スマートフォン専用ページを表示

メディア・パブ

オンラインメディアをウオッチ
TOP / 新聞 ニュース
<< 1  2  3 4  5  6  7  8  9  10  11  12  13  14  15  16  17  18  19  20  21  22  23  24  25  26  27  28  29  30  31  32  33  34  35  36 >>
2014年02月10日

戦国時代突入のバイラルメディア、早くも淘汰始まり急落するサイトも

Tweet このエントリーをはてなブックマークに追加

  過熱してきた米国のバイラルメディア。だが早くも淘汰が始まり、トラフィックが急落するサイトも現れてきた。 

 昨年半ば以降、短期間に驚異的なトラフィックを獲得していくバイラルメディア・サイトが相次ぎ登場してきた。戦国時代突入の様相を呈してきた。その中で月間ユニーク数(ビジター数に近い)を爆発的に増やし、我々を驚したサイトがUpworthyとDistractifyであった。Upworthは月間ユニーク数を10月の4287万人から11月の8808万人と、一カ月で倍増させた。また2013年10月に誕生したばかりのDistractifyは、11月に1560万人、12月に4634万人と信じられないほどの急成長を達成した。トップクラスの伝統ニュースサイトのユニーク数を、一気に追い抜く勢いである。さらにUpworthyに続けと生まれてきた新顔のバイラルメディアの中にも、アッと言う間にユニーク数が1000万人を突破するサイトが生まれてきている。

 このように昨年末まで、バイラルメディアと称されるサイトともなると急成長が当たり前と見られていた。ところが年末から年始にかけて突然異変が起こった。先頭を走っていたUpworthyとDistractifyの2強サイトのトラフィックに急ブレーキがかかり、さらに急減したからだ。Quantcastの測定結果によると、以下のグラフで示すように、11月に8809万人に達していたUpworthyの月間ユニーク数が12月に6832万人に減り、年明けの1月には4919万人と2カ月間でほぼ半減してしまった。またDistractifyは12月に一気に4634万人に上りつめたが、1か月後の1月には3394万人に急減した。Alexaのトラフィックランキングの表も掲載したが、両サイトともランクを大きく下げている。縦軸のランクが対数表示なので落ち方が小さく見えるが、実際には暴落している。測定の正確さには疑問があるが、両サイトとも急落しているのは間違いないだろう。


*月間ユニーク数の推移(Buzzfeed、Upworthy、Distractify)
ViralMediaUnique201401.png
(ソース:Quantcastのデータより:
 ユニーク数=モバイル・ウェブ・ユニーク数+オンライン・ユニーク数)


*Alexaのトラフィックランキング(UpworthyとDistractify)
ViralMediAlexaTraffic201401.png
 共にフェイスブックからのトラフィックに依存しているのが特徴であるだけに、サイトの掲載記事がフェイスブックで話題になる件数を増やしていかなければならない。ところがフェイスブック上でやり取りされた総アクション総数(いいね!、コメント、シェア)でも、Upworthyは13年11月の1680万件をピークに12月の1077件、14年1月の570万件と急降下した。これはNewsWhipの測定結果であり、フェイスブック上で総アクション数の多いメディアサイトのトップ50が公表されている。新顔のDistractifyも12月に170万件で36位となりトップ50入りを果たしたが、14年1月にはランク外に落ち込んでしまった。やっぱり、総アクション数とトラフィックが連動して落ちていたのだ。

*フェイスブックでの月間総アクション数の推移

(Buzzfeed、Upworthy、Distractify)

ViralMediaFB201401.png
(ソース:NewsWhipのSpike)

 そうなると、バイラルメディアのバブル崩壊かと気になる。上の2強は確かに変調をきたしたが、他の有力バイラルメディア・サイトは概ね快調に推移しているので、崩壊とは言い切れない。新興バイラルメディアの先輩格になるBuzzFeedは逆に、昨年末から今年に入って勢いづいている。冒頭のグラフで示したように、14年1月の月間ユニーク数が前月より約2000万人も増え1億5346万人に跳ね上がったのだ。

BuzzFeedは名が示す通り、ネット上でバズる(話題になり拡散する)コンテンツを発信するように最初から設計されたニュースサイトである。そのためBuzzFeedへのユーザーアクセスは、フェイスブック、ツイッター、タンブラーといったソーシャル系サイトや、検索エンジン、ブログ、ニュースアグリゲーター、Redditなどからの参照トラフィックが多い。2006年に設立と、今のようにバイラルメディアが騒がれるかなり前からスタートし、これまでバイラルメディア市場で独走していた存在だった。ところが、昨年半ばから特にフェイスブックからのトラフィック流入増に注力したバイラルメディアが、すごい勢いで急浮上してきた。その代表格のUpworthyの月間ユニーク数がBuzzFeedに迫る勢いを見せつけた。

そこで、コンテンツをバイラルにするために専門のデータサイエンティストを抱えているBuzzFeedは、フェイスブック対策に重点をシフトさせたようだ。その効果として、BuzzFeedのフェイスブックにおける月間総アクション数が、13年11月の2179万件から12月に2553万件、14年1月に4024万件と、BuzzFeedの記事がフェイスブック上でますますバズるようになった。その結果、以下のグラフのように、フェイスブックからのトラフィックが急増し、グーグル検索からのトラフィックを大幅に凌ぐまでになった。コンテンツが画像などのビジュアル中心になってきたのも、検索からソーシャル系へのシフトを加速化させたのだろう。そして、冒頭のグラフのように、今年1月の月間ユニーク数急増に至ったのだ。


*Buzzfeedにおけるフェイスブック参照トラフィックとグーグル検索トラフィックの推移
facebookvsGoogleBuzzfeed.png

参考までに、フェイスブックにおける月間総アクション数の多いメディアサイトのランキング表を、掲げておく。2014年1月のランキングである。急に変調をきたしたUpworthyは12月の3位から14位に落下し、Distractifyは36位からトップ50圏内から消え去った。


FBtopPublisher201401.png
ソース:NewsWhipのSpike


  一方でバブル崩壊の懸念を吹っ飛ばすように、先に説明したようにトップのBuzzFeedは上昇気流に乗り2位との差を広げ、ViralNovaは6位から3位に上昇した。また新星のIjreviewは42位から一気に9位に躍り出て、それに合わせて月間ユニーク数も以下のグラフのようにうなぎ上りに増え続けている。

*月間ユニーク数の推移(Ijreview)
ViralMediaIjreviewUnique201401.png
(ソース:Quantcastのデータより:
 ユニーク数=モバイル・ウェブ・ユニーク数+オンライン・ユニーク数)


*フェイスブックでの月間総アクション数の推移
(Ijreview)

ViralMediaIjreviewFB201401.png

(ソース:NewsWhipのSpike)

今回の2強サイトの大異変は、バイラルメディア・サイトの不安定さを露呈したともいえる。ユニーク数が1000万人を突破したサイトでも、1か月間くらいの短期間で、ユニーク数が倍増したり、半減したりする。これまでのWebサイトの常識からは想定もできないほど、アップダウンが激しすぎる。水物っぽいサービスの危険性をはらんでいる。

バイラルメディアの参入障壁が低いこともあって、国内でも見られるように、すでに乱立気味である。例えば、バイラルビデオをまとめたようなサイトだと、すぐにでも立ち上げることができそう。海外を中心にYouTubeなどのバイラルビデオが溢れている定番サイトやランキングサイトは以前から存在し、張り付けるだけで利用できる素材はいくらでもある。土地勘のある目利きがキューレートし、ユーザーを引きつけるストーリーを語り、ユーザーが飛びつきたくなるような見出しをつけていけば、バイラルメディアとして成り立つ。米国のバイラルメディアでも記事本数が月間200〜300本程度でユニーク数が1000万人を超えているサイトがある。毎日10本程度発信するサイトなら数人足らずで短期間に立ち上げても不思議ではない。

バイラルメディア・サイトをいくつか覗いてみた。確かに面白そうなコンテンツが満載していて楽しめる。暇つぶしや息抜きの時に閲覧するエンターテイメントサイトの類かな。仕事や学業にダイレクトに役立つ情報はあまりなさそうだが、雑談話のネタにはなりそう。ただ、乱立しているバイラルメディアに、ユーザーが付き合える時間にも限度がある。また、似たり寄ったりのサイトが多く、何度も閲覧していくと飽きてもくる。当然、これから淘汰は避けられない。

水物ではなくて持続性のあるサイトであるためには、単なるまとめサイトだけでは難しそう。独自の切口やオリジナルコンテンツなどで差異化を図る必要がある。Ijreviewが快調に飛び出ることができたのも、政治という特定分野に絞って、乱立している他サイトとの差異化を図れたからであろう。実績のあるBuzzFeedは、マスメディアで活躍してきた編集者を多く抱え、いろんなコーナーを新設したりして、記事の量、質とも他サイトをリードしている。最近では調査報道などのオリジナル記事を増やしていこうとしている。UpworthyとDistractifyも、2月以降、どのような手で巻き返しを図るかを注目していきたい。



◇参考
・The Biggest Facebook Publishers of January 2014(NewsWhip Blog)
・The Year Facebook Blew Past Google(re/code)



この記事をブックマーク: このエントリーを含むはてなブックマーク この記事を検索: Google 検索
posted by 田中善一郎 at 14:08 | Comment(0) | TrackBack(0) | 新聞 ニュース
2014年02月07日

NYタイムズ、なぜネイティブ広告導入に追い込まれたのか

Tweet このエントリーをはてなブックマークに追加
 NYタイムズ(NYT)は、グローバルにおいても最もブランド力があり、かつ影響力がある新聞と言えよう。またオンライン(デジタル)化でも先行し世界でもトップクラスのビジター数を誇っているし、さらに最近ではデジタル版の有料化で大成功を収めたとみなされている。

 このように優等生なのに、経営状態は決して安泰ではない。まだまだ不安定な状態が続いているのである。年間総売上高が6年少し前まで30億ドルを超えていたのが、2013年には約半分の16億ドル以下まで半減している。NYTの経営を支えていた広告売上高が、2005年には約23億ドルもあったのが2013年には7億ドルを割り込むまで沈んでいる。地方紙などを売却したため落ち込みが大きく出ているが、厳しさは変わらない。優等生のNYTでもこうだから、米国の大半の伝統新聞がいかに深刻な状況に立たされているかが分かる。

NYTAnnualRevenue.png

 NYT社の2013年決算が発表されたので、目につく数字を紹介する。広告売上はかつて総売上高の7割以上も占めていたが、いまや約4割に減ってしまっている。さらに13年の広告売上高も前年比でマイナス6.3%と下げ止まらない。一方、販売売上高はデジタル版の有料化が功を奏して、前年比3%増となった。 


NYT2013FullYear.png


 確かに、有料デジタル版の定期購読者数が増え続けている。黄色の下線を引いた数字が、デジタル購読者数の四半期単位の推移である(売却したBoston Globeなどの購読者数は省く)。デジタル購読者数の成長率が鈍化しつつあるが、それでも13年第4四半期には約3万3000人を上乗せして、76万人に達した。


NYTDigitalSub2013Q4.png

 プリント版(新聞紙)の読者が減り続けているだけに、デジタル版の販売売上の大幅アップを目指したい。実際、デジタル版有料購読者数がプリント購読者数を追い抜く勢いを見せている。ところが売上高で見ると、13年のデジタル版の販売売上高は約1億4900万億ドルで、全販売売上高の22%に過ぎない。牽引車としてはまだ力不足である。未だにプリント版(新聞紙)の販売売上に圧倒的に依存しているのが現状である。そのプリント版売上高も購読料金を値上げして、読者の減った分をなんとか補っているのだ。そうなるとデジタル広告にも頑張って欲しい。プリント版広告の長期低落は止まりそうもないので、やはりデジタル版広告売上に大きな期待が集まる。でも誤算があった。デジタル広告は期待を裏切って、13年も前年比2.3%減とまたもやマイナス成長に陥った。

 そこでデジタル版広告事業のテコ入れが急務となり、ついに「ネイティブ広告」に着手することになった。ジャーナリズムを標榜するNYTとしては、編集との境界があいまいになるネイティブ広告は避けたいのが本音であった。だが従来のバナー広告がじり貧気味になってきていることもあって、今年に入ってネイティブ広告市場に本格的に踏み切ることになった。NYTのネイティブ広告導入についてはこちらの記事を参照してもらいたい。
NYT2013CircAds.png
注:2012年は53週分あるため、13年より1週分多くなる。比較のため、12年を52周分で再計算して調整している。


◇参考
・The New York Times Company Reports 2013 Fourth-Quarter and Full-Year Results(NYT],プレスリリース)
・NYタイムズの電子版有料化、成功しているが未だに"紙"に大きく依存(メディア・パブ)
・As The New York Times debuts its template for native ads, will other newspapers follow?(Poynter.)
・用心深くネイティブ広告導入、NYタイムズも禁断の果実に触手を(メディア・パブ)
・New York Times digital subscriptions grew 19% in 2013(Poynter.)
・Pledging Clarity, The Times Plunges Into Native Advertising(NYT)
・Can the New York Times’s online readership offset its prolonged ad slump?(Quartz)

この記事をブックマーク: このエントリーを含むはてなブックマーク この記事を検索: Google 検索
posted by 田中善一郎 at 07:42 | Comment(0) | TrackBack(0) | 新聞 ニュース
2014年02月03日

新聞サイトの全米2位に居座るDaily News

Tweet このエントリーをはてなブックマークに追加
  米国における新聞紙サイトでユニークビジター数が2番目に多いサイトはどこだろうか。ニューヨーク市のタブロイド紙「The Daily News」 のサイトである。

DailyNewsWeb20140201.png

 このスナップショットからもわかるように、Daily Newsは典型的な大衆新聞である。comScoreの2013年12月の測定によると、米国からの月間ユニークビジター数のランキングは次のようになっている。伝統的な新聞紙のサイトを対象にしているので、HuffingtonPostなどのネット専門の新興ニュースサイトは省かれている。


USNewspaper201312.png

 トップは月間ユニークビジター数(UV)が5380万人のニューヨークタイムズ(NYT)である。国際版のビジター数も含まれている。2位は複数の新聞紙をまとめたトリビューンのサイトとなっているが、単独新聞では3827万人のDaily Newsが事実上の2位となる。大都市といってもローカルなタブロイド紙サイトが全米で2位に居座っているのだ。ライバルであるNYポストのサイト(1453万人)を大きく引き離している。UV数の前年比率を見ても、NYTが+8.3%でNYポストが+0.5%に対し、Daily Newsが+33.4%と際立って高い成長率を示した。またモバイル端末からしか利用しないUV数は、NYTが2200万人に対しDaily Newsが2070万人とほぼ肩を並べている。また、18〜34歳の若いモバイル読者数では、1260万人を抱えたDaily Newsがトップにのし上がっている。

 大衆向けの軟派なニュースとなると、ネット上では溢れかえっているので、Daily Newsのような大衆新聞紙が急激に部数を減らしていくのは仕方がないだろう。少し古いがAAM(Alliance for Audited Media)が考査した新聞紙の発行部数は次のようになる。2013年3月末時点で51万6000部と、1年間で11%も部数を減らしている。同じ大衆紙のNYポストも9.9%も減っている。一方、高級紙と言えるWSJやNYTは、発行部数にデジタル版の有料購読者数を上乗せしていることもあって、部数が伸びている。


Average Circulation at the Top 25 U.S. Daily Newspapers 
USNewspaper201303a.png

 Daily Newsのような大衆新聞は、紙媒体がいずれ消えていくだろうし、デジタル版の有料化も難しい。エンターテイメント的なニュースを発信する無料サイトとしてビジター数を増やして、広告事業で活路を見出すほかないだろう。一般大衆にまでインターネットが浸透し、さらにモバイルの普及で一人当たりのメディア接触時間も増えているので、やり方次第でビジター数をかなり増やしていける。すでに世界で最もUV数の多い新聞は、英国の大衆紙サイトMail Onlineがトップの座についている。米国でも事実上3位に上がってきたから驚く。ただ、エンターテイメント的なニュース市場では、UpworthyとDistractifyのようなバイラルメディアも昨年後半からすごい勢いでビジター数を増やしており、先頭を走るバイラルメディアサイトはUV数で大衆新聞サイトを既に追い抜いているかもしれない。 


◇参考
・Daily News touts ranking: No. 2 U.S. newspaper site(Capital)
・Daily News (New York)(Wikipedia)
・The other tabloid war: ‘Mail Online’ and ‘Daily News’ duke it out in digital(Capital)
・Top 25 U.S. Newspapers for March 2013(AAM)


この記事をブックマーク: このエントリーを含むはてなブックマーク この記事を検索: Google 検索
posted by 田中善一郎 at 00:54 | Comment(0) | TrackBack(0) | 新聞 ニュース
2014年01月12日

異常なほどの成長を誇示するバイラルメディアの新星がまた出現

Tweet このエントリーをはてなブックマークに追加
 米国で新興バイラルメディアが驚異的に成長していると、昨年末の記事で伝えた。その代表格がUpworthyとDistractifyであった。いずれも、フェイスブックからの流入トラフィックを大幅に増やし躍進しているのだ。また、フェイスブックがニュースフィードの表示アルゴリズムを12月2日に変更し、ニュース記事リンクを優先的に掲載しようとしていただけに、メディアサイトはフェイスブック対応にこれまで以上に力を入れていた。

 それだけに、バイラルメディアを含めた各ニュースサイトの記事が、フェイスブックでどれくらいのアクション総数(いいね!、シェア、コメント)を得ているかが注目されていた。メディア分析会社NewsWhipが、代表的なニュースサイトを対象に、2013年12月の月間アクション数のランキング(トップ50)を公表していたので、その一部を以下に示す。一般にバイラルメディアと称されるサイトを黄色で示しておく。バイラルメディアなどの新興メディアの記事が、伝統メディアの記事よりもフェイスブックで話題になり始めているようだ。

フェイスブックの総アクション数(2013年12月)
NewsWhipFacebookActivity201312.png
ソース:NewsWhip

 12月に入って注目される動きとしては、Viral Nova(viralnova.com)とthe Independent Journal Review(ijreview.com)が一気に飛び出てきたことだ。Viral Novaは伝統メディアをごぼう抜きして、フェイスブックの総アクション数で6位に突然現れた。また無名のthe Independent Journal Reviewもいきなり42位に顔を出した。

 こうした新星のバイラルメディア・サイトは月間の投稿記事数(上の表のArticle Count)は、伝統メディアに比べて桁違いに少ない。逆に記事一本当たりの平均いいね!(Likes)件数は膨らみ、比較すると次のグラフのようになる。ずば抜けて多い上位4サイトは、いずれもバイラルメディアとなった。ただし Independent Journal Reviewが生まれた間もないためか、投稿本数が計上されていない。おそらく5位以内に入るのは間違いない。ともかく伝統メディアと比べて、いいね!件数は雲泥の差となっている。バングラデシュにある「いいね!」ボタンのクリック工場を利用しているのではと疑ったこともあったが、Quantcastなどのトラフィックデータでもそれなりのユニーク数やページビュー数を達成しているので、今後の推移をみていこう。

記事一本当たりの平均いいね!件数(2013年12月)
NewsWhipAverageLikes201312.png
ソース:NewsWhip

 ここで気になるのが、突然現れた Independent Journal Reviewの存在である。覗いてみると、どうも政治分野に特化したバイラルメディアである。編集長のBert Atkinson Jr.(@ijreviewBubba)の経歴がまだ分からないので何とも言えないが、やはり気になるサイトである。


IJReview201401.png




◇参考
・BuzzFeed Back On Top – The Biggest Facebook Publishers of December 2013(The NewsWhip Blog)
・Does Upworthy prove media outlets are hurting themselves by publishing so much content?(Washington Post)
・爆発的に急成長するバイラルメディア、バブルなのか本物なのか(メディア・パブ)



この記事をブックマーク: このエントリーを含むはてなブックマーク この記事を検索: Google 検索
posted by 田中善一郎 at 02:42 | Comment(0) | TrackBack(0) | 新聞 ニュース
2014年01月09日

用心深くネイティブ広告導入、NYタイムズも禁断の果実に触手を

Tweet このエントリーをはてなブックマークに追加
 NYタイムズがWebサイトの大幅刷新を、1月8日に実施した。刷新の目玉の一つが、ネイティブ広告を本格的に導入することだ。スポンサーのコンテンツがそのままNYタイムズのドメイン内に現れることになる。

 デジタルシフトで先行していた新聞NYタイムズでも、総売上の7割以上はプリント(新聞紙)事業に依存している(こちらの記事を参照)。デジタル・オンライン事業の売上が未だに3割に達していないのは、急成長を期待されていたオンライン広告が足踏みしているからだ。そこでついに、禁断の果実とも言える「ネイティブ広告」に触手を伸ばし、オンライン広告売上の成長を促すことになった。

 ネイティブ広告は、フォーブスやアトランティックなどの有力雑誌とか、ワシントンポストやウォール・ストリート・ジャーナルなどの有力新聞のWebサイトで、相次いで採用されてきている。ところがNYタイムズは昨年の前半ころまで、広告枠の外で(つまり編集枠で)広告主からのコンテンツを提供していく「ネイティブ広告」に否定的な立場をとっていた。編集と広告の境界線があいまいな形での情報提供を、高級新聞たるNYタイムズは避けるべきだという立場である。でも今の米国の新聞は、そんな綺麗ごとを貫ける余裕はない。NYタイムズも昨年中ごろには、iPhoneアプリでネイティブ広告の予行演習を実施していた。

 そして2014年1月8日に 、公式にネイティブ広告に乗り出すことになった。ただし、他の有力な伝統メディアのネイティブ広告と比べると、読者からの反発を招かないように慎重に対応している。まず事例を見ていこう。最初の広告主はデル(Dell)社である。8日のある時刻における、NYTimes.comのトップページを以下に示す。

NYTNativeAds20140108DellTopPage.png

 NYタイムズのタイトルロゴの左右に配置された青枠は、従来のバナー広告で、クリックするとDellのサイトに飛ぶ。ここで注目するのは、右サイド下に現れている青枠である。Dellのロゴに加えて、
"Paid Post - Will Millennials Ever Completely Shun the Office?"
と、広告主が提供する記事の見出しが掲載されている。

 この青枠をクリックすると、以下のネイティブ広告記事のページに飛ぶ。先頭には"PAID FOR AND POSTED BY DELL"と明記し、DELLのロゴも示しているので、編集記事でないことを伝えていることになっているのだろう。ただし、印象の良くない広告(Advertizing)という言葉を外している。8日には、この記事に加えて、他に3本のネイティブ広告記事も投稿されており、右サイドに紹介されている。

NYTNativeAds20140108Della.png

 上のネイティブ広告記事の真ん中あたりで、以下のようにこの記事と関連のあるNYタイムズの編集記事を3本紹介していた。紹介した記事はDellが選んだことにしている。


NYTNativeAds20140108Dellb.png

 さらにこのネイティブ広告記事の後頭部には、Dellサイトやその他の外部サイトにある関連記事も紹介していた。

NYTNativeAds20140108Dellc.png

 最後に上の赤線で囲んだ注意書きが添えられていた。以下の説明文のように、この広告記事はNYタイムズ広告部門とDellとの協力で制作されており、NYタイムズの編集スタッフは全く関与していないということだ。

This page was produced by the Advertising Department of The New York Times in collaboration with Dell. 
The news and editorial staffs of The New York Times had no role in its preparation.

 Dellのネイティブ広告記事のライターもフリーランサーが中心であるが、いずれも署名記事で経歴が示されていた。ほとんどが大手メディアに寄稿しているプロのライターである。ネイティブ広告記事のテーマも、広告主(ブランド)のユーザーが関心を持つであろう内容に仕上げるだけではなくて、NYタイムズの高い編集レベルの品質を達成するように努めていると主張している。おしつけがましい広告記事にはしていないということだ。

 編集と広告との境界をなるべく明確に線引きし、慎重にネイティブ広告事業を離陸させようと努めている。ネイティブ広告記事ページへのリンクを示す青枠は、トップページやビジネス分野、技術分野、DealBook(ブログ)の各ページをローテーションしながら掲載されているが、編集記事と紛れることがないように控えめに配置されている。また、ネイティブ広告記事ページのURLは、nytimes.comではなくてpaidpost.nytimes.comとして、別のブラウザウィンドウで閲覧させている。

 ネイティブ広告の契約期間は3か月間となっているが、その後はどうなるのかが気になる。Paid Post(ネイティブ広告記事)は3カ月が過ぎてもNYタイムズのサイトに残し、同サイト内の検索で探せるようにするという。ただし、外に向けては、編集記事とネイティブ広告記事は差別していきたいようだ。例えば、グーグルの検索エンジンの検索結果には、NYタイムズの編集記事と同じようにネイティブ広告記事が現れたりはさせないという。また、NYタイムズのTwitterアカウントやFacebookページで、ネイティブ広告記事を共有するような働きかけも行わない方針だ。高級新聞として編集独立を揺らがせるような行動はとりたくないのだが、マーケッターからの要求にどこまで応じていくかが課題になりそう。


◇参考
・目ざわりな広告を、有益なコンテンツへ。その期待が寄せられる「ネイティブ広告」とは何か?(MarkeZine)
・Here's The New York Times' First Ever Native Ad(Business Insider)
・Five Things to Know About The New York Times' New Native Ads(AdAge)



この記事をブックマーク: このエントリーを含むはてなブックマーク この記事を検索: Google 検索
posted by 田中善一郎 at 23:47 | Comment(0) | TrackBack(0) | 新聞 ニュース
2014年01月06日

年初から飛び出るバイラル狂騒

Tweet このエントリーをはてなブックマークに追加
 昨年の後半、米国のメディアサイトはバイラル旋風で振り回されてしまった感じがする。BuzzFeed、Upworthyなどのバイラルメディア・サイトが、短期間に驚異的な集客力を発揮していたからだ。BuzzFeedなどでは専門のデータサイエンティストを抱え、コンテンツをバイラルにするために開発したアルゴリズムを活用し、絶えず結果を分析してアルゴリズムに改良を加えているという。今年もしばらく、バイラル旋風が吹き荒れる気配だ。

 また、これまでの伝統メディアやブログメディアに属している記者/コラムニスト/ブロガーの中にも、バイラル性の高い記事を連発して大量のトラフィックを呼び込む特出したライターが登場してきている。今日のようなソーシャルメディア全盛時代には、拡散しやすいコンテンツを発信するライターの記事とそうでないライターの記事とでは、閲覧数で格段の差が生じてきているのだ。商業メディアサイトでは、どうしても大量のトラフィックを呼び込むライターが脚光を浴びる。そうしたライターは、さらなる活躍の場を拡大するために新規の独自プロジェクトを要求し始めており、組織との衝突が目立って増えてきている。

 新年に入っても、そのようなニュースが飛び込んできた。著名なゴシップブログGawkerのライターであるNeetzan Zimmerman氏が、Gawkerを去ってソーシャルネットワークのスタートアップに移ることになった。年末のブログ記事でも紹介したように、Gawkerのトラフィックの大半を彼の記事に依存してきていた。最新のライター別の週間ユニーク数の推移を見ても、彼に頼り切っていることが明らかなだけに大変だ。

NeetzanZimmermanGawker.png


 ワシントンポストの人気ブロガー/コラムニストのEzra Kleinも、ワシントンポストを飛び出るかどうかでもめている。彼は個人ベンチャーとしてWonkblogを立ち上げ、いまや月間400万ページビュー以上を獲得し、同紙サイトで最も成功したプロジェクトとして評価されている。ツイッターのフォロワー数でも、ワシントンポストの記者の中で群を抜いており、ソーシャルメディアのユーザーの間でも持てはやされているのだ。“prince of D.C. media” として人気急上昇の29歳の彼は、新しいサイトの立ち上げのために会社に約1000万ドルの投資を要求したが、新しい社主のベゾス氏(アマゾンのCEO)にはねつけられたという。現在、出資者を探して、ワシントンポスト外での活躍の場を作ろうと動いている。

WaPoEzraKlein.png

 

◇参考

・BuzzFeed’s Secret Weapon: Ky Harlin(AJR)

・Neetzan Zimmerman to leaveGawker(Capital New York)

・Ezra Klein Is Said to Plan toLeave Washington Post(NYtimes.com)

・Ezra Klein: The Wise Boy A tale of striving and success in modern-day

Washington (New Republic)


この記事をブックマーク: このエントリーを含むはてなブックマーク この記事を検索: Google 検索
posted by 田中善一郎 at 10:32 | Comment(0) | TrackBack(0) | 新聞 ニュース
2013年12月03日

特定記者のバイラル記事がニュースサイトに集中豪雨的なトラフィックを

Tweet このエントリーをはてなブックマークに追加
 バイラル性の高い記事がニュースサイトに大量のトラフィックを呼び込むことが、最近ますます顕著になってきた。BuzzFeedやUpworthyが米国のニュースサイトの上位に、アッという間にランキングされたことからも明白だ。

 また最近目立つのは、バイラル性の高い内容を発信するライターの記事へのトラフィックが際立って集中していることだ。その流れの中で、Gawker Mediaの旗艦サイトであるGawkerで、驚くべき現象が生じた。そのサイトのトラフィック、つまりページビューやユニーク数の大半を一人のライターの記事が占めてしまったのだ。ライターの名前はNeetzan Zimmerman氏である。

 Gawkerサイトにおける月間のページビュー(上)とユニーク数(下)を、ライター別に積み上げた図を以下に示す。
GawkerZimmermanPV.png

GawkerZimmermanUU.png

 20人以上のライターが束になっても、Zimmerman氏一人に及ばない。ライター別にユニーク数を比較すると、次のようになる。

GawkerZimmermanUUind.png

 Gawkerはゴシップやメディアを主にカバーしているブログである。Zimmerman氏の最近の記事を掲げておく。混沌としたブラックフライデーの現場を伝えるニュースとか、10代の少年がスクールバスを待っているということだけで逮捕されたニュースなどである。

ZimmermanGawker201312a.png
ZimmermanGawker201312b.png

 Gawker Mediaの全サイト( Gawker, Deadspin, Gizmodo, Lifehacker, Kotaku,Jazebel,io9,Jalopnik )は毎月約1億人のユニーク数を抱えているが、その17%をZimmerman氏に頼っているという。


◇参考
・Why Everyone Will Totally Read This Column(WSJ)
・CHART: There's One Guy At Gawker Obliterating Everyone Else In Traffic(Business Insider)



この記事をブックマーク: このエントリーを含むはてなブックマーク この記事を検索: Google 検索
posted by 田中善一郎 at 03:19 | Comment(0) | TrackBack(0) | 新聞 ニュース
2013年11月07日

NYタイムズの電子版有料化、成功しているが未だに"紙"に大きく依存

Tweet このエントリーをはてなブックマークに追加
 NYタイムズの電子版(デジタル版)有料化は成功している。一般に、このような評価が下されている。

 Columbia Journalism ReviewのRyan Chittum氏がまとめたグラフも、次のように有料化の成果を物語っている。最初のグラフは、NYタイムズ(NYT)の第3四半期の総売上高の推移である。内訳として、プリント版(新聞紙)とデジタル版(ネット、モバイルアプリ)のそれぞれの、販売売上高(購読料収入)と広告売上高、そしてその他売上高が示されている。

 金融危機によりプリント版広告(print ads)が急落し、2009年に大きく総売上高を減らした。だが2011年の電子版有料化のお蔭でデジタル版の販売売上高(digital subs)が増え始め、その結果として総売上高が下げ止まり、わずかだが微増の兆しを見せている。

NYTtotalrevenue.png

 もし電子版有料化を実施しなかったら、つまり課金の壁(pay wall)を設けなかったら、デジタル版販売売上(digital subs)が得られないため、次のグラフのように、総売上高は下げ止まらなかったはずだ。だから、有料化に踏み切って良かったということになる。一方で、有料化しなければサイトのビジター数を増やせ、デジタル版広告売上高をもっとアップできたのではとの反論もある。しかし3〜4年ほど前から新聞サイトはオンライン広告媒体として相対的に弱体化しており、課金の壁を設けなかったとしてもデジタル版広告で多くの売上を増やすことはできなかっただろう。

NYTtotalrevenuesansPaywall.png

 NYTは電子版有料化が成功したといっても、総売上高は下げ止まったままで、かつての黄金時代の復活はとても期待できない。またデジタルシフトがかなり進んでいるが、最初のグラフで示すように、売上の大半をプリント版に依存し続けている。プリント版の収益性は悪くなってきており改善の見込みが少ないだけに、まだまだプリント版売上に頼っていかなければならない現状は辛い。片や勢いを増している新興のニュースメディアは売上高が伝統新聞に比べてまだ少ないかもしれないが、プリント版の足かせがなくてデジタル版に特化しているので、これからの展望地図を描きやすい。そこで伝統新聞の中でデジタルシフトで先行しているNYTとしては、もっとデジタル版売上を膨らませたい。ゼロからスタートしたデジタル版販売売上は順調に伸びてきたが、有料デジタル購読者数の純増が鈍り始めており、販売売上の急増は当てにしないほうがよさそう。またデジタル版広告売上も足踏み状態から抜け出せないでいる。

 残る活路はやはり電子版による海外展開となる。英語版だけではなくて、昨年の中国語版に続いて、スペイン語やトルコ語版など多国語版での対応を検討している。

◇参考
・The NYT paywall plugs the hole(Columbia Journalism Review)
この記事をブックマーク: このエントリーを含むはてなブックマーク この記事を検索: Google 検索
posted by 田中善一郎 at 12:57 | Comment(0) | TrackBack(0) | 新聞 ニュース
2013年11月01日

USA Todayが全米トップ新聞に復活? デジタル化の混乱に乗じた算法で発行部数が67%増に

Tweet このエントリーをはてなブックマークに追加
 斜陽化する米新聞業界の混乱ぶりを象徴するような出来事が発生した。USA Todayの発行部数が、NYタイムズ(NYT)や Wall Street Journal(WSJ)を追い抜いて、全米新聞のトップの座に返り咲いたというのだ。

 昨日のUSA Todayのサイトでも、手前味噌のニュースを以下のように報道していた。

USATodayNo1.png

 USA Today平日版の9月の発行部数が287万6586部と、1年前の171万3833部に比べて67%増と驚異的な成長を成し遂げたのだ。プリント版の新聞(新聞紙)の発行部数が1年間で19%も減っているにも関わらずである。驚異的な成長が実現したのは、154万5364部ものデジタル版(プリント版と同じレプリカ編集版+同じでないノンレプリカ編集版)の大きな底上があったからである。このデジタル版は1年前に8万6307部しかなかったので、前年比1690%増と爆発的な伸びを示している。

 実は、このデジタル版の部数算法が曲者である。154万5364部のデジタル版の中には、無料の148万部のノンレプリカ版が加算されているのだ。スマホやタブレット向けのアプリが含まれているのであるが、無料のデジタル版であっても、30日間で1度でもユーザーによってアクセスされていたなら、そのユニークユーザーをデジタル版の部数としてカウントしているのである。これは、昨年12月にABC協会(発行部数の考査機関)を改名したthe Alliance for Audited Media(AAM)が新たに認めた算法である。

 これまで米新聞協会は四半期ごとに新聞発行部数や広告売上高を公表していたが、この数年、急降下する一方であった。つまり発表するごとに、新聞が広告媒体として弱体化していることを認める結果になっていた。

MediaAdUS2013Q1.png

 そこでAAMではデジタルシフトにより新聞環境が大きく変わっているということで、四半期ごとの従来型発表や主要新聞の発行部数ランキングの提示も止めることにした。その代わりとして、考査対象としてモバイルアプリなども含めて、発行部数を計数することにした。その時に、無料のデジタル版も無料であっても、30日間に一度でもアクセスしておれば部数として加えることにしたのだ。こうすれば、プリント版部数が減っても、無料のデジタル版のお蔭で新聞の発行部数は増えていきそうだ。さらに、プリント版の購読者が、やはり30日間に一度でもデジタル版をアクセスしておれば、その読者は2部も購読したことにできる。これまで新聞広告料が発行部数によって左右されてきただけに、新聞業界としては何とかして発行部数を増やした形にしたかったのだろう。

 ついでに、USA Today に抜かれた、NYTとWSJの9月時点の発行部数も示しておく。NYT平日版の発行部数は前年比18%増の189万7890部と増え続けている。プリント版は前年比6%減であったが、有料のデジタル版購読者数は前年比28%増の72万7000人と順調に推移している。四半期ごとの推移は次のようになる。Boston Globeは売却したので、加算しなくなった。

 *NYTの有料デジタル購読者数の推移
・2011年第2四半期:28万1000人
・2011年第3四半期:32万4000人
・2011年第4四半期:39万人
・2012年第1四半期:47万2000人
・2012年第2四半期:53万2000人
・2012年第3四半期:56万6000人( NYTimes + IHT)+2万6000人(Boston Globe)
・2012年第4四半期:64万0000人( NYTimes + IHT)+2万8000人(Boston Globe)
・2012年第1四半期:67万6000人( NYTimes + IHT)+3万2000人(Boston Globe)
・2013年第2四半期:69万9000人( NYTimes + IHT)+3万9000人(Boston Globe)
・2013年第3四半期:72万7000人

 WSJ平日版の発行部数は、1年前の229万3798部から227万3767と、ほぼフラットに推移した。


◇参考
・USA Today’s circulation up 67 percent? Newspaper industry makes comparisons increasingly difficult(Poynter.)
・USA TODAY regains national circulation lead(USA TODAY)
・Newspaper sales dive enters 8th straight year(Reflections of a Newssosaur)
この記事をブックマーク: このエントリーを含むはてなブックマーク この記事を検索: Google 検索
posted by 田中善一郎 at 19:08 | Comment(1) | TrackBack(0) | 新聞 ニュース
2013年10月24日

新聞サイトに集客させるには、新聞ブランドよりも記者ブランドで

Tweet このエントリーをはてなブックマークに追加
  ソーシャルメディアやニュースアグリゲーター(まとめサイトも含む)が浸透するに伴い、ネット上で評判の高い記者が執筆する記事にアクセスが集中する傾向が目立ってきた。オンラインサイトを強化していこうとする新聞にとって、サイトへの集客を増やしていくためには、記者の個人ブランドにますます依存することになりそうだ。

 米国の新聞では署名記事が一般化しているため、優れた記事を執筆する記者はそれなりに名が知られるようになっている。ネット時代に入ってサイトの署名記事がグローバルにリーチするようになり、評判記者の個人ブランドが一段と拡大するようになってきた。また新聞サイトのブログでは記者独自の主張を盛り込んだ記事が人気を呼び、特定の記者ブログへのトラフィックが際立って増えてきた。さらに記者個人がツイッターやフェイスブックのようなソーシャルメディアを活用して読者と交流するようになり、ファンである読者(フォロワー)を抱えるようになってきた。記者自身で個人のブランド力を高める機会がグンと増しているのだ。

 そこで例として、ツイッターを活用している人気記者が、どれくらいのフォロワーを獲得しているかを調べてみた。オンラインサイトが充実しているNYT(ニューヨーク・タイムズ)、WSJ(ウォール・ストリート・ジャーナル)それにガーディアンの有力新聞の記者を追ってみた。幸い Muck Rackでは、新聞や雑誌、ブログネットワークなどのメディア組織別に、フォロワー数の多いジャーナリストやブロガーがランキング表示されている。フルタイムの記者だけではなくて、契約しているブロガーやコラムニストも含まれている。ただし、MuckRackに登録している記者/ブロガー/コラムニストだけが対象となる。

 4日ほど前に調べた結果であるが、取り上げる3新聞において、1万人以上のフォロワーを擁する記者(ブロガー、コラムニストも含む)数は次のようになった。登録していない記者もいるので、実際にはもっと多い可能性がある。

・NYT:110人
・WSJ:50人
・ガーディアン:100人

 また3新聞において、フォロワー数の多い記者のトップ6は次のようになっていた(いずれも、MuckRackより)。

TwitterNYTFllower.png
 
TwitterWSJFollower.png

TwitterGurdian201308.png

 ツイッターを活用していない記者も多いし、また記者のカバー分野によってフォロワー獲得の難易が異なるので、フォロワー数で記者の人気度を速断するのは正しくないかもしれない。ただ現在のソーシャルメディア時代においては、フォロワーが多い記者の記事が新聞サイトに数多くの読者を誘導しているのも事実である。

 一つ前のブログ記事で、有力新聞から飛び出た看板ジャーナリストが、個人ブランド力を武器に新しいニュースメディアを立ち上げるようとしていることを紹介した。上のトップ6の中で、WSJ1位のMossberg氏とガーディアン2位のGreenwald氏が、近く新聞から去ることになっている。また驚いたことに、4日前にキャプチチャーしたランキングでNYT1位にいたDavid Pogue氏が、先ほど見にいくと彼の姿が急きょ消えていた。2日ほど前にPogue氏がNYTを近く辞めて米Yahooに移ることが発表されたためのようだ。

 Pogue氏は、ファンに相当するツイッターフォロワーを約150万人も抱える人気ブロガーである。以下の、ガジェットを中心とした技術分野をカバーするブログPogue's Posts を執筆している。
 

PogueNYT201310.png

 同氏は、テクノロジー技術系コラムニストとしてNYTに13年間も席を置いていたが、2日ほど前に突然、ヤフーCEOのMarissa Mayer氏とPogue氏自身のそれぞれのブログで、NYTからヤフーへ転籍することを明らかにした。米ヤフーはコンシューマーテクノロジー分野の情報発信に力を入れようとしており、彼がその牽引車となる。

 もともと米国では記者などの転職は日常茶飯事だが、ソーシャルメディア全盛時代になってくると、ネット界隈で個人ブランド力の大きい記者は確実にサイトへの集客を当てにできるだけに、これまで以上に記者の転籍が増えそう。


◇参考
・Pogue, Times Technology Columnist, Is Leaving for Yahoo(NYtomes.com)
・Yahoo poaches New York Times tech writer David Pogue(CNET)
・Facebook Average Referral Traffic to Media Sites Up 170% This Year(Mashable)
この記事をブックマーク: このエントリーを含むはてなブックマーク この記事を検索: Google 検索
posted by 田中善一郎 at 09:30 | Comment(0) | TrackBack(0) | 新聞 ニュース
2013年10月22日

有力新聞から飛び出た看板ジャーナリスト、相次ぎニュースメディアを立ち上げへ

Tweet このエントリーをはてなブックマークに追加
  NYT(ニューヨーク・タイムズ)、WSJ(ウォール・ストリート・ジャーナル)それにガーディアンの看板ジャーナリストが相次いで退社したり契約を解き、新聞ブランドに頼らないで個人ブランド力を武器に、新しいニュースメディアを立ち上げることになった。

 NYTのネイト・シルバー(Nate Silver)氏は8月に辞めてESPNに移った。彼の活躍の場であったブログFiveThirtyEightはNYTのアーカイブに残し、同じブランド名のFiveThirtyEightを再び立ち上げ中である。WSJのウォルト・モスバーグ(Walt Mossberg)氏とカラ・スウィシャー(Kara Swisher)氏はWSJとの契約を年内に終え、また2人が中核になってニュースメディアを立ち上げる。ガーディアンのグレン・グリーンワールド(Glenn Greenwald)氏は先週末に退社することを発表したばかりで、億万長者の支援を受けてニュースメディアを立ち上げる予定だ。

 彼ら4人のジャーナリストの記事は、彼らの属する新聞のオンラインサイトにおいて、圧倒的な集客を誇っていた。有力新聞の記事だからというよりも、彼らの個人名やブログブランドに魅かれて、ファン的な存在の読者が飛びついていたのである。ネット時代の特徴で、新聞サイトのトップページにアクセスしないで、ソーシャルメディアやニュースアグリゲーターを介して彼らの記事にダイレクトに飛び込んでくる読者が多いのだろう。この4人の人気ジャーナリストは、以下の表のように、個人名やブログ名を付けたツイッターで、独自にファンとなるフォロワーを数多く取り込んでいる。そして、記事を投稿するたびにツイートで知らせている。参考までに、彼らが属していた新聞の代表アカウントのフォロワー数も掲げておく。 

JournalistTwitter20131019.png
2013年10月19日現在

 彼らの古巣の新聞での活躍ぶりと、これからの新天地で何を仕掛けていこうとしているかを紹介する。

NYタイムズを飛び出たNate Silver

 ネイト・シルバー氏を有名にしたのは、大統領選の選挙予測であった。彼が編み出した統計解析手法により、2008年の大統領選では50州中49州で勝敗を的中させ、さらに2012年には全州で的中させた。その選挙予測の発表の場であった政治ブログFiveThirtyEightは2008年3月に立ち上げていたが、2010年8月にNYTにライセンス権を譲渡し、事実上NYTサイト内のブログとなっていた。

 2012年の大統領選の終盤にかけて同ブログの人気が沸騰した。以下は、同年11月3日の彼のブログ記事である

NateSilverFiveThityEight20121103.png
 
 2012年の後半にかけて、彼のブログ記事へのトラフィックは日を追って急上昇していった。NYTサイト全体と政治分野、それに、FiveThirtyEight(538)へのビジット数推移を以下に示す。NYTサイト全体と政治分野の各ビジット数には彼のブログへのビジット数も含んでいる。11月5日には、NYTサイトの総トラフィックの20%を個人ブログのFiveThirtyEightだけで占めるまでに至った。まさに昨年後半の選挙シーズンの超目玉記事になっていたのだ。

NYTNateSilverTraffic.png
(ソース:AllThingsD)

 政治ニュースのアグリゲーターであるMemeorandomでも、ニュースソースとしてFiveThirtyEightブランドはNYTブランドと区別して扱われていた。ニュースの掲載ページでもFiveThirtyEighの記事はNYTと記されていなかった。多くの読者はブログブランドで判断して、彼の記事にアクセスしていたのだろう。

  そのシルバー氏は、得意の統計手法を駆使した予測記事などを、政治分野だけではなくて幅広い分野でも展開したいという野望を膨らましていた。NYTとの間で交わされた3年間契約が終わる今年8月末に、同氏はNYTを去りESPNに移ることになったわけだ。NYTでのFiveThirtyEightは閉じて、同じブランド名のFiveThirtyEightを新装し、来年1月から本格運用を始める。新しいFiveThirtyEightがカバーする分野は、量的に1/3が政治、1/3がスポーツ、残りがその他にしていきたいという。このブログをハブにして、彼はESPN2のトークショー番組に登場したり、選挙シーズンなどの時にはABC News(ESPNとABC Newsのオーナーは同じWalt Disney Company)にも加わる予定である。


WSJを飛び出るWalt MossbergとKara Swisher

 WSJ傘下のAllThingsDは、テクノロジーやインターネット、メディアに関するニュースや分析、オピニオンを提供する人気ブログである。モスバーグ氏とスウィシャー氏が中核となって他に10人ほどのブロガーが加わっている。シリコンバレーを中心としたネット企業の関係者(経営トップも含めて)にとって最も影響力のあるブログとなっている。AllThingsDが定期的に開催する会議には、かつて、ジョブズやゲーツが参加したように、IT企業のトップがこぞって登壇する人気事業となっている。

MossbergAllTingsD20121005.png

 テクノロジー分野ニュースのアグリゲーターであるTechmemeにおいて、掲載される記事のソース元のシェアランキングを発表しているが、最新のデータではAllThingsDが3位となっている。WSJサイト本体の技術関連記事の掲載回数よりも多い。AllThingsDブランドと、業界内では誰もが知っている2人の個人ブランドが、ここでも幅を利かせている。

TechmemeAllThingsD201310.png

 AllThingsDを支えていた大黒柱のモスバーグ氏とスウィシャー氏はNews Corp(WSJ)との契約を年内に終え、縁を切ることになった。ただし、AllThingsDのブランドをWSJは手放さずに、2人が去った後もサイトを継続させることになっている。WSJを去ることになった2人は、再び手を組んで、新しいブランド名のニュースサイトを来年1月1日にも立ち上げる予定だ。今、投資してくれるスポンサーと交渉しているようだが、新しいサイトは3000万から4000万ドルの価値があると見られている。2人の個人ブランドで成功させてきた会議などから、AllThingsDは毎年、約1200万ドルの売り上げをあげてきた。同じような会議を新会社でも実施するという。またAllThingsDの他の仲間の人気ブロガーも何人かが合流するようだ。



Guardianを飛び出るGlenn Greenwald

 ガーディアンのコラムニストのグリーンワールド氏は、CIA(中央情報局)元職員、エドワード・スノーデン容疑者からの資料などをもとに、政府の監視問題を追求する急先鋒のジャーナリストである。彼の活躍ぶりは、ガーディアンでの過去記事一覧や彼のブログ(Glenn Greenwald's Blog)を見ればよい。

 例えば、彼のパートナーが英当局により対テロ法に基づきロンドン・ヒースロー空港で身柄を拘束され経緯を伝えるニュース記事を、フェイスブックで約3万6000人がシェアし、ツイッターで約1万5000人がツイートした。そしてその記事に約5500人がコメントを寄せた。かなり多くの世界中の読者が彼の記事を追いかけているのだろう。

Greenwald20130819.png

 グリーンワールド氏がスノーデン文書に基づいて、政府の監視実態を暴露したり追求する記事を連載し続けることもあって、英政府当局によるガーディアンへの圧力が日増しに高まっている。ガーディアンのような大きなニュース組織となると、政府からの圧力を完全に無視できないところがある。同氏も、政府の監視問題関連などの報道をガーディアンの組織内でやっていける限界を感じ取ってか、彼がスノーデンから得た機密情報全てをガーディアンのニュースルームと共有していなかった。そして、ガーディアンを飛び出ることを企んでいる時に出くわしたのが、eBay創立者ピエール・オミダイア(Pierre Omidyar)氏であった。

 オミダイア氏は、かねてから慈善家としてメディア関連の試みに支援することも多かったが、多くの人が受け入れる影響力のあるニュースメディアを本格的に立ち上げたいと動いていた。ワシントンポストの売却交渉にも今年の5月から乗り出していたが、結局、アマゾンのベゾス氏が2億5000万ドルでポストを買い取ることになった。退いたオミダイア氏も同額の資金を用意していたので、その2億5000万ドルを投資して新しいニュースメディア・プロジェクトを模索していた。そのプロジェクトでは、"パーソナル・フランチャイズ・モデル"を試みるようだ。個々のジャーナリストが専門のトピックスに絞ったメディアを独立に立ち上げられるように支援していく。そのオミダイア氏の動きに呼応して、グリーンワールド氏はガーディアンを去り、仲間の実績の豊富なジャーナリスト2人と伴って新しいニュースメディアを旗揚げすると、先週、発表したばかりである。


 ここで紹介した4人のジャーナリストは、必ずしも伝統メディアで訓練を受けジャーナリストの本流を歩んできた者でない。彼らはジャーナリストではなくてブロガーだと、伝統メディアの一部の人から見下されることも少なくない。でもデータサイエンティストやニッチなテクノロジーライターやアクティビスであっても、ネット時代のメディアではトップを走ることができる。米国で躍進著しい新興ニュースメディアでも、牽引している人は伝統的なジャーナリストよりもしがらみの少ないブロガーが中心である。

訂正:最後のパラグラフで、4人のジャーナリスは「必ずしも伝統メディアで訓練を受けジャーナリストの本流を歩んできた者でない」と述べましたが、モスバーガー氏は90年代後半からはテクノロジ分野の記者として、そして今ではAllThingsDのブロガーとして有名ですが、それ以前はWSJの「国家安全保障担当」を担当していました。島田範正さんからご指摘を受けましたように、伝統メディアのバリバリの本流記者でした。

◇参考
・Here’s What the New York Times’ Nate Silver Traffic Boom Looks Like(AllThingsD)
・AllThingsD founders are in talks to value their new venture at up to $40 million(Quarts)
・This Week in Review: Greenwald and Omidyar team up, and the blowback against publishing leaks
(NiemanJournalismLab)
・An Interview With Pierre Omidyar(NYTimes)
この記事をブックマーク: このエントリーを含むはてなブックマーク この記事を検索: Google 検索
posted by 田中善一郎 at 17:27 | Comment(0) | TrackBack(0) | 新聞 ニュース
2013年10月16日

CIAリークのトップジャーナリスト、ガーディアン紙を去りニュースメディア立ち上げへ

Tweet このエントリーをはてなブックマークに追加
 英ガーディアンのコラムニストであるグレン・グリーンワールド氏が、ガーディアンを去ることになった。同氏は、CIA(中央情報局)元職員、エドワード・スノーデン容疑者からの資料などをもとに、政府の監視問題を暴露するジャーナリストとして有名である。

 花形コラムストがガーディアンを辞めることが、スクープの形でBuzzFeedなどに漏れたため、あわてて今朝、彼がツイッターで"My statement and the Guardian's"とつぶやくとともに、ガーディアンサイト内に彼と同社からの短い声明文が掲載された。彼の声明では、新しいニュースメディアのベンチャーを立ち上げることを明言しているが、詳細をまだ明らかにしていない。

GreenwaldTwitter20131016.png

 スノーデン容疑者からの機密資料をもとに監視プログラムを暴露する形のグリーンワールド氏の報道活動に対し、批判の声も少なくない。当然のことだが、米国や英国の当局からも強い圧力がかかる。8月には彼のパートナーが、英当局により対テロ法に基づきロンドン・ヒースロー空港で身柄を拘束され、暴露記事について尋問されたという。

 それでもガーディアン紙はグリーンワールド氏の暴露記事を掲載続けてきた。同紙は、ウィキリークスやニューズ社電話盗聴に続いてスノーデン告発と、際立った調査報道を連発し、グローバルに高く評価されてきた。でもBuzzFeedの記事によると、グリーンワールド氏はガーディアンの典型的な記者として機能しなくなっているという。彼が得たスノーデン文書は完全に新聞社と共有していないのだ。彼しか知らない機密情報があるということである。ガーディアン紙は最近になって、英国政府の強い圧力のせいか、グリーンワールド氏の記事を慎重に掲載するようになっているようだ。一方で、彼はインドやブラジルで独自の記事を投稿したり、近く仏紙ル・モンドにも掲載する予定である。

  彼がガーディアンを辞める決断を下したのは、ジャーナリストとして千載一遇のチャンスを逃がしたくないとの思いを抑えきれなくなったからのようだ。人権問題や報道の自由などを強く主張する弁護士であり、運動家でもある彼にとって、伝統新聞のジャーナリストとして行える調査報道の限界を感じ取ったのか。挑戦の舞台として新しいニュースメディアを立ち上げることになっている。Politicoによると大物慈善家(philanthropist)の後ろ盾がいるようだ。Rutersの記事では、eBay創立者Pierre Omidyar氏が資金を提供するという。


◇参考
・Exclusive: Glenn Greenwald Will Leave Guardian To Create New News Organization(BuzzFeed)
・Exclusive: Greenwald exits Guardian for new Omidyar media venture(Reuters)
・みんながメディア、ではジャーナリストはだれ?(新聞紙学的)
この記事をブックマーク: このエントリーを含むはてなブックマーク この記事を検索: Google 検索
posted by 田中善一郎 at 18:54 | Comment(0) | TrackBack(0) | 新聞 ニュース
2013年10月15日

ソーシャルで話題になるニュースソース、伝統メディアが新興メディアを圧倒

Tweet このエントリーをはてなブックマークに追加
  ソーシャルメディアで言及される回数は、新聞や雑誌のオールドメディア(伝統メディア)がニューメディア(新興メディア)よりも圧倒的に多い。グローバルにソーシャルメディアをモニタリングしているDigimindが、このように伝統メディア関係者を喜ばせる発表を行った。

 Digimindの調査によると、ソーシャルネットワークで伝統メディアが言及される回数が、新興メディアよりも44%も多かった。特にツイッターでは、伝統メディアを言及する回数が新興メディアよりも3倍も多かったという。

 同社は例として、伝統メディアからThe New York Times, USA Today, The Wall Street Journalを選び、新興メディアから The Huffington Post, Buzz Feed、Mashableを選んで、ソーシャルでの言及回数を測定し、6タイトルのシェアをはじき出した。その結果が次のインフォグラフィックである。

DigimindOldMedia.png

 伝統メディアの3タイトルのシェア合計が72%も占め、新興メディアの28%を圧倒したことになっている。

 地球上のネットユーザーは平均して、毎日フェースブックで45億回"likes"し、ツイッターで4億回ツイートし、グーグルサーチで50億回検索をしている。Digimindはそれらのデータをグローバルに測定しているという。

◇参考
・Battle of Social vs. Traditional News: Digimind Social Declares a Winner(Digimind insights)
・[Infographic] The New York Times Gets More Mentions Online Than Mashable(SocialTimes)
この記事をブックマーク: このエントリーを含むはてなブックマーク この記事を検索: Google 検索
posted by 田中善一郎 at 16:24 | Comment(0) | TrackBack(0) | 新聞 ニュース
2013年08月04日

NYタイムズ、新有料メニューやボストン・グローブ売却で生き残りを

Tweet このエントリーをはてなブックマークに追加
 NYタイムズが低空ながら飛行を続けていけそうだ。NYT社の第2四半期(4~6月)決算で純損益が2013万ドルの黒字に転換した。

 電子版の有料サービスが軌道に乗り、購読料収入が前年同期比で5.1%ほど増えたのが貢献した。ただし、広告収入は相変わらず不振で、同5.8%減とマイナス成長が長引いている。このため全体の売上高は同0.9%減の4億8536万円に終わった。

 今回の決算発表を受けて、NYタイムズは大丈夫だとの声が多い。有料のデジタル購読者数が以下の表のように増え続けており、それに応じて購読料収入も増えているからであろう。

NYTSubscriber2013Q2.png

 2013年第2四半期(2013年6月)のデジタル購読者数は69万9000人で、ボストン・グローブを含むと73万8000人となる。前年同期に比べて40%も購読者数を増やしている。確かに、NYタイムズの電子版の有料サービスは順調に滑り出していることは間違いない。でも不安は残る。デジタル購読収入がNYタイムズを支える大きな成長エンジンになりうるかとなると、まだまだ不透明である。

 まず最初の心配の種は、購読者数の増加数が以下のように急に鈍化し始めていることだ。
7万4000人(前四半期〜2012年第4四半期)
3万6000人(前四半期〜2013年第1四半期)
2万3000人(前四半期〜2013年第2四半期)
 購読者数が増えていくに伴い成長率が鈍ってくるのは仕方がないが、このまま鈍化し続けるとかなり業績に悪影響を及ぼす。広告収入の減少分を購読料収入の増加分で補わなければならない事情があるからだ。決算発表後に株価が下降したのも、広告収入が11四半期連続で減り続けたからである。

 ここで、広告収入と購読料収入の2007年以降の推移を示す。プリント(新聞紙)とデジタル(オンラインなど)の両方の収入を含んでいる。広告収入の急落ぶりがはっきりとわかる。プリント広告がすごい勢いで減り続けているのだが(今もそう)、最近では増えるはずのデジタル広告までもマイナス成長となることがある。一方の購読料収入は、新聞紙購読料値上げや電子版有料サービス開始により、減らないでむしろ微増した。その結果、広告収入依存から購読料収入依存へとシフトしていったが、全体の売上高は大幅に減ったままである。広告収入が減り続けている状況において低空飛行を続けざるえない。墜落しないために、電子版有料サービスの購読料収入をかなり増やさなければならない。
 
NYTRevenue2013FH.png

 また、今回の決算発表で、デジタル購読料(digital-only subscriptions)売上高が明らかになった。第2四半期では3800万ドルであった。この額は、全体の購読料収入のうちのまだ15%を占めるに過ぎない。全体の売上高のうちのわずか7.8%である。これでは成長エンジンとはまだまだ言えない。とりあえずデジタル購読者数の増加率をなるべく鈍化させたくない。そのために、新しい有料サービスを開発しており、近く提供していくという。NYタイムズの場合、有料デジタル購読者数を90万人から100万人台に乗せていく必要があると見られているだけに、これからが正念場になりそう。

 先ほど(8月3日に)同社にとっての朗報が明らかになった。今年の2月からボストン・グローブの売却先を探していたが、レッド・ソックスのオーナーJohn W. Henry氏に売却することになった。売却メディアには他のニューイングランド・メディア・グループも含まれる。

 今回の決算でも、NYタイムズやIHTを含む「The New York Times Media Group」とボストン・グローブを中心とした「New England Media Group」とが分けて、報告されていた。「New England Media Group」は規模が小さいけれど、決算内容がいつも悪い。今後は、「The New York Times Media Group」がほぼ「Total Company」となるので、業績の改善に少しは寄与しそうだ。


NYTMediaGroup2013Q2.png


◇参考
・The New York Times Company Reports 2013 Second-Quarter Results(プレスリリース)
・The NYT’s $150 million-a-year paywall(Columbia Journal Review)
・The newsonomics of zero and The New York Times(Nieman Journalism Lab)
・Red Sox owner John Henry launches solo bid to buy Globe(Boston Blobe)
・Report: NY Times Agrees To Sell Boston Globe To Red Sox Owner John Henry(CBS Boston)
この記事をブックマーク: このエントリーを含むはてなブックマーク この記事を検索: Google 検索
posted by 田中善一郎 at 00:56 | Comment(0) | TrackBack(0) | 新聞 ニュース
2013年07月22日

大量のトラフィックを呼び込む人気政治ブロガー、NYタイムズを去ってESPNへ

Tweet このエントリーをはてなブックマークに追加
  7月19日のNYタイムズ・サイトの記事には驚いた。NYタイムズの政治ブログ「FiveThirtyEight」のブロガーであるネイト・シルバー(Nate Silver)氏が、NYタイムズを去り8月にもESPNに移ることを報じたのだ。

 本人、NYタイムズ、ESPNのいずれからも公式発表がない段階で、NYタイムズのスクープの形で飛び出たのである(正式発表は7月22日にも)。ずば抜けた集客力を発揮する政治ブロガーのシルバー氏がNYタイムズから飛び出るということは、同紙にとって大きな痛手となる。そんなニュースを、自社のサイトで発表前に伝えるとは・・・。

 この数年、ネイト・シルバー氏を有名にしたのは、大統領選の選挙予測であった。彼が編み出した統計解析手法により、2008年の大統領選では50州中49州で勝敗を的中させ、さらに2012年には全州で的中させた。その選挙予測の発表の場であった政治ブログFiveThirtyEightは2008年3月に立ち上げていたが、2010年8月にNYタイムズにライセンス権を譲渡し、事実上NYタイムズ・サイトのブログとなっていた。2012年の大統領選では同ブログの人気が沸騰し、NYタイムズ・サイトの全トラフィックの約20%もが同ブログへのアクセスであった。一人のブロガーがトラフィックの20%も貢献していたとは凄いことである。

 彼の評判は高まる一方であった。ところが今年8月末にシルバー氏とNYタイムズとの間で交わされた3年間契約が切れることになっていた。そこでNYタイムズの編集長やCEOも、年初から彼との新契約を結ぶことで努力してきたようだ。またNBC NewsやMSNBCなども、同氏獲得に動いていた。

 ところが、先週金曜日に急に、スクープとしてESPNに移ることが明らかになってしまった。つまり新たな契約を結ぶことなく、シルバー氏と彼のブログはNYタイムズから消えることになった。参考までに、彼の現在のツイッターページとFiveThirtyEightのスナップショットを以下に掲げておく。

NateSilverTwitter.png



NateSilverFiveThirtyEifht.png

 ESPNでの最初の仕事として、彼は夜遅くのESPN2のトークショー “Olbermann,” に8月末からレギュラー出演することになっている。また選挙の年には、ABC Newsに登場する予定だ(ESPNとABC Newsのオーナーは同じWalt Disney Company)。

 彼の選挙予測に関して、オバマ大統領までが“The guy’s amazing.”と驚嘆したというように、ともかく評価が高まる一方であった。そこでNYタイムズもそれなりの待遇をして引き留めに必死だったようだ。でも一方で彼は、政治分野だけではなくてスポーツ分野などにもっと注力したい、と漏らしていたという。ESPNを選んだのもそのためと見られている。

 シルバー氏は、映画「マネーボール」のモデルになったように、低予算(年棒の低い選手)でもチームを強くできる統計解析手法を考えだし、実際にその手法を活用して貧乏球団のアスレチックスを強いチームに変身させていった。GM(ゼネラルマネージャー)がスカウト陣よりも統計屋の彼の意見を採用して、年俸が安くてもチームの勝利に貢献する選手を集めていった。今はやりのデータサイエンティストの成功者として、一部で持てはやされており、もともとスポーツ分野から出発していたのだ。今年のスーパーボウルでの各種予測記事も投稿していた。

 シルバー氏は2002年に、大リーグ野球選手の統計的評価システムPECOTAを開発していた。そのPECOTAは、映画「マネーボール」でも知られるようになったセイバーメトリクスをオンライン化したものである。今はやりのデータサイエンティストの成功者として、一部で持てはやされており、もともとスポーツ分野から出発していたのだ。今年のスーパーボウルでの各種予測記事も投稿していた。

 さらにNYタイムズとの間で、金銭面でもやはり問題があったようだ。NYタイムズはシニアスタッフの削減を実施しているだけに、彼をあまり優遇できないこともあったのでは。ESPNの親会社のDisneyはシルバー氏に破格の給与を提示したようである。

 米国のジャーナリストは一般に、特定のメディア会社にしがみ付くのではなくて、ニュース系の新聞や雑誌、そして最近ではネット専門ニュースサイトを幾つか渡り歩き、キャリアを積み重ねていく。今回の件のように、人気の高いジャーナリスト(記者、ブロガー)を巡って、これまで以上にニュースメディア間での争奪戦が激しくなりそうだ。
  

◇参考
・Nate Silver of FiveThirtyEight Blog Is to Join ESPN Staff(NYTimes.com)
この記事をブックマーク: このエントリーを含むはてなブックマーク この記事を検索: Google 検索
posted by 田中善一郎 at 09:34 | Comment(0) | TrackBack(0) | 新聞 ニュース
2013年07月18日

世界で最も人気の高い新聞サイト「Mail Online」、勢いが止まらない

Tweet このエントリーをはてなブックマークに追加
MailOnline20130717a.png

 英国の大衆新聞サイト Mail Onlineの勢いが止まらない。一昨年前に月間ビジター数でNYタイムズのサイトを追い抜き、世界で最も人気の高い新聞サイトとなっているが、ビジター数がさらに増え続けている。先進国の主要新聞サイトの多くが有料化で生き残りを賭けようとしているが、Mail Onlineは無料サイトとして突っ走しり、多くのユーザーを獲得して広告売上を増やしていく。

 今年5月の一日当たりのユニークブラウザー数は820万で前年同月比で46.8%も増えた。月間のユニークブラウザー数は1億2900万に達した。前月比で7.99%も増えている。(Guardianの記事では、わかりやすく月間ユーザー数と言っている)。英ABC(the Audit Bureau of Circulation)の発表データで、英国の他新聞サイトと比較すると次のようになる。海外からのトラフィックも加えている。

*National newspaper website traffic for May 2013 (source ABC)
Mail Online: 8,234,043, up 46.8 per cent
Guardian.co.uk: 4,665,414, up 37 per cent
Telegraph: 2,853,819, up 12.7 per cent
The Sun: 1,777,360, up 16.4 per cent
The Independent: 1,203,826, up 68.9 per cent

*Total for monthly browsers
Mail Online: 128, 599, 300
Guardian.co.uk 82,927,697
Telegraph.co.uk: 57,086,520
The Sun: 29,919,982
The Independent: 26,651,531

 Mail Onlineは米国市場に本格的に参入し、米国内ニュースに力を入れ始めている。このため英国外の海外からのトラフィックが急増しており、月間ブラウザー数でも66.6%が海外からとなっている。つまり約8570万が英国外からのトラフィックとなっている。

 この勢いを加速化させるために、編集スタッフを増やし海外オフィスも拡充していく。最近の増員で、編集スタッフは100人を超えた。Mail Onlineは新聞紙The Daily Mailの公式サイトとなっているが、Mail Onlineの編集は独立している。つまりオンライン編集に専任となっている。ロンドン、ニューヨーク、ロサンジェルスの各オフィスの編集を拡充するという。インドにもオフィスを構えているようだ。

 ビジター数が急増している割には、広告売上高はまだ少ない。年度上半期(2013年3月末までの半年間)の広告売上高は2000万ポンドで、前年同期比で61%増と伸び始めてはいる。でも年間で4500万ポンド(67億円)程度である。特に米国のオンライン広告市場からの売上が少ないので、いかに増やしていくかが鍵となる。

◇参考
・Mail Online to ramp up growth by hiring new staff(Guardian)
・Mail Online goes on editorial hiring spree to capitalise on 'massive opportunities for growth' in UK and abroad(PressGazette)
・Mail Online soars to biggest ever traffic total with 129m unique browsers worldwide(PressGazette)
この記事をブックマーク: このエントリーを含むはてなブックマーク この記事を検索: Google 検索
posted by 田中善一郎 at 01:32 | Comment(0) | TrackBack(0) | 新聞 ニュース
2013年07月01日

iOS対応ニュースリーダー「Futureful」、トピックスベースで欲しい情報を発見してくれる

Tweet このエントリーをはてなブックマークに追加
 フィンランド生まれのiOSアプリ「Futureful」が面白い。湧き出てくるトピックスを適当に選んでいくことにより、欲しい情報(多くはニュース記事)を見つけ出してくれるサービスだ。

 Futurefulは今年1月に、iPad対応アプリとして米国でのみ公開されていた。そして6月27日から、バージョン2(iTuneではこちら)がリリースされ、iPhoneやiPod touchにも対応するようになった。グローバル版なので日本でも利用できる。面倒なサインや登録も不要で、無料でダウンロードでき、すぐに使える。

 同社のホームページを見てみよう。バブル(泡)が次々と現れてフワフワと漂い、そして消えていく。iPhoneやiPadのアプリの画面でも、ランダムにバブルが次々と吹き出ては消えていく。各バブルはトピックスのキーワードを示している。気に入ったトピックスが登場すれば、そのバブルをクリックすると、それに関するニュース記事がすぐに閲読できるのだ。さらにクリックしたバブル(トピックス)の周辺には、それと関連するサブトピックスがバブルの形で幾つか現れる。注目トピックスに関心のあるサブトピックスを合体させると、両トピックスに関連して記事が紹介される。

 実際のiPhoneの画面で見ていこう。トピックスのキーワードを示すバブルが、ランダムに現れている。左の画面から20秒〜30秒後には、右のような画面に変わっていた。旬のキーワードであるsurveillanceとかgoogle glassとかも吹き出ていた。

Futureful1.png


 見ているうちに、japanのキーワードが出てきたので(左側)、そのバブルをクリックすると、バブルの背景が白くなるとともに、japanの関連記事としてNatureの記事が閲覧できた。

Futureful3a.png

 japanのバブルの周辺には、いくつかのサブトピックスのバブルが現れていたので、その中からnuclearを選び、ドラッグしてjapanと合体させてみた。するとVICEの記事が紹介され、「原発20キロ圏内に生きる男」のビデオが視聴できた。

Futureful5.png

 そのあとすぐに、サブトピックスとしてfukusimaが飛び出てきたので、それもドラッグしてjapanと合体させてみた。下の右側画面のように、Christian Science Monitorの記事が閲覧できた。

Futureful6.png

  趣味の世界ではもっと楽しめそう。時間がなかったので、たまたま現れたmusicのバブルをクリックした例を掲げる。いろんなサブトピックスを提示してくれそうで、自分の好きなジャンルの音楽を彷徨いながら発見させてもらうのも面白そう。

Futureful2.png


 時間つぶしのWebサーフィンを楽しめるトピックス・ブラウザーである。でもそれ以上に、思わぬニュースを発見してくれるツールとして期待したい。これは検索エンジンではない。ユーザーが検索トピックスのキーワードを入力することはできない。システム側からユーザーが思いもしなかったトピックス(サブトピックス)のキーワードも提示していき、ユーザーに偶然何かを発見させようとする。特定トピックスで紹介する記事も固定ではなくて、毎回異なる。まさにセレンディピティ(serendipity)の実現である。このため、同社のFAQで答えているように、パーソナライゼーションを実施していない。今や大概のネットサービスではパーソナライゼーションを採用している。そのため、検索サービスでもニュースサイト/アグリゲーターでも、個人に同じようなコンテンツが紹介され、意外性がなくてつまらなくなっている。本当に役に立つかどうか、もう少し使ってみたい。

 最後にユーザーインタフェースを含めたデザインについて。北欧っぽくて、使い勝手が良くて、気に入っている。以下に動画を。


 また、Skypeの共同創立者のJanus Friis氏が同社を支援している。

◇参考
・Futureful takes its smart topic-based newsreader to the iPhone and launches globally(TNW)
この記事をブックマーク: このエントリーを含むはてなブックマーク この記事を検索: Google 検索
posted by 田中善一郎 at 15:02 | Comment(0) | TrackBack(0) | 新聞 ニュース
2013年06月26日

米新聞のフルタイム編集者数、減り止まらない

Tweet このエントリーをはてなブックマークに追加
 米新聞のニュース編集者数が減り続けている。米新聞編集者協会(ASNE:The American Society of News Editors)によると、2012年にはフルタイムのプロの編集者が年間2600人も減り、新聞編集数が3万8000人になってしまった。1978年から調査を始めて以来、4万人を割るのは初めてである。

2007年以降のニュース編集者数の推移は、次のようになる。
FULL-TIME PROFESSIONAL NEWS JOBS AT NEWSPAPERS
YEAR: TOTAL、 GAIN/LOSS
2007: 52,600、 -2,400
2008: 46,700、 -5,900
2009: 41,500、 -5,200
2010: 41,600、 +100
2011: 40,600、 -1,000
2012: 38,000、 -2,600
(ソース:ASNE)
 
 Pew Research Centerが2000年以降の推移をグラフ化していたので、以下に掲げておく。 
PewUSNewspaperJobs201306.png
(ソース:Pew)

ASNEのデータには、回答が得られていない一部の大手新聞( USA Today や The Los Angeles Timesなど)のデータが含まれていない。また多くの編集者の流れ先になっているHuffingtonPost、Politico 、 Patchなどの新興のオンライン・ニュースサイトも対象外のはず。

 現在も伝統新聞で編集者の追い出しが続いている。つい最近でも、今週に入ってthe Oregonianが45人のニューススタッフのカットを発表していたし、 the Chicago Sun-Timesは5月に28人の写真ジャーナリストを切った。


◇参考
・Newspaper newsrooms suffer large staffing decreases(Pew Research Center)
・ASNE census finds 2,600 newsroom jobs were lost in 2012(Poynter.)
この記事をブックマーク: このエントリーを含むはてなブックマーク この記事を検索: Google 検索
posted by 田中善一郎 at 11:11 | Comment(0) | TrackBack(0) | 新聞 ニュース
2013年06月21日

特異な日本のニュースメディア環境、高齢化がさらに際立てる

Tweet このエントリーをはてなブックマークに追加
 日本のニュースメディア環境は、欧米の主要国とはかなり異なる。新聞紙やテレビ放送のような伝統的なメディアだけではなくて、オンラインメディアになっても欧米とは趣が異なる。このほどReuters Instituteが公開した「The Reuters Institutea Digital News Report2013年版」でも、多くの調査結果で違いを浮き彫りにしていた。(The Reuters Institute for the Study of Journalism(RISJ)は、2006年秋、the Department of Politics and International Relations at the University of Oxfordに設立.)

 今年のレポートもDigital News Reportと題しているように、オンラインを含めたデジタルニュースの現況を調査している。欧米の先進国(UK, US, Germany, France, Italy, Spain, Denmark)にJapanとBrazilを加えた9カ国のオンライン・ニュース消費者を対象に調査を実施し、その結果を多くのグラフで紹介している。ここでは、その中のいくつかのグラフを取り上げるが、詳細はレポートを参照されたい。

 まずは、ニュースメディアのキングであった新聞紙の購読状況から。有料の新聞紙を先週購読した割合は次のようになる。定期購読も含んだ割合のはずだが、やはり日本がトップである。若年層の新聞紙離れが進んでも、日本では習慣で新聞を読んでいる高齢層の割合が多いから、日本のトップは安泰かも。

ReuterNewspaper1.png

 さらに販売店の存在も日本のトップを支えているのであろう。9カ国の中でも、宅配の割合がダントツに高い。

ReuterNewspaper2.png

 次の表は、インターネット人口の男女比、および年齢層別の分布である。高齢化が進む日本では、インターネット人の高齢化も先行しているようだ。

ReuterNewspaper4.png

 米英を中心に新聞社系ニュースサイトの有料化が進んでいるが、一般人もニュース愛好家も有料化を受け入れる割合は、先進国では似たり寄ったりである。英国が特に低いのは、充実したBBCが存在し、さらに購読料を取られたくないためであろう。一般にニュースサイトが充実し競争の激しい国では、無料サイトで済まそうとする人の割合が多い。

ReuterNewspaper5.png

 アクセスしているニュースサイト・タイプの利用割合は、次のようになっている。伝統的なニュースブランド、アグリゲーター、それにソーシャルメディア/ブログの3タイプに分けて、答えさせている。日本でアグリゲーターが飛び出ているのは、ヤフーニュース(Yahoo!ニュース)が独走しているからだ。

ReuterNewspaper7.png

 上のグラフの伝統的なニュースブランドをテレビ放送ブランドと新聞ブランドに分け、利用割合を示したのが次の表である。ここで興味深いのは、日本では新聞ブランドの利用が26%と低いことだ。紙の新聞は先進国でトップを誇っているのに、同じ新聞のオンラインサイトは頻繁に利用されていないようだ。これも、ヤフーニュースなどの新興のニュースサイトに主導権を握られているからだ。また米国では、若いユーザーに支持された新興ニュースサイトや新しいタイプのアグリゲーターが次々と生まれてきており活気がある。

ReuterNewspaper8.png

 日本のオンライン・ニュース消費者に先週利用したオンライン・ニュース・サイトを答えさせた結果が、次のようになった。トップ3には新聞ブランドが現れていない。日本の新聞が本格的なオンラインシフトに突っ走れないで、長く紙偏重に固執している間に、ヤフーニュースは完全に日本のオンラインニュース市場の主導権を握ってしまった。21世紀に入る前後では、ニュースサイトの利用者は若者が多く、若者が好む技術系ニュースが中心であった。ところがヤフーニュースは、技術系ニュースを脇役に追いやり、エンターテイメント、スポーツなどの他に政治や経済、国際ニュースなど、硬派の記事もあえて組み入れた。つまり若者をメインターゲットにしないで、新聞社が得意とする中高年層や一般人を先取りして取り込んできたのが、成功の一因である。

ReuterNewspaper9.png
 
 さらにモバイルでも、ヤフーニュースが独走している。

ReuterNewspaper10.png

 最後に興味深い調査結果を。各国のニュース消費者が、ニュース記事を共有したり、ニュース記事に対してコメントを投稿したり、またニュースをネタに議論しているかを調べた。その結果では、ニュースを共有したり、コメントを投稿する割合が、日本人は際立って低くなっている。また友人とニュースについて語り合うことも、日本人はあまり行わないという。特にリアルの世界(オフライン)では、日常的にニュースについて議論しない国民となっている。これも高齢化のせいかも。

ReuterNewspaper15.png


◇参考
・Digital News Report 2013年版( Reuters Institute)
・Online news is becoming easier to sell, suggests study(BBC News)
この記事をブックマーク: このエントリーを含むはてなブックマーク この記事を検索: Google 検索
posted by 田中善一郎 at 02:16 | Comment(0) | TrackBack(0) | 新聞 ニュース
2013年06月15日

ワシントンポストの大胆な試み、広告料を払うと企業も編集意見欄への投稿が可能に

Tweet このエントリーをはてなブックマークに追加
 米国の有力新聞ワシントンポスト(The Washington Post、WaPo)も、今週の水曜日(6月12日)からデジタル版/オンライン版の有料化に踏み切った。月間20本までの記事を無料で閲読できるメーター制を採用しているが、それ以上の本数の記事を閲読するには購読料を払わなければない。WaPoのPC及びモバイル向けWebサイトの月間購読料は9.99ドル、それにモバイル端末向けネイティブアプリ版も加えた購読料は月間14.99ドルとなっている。

 デジタル/オンライン版の有料化は予告通り立ち上がったが、NYタイムズなどの後追いで特に新鮮味があるわけではない。新しい収益源が同新聞の売上高の長期低落を食い止められるかどうか。でもデジタルコンテンツの有料化だけでは厳しそう。そのためか今回の有料化に合わせて、新しい広告メニューも本格的に立ち上げようとしている。新しいタイプのオンライン広告で、チャレンジの観点ではこちらのサービスのほうが興味深い。

  それは、"Sponsored Views," と称する新しいインターネット広告メニューである。WaPo編集のオピニオン欄の中で、外部のスポンサー(企業や組織)が自前のオピニオンを投稿できるようにしている。つまり編集欄の中に、外部企業のコンテンツが組み込めるわけだ。ただし最大600字のオピニオンを投稿するには、投稿料金を払わなければならない。これは、最近話題になっている"ネイティブ広告"の一種といえるのではなかろうか。

SponsoredViewsWaPo20130612.png

 NYタイムズなどの米国の新聞では、新聞社の主張を述べる社説(editorial)に加えて、外部の識者や組織が独自の(時には社説の反論)意見を述べるためのOp-Edページを設けている。この流れをくんで、WaPoサイトの編集オピニオン欄でも、編集側のオピニオン記事(The Post`s View)に加えて、そのオピニオンに対するOp-Ed的なオピニオンスペースを用意することにした。そのスペースには、読者のオピニオンだけではなくて、外部の企業からのオピニオンも掲載できるのである。

 WaPoの編集側が提供するオピニオン記事に対して、消費者が関心を抱くようなコンテンツ(意見)を世に発すれば、企業のマーケッティング活動やイメージアップに貢献するだろう。商品やサービスを売り込むだけの押しつけがましい企業広告が消費者から煙たがられる傾向が高まっていることもあって、企業も自社メディアの構築に力を入れて消費者に役立つコンテンツを発信しようとしている。フェイスブックやツイッターなどの公式アカウントや自社サイトも、メディア化に向かっているのである。いわゆるオウンドメディアである。ただ企業がコントロールするオウンドメディアは、消費者に広くリーチしないで埋もれたままになりがちである。そこで、その自社のオウンドメディアに誘導するための効果的な手段として、ネイティブ広告に期待が寄せられている。

 そこで、"Sponsored Views,"の実例を見てみよう。最初のスナップショットは、WaPoサイトのオピニオン欄に登場した編集側のオピニオン記事(The Post`s View)である。増大するサイバー攻撃の危機に関するオピニオンである。

PostView2013.png

 この編集側のオピニオン記事に続く目立つ位置に、スポンサーからのオピニオン"Sponsored Views,"を配していく。この例のスポンサーは、無線通信事業者などが参画する国際的な業界団体CTIA(Cellular Telecommunications & Internet Association)である。サイバー攻撃に関してCTIAが主張するオピニオンが掲載されている。このような流れだと、企業や組織のコンテンツでも目に留まりやすく、消費者に読んでもらえる機会が増えそうだ。

PostSponsoredView2013.png

 ただし、そのスポンサーのオピニオン記事を編集記事と識別するために、Sponsored Viewsと明記するとともに記事スペース全体に淡い黄色の背景色を敷いている。一方でスポンサーのオピニオン記事内には、スポンサーのロゴやURL(詳しい情報を提供しているサイトへのリンク先)も掲載できるようにしている。編集側のオピニオンに対する自前のオピニオン記事を投稿するには、アカウントを取得しておれば、以下のようなフォームに最大600字のオピニオンを書き込んで送ればよい。

PostSponsoredViewForm2013.png

 Sponsored Viewsの掲載料金は明らかになっていないが、掲載時間や掲載日によって変わるという。スポンサーのオピニオン記事は原則として投稿順に掲載するが、投稿後2時間以内に掲載していきたいという。

 これから企業は、各種課題に対して消費者に向けてオピニオンを伝えなければならない局面が増えるだろう。ただ、企業の主張をそのままマスメディアを通して幅広く伝達することは易しくない。意見(オピニオン)広告なら可能かもしれないが、その利用はかなり限定されるだろう。そこで注目されているのがネイティブ広告である。原則として、メディア編集側の手をバイパスして、スポンサーの自前コンテンツをそのまま発信できるからだ。ただメディア側としては、何らかの形でスポンサーのコンテンツをチェックしたい。ネイティブ広告については、米インターネット広告協会(IAB)ですらこのほどタスクホースを設けて調査を始めた段階である。でも一方で、試行錯誤の実践が一斉に始まっている。 

◇参考
・Sponsored Views(washingtonpost.com)
・The Washington Post Launches “Sponsored Views”(washingtonpost.com)
・'The Washington Post' Now Sells Ads in the Comments(Mashable)

この記事をブックマーク: このエントリーを含むはてなブックマーク この記事を検索: Google 検索
posted by 田中善一郎 at 01:47 | Comment(0) | TrackBack(0) | 新聞 ニュース
<< 1  2  3  4  5  6  7  8  9  10  11  12  13  14  15  16  17  18  19  20  21  22  23  24  25  26  27  28  29  30  31  32  33  34  35  36 >>
Powered by Seesaa
Seesaaブログ
新着記事
(10/17)激しく責め立てられる「…
(09/19)動画配信のソーシャル系…
(09/11)SNS上のニュースは不正…
(07/28)勢いが続く「LINE」「In…
(06/30)TVニュースだけではなく…
(06/15)ニュースユーザーのFB離…
(06/01)高年層のSNS利用が増え…
(05/21)金融新聞「FT」までがFB…
(05/06)米ニュースメディアが相…
(04/16)モバイル広告市場を牽引…
(04/10)FBのアルゴリズム変更後…
(03/14)紙の「雑誌ブランド」は…
(02/07)「メディア」も「プラッ…
(01/30)国民の信頼が最も低い米…
(01/21)メディアに好かれる「グ…
(12/21)若いミレニアル世代ほど…
(12/08)世界の全広告費の25%を…
(11/28)デジタル売上8億ドルの…
(09/28)「グーグル」と「FB」が…
(09/07)FBに頼る海外のニュース…
カテゴリ
RSS配信 ブログ(202)
マーケティング 広告(339)
新聞 ニュース(702)
出版 雑誌(319)
TV  ビデオ ラジオ(277)
ポータル サーチエンジン(179)
メディア(94)
ケータイ モバイル(115)
市場(144)
その他(47)
日記(1)
Web2.0 SNS CGM(312)
ネットワーク(30)
ビッグデータ AI(4)
過去ログ
記事検索
 
プロフィール
名前:田中善一郎
E-mail:ztanaka@excite.co.jp