米国でその口火を切ったのがマサチューセッツ州の新聞The Standard-TimesのサイトSouthCoastToday.comである。2010年1月12日から課金の壁(Pay Wall)を設け,有料購読サービスを始めたのだ。同紙は,Dow Jones Local Media Groupの一部門であるSouth Coast Media Groupによって発行されており,News Corpration傘下の新聞である。The Wall Street Journalは別にすれば,News Corpration傘下の新聞サイトもこれまで原則無料であったが,マードックが今後無料サイトを有料化にしていくと広言していた。
同サイトでは毎月10本までの記事が無料でも閲読できるが,それ以上の記事の購読は有料となる。$3.56 for new subscribersが課せられる。また国際ニュースや国内ニュース,天気予報などの記事は無料でアクセスできるが,ローカルニュースや死亡記事,アーカイブ記事などは有料化している。
World Association of Newspapers and News Publishers (WAN-IFRA)の調査では,約100ヶ国で新聞の発行部数が増加している。そして世界の19億人が毎日、有料新聞を購読している。地球上に住む人の34%にリーチしているのだ。「世界経済=G7国の経済」ではなくなってきた昨今,地球レベルで見れば新聞は斜陽でないかも。インドは日刊紙の発行部数が1億700万部に達し,世界最大の新聞市場になったという。
広告不況が長引く中で,これまで高度成長が当たり前であったインターネット広告までがマイナス成長に陥っている。その中でも,ひときわ落ち込みが大きかったのが新聞サイトであったのだ。上のグラフは米新聞協会(NAA:Newspaper Association of America)と米インターネット広告協会(IAB: the Newspaper Association of America)のデータをベースに,四半期別オンライン広告売上の年間成長率を示している。
上のグラフで目を見張ったのは,Google News Searchが、この1年間で月間ユニークユーザー数を6000万人から1億人に大幅に増やしたことだ。もう一つ驚いたのはNew York Times Digitalの月間ユニークユザー数が,09年11月には9200万人に達していることである。ただしNYT Digitalとなっているので,NYTimes.com以外のサイトのユーザー数も含まれているのだろう。ともかく米国以外に多くのユーザーを抱えているのは間違いない。米英の有力ニュースサイトは海外展開できる強みを備えている。
Los Angeles Times on Twitterのページに行くと,Twitterのアカウントがあるはあるは。LAタイムズでは大幅な記者のレイオフが続き,記者も暇じゃないはず。こんなに多くの分野の記者がつぶやいていて,大丈夫なんかしら。でもつぶやく内容はほとんど,自分のカバー範囲の分野に絞っており,情報収集する読者にはありがたく,またマーケティングの観点でも役立つのかも。
NYタイムズのNicholas D. Kristof氏のような著名な記者だけではなくて,一般の記者も多い。米国の記者は一種の契約社員で,特定の新聞社や雑誌社にいつまでもぶら下がっておれない環境がそうさせているようだ。つまり自分を売り込むために,個人ブランドを高めておく必要がある。そのためには,ツイッターやブログは絶好のツールである。
NYタイムズ(NYT)とワシントンポスト(WaPo)の米有力新聞が,グーグルと手を組んで,「将来の新聞」をめざした興味深いプロジェクトを開始した。そのプロジェクト名は,Google Living Storiesである。
このプロジェクトについてグーグルは次のように語っている。 This experiment will be open on Google Labs for the next few months. We are going to refine all aspects of the format using the feedback we receive. Are Living Stories the "future of news"? Maybe. Are all these concepts correct? Probably not. Can this collaboration kick off the debate and encourage innovation in how people interact with news online? We certainly hope so.
ただしトピックス記事を成功させるには,ニュースアグリゲーターとしてのセンスが欠かせない。そこで,NYTとWaPoはニュースアグリゲーターとしてのセンスも技術も兼ね備えたグーグルと組むことになったのではなかろうか。両新聞は,新聞サイトのコンテンツを過去に遡って提供し,"future of news"となるようなトピックス記事の制作をグーグルと組んで挑むことになった。
実験的なプロジェクトのためか,スタートページは飾り気もなく質素なつくりだが,進めていることは面白い。始めたばかりなのでトピックス数は少ないが,The New York Times with Googleでは,次の5つのトピックスが始まっている。
・The War in Afghanistan ・Battling Swine Flu ・The Struggle Over Health Care ・The Politics of Global Warming ・Executive Compensation: How Much to Pay?
一方のThe Washington Post with Googleでは3トピックスが始まっている。 ・Washington Tackles Health Care Reform ・Fixing D.C.'s Schools: Michelle Rhee Takes Charge ・The Redskins Face a Season of Troubles
このGoogle Living Storiesがどのように展開していくのかが楽しみである。グーグルのEric Schmidt氏が,WSJのオピニオン欄で “How Google Can Help Newspapers”と主張しているのだが,さてこのプロジェクトが新聞を助けることに貢献すればよいのだが・・。
先週開かれたUBS Global Media and Communications Conferenceで,NYT社の Vice-President and C.F.O.であるJim Follo氏は,"We have a very significant relationship with Google, and a very good relationship with them," と語った(New York Observerより)。グーグルを敵視するどころか,重要なパートナーとして良い関係を継続させるとのことだ。
この時期に,NYTとグーグルの良き間柄を見せつけるかのようなプロジェクトGoogle Living Storiesが始まった。このプロジェクトにはワシントンポストも加わる。またワシントンポストのサイトでは今もグーグルの検索エンジンを使っている。
NYタイムズはかねてから,ニュースルームのスタッフを100人削減することを明らかにしていた。そして,Bill Keller氏(executive editor of The New York Times)が先週末の4日(金),スタッフに希望退職を募るメールを配信した(全文はこちらで)。
From: Bill Keller Date: Fri, Dec 4, 2009 Subject: A note to the staff
Colleagues:
As you all know only too well, we are in the process of reducing the newsroom staff by 100 jobs, a process that began with a round of voluntary buyouts. The window for those voluntary buyouts closes at the end of the day Monday, December 7.
Edmund Andrews, reporter, Washington bureau Alex Berenson, business reporter Jack Curry, national baseball writer Geraldine Fabrikant, senior writer, Business Jonathan Glater, reporter, Sacramento Stephen Labaton, reporter, Washington bureau Neil A. Lewis, reporter, Washington bureau David Stout, reporter, Washington bureau Louis Uchitelle, business/economics
ハイパーローカルのニュースアグリゲーターであるOutside.inが,このほどCNNなどから700万ドルを調達したことを発表した。Outside.inはブログや主要ニュースサイト,ツイッターなどのコンテンツを集め,全米の5万7830地域別にニュースを提供している。たとえば, Silver Lake, Los Angelesのローカルニュースは以下のようになる。近くCNNのサイトでも,Outside.inのハイパーローカルのコンテンツを掲載していく予定だ。
罵声を浴びせられているグーグルのEric Schmidt(CEO)が,なんとマードックの新聞(The Wall Street Journal)に謝辞を述べているではないか。そのためにツイッターのアカウントを取ったのだろう。以下のように,WSJのオピニオン欄に投稿する機会を与えてくれたことに感謝しているのである。
そこでリンク先に飛ぶと,"How Google Can Help Newspapers"と見出しが付いたSchmidtのオピニオン記事に。グーグルは,新聞を殺すのではなくて助けようとしているのだと,主張しているのである。
そのプリントメディアの新聞社や雑誌社を辞めたジャーナリストの中には,ブロガーに転身し新興のブログパブリッシャーなどで活躍している人も少なくない。Gawker Mediaを率いるNick Denton氏は Financial Times (FT)の記者であったように。
また,新聞サイトや雑誌サイトが設けたブログなどに活躍の場を移し,事実上ブロガーに転向したジャーナリストも増えている。WSJ Digital NetworkのAll Things DigitalでブログBoomTownを執筆するKara Swisher氏は,かつてはWSJ紙の記者であったが,今ではブロガーになりきっている。
2度のピュリツアー賞を受賞したNicholas D. Kristof氏は,今もNYTimesのコラム欄(Op-Ed)に週2回のペースで記事を投稿しているが,活躍拠点はブログなどのソーシャルメディアに移している。
“WSJ ON TWITTER”の看板が出ているページには,以下のようなWSJ.comのTwitterアカウント一覧表が掲載されている。ニュースのカテゴリー別やブログ別に,50を超えるアカウントが揃っている。WSJ.comの関連サイト,たとえばBarron's(barrons.com), MarketWatch(marketwatch.com),All Things Digital(allthingsd.com)などでも,アカウントが用意されているので,それらも含むと約70種が揃っている。
WSJ.comの関連サイトの中から,All Things DigitalのTwitterを見てみよう。このサイトはWSJ紙の元記者(テクノロジージャーナリスト)などが活躍しているブログベースのソーシャルメディアである。ジャーナリストからブロガーに転向した連中の集まりとも言える。その中の人気ブロガーであるKara Swisherさんは,ブログBoomTownとともに,@karaswisherからツイッターでも発信している。以下のように,50万人を超えるフォロワーを抱えている。