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2011年06月26日

いまどき急成長する米英の新聞とは

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 先進国において新聞は、斜陽産業の代名詞的存在になってきた。ところが活躍の場をネットに絞り、破竹の勢いで急伸している新聞が、英国と米国に現れている。

 英国のMail Onlineと米国のHuffington Postである。ともに、サイトの月間ユニークビジター数で、英語圏で世界トップの新聞サイトNYTimes.comに肉薄している。comScoreから新聞サイトのユニークビジター数が毎月公表されているが、2010年12月から2011年5月までプロットすると、次のようになる。

*NYTimes、Mail Online、 Huffington Postの月間ビジター数(ソース:comScore)、単位:千人
NYTMailOnlineHuffPost201105.jpg

 1年前に遡って推移を見ても、Mail Onlineと Huffington Postの両サイトの急伸ぶりが際立つ。この勢いで両サイトがNYTimes.comを近く追い抜くのは間違いないだろう。今年は3月に日本の震災・原発事故やリビア・シリアなどの中東騒動のビッグニュースが続き、さらに5月に英王室結婚関連やビンラディン死亡のニュースで沸き、3月と5月にニュース特需のピークが生じた。一方、NYTimes.comは3月28日から実施した有料化開始時と重なったこともあって、4月に大きく落ち込んだ。


*New York Times vs Mail Online and Huffington Post traffic(2010年5月〜2011年5月)、 Source: comScore
NYTMailOnlineHuffPost20102011.jpg

 Mail Onlineがなぜ人気が高いのかについては、こちらで紹介したが、ともかく実際にMail Onlineのサイトにアクセスすれば納得できるのでは。Guardianの記事によると、ユニークブラウザー数は一年前に比べ82.6%も増え、ユニークビジター数は38%増となった。その結果として、売上高が9%増、経常利益が10%増、広告売上高が15%増となった。新聞紙の販売にも好影響を及ぼし、販売部数(circuration)が4%増(英国内では11%)となった。

 もう一方のHuffington Postは政治ブログを売りにして前回の米大統領選(2008年)ニュースで急浮上してきたオンライン専門の新興新聞。その後、総合オンライン新聞として、順調に成長。代表的な米国の新聞サイトの月間ユニークビジター数(米国内ユーザー)の推移のグラフからも、Huffington Postの躍進ぶりが際立っている。

 AOLに買収されたが、AOL内のメディアサイトの編集はHuffington Post創設者のArianna Huffington氏に任されている。Huffington Postの更なる飛躍のために、まず次回(2012年)の米大統領選のニュースを充実させようとしている。そのために、33ケ所のローカルサイトを7月までに立ち上げる。選挙の実施が早い州の Iowa, New Hampshire そして South Carolinaの3州には, ローカルサイトを立ち上げたという。さらにローカルだけではなくてグローバル展開にも力を入れる。すでにカナダ版は始まっているが、7月6日に英国版を立ち上げる。これまでの米国版に英国ユーザー向けのオリジナルブログを付け加えていく。続いてフランス版を出す。さらにラテンアメリカ、オーストラリア、インド版も開発し、年内に計12ヵ国向けのHuffington Postを揃えていくという。Huffington Postの月間ユニークビジター数が一段と増えていきそう。

*米主要新聞サイトの月間ビジター数(ソース:comScore)、単位:100万人
USNwesSite20072010.jpg



◇参考
・MailOnline closes gap on NYT(MediaWeek)
・Huffington Post UK to launch on 6 July before going global(The Drum)
・ABCe: Mail Online nears 80 million monthly users(Guardian.co.uk)
・MailOnline reports return to growth(brandrepublic.com)
・AOL’s Huffington Post Expands Local News Ahead of Campaign(Bloomberg)
・The Huffington Post Passes The New York Times in Traffic(Atlantic Wire)
・大衆新聞が高級新聞を追い抜き、世界で最も人気の高い新聞サイトになる日(メディア・パブ)
・How the Daily Mail protects its paper behind a digital wall(Guardian.co.uk)




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posted by 田中善一郎 at 21:59 | Comment(0) | TrackBack(0) | 新聞 ニュース
2011年06月19日

NYポスト、ブラウザ経由アクセスをブロックし有料iPadアプリを売り込む

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 New York Postのサイト(http://www.nypost.com/)にパソコンからアクセスすると、以下のようにNYポストの記事が無料で閲読できる。

NYPPC20110618.jpg

 同じように、iPadでブラウザー(Safari)からNYポストのサイトにアクセスしても、同じようなコンテンツが無料で読めるはずである。確かに、一昨日あたり以前までは、そうだったようだ。ところが昨日(現地の17日か)あたりから変わった。iPadでNYポストのWebサイトにアクセスすると、リダイレクトされて次のような画面が現れた。

NYPostSafriiPad.jpg

 iPadからNYPOST.comの編集記事にアクセスする方法は、NYPのアプリを利用するほかないとの案内だ。これは、iPadのブラウザーSafariを介したNYPOST.comのアクセスをブロックしたとのお知らせでもある。そして、App Store(New York Post for iPad on the iTunes App Store)でアプリを購入してくださいとの案内も付けている。

 iTuneページに行くと、6月17日付でNYPアプリの販売を始めている。NYPの電子新聞(iPadアプリ)の定期購読料は、
・1ヶ月間:6.99ドル
・6ヶ月間:39.99ドル
・1年間:74.99ドル


 それにしてもWebブラウザーからのアクセスをブロックするとは驚くべき手法で、インターネット(Web)を破壊する行為と、Dave Winer氏は憤慨する。でもマードックの新聞ならやりかねない。それだけ新聞は追い詰められているということかもしれない。しかし同じマードックの新聞であるWSJのサイト(WSJ.com)も、またnytimes.comも、iPadのSafariからアクセスできる。

 で、このNYポストのSafariブロックに対して、アップルはどう対応するのだろうか。


◇参考
・The NY Post, the iPad and the web(http://scripting.com)
・New York Post Blocks iPad Access Via Safari To Sell Subscriptions(paidContent.org)
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posted by 田中善一郎 at 10:38 | Comment(0) | TrackBack(0) | 新聞 ニュース
2011年06月03日

米新聞社の新聞の消える日、前倒しの兆し

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 米新聞はやっぱりダメか。2011年第1四半期の広告費がNAA(米新聞協会:Newspaper Association of America)から発表されたが、マイナス成長から抜け出せないどころか、予想を越える速度で悪化している。

 2011年第1四半期の新聞紙(プリント)広告売上、新聞サイト(オンライン)広告売上、新聞全体(プリント+オンライン)広告売上は次のようになった。

*2011年第1四半期の新聞(プリント、オンライン、プリント+オンライン)広告売上高と前年同期比
NewspapaerAd2011Q1.jpg

 ここで落胆させたのは、いずれの広告売上の前年同期比(%Change)が、2010年第4四半期よりもさらに悪化してしまったことだ。リーマンショック以降、全てのメディアの広告売上が急落したが、ようやく景気回復に伴い2010年になってほとんどのメディア広告がプラス成長に転換していた。ただ例外が新聞広告(プリント+オンライン)で、2010年に入っても四半期広告売上は前年同期比でマイナス成長から脱せないでいた。ひとり取り残されてしまったのだ。それでもかすかな希望は成長率がマイナス(前年同期割れ)ながらも少しずつマイナス幅が小さくなっていたことである。それが、今回の2011年第1四半期に-7.2%と10年第4四半期の-4.7%からマイナス幅が大きくなってしまったのだ。

 グラフで示すと次のようになる。米インターネット広告(全体)は順調にV字回復している。新聞のネット(オンライン)広告はプラス成長に戻っていたが、インターネット全体と比較すると、回復の度合いが鈍い。つまり新聞サイトはオンライン広告メディアとして相対的に弱くなっている傾向がみられる。そして、新聞のネット広告までも2011年第1四半期に入って成長率が早くも鈍化してしまったのだ。新聞の広告売上高は、まだまだプリント広告の割合が高い。それだけに、プリント広告の売上が前年同期比-9.8%と10%近くもマイナス方向に落ちていては、新聞全体の広告売上がプラス成長に戻るのはかなり難しい。

*インターネット広告と新聞広告の四半期別成長率の推移(ネット=オンライン)
NEWSAdInternetAd2011Q1change.jpg

 米国でも昨年、新聞広告売上がインターネット広告売上に追い抜かれた。そして今年に入ってその差が、以下のグラフのように一段と開いていっている。新聞紙に頼っている限りにおいては、伝統的な米“新聞社の新聞紙”の消える日(“新聞”の消える日ではない)が想定よりも早まりそう。

*新聞広告売上とインターネット広告売上の推移(2008年から2011年までの第1四半期)
NewspapaerAdNetAd2011Q1.jpg

◇参考
・Newspaper ad revenue plunges again(Media Life)


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posted by 田中善一郎 at 10:24 | Comment(0) | TrackBack(0) | 新聞 ニュース
2011年06月01日

大衆新聞が高級新聞を追い抜き、世界で最も人気の高い新聞サイトになる日

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 英国のMail Onlineが世界で最も人気の高い新聞サイトになりそうである。ひょっとしたら5月にすでに、そうなっているかもしれない・・・。

 新聞社が運用するサイトとなると、これまでNYTimes.comがトップの座に居ついていた。一般に世界的なクオリティペーパーと称されているNew York Times(NYT)のサイトだから、不動のトップが当たり前と見られていたのである。ところが先週末、英国大手メディア持株会社 DMGT( the Daily Mail and General Trust)のCEOであるMartin Morgan氏が、「the Mail Online が5月にNYTを抜き去っているかもしれない」と言いだしたのだ。同社のHalf Yearly Financial Report(4月3日までの半年間)によると、2011年3月のMail Onlineの月間ユニークビジター数は前年同月比68%増の6600万人に達した記されている。また同月の1日当たりの平均ユニークビジター数は370万人で、前年に比べ63%も増えている。この勢いが続くと、決してあり得ない話ではない。

 ただ、DGMTが発表したデータは第3者が調査したものか明らかでないので、どこまで信用してよいのやら。ちょうどcomScoreから新聞サイトのユニークビジター数の4月データが明らかにされていたので、そのデータをもとにNYTとMail Onlineのビジター数を2010年12月から2011年4月までプロットしてみた。3月は日本の震災・原発事故やリビア・シリアなどの中東騒動のビッグニュースが続いたため、新聞サイトのビジター数はこぞって跳ね上がった。ところが4月はその反動で、新聞サイトは一斉にビジター数を大きく減らした。特にNYTは、NYTimes.comが3月28日から実施した有料化開始時と重なったこともあって、4月のユニークビジター数が激減してしまった。一方のMail Onlineは他サイトのように大きく落ち込まないで、勢いが継続していることを見せつけた。その結果、1位のNYTと2位のMail Onlineの差が一気に縮まったのである。

*NYTimesサイトとMail Onlineサイトの月間ビジター数(ソース:comScore)、単位:千人
MailNYT201104.jpg

 5月に入ると、英王室の結婚に絡む話題やビンラディン死亡に関するニュースもあって、新聞サイトのトラフィックは一休み気味の4月に比べると反発するはず。特にMail Onlineは5月のユニークビジター数をかなり増やしそうである。Mail Onlineは典型的な一般大衆紙である。長いトップページをスクロールしながら刺激っぽい大量の写真を見ていると、大衆受けする理由が分かるような気がする。トラフィックが急増したお陰で、オンライン広告売上げは1年前に比べ倍増したという。

MailOnline20110528.jpg

 DMGTのCEOは、iPhoneアプリも成功しているとMail Onlineの勢いを強調した。アプリは28万回ダウンロードされ、そのアプリを毎日6万6000人が利用しているという。広告付きアプリは無料だが、広告なしのアプリは有料で半年間購読が4.99ポンド(約670円)、年間購読が8.99ポンド(約1205円)となっている。iPadアプリの電子新聞も発行している。 

MailOnlineiPhone.jpg

 一方のNYtimes.comは有料化の影響で、4月のユニークビジター数は大きくへこんだ。Quantcastのデータでも大きく落ち込んでいる。ただし、ニュース特需があった3月からの反動もあるため、有料化によるビジター数の減り方は意外と少なかったのでは。4月のビジター数が激減したと言っても、2月以前の水準は維持している。

NYTTraffic.jpg
(ソース:Quantcast)


 オンラインの広告売上や有料購読などの収益性の点では、NYTimes.comのほうが圧倒的に高い。だが新聞サイトの月間ユニークユーザー数のランキングでは、大衆オンライン新聞Mail Onlineが高級オンライン新聞NYTimes.comを追い抜くのは間違いなさそう。

◇参考
・Mail Online expected to become world's most popular news website(journalism.co.uk)
・Almost 200 jobs cut at DMGT in first two months of year(journalism.co.uk)
・Will Mail Online overtake NYTimes.com?(Yahoo News)
・英Mail OnlineがNYTに迫る、ビジター数で世界2位の新聞サイトに(メディア・パブ)
・Half Yearly Financial Report:Daily Mail and General Trust plc(DMGT)


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posted by 田中善一郎 at 09:46 | Comment(0) | TrackBack(0) | 新聞 ニュース
2011年05月05日

WSJだけが健在で、他の米新聞は総崩れか

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 米国新聞の発行部数が下げ止まらない。米新聞の2011年3月期(2010年10月〜2011年3月)の発行部数が、米考査機構ABCから発表になったが、ほとんどの新聞は発行部数を減らし続けている。景気回復期を迎え、中近東/北アフリカ騒動や日本の巨大地震/原発事故などでニュース需要が高まっているはずなのに、新聞の発行部数が下げ止まらないのだ。MediaPostが発行部数の多い80紙を分析したところ、平日紙の総発行部数が2010年の1900万部から2011年には1850部と,やはり年間で2.6%減と落ち続けている。

 米新聞(平日版)の2011年3月期発行部数でトップ25の新聞は次のようになる。

●米新聞(平日版)の発行部数:2011年3月期
USNewspaper201103a.jpg

 ほとんどの新聞が、2010年3月期に比べて部数を減らしている。 The New York Timesが 3.4%減,the Los Angeles Timesが1.8%減, The Washington Postが4.8%減, the Chicago Tribuneが3.3%減,The Seattle Timesが 3.7% 減,The Boston Globeが5.7%減と,有力紙の部数が相変わらず下げ止まらない。ただし、平日版の発行部数にデジタル版(Digital Editions)を加えることによって、The Wall Street Journalは211万7796部となり、前年同期比1.2増のプラス成長になった。実はWSJも新聞紙は163万3062部と同3.9%減のマイナス成長になっていたのだが、デジタル版が以下の表で示すように前年同期比21.9%増の50万4734部に跳ね上がっていたのだ。また、1年前に200万部を割りトップの座をWSJに奪われた USA Todayは、2011年3月期の発行部数をほぼフラット(前年同期比0.1%増)に保ち、何とかマイナス成長は免れた。


 次は、各新聞のデジタル版の発行部数である。ここでも有料サイトで先行するThe Wall Street Journalが、トップを独走している。

USNewspaperDigitalEdition201103.jpg

 今年に入っても新聞の広告売上も不振である。新聞以外の主要メディア(テレビ、雑誌、ラジオ、インターネット)の広告が回復しているのに、新聞だけがマイナス成長から抜け出せないでいる。その上、ここで見てきたように、有力新聞がこぞって発行部数を減らし続けている。こう見ると、活路を見いだせているのはWSJくらいか。WSJも紙の新聞の発行部数を減らしているが、減った部数以上の有料のデジタル版を獲得できているのだから。


◇参考
・FAS-FAX Top 25 Charts for U.S. Newspapers(ABC)
・Q&R Support Center: Understanding the October 2010 U.S. Newspaper Rule Changes(ABC)
・ABC Releases FAS-FAX Reports(Editor&Publisher)
・Newspaper Circs Slip, But Digital Editions Up(MediaDailyNews)
・Digital Helps Wall Street Journal Boost Circulation, But Print Slips for Both Journal and New York Times(AdAge)
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posted by 田中善一郎 at 00:54 | Comment(0) | TrackBack(0) | 新聞 ニュース
2011年04月28日

ウィキリークスの機密文書に頼る記事、NYタイムズでは半分以上の日に掲載

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 最近のニューヨークタイムズ(NYT)は、ウィキリークスの機密文書なしでは成り立たないのでは? そう思えるほど、ウィキリークスの機密情報に頼る記事が次々と現れている。

 The Atlantic Wireによると、今年に入ってから4月15日までの全日数の115日間のうち、半分以上の63日にはウィキリークスの機密情報に頼る記事が掲載されてきたという。下の図で、背景色が青の日が掲載日である。機密文書そのものをベースにした記事であって、単に WikiLeaksやJulian Assange氏などに触れた記事は対象にしていない。

NYTWikileaks201104.jpg
(ソース:Atrantic Wire)

 最近でも、キューバにある米軍基地内のグアンタナモ収容所に収容されていた700人以上に対する尋問などの機密文書をウィキリークスが入手し、その文書をベースにした記事を米国や欧州の新聞が報じ始めている。NYTも以下の記事のようにレポートしている。


NYTWikileaksPrison201104.jpg

 リビアやエジプトなどで起こっている中東騒動に関するNYTの記事でも、その背景となるウィキリークスの機密情報が欠かせなくなっている。ウィキリークスネタにあまり多く頼っていると、独自ネタによる記事が手薄になるのではと心配してしまうが。

◇参考
・Over Half of 2011's New York Times Issues Rely on WikiLeaks(Atrantic Wire)
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posted by 田中善一郎 at 01:12 | Comment(0) | TrackBack(0) | 新聞 ニュース
2011年04月27日

ロンドンタイムズ、有料サービスの定期購読者獲得でグルーポンを活用

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 英国のthe Times of London / the Sunday Timesが、有料化したWebサイト/iPad/Kindleの定期購読者獲得に割引クーポン共同サイト「グルーポン」を活用した。

 3ヶ月間の通常の購読料 £25.98(ポンド)が70%の割引で、以下のように£7.80で申し込める。 先ほど(日本時間の2011年4月27日午前8時)に申し込み期間が終了し、1607人が割引購入することになった。

LondonTimesGroupon20110427.jpg

 英the Timesのデジタルコンテンツの有料化は10ヶ月前に始まり、ほぼ1ヶ月前に月間の有料デジタル購読者数(web, iPad, Kindle)が7万9000人に達したと主張している。3ヶ月の割引期間が終了する7月2日から通常料金になるが、どれくらいの人が有料購読を継続してくれるかが鍵となる。今回のグルーポン活用で2000人ほどの新規購読者をアテにしたようだが、少し目標に達しなかったのか。それでも、約8万人の有料購読者数を2%ほど底上げしたことになる。


◇参考
・The Times Gains New Subscribers With Groupon Discount(paidContent)
・米国の大手新聞サイトでもGrouponの共同購入サービスを(メディア・パブ)
・デンバーの地方雑誌、「グルーポン」で新規の定期購読者を4715人獲得(メディア・パブ)
・ロンドンタイムズのオンライン有料化、早くも前途多難(メディア・パブ)
・UK Times’ Paywall Numbers: 105,000 Sales Since Summer, 50k Subs(paidContent)

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posted by 田中善一郎 at 08:39 | Comment(0) | TrackBack(0) | 新聞 ニュース
2011年04月25日

NYTの広告売上高、今年に入ってもマイナス成長が止まらない

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 NYタイムズ社の広告売上高が、今年に入ってもマイナス成長から抜け出せない。

 同社の第1四半期決算によると、売上高が前年同期比3.6%減の5億6650万ドル、純利益が同57.6%減の542万ドルと減収減益だった。浮上できない最大の要因は、景気回復に伴いリバウンドでプラス成長に転ずると期待されていた広告売上げが、前年同期比4.4%減とさらに落ち込んでいるためだ。同社の広告売上高は08年と09年に急落し、2010年に入ってもマイナス成長が続き、そして今年もマイナス成長が止まらないということである。

*NYT社(The New York Times Company)の
2011年1-3月期決算(単位:1000ドル)
NYT2011Q1.jpg

 広告売上のうち新聞紙広告が前年同期比7.5%減と、底なしの状況が続いているのが痛い。というか、新聞紙の広告が回復することを期待しないほうがよさそう。一方、NYTimes.comなどのデジタル広告の売上高は同14.9%増と健闘したが、新聞紙広告のマイナス分を穴埋めできなかった。さらに今期は、About.comのオンライン広告売上高が同10.3%減と不振で、デジタル広告売上の底上げに貢献できなかった。理由は、Googleの検索エンジンのアルゴリズムが変わったため、About.comのページビューが減ったためという。

 そこで当てにしたいのが、3月末から実施しているオンラインサイト(NYTimes.com)およびモバイルアプリの有料化サービスである。これらのデジタルサービスの購読者は、サービス開始後3週間で10万人を超えたという。この新しい収益源の売上高が、次の四半期決算で明らかになるはずだ。


◇参考
・The New York Times Company Reports 2011 First-Quarter Results(NYT、プレスリリース)
・NYタイムズの広告売上、マイナス成長から抜け出せず(メディア・パブ)
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posted by 田中善一郎 at 07:29 | Comment(0) | TrackBack(0) | 新聞 ニュース
2011年04月23日

米国のニュースサイト、新聞サイトはトップ10に3サイト

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 一つ前の記事で新聞サイトの世界ランキング(月間ユニークユーザー数)を紹介したが、今回はニュースサイトの米国ランキングである。

 ニュースサイトとしては新聞サイト以外に、ポータル系やケーブルTV系サイトを入れている。一般のニュースサイトのランキングとなると、伝統的な新聞サイトの影が薄くなってきた。トップ10に残っている伝統的な新聞サイトは、NYTとTribune、USA Todayの3サイトだけである。また、Google Newsが外されているが、もし入っておればUSA Todayはベスト10からはみ出るはず。

 以下の表は、comScoreデータを参考にしてPoynterが作成したもの。

*ニュースサイトの月間ビジター数(ユニークユーザー数):米国内、単位:千人
USNewsSite201103top20.JPG
注:
・CNN Networkのデータには、Time.com, People.com and other Time Warner propertiesが含まれている。
・The New York Times Brand のデータにはAbout.comが含まれている。


◇参考
・The top 5 news sites in the United States are…(Poynter)
・英Mail OnlineがNYTに迫る、ビジター数で世界2位の新聞サイトに(メディア・パブ)
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posted by 田中善一郎 at 10:33 | Comment(0) | TrackBack(0) | 新聞 ニュース
2011年04月20日

英Mail OnlineがNYTに迫る、ビジター数で世界2位の新聞サイトに

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 英国の新聞サイトMail Onlineが、月間ビジター(ユニークユーザー)数で世界2位になった。

 comScoreの3月データによると、新聞サイトの月間ビジター数(世界)で英Mail Onlineが前月(2月)比27%増の3964万人となり、New York Times(NYT)に次いで世界第2位に浮上してきた。2月にAOLに買収されたHuffingtonPostも同20%増と頑張り3843万人のユニークユーザーが訪れたが、Mail Onlineに追い抜かれ3位に落っこちた。3月のビジター数でトップ10の新聞サイトは、次のようになる。

*新聞サイトの月間ビジター数(ソース:comScore)、単位:千人
NewsSiteUUcomScore201103.jpg

 いずれの新聞サイトも、2011年3月のビジター数が急増している。それもそのはず、日本の震災(津波や原発事故など)や中東騒動(NATOのリビア空爆など)のような世界を揺るがす大きなニュースが、長期にわたって続いているからだ。トップのNYTのサイトもこのニュース特需により、3月は2月に比べ41%もトラフィックを急増させ、世界中から6196万人が訪れた。

 ところが、この新聞サイトのランキングでさらなる激震が走るかもしれない。まずNYTimes.comが3月28日から有料化に走ったことにより、ビジター数を減らし、首位の座から引きずり降ろされるかもしれないからだ。Hitwizeの調査によると、有料化してからNYTサイトのビジター数が一日当たり5%〜15%減ってきており、ページビューは30%も落ち込んできている。一方、Mail OnlineやHuffingtonPostの勢いは続きそうで、NYTサイトに一気に迫るかもしれない。

 Mail Onlineは見ての通り、軟派系の大衆新聞である。最近急成長してきた背景としては、New York、Los Angeles、それにWashingtonにスタッフを置き、米国のニュースを充実させ、米国ユーザーを取り込んできたことがある。さらに大衆が熱狂するロイヤルウェディングが追い風となり、4月のビジター数も跳ね上がるのではなかろうか。

MailOnline20110419.jpg

 Huffington PostもAOLの旗艦媒体としてどのように変容していくかが注目されている。もともと政治分野のブログ新聞として立ち上がったサイトだけに、来年にかけての大統領選はHuffington Postの季節到来かもしれない。


◇参考
・MailOnline overtakes Huffington Post to become world's no 2(MediaWeek)
・Mail Online becomes world's second most popular newspaper site(guardian.co.uk)
・Study: NYT Visits Off As Much As 15 Percent A Day Since Paywall Debut(paidContent.org)
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posted by 田中善一郎 at 10:42 | Comment(0) | TrackBack(0) | 新聞 ニュース
2011年03月29日

NYTサイトの有料化開始、突然の割引トライアルを実施

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 NYTのデジタルコンテンツの有料サービスが28日から始まった。その時、今から10時間少し前あたりだが、@NYTdigitalsubsで次のようなツイートが発せられていた。

NYTdigitalsubs.jpg

 そして、デジタル定期購読の案内ページに飛ぶと、3コースの全てが、最初の4週間、99セントでサービスが受けられるとなっている。ALL DIGITAL ACCESSコースだと、34ドルも割引だと売りこんでいる。

NYTdiscount20110329.jpg

 3月17日に有料化プランを発表したが、ネット上では料金が高すぎるとの声が飛び交っている。その批判をかわすために割引トライアルを提供することになったのだろうが、ともかく突発過ぎというか、迷走ぶりが気になる。

 NYTはサイトの有料化を1年以上も前から宣言し、2011年の年明けにも有料サービスを実施することになっていた。ところが、メータ制の採用を明らかにしたくらいで、具体的な有料化プランは2011年の年明けになっても出てこなかった。そして、3月17日に有料化プランを発表したのだが、驚くことにカナダだけはその日から有料化を実施。カナダをモルモットにして、いろいろ調べたかったのだろうか。カナダ以外の国に対しても、有料化実施の約10日前になって初めて有料化プランが明らかになったのだが、あまりにも早急すぎる。それに課金の壁が抜け穴だらけなので、どの程度無料で閲覧できるかを調べたうえで、有料化サービスの利用を検討している読者も多いのでは。NYTとしてはその検討前に、割引トライアルを利用してもらい有料サービスの申し込みをさせたいのだろうが。




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posted by 田中善一郎 at 11:27 | Comment(0) | TrackBack(0) | 新聞 ニュース
2011年03月26日

NYタイムズ・サイトの「課金の壁」、なぜ抜け穴だらけなのか

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 NYタイムズのデジタルコンテンツが、3月28日から有料になる。ところが、ソーシャルメディアを介してニュース記事と接しているユーザーには、これまで通りNYTimes.comの記事を無料で閲覧できそうである。

 NYTサイトは月間ユニークユーザー数が3100万人(comScore調査)を超え、最も人気の高い新聞サイトとなっている。その人気を支えている要因の一つに、先進的なソーシャル機能をいち早く取り込み、外部のソーシャルメディアとの連携を深めてきたことが挙げられる。そのお陰で、ブログだけではなくて、Facebookやツイッターなどのソーシャルメディアでも、最も数多く引用される新聞サイトになっている。その結果として、ソーシャルメディアのリンク経由でNYTimes.comの記事に直接アクセスするユーザーが多い。

 でもこの時、リンク先のコンテンツは自由に閲覧できる、つまり無料であるというのがソーシャル系ネットワーク界隈では前提となっている。皆で手持ちの情報を出し合い(give & take)、より良いコンテンツを作り出していこうとするのが、ソーシャルネットの文化でもある。一種のマッシュアップである。引用コンテンツにリンクを張るのも自由で、それどころかリンクは相手に敬意を払っている印でもある。でもコンテンツが有料だと仲間に入れてもらえずに、ソーシャル系ネットからはじき出されるであろう。

 NYTimes.comの記事がソーシャル系ネットワーク界隈で持て囃されてきたのも、質が高いということに加え無料で閲覧できることが大きいかった。またNYTimes.com自身も、記者が参加するブログ(Blogs)やツイッター(The New York Times on Twitter)を充実させ、ソーシャル系ネットワークの世界に積極的に入り込んでいる。イラク戦争、イラン総選挙、最近のアラブ諸国騒動、Wikileaks関連、それに東北地方地震などの報道に活気があるのも、自らのブログやツイッターを使いこなしているからであろう。外部のソーシャルメディアのコンテンツや時には競合サイトのコンテンツも流用したりしている(リンクを張る)。

 ソーシャルメディアと密な関係を築いてきただけに、NYTimes.comがどのような「課金の壁」を立ててオンラインサイトを有料化していくかが注目されていた。課金の壁の向こうに置く有料コンテンツは共有したり検索する対象でなくなる心配があり、ソーシャルメディアとの連携を断つことになりかねない。そこで、ソーシャルメディアとの連携を損なわない形での有料化プランを実施することになった。読者へのレターとFAQ(Q&A集)の中で、無料閲覧できる手法をこっそりと?伝授している。
 
*A Letter to Our Readers About Digital Subscriptions
• Readers who come to Times articles through links from search, blogs and social media like Facebook and Twitter will be able to read those articles, even if they have reached their monthly reading limit. For some search engines, users will have a daily limit of free links to Times articles.

*FAQ(Digital Subscriptions and Premium Products)
Q: Can I still access NYTimes.com articles through Facebook, Twitter, search engines or my blog?
A: Yes. We encourage links from Facebook, Twitter, search engines, blogs and social media. When you visit NYTimes.com through a link from one of these channels, that article (or video, slide show, etc.) will count toward your monthly limit of 20 free articles, but you will still be able to view it even if you've already read your 20 free articles.

When you visit NYTimes.com by clicking links in search results, you'll have a daily limit of 5 free articles. This limit applies to the majority of search engines.

 今回の有料化プランでは予告通りメーター制を採用し、Webサイト(NYTimes.com)の記事を毎月20本まで無料で閲覧できるようにした。月に21本以上の記事からは原則として有料となり、閲覧するにはデジタルサブスクリプション(定期購読)を申し込む必要がある。

 ところが月に21本目以上の記事であっても、課金されない抜け穴を用意したのだ。検索エンジンやブログ、それにツイッターやFacebookなどのソーシャルメディアから記事にアクセスした場合は、その記事を無料で閲覧できるのである。ただし、検索エンジン(たとえばGoogle)の検索結果からアクセスした記事は、毎日5本までしか無料で閲覧できない。でも、ブログやツイッター、Facebookからのリンクでアクセスした場合、無料閲覧できる記事数に上限はない。つまり、無料で読み放題ということだ。

 このメディア・パブでも、最も引用回数の多い新聞サイトはNYTimes.comのはずだが、参考にするNYTimes.comの記事のほとんどをブログやツイッター、検索エンジン(英語版Google)で見つけて、そこからアクセスしている。新聞サイトのトップページから読みたい記事を探すことはほとんどしなくなった。またGoogle NewsやTechmemeなどのニュースアグリゲーターからNYTimes.comの記事に飛ぶ場合も少なくないが、この場合のアクセスが有料になるとしても、リンク先の同じNYT記事を引用しているブログをアグリゲーターですぐに探せるはず。そのブログ経由でNYTimes.comにアクセスすれば無料になる。

 NYTの Op-Ed コラムニスト兼ブロガーでもあるPaul Krugman氏(ノーベル経済学賞受賞)も、NYTimes.comの有料化によって自分の記事を読めなくなるユーザーが出てこないように、自分の記事を無料で閲覧できる具体的手法をわざわざブログで知らせている。彼のツイッターアカウント@NYTimeskrugman(フォロワー数55万人)をチェックしておれば、ツィートで彼の記事へのリンクが見つかるので、そのリンク先の記事は無料で読める。また、著名な経済学者の記事を収集するブログEconomist's View をチェックしていても、彼のNYTへの寄稿記事(リンク付き)が以下のように紹介されるので、このブログ経由でKrugman氏の寄稿記事がタダで閲覧できる。

EconomistView20110322.jpg


 また、先に触れたようにNYTは、多くのブログやツイッターアカウント(たとえばブレイキングニュースの@nytimesでは300万人以上がフォロー)、それにFacebookページ(NYTimesのページは120万人のファンを擁している)を備えて、ソーシャルサイト経由のトラフィック増に努めていた。さらに第三者によって、NYT記事の無料閲覧を支援すツイッターアカウントやFacebookページも現れてこよう。ソーシャルメディアをベースにニュースを閲覧しているユーザーにとっては、「課金の壁」は穴だらけで事実上存在しないのに等しい。ということで、今回のNYTの有料化プランに対して、ソーシャルメディア側からの反発は起こらないだろう。


 実は、有料新聞サイトの先行者であるWSJ.comも、「有料のWSJ記事をタダで読む裏技,WSJがこっそりとソーシャルメディア対策を」非公式に実施している。グーグルの検索エンジン経由なら、WSJ.comの記事をいくらでも無料で閲覧できる。WSJ.comでは見出しに鍵マークが付いた記事は有料で、タダで読むことができないことになっている。このため、私もオンライン版の年間購読料(オンライン版)を払ってWSJ.comの記事を閲読していたのだが、3年ほど前に裏技が安定して提供されているのを知って、無料購読に切り替えた。有料記事の見出しをGoogleの検索窓にcut&pasteすると、検索結果に所望記事見出し(+リンク)が現れ、そこをクリックすれば記事全文が無料で閲読できる。

 WSJ.comでは一般記事を拡充し、それらを無料で閲覧できるようにしてきている。さらに、鍵マークの付いた有料記事でも、ソーシャルメディアで話題になりそうなトピックを取り上げている場合、たびたび無料開放している。先ほどの強力な裏技もあって、この2年近くの間でWSJの記事がソーシャルメディアで登場する頻度が増えている。それに応じてソーシャルメディア経由のトラフィックが増え、結果としてWSJサイトのユニークユーザー数も増えてきている。

 気になるのは、無料で閲読できる裏技(抜け穴)があると、有料読者になる人が減るのではないかということだ。だがWSJ.comでは有料購読者数も増えている。WSJの中核読者は仕事のためにWSJを利用するビジネスパーソンである。無料で閲読できる裏技を知っていても、時間を競う多忙なビジネスパーソンならおそらく、有料購読を選んでいくだろう。Googleの検索エンジン経由で記事に辿りつこうとすると、1分近くも余分に無駄な時間を要するからだ。

 WSJは確かに、オンラインサイトの有料購読サービスに加えてソーシャルメディアとの連携をうまく両立させてきている。WSJの有料記事は仕事に密着した経済/金融情報だし、会社の経費で有料購読している人も多いはず。一方でソーシャルメディア経由のトラフィック増に伴い、ユニークユーザー数も増え広告メディアとしても強力になってきた。

 同じようにNYTも、有料サービスとソーシャルメディア連携をうまく両立させていけるのだろうか。一般紙サイトだけに、どれくらいの読者が有料購読サービスに乗ってくれるかどうか。Digital Subscriptionsの価格をWSJとNYTで比較すると、次のようになる。オンライン(Web)サイトとモバイルアプリ(スマートフォン,タブレット)を加えた価格である。年間の価格で比較すると下のグラフのようになる。

・The Wall Street Journal - Digital Plus: $3.99/週
・The New York Times - All Digital Access: $35/4 週
 
DigitalSubscription201103.jpg

 このグラフを見る限りではNYTのデジタル料金は高い。有料化サービスの船出はしばらく厳しくなりそう。一般ニュースサイトなので、無料のWashington PostやHuffington PostそれにYahooやCNNなどで賄っていこうとする読者も多いかも。また、サイトのユニークユーザー数も現在の月間3100万人からかなり減る心配がある。ソーシャルメディアをベースにNYTimes.comの記事と接している読者は、事実上無料のままなので、これまで通り閲読してもらえるはず。だが、NYTimes.comのトップページに飛んできてそこで読みたい記事を探していく読者(中高年層が多そう)は、月間21本目からは「課金の壁」に遮られる。そこで、下のガイドに従って有料購読を申し込んでくれればいいのだが、NYTimes.comから去っていく読者も少なくないのでは・・・。

NYTfree20.JPG



◇参考
・The Times Announces Digital Subscription Plan(NYTimes.com)
・A Letter to Our Readers About Digital Subscriptions(NYTimes.com)
・Digital Subscriptions and Premium Products:FAQ(NYTimes.com)
・New York Times CEO on Pay Meter: Possible Slight Dip in Traffic Will Be Short Term(AdAge)
・Lincoln Ad Offers Free Access to New York Times Online for Rest of 2011(AdAge)
・Digital Subscriptions(Paul Krugman、The Conscience of Liberal)
・ニューヨークタイムズ有料化にソーシャルな抜け穴―FacebookとTwitterから無制限アクセスができる(TechCrunch Japan)
・WSJとFTの両新聞サイト,いまだに有料記事がタダで読み放題(メディア・パブ)
・マードックの矛盾,盗人グーグル経由で有料のWSJ記事がタダで読めるのはなぜ(メディア・パブ)
・NY Times Asks Twitter to Shut Down Paywall Dodgers(Forbes)
・Here’s what the New York Times paywall looks like (to Canadians)(NiemanJornalismLab)
・Digital Subscription Prices Visualized (aka The New York Times Is Delusional)(the understatement)

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posted by 田中善一郎 at 15:53 | Comment(0) | TrackBack(0) | 新聞 ニュース
2011年03月19日

被災地に入る海外メディア、独自ニュースの発信を始める

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 東日本巨大地震発生から1週間。国内の大惨事なので、ニュースは国内メディアのテレビ映像や新聞記事に頼ってきた。海外メディアの震災ニュースも、当初は日本のメディアから引用したコンテンツが中心であったので、わざわざ見る必要もなかった。だが日が経つにつれ、海外メディアの記者も続々と被災地に入り、独自のニュースを発信し始めている。見る価値がありそう。

 ということで、Boston.comのBig Pictureをまず覗いてみた。Big Pictureでは毎日、特定のニュースに関する大型写真を数十点掲げている。取り上げるニュースは毎日変わっていくのだが、この1週間(休みの日曜日を除いて)は連日、東日本地震の写真を載せ続けている。欧米のメディアにとってみても、とてつもなく大きい出来事で伝えなければならないニュースとなっている。以下に11日から17日までの、写真掲載ページを示す。11日から12日あたりは日本のメディアから拝借した写真がほとんどだが、15日ころから外人カメラマンの写真が増えている。日本のメディアだとプライバシーなどを気にして掲載できない写真も、海外メディアだと取り上げることが多い。やはりこのような写真は、訴える力が大きい。見るのが辛い写真もあるが・・・。

・Japan: Hopes fade for finding more survivors(March 17, 2011):27 photos total
・Japan: Continuing crisis(March 16, 2011):28 photos total
・Japan: New fears as the tragedy deepens(March 15, 2011):52 photos total
・Japan: Vast devastation(March 14, 2011):51 photos total
・Japan: earthquake aftermath(March 12, 2011): 44 photos total
・Massive earthquake hits Japan(March 11, 2011):47 photos total 

 これとは別に、DigitalGlobeの衛星写真Japan Earthquake and Tsunamiも、日本のマスメディアにとっても欠かせなくなってきた。特に上空からの原子炉写真は重宝である。

 原発事故は欧米のメディアも非常に関心を示しており、国内メディアとは違う目線でニュースを伝え始めているている。これまで国内メディアの原発事故ニュースの情報源は、東京電力、原子力安全・保安院、それにいつもの大学の学者が中心であった。だが、米国の原子力専門家が大挙して来日しており、これまでと違った情報源からのニュースが海外メディアから出てきそう。海外メディアも見ていかなければ。

 海外でも、今回の震災ニュースの関心は極めて高い。以下の代表的な米英ニュースサイトにおけるニュース記事ランキングで、上位に震災ニュースが多く現れている。

●BBC News
(Read)最も閲覧された記事/トップ10
1: Japan raises nuclear alert level
2: West moves towards Libya action
3: LIVE: Japan earthquake
4: LIVE Libya crisis
5: Messenger achieves Mercury orbit
6: Japan hails the heroic 'Fukushima 50'
7: UN backs action against Gaddafi
8: In graphics: Fukushima nuclear alert
9: Protection for Cumberland sausage
10: UK prepares for Libya no-fly zone

●WSJ(Wall Street Journal)
Most Viewed(This Week):今週、最も閲覧された記事/トップ8
1. At Core of Ruin, a Search for Life
2. Quake, Tsunami Slam Japan
3. Tokyo Shares End Day Down 11%
4. U.S. Sounds Alarm on Radiation in Japan
5. Setback in Japan's Reactor Fight
6. Two Dogs Defy the Wave
7. Rush to Fix Damaged Undersea Cables
8. NFL Talks Collapse; Players Disband Union


●New York Times
(MOST BLOGGED:Last 3 days):この3日間で、ブログから張られたリンク数の多い記事/トップ10
Articles most frequently linked to by bloggers on the Web.
1. Japan Faces Potential Nuclear Disaster as Radiation Levels Rise
2. Second Explosion at Reactor as Technicians Try to Contain Damage
3. Japan Says 2nd Reactor May Have Ruptured With Radioactive Release
4. Workers at Fukushima Plant Brave Radiation and Fire
5. The Abuse of Private Manning
6. Administration Invites N.R.A. to Meeting on Gun Policies, but It Declines
7. In Fuel-Cooling Pools, a Danger for the Longer Term
8. Reports Say Saudi Troops Enter Bahrain to Put Down Unrest
9. Reactor Design in Japan Has Long Been Questioned
10. Japan's Multiple Calamities



◇参考
・Japan Earthquake and Tsunami(DigitalGlobe)
・More resources for those affected by the Japan earthquake and tsunami(gogole.org blog)
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posted by 田中善一郎 at 02:15 | Comment(0) | TrackBack(0) | 新聞 ニュース
2011年03月18日

NYタイムズサイトの有料化、3月28日から実施

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 NYタイムズ社がオンラインサイト(NYTimes.com)およびモバイルアプリの有料化プランを明らかにした。

 3月28日から実施する(カナダだけは今日17日から)。予告通りメーター制を採用し、Webサイト(NYTimes.com)の記事を毎月20本まで無料で閲覧できる。21本以上の記事をアクセスする場合は、次の3種類のデジタルサブスクリプション(定期購読)の中の一つを選ぶ必要がある。

1. nytimes.com とモバイルフォンアプリの4週間アクセス:15ドル
2. nytimes.com とiPadアプリの4週間アクセス:20ドル
3. 上記の全ての4週間アクセス:35ドル

 the NYTimes やthe International Herald Tribuneの新聞紙購読者は、今回のデジタルサービスを付加料金なしで享受できる予定。

 AmazonのKindleや Barnes & Nobleの Nook device でNYTを定期購読して読者は、そのまま継続するだけで、特に今回のサービスに対して特典はない。


◇参考
・A Letter to Our Readers About Digital Subscriptions(NYTimes.com)
・Digital Subscriptions and Premium Products:FAQ(NYTimes.com)
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posted by 田中善一郎 at 07:40 | Comment(0) | TrackBack(0) | 新聞 ニュース
2011年03月12日

NHKの地震映像番組、テレビがなくてもネットで世界にリアルタイム拡散

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 NHK総合テレビの地震映像番組が、ネットを介してほぼリアルタイムに配信された。NHKの生番組をテレビがなくても事実上ネットから連続して見ることができるようになるとは、特例と言えども画期的な出来事である。

 海外のメディアまでが、NHKテレビの地震映像を流しっぱなしにしていた。中近東や北アフリカの騒動の生中継で評判になったアラブ系放送局アルジャジーラのAl Jazeera English: Live Streamでも、以下のようにNHKの地震特番が一時ほとんどの時間を占有していた。リビア騒動のニュースが割り込むことはあったものの、いま注目のAl Jazeera English: Live StreamがNHKの番組を流し続けていたとは驚きである。

AlJazeeraEnglishLiveStreamEarhquake20110311a.jpg

 NYT(New York Times)サイトのブログ「The Lede」記事の中でも、CNNの地震映像(NHKテレビ番組の転用)とUstream(NHKテレビの地震番組)を視聴できるようにしていた。後者のUstreamは、NHKテレビ放送の地震番組をほんの少しの時差でそのまま流しており、その時日本語音声が英語に通訳されていた。

EarthQuakeNYT201103.jpg

EarthQuakeNYT201103aaa.jpg


 でも国内で、NHK以外のサイトがNHKテレビの映像を流すことを、NHKがなかなか認めてくれそうもない。たとえ、より多くの人に伝える使命がある情報としてもだ。ところが思わぬ展開が繰り広げられた。

 個人的には、六本木のオフィスで昨日の地震に遭遇。オフィスのパソコンでしばらく、ヤフーや新聞社などのサイトで地震情報を収集していたのだが、ユーストリーム(Ustream)で流れていたNHKのテレビ番組もかけっ放しにしていた。帰宅難民になりそうだったので、信憑性の高そうな交通情報が欲しかったからだ。でも待てよ、どうしてNHKの生放送をテレビを介さなくて見ることができるのか。NHKの英断なのか。

 後でわかったのだが、Ustreamで視聴していたNHKテレビの地震番組は、広島の中学2年生が無断で流していたという。特に昼間、テレビを視聴できる環境に居る人は少ない。私も含め多くの人が中学生に感謝したのは言うまでもない。ところが無断配信の事実を知ると、NHKは止めにかかると思われたのだが。実際、UstreamでNHKテレビが見れることを、NHK広報局(約25万人のフォロワー数を抱えるNHKの公式ツイッターアカウント)にツィートで知らせが入る。ところがNHK広報局の担当者は、止めに入らず黙認してしまったのだ。そして、「ただこれは私の独断ですので、あとで責任は取るつもりです」と。そしてすぐ後に、NHK公認で地震番組のUstream配信を始めたのだ。

 このいきさつは、以下のNHK広報局のツィートで。1)→2)→3)の流れで、NHK公認のUstream配信が生まれる。
EearthQuakeNHK.jpg

 Ustream配信が多くの支持が得られていただけに、止めにかからずに、逆に公式にUstream配信を認めてしまった。確かに担当者の独断で決めてしまったのだが、今さら逆戻りができるはずがない。でも、たとえ今回のような非常事態でも、NHKの重要な映像情報を他の報道機関にネット配信させることは認めていないようだ(2011/3/12 0:32日本経済新聞 電子版)。


◇参考
・Earthquake turns TV networks into print(Doc Searls Weblog)
・Japan: When public broadcasting meets limited access(NiemanJournalismLab)
・Japan earthquake: Japan's major TV networks stream live coverage of earthquake's devastation online(Los Angels Times)
・NHK、ネット通じた地震映像の配信認めず (日本経済新聞 電子版)
・ツイッター☆NHK地震情報中学生がユーストリームで配信(しろちゃんブログ)

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posted by 田中善一郎 at 11:59 | Comment(0) | TrackBack(0) | 新聞 ニュース
2011年03月03日

伝統プリントメディアのジレンマ、早急なオンラインシフトが経営危機を早めるのか

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 新聞紙や雑誌を発行し我が家の春を謳歌してきた伝統的なプリントメディア社も、米国においては今や構造的な不況業種と呼ばれ出している。そこでプリントメディア各社は、事業の重心をプリントからオンラインへシフトさせるのが急務になってきている。

 ところが、伝統的なプリントメディア社のオンラインシフトは、必ずしもうまくいっていない。プリントメディア時代のノウハウや人的リソースが生かされない。それどころか、オンラインシフトのあしてまといになりがちであったからだ。それでも先進的なプリントメディア社、たとえばNYTや英Guardian、Washington Postなどは、サイトで新しいオンラインメディアの在り方を試行錯誤的に挑んできた。だが残念ながら、オンラインシフトで先行したからと言って、今のところ大きな成果を挙げていないのが現状である。

 先週、Washington Post社から、2010年第4四半期(2010年通期)の決算が発表されたが、その中で新聞(オンラインも含む)だけのPLデータも明らかになっている。単独の新聞(ここではWashington Post)の決算データが得られるのは珍しい(たとえばNYTのように、複数の新聞から成るグループ単位のデータしか公表されない場合がほとんど)。

  Monday Noteでは、新聞Washington Postの過去7年間の第4四半期のデータを次のようにプロットした。最初のグラフはオンライン売上/プリント売上なので、オンラインシフトの進捗度を示すことになる。順調にオンラインシフトが進んでいる。

WaPoOnlinePrint2010.jpg


  次のグラフは各年の第4四半期の新聞紙広告売上高とオンライン広告売上高をプロットしている。7年間でオンライン広告の売上が倍以上になっているが、逆に新聞紙広告売上げが半分以下に激減した。絶対額で見ると、この7年間で新聞紙広告は8800万ドルも失っているの対し、オンライン広告は1900万ドルしか増やしていない。つまりオンライン広告1ドルを増やすために、新聞紙広告を5ドルも失っていることになる。


WaPoAd2010.jpg


  オンラインシフトが進みオンライン売上の比率が高まっているといっても、実は新聞紙広告売上を大きく減らし、伴ってプリント売上が激減したからである。確かにオンラインシフトのアクセルを強く踏み込めば踏み込むほど、経営破たんの時期を早めるのかもしれない。そこで、プリント売上(大半が新聞紙広告売上)になるべく悪影響を与えない範囲内で、オンライン事業に取り組もうとする新聞社が少なくない。これでは、単なる延命策で展望が開けない。こうした中途半端なオンライン事業では、プリント売上のしがらみのない新興のニュースメディア(Huffington PostやPoliticoなど)と戦っていくのは厳しいだろう。


◇参考
・The Publisher’s Dilemma(Monday Note)
・The Washington Post Company Reports 2010 and Fourth Quarter Earnings(The Washington Post Company)
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posted by 田中善一郎 at 12:05 | Comment(0) | TrackBack(0) | 新聞 ニュース
2011年02月06日

マードックが仕掛けたiPad専用の電子新聞「The Daily」、ユーザーの第一印象は

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 鳴り物入りでスタートしたiPad専用の電子新聞「The Daily」。一斉にメディアサイトやブログで、Dailyの評価が始まっている。絶賛する者もいれば、こきおろす者もいる。ともかく、これからの電子新聞の在り方を議論する材料を提供してくれたことは確かである。

 ジョブズの入院のためマードックと並んでDailyを披露するセレモニーは無くなったものの、News CorpとAppleのマーケティングパワーのお陰で、登場前から大いに盛り上がっていた。そして、2週間の無料試読サービスが提供されたのだから、iPad所有者の多くが飛びつくのは当然かも。では、飛びついたユーザーの評価はどうだったのか。それには、 iTunes app storeのユーザー評価(Customer Ratings)を見れば良い。他の代表的な電子新聞(iPadアプリ版)のユーザー評価と並べて、Forbesが次の一覧表をまとめてくれている。2日ほど前のデータである。

TheDailyRating.jpg
(ソース:Forbes)

 ユーザーの第一印象は比較的良かったようだ。2300人以上のユーザーが5段階評価(5つ星から1つ星まで)に参加している。平均すると、3.5となっている。満点(5つ星)を投じた人は、43%の1008人であった。おそらく、デザインやユーザーインタフェースなどで頑張っているなぁとして、満点を付けた人が多かったのかも。New York TimesのiPad版電子新聞は評価が低いが、まだ本番ではないし、3月ころに出る予定の有料電子新聞と比較すべきであろう。

 ところで気になるのは、やはりコンテンツである。本物のiPadアプリに接触できないのは残念であるが、The Dailyの毎日のコンテンツはThe Daily: Indexed(非公式の目次サイト)経由でWebサイトでも無料で閲覧できる。Webから覗いたコンテンツの印象ではあるが、全体にややスタティックに思えた。実際のユーザーからも「The Dailyは新聞でなくて雑誌みたい」との声も。例えば iTunes app storeに、次のようなユーザーのコメントが寄せられていた。

 The iPad effects are great, but the stories seem more like something out of Reader's Digest than a serious paper.

 シリアスな新聞(ニュースコンテンツ)ではなくて、Reader's Digest風とのことだ。HuffingtonPostや最近のAl JazeeraなどのダイナミックなWebニュースサイトを見慣れているユーザーからすれば、The Dailyのエジプト報道などは物足りないはず。でも、The Dailyは最初から新聞ニュースサイトを目指していないのでは。新聞と雑誌のいいとこどりを試行錯誤していくのかも。このためか最近は、The DailyをiPad only newspaperと言わずに、iPad only magazineと呼んでいるメディアサイトが増えている。

 またソーシャルメディア陣営の一部からもブーイングが。The Dailyに限ったことではないが、iPad向けの電子雑誌や電子新聞に向けられるいつもの批判である。90年代半ばに登場したCD-ROM版マルチメディアの復活で、閉じたパッケージメディアであると。The Dailyの記事には、リンクがないし、RSSフィードもない。筆者や編集者と連絡するためのメールアドレスもない。検索エンジンからアクセスができない。対話性も決められた範囲内に限定される。などといった不満が聞かれる。でも双方向の参加派ではなくて、片方向のカウチポテト派のユーザーも実際には少なくない。これも、今後ユーザーの声を聞きながら軌道修正していくのかな。

 購読料については、概ねリーゾナブルな価格との声が多い。USA Todayレベルのコモディティーコンテンツなのに有料にするとはけしからんと憤慨するユーザーもいなくはないが、週間99セント、年間39.99ドルは思い切った値付けである。多くのグラフィックや動画などを盛り込んだオリジナルコンテンツが、毎日100ページ分も届けられるのであるから、かなり安いのでは。でも、約100人の編集者/記者(他に外部のフリーランサー)で100ページのオリジナルコンテンツを毎日用意するのは大変そう。毎日ドタバタしているのだろうか、ツイッターの#thedailyでも、連発する不手際が指摘されている。paidContentでも‘The ‘Daily’ Has A Big Problemと問題視している。まぁ、最初は大目に見て、評価は2〜3ヶ月後にも。


 評価レポートの中でおもしろかったのは、The Dailyのクロスワードパズルを持ちあげていた記事である。以下のThe Dailyのデモビデオの最後のほうでも紹介しているが、クロスワードパズルの出来が非常に良いとか。ベストのコンテンツと褒めている。これまでの新聞紙でもゲームやパズルは欠かせない人気コーナーで、楽しみにしている読者も少なくない。The Dailyは毎日、日替わりでクロスワードパズルとスドクゲームを提供し、優れたユーザーインターフェースで高画質のiPadで楽しめるようにしている。それが1日当たり0.14ドルで享受できるとあれば、キラーコンテンツになりそう。パズルとゲームを毎日楽しむために、The Dailyの読者になる人も増えるかも。
 
 

◇参考
・Users Rate The Daily: Better than NY Times App, Worse Than WSJ(Forbes)
・‘The Daily’ Is One of the Best Values On the App Store Because of One Thing: The Crossword Puzzle(WebNewser)
・Stop the presses: First iPad newspaper debuts(AP)
・“New times demand new journalism,” but The Daily doesn’t deliver yet(Examiner.com)
・‘The ‘Daily’ Has A Big Problem(paidContent)
・Murdoch’s Daily: post-Web innovation or CD-ROM flashback?(wordyard)
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posted by 田中善一郎 at 15:54 | Comment(0) | TrackBack(0) | 新聞 ニュース

NYタイムズの広告売上、マイナス成長から抜け出せず

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 長く低迷が続いていた米国の広告市場も、2010年に入ってようやく上向きに転じていたが、新聞メディアの広告は回復できないでいる。

 Morningstar作成のグラフからも明らかなように、米国の総広告売上高は2008年から09年までの8四半期続けて前年同期比がマイナスであったが、2010年にプラス成長に転じている。ところがNYT社(The New York Times Company)やGannett社のような代表的な新聞社の広告売上高は、2010年第4四半期になっても相変わらずマイナスに沈んだままである。

NYYGannett.jpg


 NYT社の2010年第4四半期(10-12月期)決算がちょうど出ていたので、簡単に覗いてみよう。売上高が前年同期比2.9%減の6億6170万ドルと、アナリストの予測を下回る結果となった。広告売上げがもう少し回復するのではと期待されていたのだが、前年同期比3.1%減となった。デジタル広告売上が同11.1%増と跳ね上がったが、絶対額の大きい新聞紙広告売上が同7.2%減となっているため、広告売上全体では同3.1%減と落ち込んだのである。


*NYT社(The New York Times Company)の
2010年10-12月期決算(単位:1000ドル)
NYT2010.jpg

 NYTimes.com,Boston.comなどを含むNews Media Groupのデジタル広告売上高は、前年同期比20.3%増の6750万ドルと好調であった。ただし、これまで着実に増えていたAbout Groupは同3%減の3520万ドルに留まった。2010年第4四半期のデジタル売上高は同11.0%増の1億1320億ドルとなり、全売上高の17.1%を占めるようになった。米国の新聞社の中で最もオンライン/デジタル化を進めた結果、それなりの成果を上げているといえそう。

 ところが、まだ全広告売上の多くを占める新聞紙広告売上が下降線をたどり続け、また新聞紙読者減により購読料(Circulation)売上も減り始めている。デジタル売上の増加分だけでは補えそうもない。新たな収益源を作り出さなければならない。そこで、間もなく月額20ドル程度のオンラインサイトの有料化や、iPadなど向けの有料電子新聞を発行することになっている。厳しい道のりが続く。


◇参考
・The New York Times Company Reports 2010 Fourth-Quarter and Full-Year Results(NYTimes.com)
・The Advertising Rebound Eludes Newspaper Publishers(Morningstar)
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posted by 田中善一郎 at 00:21 | Comment(0) | TrackBack(0) | 新聞 ニュース
2011年02月02日

エジプト騒乱でもツイッターなどのソーシャルメディアの活用が当たり前に

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AlJazeeraEnglishLive20110201.jpg
 
 100万人規模の反政府デモに向けて、市民が続々とカイロ・タハリール広場に集まってきている。その現場の映像をアラブ系放送局アルジャジーラは、オンラインで休むことなく生中継しているのだ(Al Jazeera English: Live Stream)。2日前にエジプト当局により、アルジャジーラの取材活動が禁止され、カメラなどが押収されたにも関わらずである。

 さらにYouTube(http://www.youtube.com/aljazeeraenglish)を介して、生中継映像に加えて、これまでの映像もオンデマンドで世界中で視聴できるようにしている。

 またアルジャジーラは、エジプト騒乱の幾つかの写真や映像を、クリエィティブ・コモンズのライセンスの下で他社の報道機関でも自由に使えるようにした。利用可能な写真はFlickrに掲載されている。

 09年6月のイラン騒乱と同じく今回のエジプト騒乱でも、マスメディアによるソーシャルメディアの利用は当たり前になってきているが、やはりツイッターの活用が目立った。リアルタイムにニュースを発信するのは当然として、情報収集にも欠かせなくなっている。以下の例のように、エジプト騒乱専用のツイッターアカウントを新たに用意したマスメディアも少なくない。

・CNN(http://twitter.com/cnni/egypt)
・The New York Times(http://twitter.com/nytimes/egypt)
・Al-Jazeera English (http://twitter.com/AJEnglish/egyptprotests)
・NPR(http://twitter.com/nprnews/egypt2011/)

 ここで興味深いのは、いかに質の高いツイッターアカウントを選んでフォローしているかである。NYTのアカウントでは55人をフォローしている。その中の1人に、アルジャジーラの記者Dima Khatib氏が含まれていた。
AlJazeeraReporterTwitter.jpg

 マスメディアではないが、JacobPark氏のツイッターアカウント「Tweeting from Egypt」がフォローしている111人のアカウントは質が高そうだ。111人はいずれも、インターネットの接続が十分でないにも関わらず、エジプト国内からツイートしている人たちである。3日前の記事で紹介したWael Abbas氏やNYTの人気コラムニストであるNicholas Kristof氏も選んでいる。Kristof氏は昨日カイロに飛んできたばかりである。

 ところでエジプトのインターネットは、ほとんど遮断されている状況にあるのに、ツイートがエジプト国外のサーバーに届くのだろうか。幸いにも、先週グーグルが買収したばかりのSayNowにより、電話回線によるツイートがエジプト国内からでもできるようになるという(TechCrunchの記事)。


◇参考
・How Journalists Are Using Social Media to Report on the Egyptian Demonstrations(Mashable)
・Report From Cairo(On the Ground)
・With no Internet, Egypt news freed by Google SayNow #Jan25(ComputerWorld)
・Al Jazeera Covers Protests Despite Hurdles
・Al Jazeera Releases Egypt Coverage Under Creative Commons (UPDATED)(ReadWriteWeb)
・Without Internet, Egyptians find new ways to get online(ComputerWorld)
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posted by 田中善一郎 at 02:58 | Comment(0) | TrackBack(0) | 新聞 ニュース
2011年01月28日

内部告発サイトのハイパーローカル版「Localeaks」、学生起業家が米新聞向けに立ち上げる

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 ウィキリークス( WikiLeaks)に触発されて、内部告発サイトのブームが止まらない。

 ネットワーク時代の国家や企業などの組織は、オープン化やフラット化がますます進み、情報は独占から共有へ。そして情報を誰もが手軽に発信でき、しかも一気にグローバルに伝播するようになってきた。国や企業などから国民や消費者へのパワーシフトにも拍車がかかる。こうしたネット環境下でウィキリークスが出現してきたのは当然かもしれない。さらに、これからのメディアの在り方、さらにジャーナリズムの在り方も大きく変わろうとしている。

 すでにメディア自身が動き始めている。有力なニュースメディアが、ウィキリークス的な調査取材手法を採用しようとしているのだ。まずアラブ系メディアのアルジャジーラ(Al Jazeera)が今月、Al Jazeera Transparency Unit (AJTU)を立ち上げた。アラブ圏内だけではなくて世界中から匿名の情報提供を支援者から受け付ける。狙いは、まだ報道されていないがニュース価値のある政府や企業の行動にスポットライトを当てていくことである。もちろん、情報提供者の提供情報や個人情報のセキュリティーは暗号化などで徹底して堅持する。提供された情報は AJTUのために働くジャーナリストしかアクセスできないようにする。New York Times(NYT)もリーク情報を収集するために、同じような調査取材手法を採用する予定である。

 また今週、CUNY( City University of New York) Graduate School of Journalismの学生Matt Terenzio氏が、Localeaksを立ち上げた。内部告発のリーク情報を、提供者が指定した新聞に届けるシステムである。全米の約1400の地方新聞が主対象になる。調査報道に熱心なジャーナリストのJeff Jarvis氏は、the Tow-Knight Center for Entrepreneurial Journalismのディレクターを務めているが、教え子が仕掛けたLocaleaksプロジェクトを非常にクールだと絶賛している。以下は、Localeaksの情報提供フォーマットである。州を指定すると、州内の新聞が現れる。その中から選んだ新聞に、リーク情報が伝わる。

localleaks.jpg

 続々と登場する内部告発サイトには、メディアを介さないで草の根的に生まれているものも多い。昨年は、ウィキリークス( WikiLeaks)の派生的なサイトが大半で、地域やテーマを絞り込んだサイトが目立つ。昨年末にReadWriteWebがまとめた内部告発サイトの一覧を以下に掲げる。

・Balkan Leaks: Balkans, site,
・BrusselsLeaks: Belgium,
・Haikuleaks: "Haïkuleaks Cable is poetry 65 haikus in 1830 cables."
・Indoleaks: Indonesia
・israeliLeaks: Israel, focused on gathering leaked documentation in and about Israel and surrounding countries.
・OpenLeaks
・PinoyLeaks: Philippines,
・PirateLeaks: Czech Republic,
・Rospil: Russia, documenting corruption in upper echelons of Russian government and economy.
・thaicables: Thailand, focused soley on Thailand.
・Thaileaks: Thailand (original site banned),
・Tunileaks: posts and discusses Tunisia-specific cables.



 最近のチュニジア政変でも、告発サイトの「Tunileaks」が大きな影響を及ぼしたと言われている。昨年12月に立ち上がった同サイトは、ウィキリークスが暴露したベンアリ前大統領たちの不正を訴え続け、反政府運動を後押ししてきた。

tunileaks.jpg

 ロシアでも市民が腐敗した政治や企業を告発できる「Rospil」が注目の的になっている。ロシアの政治や国営企業などの不正を告発している政治活動ブロガーが立ち上げたサイトであるからだ。でも内部告発サイトは反政府運動と連携することが多いだけに、ロシアでも自由な活動が継続できるかどうか不安視されていた。ところが、世界経済フォーラム(World Economic Forum、WEF)年次総会(ダボス会議)で基調演説したメドベージェフ大統領は、「情報の暴露は国際関係をより健全なものにしていく」と意外にもウィキリークスを擁護した。

 さて、国内ではこのような内部告発サイトが育つのだろうか。マスメディアが政府や企業を敵に回すような調査取材手法を採用できるだろうか。


◇参考
・Localeaks: A Drop-Box for Anonymous Tips to 1400 U.S. Newspapers(ReadWriteWeb)
・WikiLeaks' Imitators Proliferate But Go Their Own Way: A Catalog of Clones(ReadWriteWeb)
・WikiLeaks + Hyperlocal = Localeaks(WebNewser)
・Cables From American Diplomats Portray U.S. Ambivalence on Tunisia(NYTimes.com)
・WikiLeaks Russia website blocked over Putin palace pix(RIA Novosti)
・The disruptors arrive at Davos(BuzzMachine)
・NY Times considers creating an ‘EZ Pass lane for leakers’(The Cutline、Yahoo News Blog)
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posted by 田中善一郎 at 14:30 | Comment(0) | TrackBack(0) | 新聞 ニュース
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