米新聞社サイトの7月のランキングが発表された。毎月,Nielsen Onlineによるランキング結果が E&P (Editor&Publisher)のサイトで掲載される(Editor&PublisherとE&Pは同一の親会社Nielsen Business Mediaに属している)。
月間ユニークビジター数の多い順のランキングであるが,以下の表を見てもわかるように,サイトによって増減が大きい。パネラー(パソコンに測定用ソフトを組み込んだユーザー)が変わったり,人気の高いニュースイベントの有無によって,ユニークユーザー数が大きく振れるようだ。
7月のトップ30のランキング表を以下に示す。
●米新聞社サイトの人気ランキング(ソース:Nielsen Online)
2009年7月ユニークビジター数と前年同月比
いつものようにNYTimes.comがトップである。ここでは,前年同月比で大きく伸びたDaily News Online Editoin(4位)とPolitico(11位)に注目したい。
Daily Newsは全米15位(6月の発行部数が63万)の日刊紙で,米国最初のタブロイド紙として知られている。NYCの代表的な大衆紙で,ほぼ同じ発行部数であるNY Postの好敵手でもある。両新聞はオンラインでも競合している。Daily Newsのサイト
NYDailyNews.comは,7月のユニークビジター数が前年同月比112%増の913万人と急成長し,656万人のNYPostサイト(
nypost.com)を引き離した。マードックは大衆向けコンテンツのNYPostサイトまでも有料化しようとしているようだが,NYDailyNews.comを喜ばせることになりそう。
サイトをザッーと見てみたが,なかなか充実した大衆紙サイトである。NYCの住人なら、硬派寄りのニュースはNYTimesから,軟派寄りのニュースはNYDailyNews.comから得ておれば十分かも。軟派寄りといっても,Daily News紙は過去10回もピュリツァー賞を獲得しているだけあって,オンラインの内容もかなりしっかりしているようだが。
もう一つの注目サイトは
Politico。07年1月に創刊した新興の新聞社サイトだが,創刊2年半後に早くも11位にランクされた。Washington Post紙などのジャーナリスト達によって立ち上げられたニュースサイトで,ワシントン発の政治ニュースが売りとなっている。大統領選報道を目玉にスタートしたサイトのため選挙後の失速が心配されたが,順調に育っており今や有力な新聞社サイトとして定着しつつある。新しい試みも多い。例えば政策立案者や政治評論家を交えた討論の場
The Arenaは,意欲的なコーナーである。
また,アドネットワーク(コンテンツネットワークも兼ねる)“Politico Network”を実施しており,以下のように新聞社サイトやTV局サイトにニュース記事を配信し,掲載ページの広告売上をシェアしている。加入している新聞社やTV局は
Media Group Membersで掲げられている。ネットワークの月間ユニークユーザー数は670万人となっている。
Politicoの現況については
Vanity Fairの解説記事で詳しく紹介されている。その記事によると,100人のスタッフを抱えているが,すでに黒字化を達成しているという。スタッフの給与も,Washington Postのレベルに近いというから立派だ。だが先のアドネットワークを介しての広告売上は,この不況期だと期待はずれのはず。ところが,副産物(バイプロ)として発行した
プリント版(つまり新聞紙)が,同社の台所を支えているという。意外や意外だ。このPolitico紙が同社の売上を倍近く引き上げたというから,いまや救世主的な存在である。
Politico紙は議会,ロビー活動などの政治関連ニュースをカバーしたタブロイド紙。議会の開催中は毎週3回(火,水,木曜日)発行し,それ以外は火曜日の1回だけ。congressional offices, the White House, the Supreme Court, the Pentagon, federal departments, media outlets, lobbying firms, PR firmsなどの関係者に配布するとともに,ワシントンDCの決められた場所に、フリーペーパーとして置かれている。
それ以外の人は購読することになる。購読料は国内読者が年間200ドルで,海外読者は年間600ドルとなっている。米国の新聞としては高価である。Vanity Fairによると,有料購読数が3万2000部に達したという。
Politicoはワシントン発の政治ニュースに絞り,最初はオンライン版のみを発行し,低コストで出発した。そのおまけでターゲット化した新聞紙を発行すれば,それほどコストの上乗せがないはず。高コスト体質の伝統的な新聞社ではマネができそうもないが。
◇参考
・
Exclusive: Top 30 Newspaper Sites for July -- Shake-up at the Top! (Editor&Publisher)
・
Daily News (New York)(Wikipedia)
・
Politico’s Washington Coup(Vanity Fair)
posted by 田中善一郎 at 11:23
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