ところが、紙媒体(雑誌)としては昨年秋に息を引き取ったはずのGourmet(http://www.gourmet.com/)が、iPadアプリに代表されるモバイルアプリの形で復活を目指すことになった。Gourmetの発行元のCondé Nast(コンデナスト)によると、今年の第4四半期に「Gourmet Live」と称する「食」に焦点を絞ったソーシャルメディア・アプリを発行することになった。最初のアプリは無料でダウンロードできるが、それ以降のオプションのコンテンツは有料アプリで提供していく予定。
そのGourmet Liveのデモビデオが早くも公開されていたので、以下に貼っておく。
名門出版社のコンデナストも、昨今の雑誌不況や広告不況に見舞われ、抜本的なビジネスモデルの見直しを迫られていた。これまで同社は、他の主要出版社と同様、紙媒体からの広告収入に大きく頼っていた。総売上の7割を広告収入に依存しているのである。そのため、昨年のような広告売上急落の直撃を受けると、「Gourmet」をはじめ、育児誌の「Cookie」、結婚情報誌の「Modern Bride」/「Elegant Bride」と矢継ぎ早に休刊を実施せざる得なかったのだ。
これからの雑誌事業は、紙媒体(雑誌)広告の依存を減らしていく必要がある。同社CEOのChuck Townsend氏も、広告売上げを総売上の半分に減らし、残り半分をコンシューマーが支払う課金サービスからの売上に頼っていきたいという。どっちにしろ、軸足をプリントメディアからデジタルメディアに移していかなければならない。そこで、iPadアプリに代表されるモバイルアプリで、有料コンテンツなどの課金サービスに注力しようとしているのだ。「GQ」、「Vanity Fair」、「The New Yorker」、「 Glamour」、「Wired」などの人気雑誌のiPad版電子雑誌に取り組んでいるのも、そのためだ。
そして、死んだはずの 「Gourmet」までも、モバイルアプリの形で生き返らそうとしているのである。ただし、Gourmet誌の最後の編集長であったRuth Reichl氏がTwitterで"They're reviving the brand, not the magazine. Pity."とつぶやき、またCEOのChuck Townsend氏も“It’s not a magazine and it’s not a digital version of a magazine. It’s a whole new way to engage with consumers.”とかたっているように、Gourmetブランドを生かそうとしているものの、Gourmet雑誌を復活させようとしているのではないという。確かに、既存雑誌のiPad版でよく見られるように、単に紙雑誌のレプリカを電子雑誌化しただけでは発展性はないだろう。
そこで、紙雑誌の延長上ではない新しい電子雑誌を開発するために、メディア/テクノロジー・コンサルタント会社のActivateと組んで、2か月ほど前から「Gourmet Live」を開発することになった。ソーシャルメディア機能をベースに展開するという。FacebookやTwitter、YouTubeのようなソーシャルサイトで記事を共有できるようにしするが、また real-time game engineを組み込むことを検討するという。このreal-time game engineの正体がはっきりしないのだが、ゲーム感覚で新しいコンテンツをユーザーに、無料であるいは一部有料で提供することを考えているようである。
最初のアプリは今年11月にも、iPadをはじめ, iPhone, Google's Android, Blackberry など幾つかのモバイルプラットフォーム向けに提供されていく予定。またGourmetは雑誌が休刊した後も、Facebook、YouTube、Twitterを利用したオンラインコミュニティは残していたので、それらはGourmet Liveに継続されることになるのだろう。
◇参考
・Conde Nast to Revive Shuttered Mag Gourmet as Mobile App(AdAge)
・As Magazines Close, Interior Designers Look to Web(NYTimes.com)
・Gourmet stumbles upon a business model with the iPad(Econsultancy)
・大手出版社コンデナスト,「グルメ」など4誌を一気に休刊(メディア・パブ)