinsey) 
この記事をブックマーク: このエントリーを含むはてなブックマーク この記事を検索: Google 検索
posted by 田中善一郎 at 23:47 | Comment(0) | TrackBack(1) | 市場
2012年01月05日

ラオックスを買収した蘇寧電器、B2C EC市場でamazon.cnを抜きトップ3へ急浮上               

Tweet このエントリーをはてなブックマークに追加
 中国のインターネット市場は2012年も、量的にも質的にも大きく揺れ動くことになりそう。

 そこでオンラインショッピング(B2CのEコマース)市場の動向を覗いてみた。ややニッチな動きかもしれないが、次の二つの動きに注目してみた。蘇寧電器(苏宁电器、英語:SUNING)の躍進と富裕層向けEコマースの台頭である。

 中国大手の家電小売店である蘇寧電器は、ラオックスを買収して日本式サービスで事業拡大を加速化させているが、リアル店販売に加えてオンライン販売にも参入している。リアルの家電量販店として仕入価格の強さ備えているため、オンラインでも安値攻勢に打って出て、昨年は中国のB2Cオンラインショッピング市場で9位から一気に3位に浮上した。

chinaEcommerce2011a.jpg


 蘇寧電器のオンラインサイト(Suning.com)は次の通り。昨年、これまで3位であったamazon.chを抜き去ったことになっている。 

SuningChina.jpg

 
 またトップのTmall(淘宝商城)はアリババグループに属し、サイト(http://www.taobao.com/)を以下に。ユニクロは昨春から、淘宝と提携しネット通販にも進出しているが、正月のTmallのトップページに以下のように広告を掲載していた。またユニクロは、これとは別に独自サイトでも通販を実施している。

tmallChina.JPG


 広大な国土に約5億人のインターネット人口を抱える中国は、オンラインショッピング市場はまだまだ拡大していくのだろう。以下のインフォグラフィックでも、2010年のオンラインショッピング人口が米国と同じ約1億4000万人であったのが、2015年には米国の2.5倍の5億人を超えると言う強気な予測が出ている。

ECommerceChina2011.jpg


 ただすそ野の量的拡大だけではない。中国には富裕層人口がものすごい勢いで増えている。年収がRMB 10 Million(約1億2000万円)以上の富裕層が、中国沿岸部を中心に生まれてきているのだ。

ChineWealth2011.jpg

 そうした富裕層向けのショッピングサイトとして、Shangpin.com, Xiu.com, Vipstore.com, Ihush.com, and Ihaveu.comなどが出てきており、またB2Cオンラインショッピングno.2の京東商城(360Buy.com)も昨年参入してきた。さらに、NetEase.comや Sina.comも富裕層向けのショッピングプラットフォームを立ち上げた。TencentはダイヤモンドB2CサイトKela.cnに出資した。以下はそのKela.cnのトップページ。

ChinaLuxuryEC.jpg

 the World Luxury Associationによると、中国の luxury消費は2012年にもUSD14.6 billionを超え,市場規模で日本を追い抜くと言う。



◇参考
・CHINESE ONLINE RETAILERS TO GROW IN IMPORTANCE DURING 2012(The China Observer)
・CHINA’S TOP 10 WEALTHIEST PROVINCES(The China Observer)
・Suning Appliance Forecasts 25% Rise In 2011 Earnings(CapitalVue)
・ラオックス 中国での初店舗開店(NHK)
・China's Suning signs deal with IBM for e-commerce(Reuter)
・中国2大家電量販店、蘇寧と国美がB2Cに参入。京東も苦しいか!(中国インターネット新聞)
・China B2C E-Commerce Report 2011(News.Gnom.es)
・360buy.com Finally Launching Luxury Retail Website In China
(China Tech News)
・淘宝(タオバオ)2011年、中国ネットショッピングシェアの9割。年間客単価が約4.5万円(中国インターネット新聞)
この記事をブックマーク: このエントリーを含むはてなブックマーク この記事を検索: Google 検索
posted by 田中善一郎 at 14:39 | Comment(4) | TrackBack(0) | 市場
2011年10月30日

米VCのKPCBが示すインターネットトレンド

Tweet このエントリーをはてなブックマークに追加
 「Internet Trends 2011」と題するレポートが、米大手ベンチャーキャピタル(VC)のKPCBから提供されている。有名なベンチャーキャピタリストのMary Meeker氏がまとめたレポートで、そのプレゼン資料が今月18日に開かれたWeb2.0 Summitで公開された。

 そのレポートで指摘されているトレンドは定性的には知られているものが多いが、最新のデータで定量的に示されているので、頭のリフレッシュになりそう。データは他の調査会社のものが多い。プレゼン資料で使われた幾つかの図表は既にいろんな記事で紹介されているが、ここでは9点を選び掲載しておく。その他の図表は、最後に貼り付けたプレゼン資料でどうぞ。


 最初はトップ10のインターネット会社のサイトの月間ユニークビジター数である。トップクラスのインターネット会社となると、米国企業でも当然のようにグローバル市場でサービスを展開する。トップ10社が抱えるユーザーも、その81%は米国外である。ただしBaiduとTencentは事実上、中国ユーザー向けのサービスである。

KPCB2011 a6.jpg


 次は、過去3年間でインターネットユーザーの純増数の多かった国のランキングである。トップ10には、米国以外は新興国が占めている。中国は別格として、ナイジェリア、イラン、フィリピン、パキスタンと意外な国が入っている。グローバル展開するインターネット企業にとって、こうした急成長する新興国市場にも力を注ぐことになる。

KPCB2011 a7.jpg


 SNSも、Facebookの例からも分かるように、新興国での急成長が目に付く。さらに興味深いのは、ユーザー当たりのSNS利用時間が、多くの新興国では先進国よりも長いことだ。 

KPCB2011 a8.jpg


 モバイルについては、日韓に比べ後進国であった米国も、ここにきて急速にモバイルインターネットが浸透してきた。Pandora、Twitter、Facebookの各サイトへのトラフィックのうち、モバイル端末からのトラフィックの割合が、以下のように急増してきた。 

KPCB2011 a18.jpg


 米国でもモバイル市場が本番を迎えるに伴い、モバイル端末による販売売上(決済)が急伸している。
 
KPCB2011 a31.jpg


 次は、ネットサービスの主役がポータルからSNSに変わってきていることを示すグラフである。サイトの総利用時間でSNSがポータルを追い抜いている。

KPCB2011 a39.jpg


 米国におけるメディア別の接触時間シェアと広告費シェアである。両シェアとも、プリント(新聞、雑誌)が縮小し、インターネットとモバイルが拡大している。TVが踏ん張っており、接触時間は減っておらず広告費が増えている。

KPCB2011 a36.jpg

 
 米国のディスプレイ広告でも、SNSが最も強力な広告メディアになってきた。

KPCB2011 a40.jpg


 最後は、コンテンツの価値の生み手が、ネット上ではクリエイターからアグリゲーターにシフトしてきていることを示すグラフである。米新聞の売上高(新聞紙+オンライン)が下降し続け、Googleの売上高が伸び続けている。

KPCB2011 a42.jpg

 
 以下に、プレゼン資料を貼っておく。

KPCB Internet Trends (2011)


◇参考
・KPCB Internet Trends by Mary Meeker - Web2.0 Summit:Oct 18,2011(KPCB)
この記事をブックマーク: このエントリーを含むはてなブックマーク この記事を検索: Google 検索
posted by 田中善一郎 at 09:10 | Comment(0) | TrackBack(0) | 市場
2011年08月19日

アマゾン、アリババ、楽天のビジター数を比較する

Tweet このエントリーをはてなブックマークに追加
 世界の代表的な小売/オークション・サイトのユニークビジター数が、comScoreから公表された。Amazon.comがトップで、2011年6月に世界から2億8223万人のユニークユーザーが訪れた。楽天はAmazonの約5分の1の5779万人のユニークビジター数を集め、世界ランキング5位となった。いずれも、インターネットカフェやモバイル端末からのアクセスはカウントされていない。

RetailRankingA.jpg

 世界の州別からのビジター数の割合は、サイト別には次のようになっている。Amazonはさすがにほとんどの州で幅広く進出しているが、南米だけはMercadoLibreの独走を許している。

RetailComposition.jpg

mercadolibre.jpg


 日本生まれの大手ネット企業の海外進出が始まっているが、先行している楽天の動向が気になる。そこで、Amazon(アマゾン)、中国Alibaba(アリババ)それに楽天の3サイトを取り上げ、アジア・パシフィック地域でのユニークビジター数と、それ以外の地域のユニークビジター数をグラフで比較してみた。楽天のアジア・パシフィック地域以外では欧州市場への進出が目立つ。

RetailAsia.jpg
(単位:千人)

 今回のcomScoreの発表はユニークユーザー数のランキングであって、売上高のランキングではない。


◇参考
・Amazon Sites Visited by 1 in 5 Global Internet Users in June(comScore)
この記事をブックマーク: このエントリーを含むはてなブックマーク この記事を検索: Google 検索
posted by 田中善一郎 at 01:44 | Comment(0) | TrackBack(0) | 市場
<< 1  2  3  4  5  6  7  8 >>
Powered by Seesaa
Seesaaブログ
新着記事
(10/17)激しく責め立てられる「…
(09/19)動画配信のソーシャル系…
(09/11)SNS上のニュースは不正…
(07/28)勢いが続く「LINE」「In…
(06/30)TVニュースだけではなく…
(06/15)ニュースユーザーのFB離…
(06/01)高年層のSNS利用が増え…
(05/21)金融新聞「FT」までがFB…
(05/06)米ニュースメディアが相…
(04/16)モバイル広告市場を牽引…
(04/10)FBのアルゴリズム変更後…
(03/14)紙の「雑誌ブランド」は…
(02/07)「メディア」も「プラッ…
(01/30)国民の信頼が最も低い米…
(01/21)メディアに好かれる「グ…
(12/21)若いミレニアル世代ほど…
(12/08)世界の全広告費の25%を…
(11/28)デジタル売上8億ドルの…
(09/28)「グーグル」と「FB」が…
(09/07)FBに頼る海外のニュース…
カテゴリ
RSS配信 ブログ(202)
マーケティング 広告(339)
新聞 ニュース(702)
出版 雑誌(319)
TV  ビデオ ラジオ(277)
ポータル サーチエンジン(179)
メディア(94)
ケータイ モバイル(115)
市場(144)
その他(47)
日記(1)
Web2.0 SNS CGM(312)
ネットワーク(30)
ビッグデータ AI(4)
過去ログ
記事検索
 
プロフィール
名前:田中善一郎
E-mail:ztanaka@excite.co.jp