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2018年09月11日

SNS上のニュースは不正確だと認識しながら、米成人の68%がSNSを介してニュースと接している

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  アメリカの成人の約3分の2がSNSを介してニュースと接している。Pew Research Centerの最新の調査結果である。

 Pewが今年7月30日〜8月12日に実施した調査”News Use Across Social Media Platforms 2018"の結果を図1に示す。SNSを介してニュースと出会っている成人の割合が、今年は68%となった。

SNSNewsPew2018a.png
(ソース:Pew Research Center)
図1 SNSを介してニュースと接触している米成人の割合

 2年前の2016年の62%、昨年の2017年の67%、そして今年の68%と増えてきているのだ。この2年間、SNSのニュースコンテンツについて、フェイクニュースとか極端に偏っているとか、さらに接触する消費者個人の情報が不正に利用されているとかで、各国の機関やメディアから毎日のように厳しく叩かれ続けているにも拘わらずである。SNSを介してニュースと接している消費者自身も、図2に示すように、58%の人はSNSで出会うニュースの多くが不正確であると答えている。


SNSNewsPew2018e.png
(ソース:Pew Research Center)
図2 ソーシャルメディア・ニュース消費者の何%がSNSで出会うニュースを正確だと見ているか?


 ただアメリカの伝統的なニュースメディアはリベラル派が以前から多いこともあって、エリート意識の高いニュースメディアに対する共和党支持者からの反発が高まっている。トランプ大統領の出現もあり、共和党支持者の72%がSNSのニュースコンテンツの多くが不正確だと声を大きくしているのだろう。逆に民主党支持者は不正確だと答えて割合は46%と比較的少ない。

 もともと、ソーシャルメディアのコンテンツを鵜呑みにする人は少ないはず。2年ほど前に、英ロイターが実施したデジタルニュースのユーザー調査を思い出す。米英のニュース消費者は、エンターテイメント性の高いバイラルニュースをSNS上で楽しむ一方で、正確なニュースを得るためにNYタイムズのような伝統メディアとも接していた。正確さよりも面白さ重視の軟派系新興ニュースメディアと、正確さ重視の硬派系伝統ニュースメディアを併せ読みする人が多いということだった。ちなみに同じロイターの調査によると、日本人は楽しさ重視で、軟派ニュースに関心を持つ人の割合が調査対象の26か国中で最も高かった(「日本人のニュースメディア接触、先進国の中で際立つ特異性、ロイター調査が浮き彫りに」)。

 
 不正確なニュースコンテンツが氾濫していることを認識しながらも、モバイル化、ソーシャル化の流れに乗って、アメリカ人はSNSを介してニュースと接する機会が減りそうもない。SNSもメッセンジャーも含めると種類が増えている。図3に、代表的なSNSで米成人の何%がニュースと接しているかを示している。Facebookが43%と最も多く、次いで21%のYouTube、12%のTwittertが続いていた。Facebookは昨年の45%から2%減となったが、アメリカのニュースパブリッシャーにとってはまだまだFacebookは頼らざる得ない存在である。


SNSNewsPew2018c.png
(ソース:Pew Research Center)
図3 ニュースメディア消費者の多い代表的なSNS

 ソーシャルメディア・ニュース消費者の各SNSのデモグラフィックデータが興味深い。ここではニュース消費者の多いトップ7種のSNSを取り上げている。ビジネスパーソン特化のLinkedIn、10代のZ世代に絶大人気のSnapchat、ニュースオタクがはまってしまうReddit、の個性豊かな3SNSは、残念ながら日本では開花しないままに終わりそう。

 トップ4種のSNSは米国だけではなくて、日本を含むグローバルに浸透している。米国のニュース消費者の各SNSのデモグラフィックデータは、以前から気になっていたが、相変わらず意外性がある。まずFacebookでは、女性比率が61%で白人比率が62%と高いのに驚く。男性はLinkedIn(男性比率が64%)やReddit(男性比率が72%)を利用するようになっているのだろう。
 
 Facebookの白人比率が62%と高いのに対して、Instagramでは白人比率が35%と極めて低い(昨年は32%)のも驚きだ。またTwitterのニュース消費者に高学歴者が多いのも、ちょっと意外であった。エリートビジネスパーソンが多そうなLinkedInや技術オタクがたむろするRedditのニュース消費者は高学歴者の割合が多いのは理解できるのだが・・・。

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(ソース:Pew Research Center)
図4 ソーシャルメディア・ニュース消費者のプロフィール


◇参考
・News Use Across Social Media Platforms 2018(Pew Research Center)

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posted by 田中善一郎 at 18:16 | Comment(0) | 新聞 ニュース
2018年06月15日

ニュースユーザーのFB離れとサブスクリプション移行が始まった、ロイター・レポートより

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 世界のニュースメディアの利用動向を知るのに格好のレポート「Digital News Report」が、今年もロイター(Reuters Institute)から発行された。

 米大統領選のトランプ当選や英国のEU離脱に端を発して、この1〜2年、ニュースメディア業界は大荒れに荒れた。それだけに今年のレポートの発行を待ち構えていた人も多かったのではなかろうか。

 まず、今年の調査について。今回は2018年1月末〜2月始めに、37か国のオンライン・ニュース・ユーザー7万4000人を対象に行われた。各国から、少なくとも2000人がアンケート回答者として参加した(台湾だけは1,013人)。日本人回答者は2033人。調査はYouGovが実施。

 参加した37か国は次の通り。ニュースメディア産業がある程度整備されている国といえる。内訳は、欧州が24か国、アメリカ(北米+南米)が6か国、アジア・パシフィックが7か国。

UK 、Austria、Belgium 、Bulgaria、Croatia、Czech Rep、Denmark、Finland、France、Germany、Greece、Hungary 、Italy、Ireland、Netherlands、Norway、Poland、Portugal、Romania 、Slovakia、Spain、Sweden、Switzerland 、Turkey、US、Argentina、Brazil、Canada、Chile、Mexico、Australia 、Hong Kong、Japan、Malaysia、Singapore、South Korea、Taiwan

 インターネットも普及している国々で、いずれも国民の60%以上がインターネットを日常的に利用している。調査が難しい中国やロシアは含まれていない。またアフリカや中東の開発途上国も入っていない。


分散型メディアへの流れが止まり、逆もどりするかも 

 この1年間の混沌としたニュースメディア環境の中において、多くのニュースパブリッシャーがより高品質のコンテンツを生み出し、有料購読者増に励んでいることを、ロイターとしては訴えたかったようだ。

 そこでレポートの冒頭でも、ソーシャルメディアやアグリゲーターを介した分散型メディアの流れにブレーキがかかる一方で、多くの国でサブスクリプションの流れが強まっていると主張している。分散型メディアと言っても、実際には断トツのシェアを誇るFacebookが参照トラフィックの大半をもたらしている。

 そこで、世界各国のニュースユーザーがニュースソースとしてFacebookをどれくらい利用しているかを調べた。その結果が図1である。先週にFacebookを介してニュース記事に接した回答者の割合を示している。多くの国では40~60%の国民が、Facebookをニュース記事と出会う場として利用している。10%を切っている国は日本だけで、そのお陰で日本のニュースパブリッシャーは昨今のFacebook騒動にほとんど巻き込まれないで済んでいる。ただしFacebookが仕掛けた世界同時進行の新しいパブリッシングの流れから、蚊帳の外に置かれがちであったが・・。

 ともかく、世界中のほとんどの有力ニュースパブリッシャーはソーシャルプラットフォームであるFacebookへの依存を高めてきた。併せてFacebookを介してニュース記事と接するユーザーも増えていったのだ。ところがフェイクニュースや個人情報不正流出などのFacebook騒動が燃え盛るに伴い、Facebookを介してニュース記事と接するユーザーが減り始める国が現れ始めた。その中で目立ったのが、メディア大国の米国。前年に比べ9%も減っただけに、分散型メディアが曲がり角に差し掛かっていると言い張るのも頷ける。



ロイター2018FBa.png
(ソース:Reuters Institute)
図1 Facebookを介してニュース記事と接するユーザーの割合

 図1の調査対象の27か国のうち18か国で、昨年に比べFacebookを介してニュース記事と接するユーザーの割合が減った。Facebookを含むソーシャルメディアを介してニュース記事と接するユーザーの割合が、ブラジル、米国、英国、フランス、ドイツの各国でどのように推移しているかを図2に示す。2年前まではソーシャルメディアをニュースソースとして活用するユーザーが各国で揃って増え続けていたが、昨年あたりから壁に突き当たっている。米国も2013年の27%から2017年の51%へと一本調子で増え続け、分散型メディア・ブームを巻き起こしたが、2018年には一転して45%へと転落した。

ロイター2018FBb.png
(ソース:Reuters Institute)
図2 ソーシャルメディアをニュースソースとして利用しているユーザーの割合の推移。


ニュースソースとしてFBを活用するユーザー数がグローバルに減り続けている

 ニュースパブリッシャーは過度なFacebook依存を避けるためにも、他のソーシャルメディアにも記事を多く投稿するようになってきている。このため、ユーザーもニュースソースとして利用しているソーシャルメディアの種類が増えてきている。図3に、6種のソーシャルメディア別に、どれくらいのユーザーがニュースソースとして利用しているかを示している。Facebookをニュースソースとして利用している人が圧倒的に多いのだが、2年前(2016年)の42%から今年の36%へと急落下しているのが目につく。


ロイター2018FBc.png
(ソース:Reuters Institute)
図3 ニュースソースとしてソーシャルメディアを利用した人の割合。6種のソーシャルメディア別の割合の推移を示している。主要12か国(米、英、独、仏、日本など)の回答者を対象。2年前から、Facebookだけがニュースソースとして活用しているユーザー数を減らしている。

 一般の用途でソーシャルメディアを利用している割合を、ソーシャルメディア別に示したのが図4である。興味深いのは、ニュースソースとしてFacebookを活用している人がはっきりと減っていたのに、一般の用途でFacebookを利用している人の割合は65%と天井を打ちながらも減っていないのだ。明らかに、日常的にFacebookを利用しているユーザーもニュースソースとしては使いたくないという人が増えてきている。つまりフェイクニュースなどの信憑性に欠けるニュース記事と接する機会が増すFacebookを避けようとしているのだろう。


ロイター2018FBd.png
(ソース:Reuters Institute)
図4 多目的にソーシャルメディアを利用している人の割合。

 海外の有力ニュースパブリッシャーの多くは、Facebookからの流入トラフィックに大きく依存していた。ところが信憑性のないコンテンツがFacebook上に氾濫していると同社 への批判が高まるにつれ、その対応としてFacebook自身もニュースフィードのアルゴリズムを変更してきている。ニュースフィードに流すニュースパブリッシャーの記事数を絞り込んできており、その結果として図5に示すように、Facebookから
ニュースパブリッシャーへのトラフィックは減ってきている。ニュースパブリッシャーにとって、否応なしにFacebookへの依存を減らしていかなければならない。

ロイター2018FBe.png
(ソース:Reuters Institute)
図5 ニュースパブリッシャー・サイトへの外部トラフィック(参照トラフィック)のうち、Facebookからのトラフィックが占める割合。

 広告売上で成り立っているFacebookからすれば、ニュースパブリッシャーの編集記事を優先してまでニュースフィードに流すことはしたくない。ニュースパブリッシャーのFacebook離れが起こっても構わないのかもしれない。図3に示したように、ニュースソースとして利用されるソーシャルメディアとして、Facebook以外にWhatsApp、FB messenger、Instagramが浮上しているが、いずれも同社傘下にあるからだ。


北欧を中心にサブスクリプションが浸透 

  ニュースパブリッシャーのFacebook離れが進むと、デジタル広告売上が伸び悩む心配が持ち上がる。すでに昨年半ばあたりから、Facebookからの参照トラフィックが落ち込むのに伴い広告売上が減り続け、休刊に追い込まれた新興のニュースパブリッシャーも出てきた。オンラインニュースサイトを支えていくには、デジタル広告売上だけでは不十分で、ユーザーからのサブスクリプション料金や会員料金、寄付金に頼る動きが軌道に乗ろうとしている。

 図6に示すように、北欧を中心に各国で有料コンテンツをユーザーが着実に増え続けている。課金方式にも工夫が凝らされている。例えばノルウェーの新聞サイトでは、ハイブリッド課金モデル(月間の上限ページビュー+いくつかのプレミアムコンテンツ)を採用して、成功しているという。

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(ソース:Reuters Institute)
図6 有料のオンライン・ニュースコンテンツを利用している割合。直近の1年間だけでも、有料コンテンツユーザーが北欧を中心に増え続けている。


◇参考
・Reuters Institute Digital News Report 2018(Reuters Institute)

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posted by 田中善一郎 at 14:33 | Comment(0) | 新聞 ニュース
2018年05月06日

米ニュースメディアが相次ぎ打ち上げる「ポッドキャスト」の新番組、聴取デバイスに「スマートスピーカー」も加わりすそ野拡大へ

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 米国の有力なニュースメディアが「ポッドキャスト」の新たな番組の立ち上げに力を入れ始めている。


新しいポッドキャストが次々と

 先日も話題の「TicToc by Bloomberg」を覗いていると、予告通り同サービスがリーチ拡大のために「ポッドキャスト」を4月27日から新たに始めていた。TicToc by Bloombergは、ブルームバーグが4か月前からTwitterで提供しているライブの24時間ニュースチャンネルである。そのスナップショットを図1に示す。その時の視聴者数は43万人であった。硬派のコンテンツにもかかわらず人気を集めているようだ。


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図1 ブルームバーグがTwitterで提供しているライブの24時間ニュースチャンネル「TicToc by Bloomberg」

 そのTicToc by Bloombergに追加されたポッドキャスト番組では朝版のTicToc Todayと夕版の TicToc Tonightとがあり、それぞれ6分少々の音声で最新のニュースダイジェストを流している(図2)。 世界のニュースのスナップショットという位置づけで、随時更新されているようである。ただし平日のみ。


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図2 「TicToc by Bloomberg」のポッドキャスト。2018年4月末から開始。PlayerFMから


  また続いて出くわしたポッドキャストも興味深かった。テック系ニュースアグリゲータであるTechmemeが3月6日から始めた「Techmeme Ride Home」である。平日の東部時間17時に、約15分の音声でその日の注目テック系ニュースを紹介している。Techmemeサイトの特徴は、選ばれたニュース記事に対して識者のレベルの高いコメント(ツイート)が多く付記されていることだが、ポッドキャストでも注目すべきニュース記事へのコメント(識者のレベルの高いツイート)も選んで紹介している。

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図3 ニュースアグリゲーターのTechmemeもポッドキャストを立ち上げ 


 このように、ニュースメディアが本気にポッドキャストに取り組むようになってきたのは、NYタイムズの大成功があったからであろう。


毎日100万人が聴き入る「The Daily」、NYタイムズのフロントページ的な存在に

 NYタイムズが2017年1月に立ち上げたポッドキャストThe Dailyの勢いは凄まじい。これまで280万回以上もダウンロードされ、毎日、平均すると100万人が聴いている。今やApple iTunesの Top 10 podcasts の常連だし、The AtlanticはThe 50 Best Podcasts of 2017 のナンバー1に挙げている。



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図4 NYタイムズのポッドキャスト「The Daily」。PODTRACによる2018年3月のU.S. Unique Monthly Audience ランキングでは第2位。

 パーソナリティーは同新聞の政治ジャーナリストのMichael Barbaro氏が務め、インタビューをベースにした約20分のエピソードを毎日(平日のみ)流している。ニュースの注目トピックスに関するコメントに加えて、そのトピックス関連者とのインタビューも目玉になっている。Barbaro氏の評判も高く、昨秋には雑誌Peopleで“sexiest newsmen alive” listと持てはやされていた。The Dailyがその日にどのようなコンテンツを取り上げたかまでがニュース記事になったりしている。

 今やThe Dailyは、NYタイムズの一部ユーザーにとって、新聞紙やサイトに代わる事実上のフロントページ的な存在になっているようである。聴取者の多くは、週に4~5回聴いているという。 BMW, Budweiser, Googleなどが大手広告主として付いている。同社CEOのトンプソン氏は今週の決算発表でもthe Dailyの成功を誇らしげに語り、このthe Dailyの成功手法をお手本にして、これからの進出するTVとフィルム分野(参考記事)での成果を目指すと意気込んでいた。



スマホでポッドキャストをいつでもどこでも聴取へ

 音声版ブログとして誕生したポッドキャストは、10年少し前から新しいネットサービスとして注目はされていた。アップルのiTunesでも2005年からポッドキャストの配信に着手しており、その2005年には”podcast"がオクスフォード英語辞典の新語として収録されたぐらいだから、その頃には既にかなり話題にはなっていた。

 ニュースメディアをはじめ多くのパブリッシャーも、その当時からポッドキャスト・サービスに手掛けていた。ただし一部の根強いファンに支えれらていたものの、ニッチな目立たないサービスの域を出ていなかった。例えばいち早くポッドキャストメニューを充実させていたGuardianは今も約20番組を備えているが、あまり注目されることはなかった。

 ところが、ポッドキャストの聴取デバイスがパソコンからスマホへとシフトするに従い、ポッドキャストに接するユーザーが増え始めた。Nielsenの調査によると、2017年には2390万人の米国人(18歳以上)が、最近の30日間にスマホでポッドキャストを利用していた。図5で示すように、2014年の930万人から、3年間で2.5倍以上も増えている。スマホだといつでもどこでも聴けるようになるので、1人当たりの視聴時間も増えている。
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(ソース:Nielsen)

図5 ポッドキャストの聴取デバイス。過去30日間でポッドキャストを聴いたユーザー数(聴取デバイス別)

 これからは聴取デバイスにスマートスピーカーも加わり、オーディエンスはさらに増えそう。Statistaの予測では、2021年には米国の月間のポッドキャスト・ユーザー数は1億1200万人に膨らむと見込んでいる。

 もともとポッドキャストでニュースを聴くオーディエンスはエンゲージメントが高いとされているだけに、ある程度の規模が期待できるとなると、パブリッシャーも気合の入れ方が変わる。これまで以上に人と金をつぎ込み、専任のパーソナリティを立てて、ポッドキャスト向けにオリジナルコンテンツを作り込んでいきたくなる。The Atlanticもポッドキャストの専門スタッフを募集している。

 世界の有力パブリッシャーの多くが、今年、注力する分野としてポッドキャストをあげているのも頷ける。ロイターが世界29か国(日本も含む)の主要パブリッシャーの編集者リーダー194人を対象に2017年12月に実施した調査によると、回答者の属する有力パブリッシャーが2018年に注力する分野として、58%の回答者がポッドキャスト、また同じく 58%の回答者が台頭してきたスマートスピーカー向けに特化した音声コンテンツにトライしていくと答えた。

スマートスピーカでの聴取を促す

 ニュースパブリッシャーは、スマートスピーカー介してポッドキャストをオーディエンスに聴いてもらおうと、すでに動き始めている。朝の起床時や、せわしい朝食やトイレ時間とかには、スマホでなくて音声で指示できるスマートスピーカーでニュースを聴きたいというニーズはありそう。Edison Researchの調査でも、以下の図6で示すように、現在のスマートスピーカー・ユーザーも半数近くが既にニュースを聴いている。


EdisonSmartSpeakerMainUses.png
図6 スマートスピーカー・ユーザーが聴いているコンテンツ。

 ワシントンポストが2月12日から始めたポッドキャスト「Retropod」でも、Amazon EchoやGoogle Homeのセットアップのやり方を案内ページ(図7)で説明し、スマートスピーカーでの利用を促していた。


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図7 ワシントンポストのポッドキャスト「RETROPOD」


 こうしたニュースメディアのポッドキャスト番組の課題にプロモーションがある。主流の写真コンテンツや動画コンテンツに比べ視覚性に乏しいだけに、ネット上ではどうしても目立たないからだ。またソーシャルサイトで拡散することもあまり起こりそうもない。ただポッドキャストのプラットフォームには、老舗のiTunes等に加えSpotifyなどの新規参入もあって活気づいてきたので、それらを介してオーディエンスとの接点を広げていけそう。

 また、ソーシャルサイトにおいては、例えばFacebookグループの利用なんかも興味深い。NYタイムズはFacebookグループを利用して、ポッドキャストのファンクラブ「The New York Times Podcast Club」を立ち上げている(図8)。毎週、特定のポッドキャスト番組のエピソードについて会員間で議論しあっている。会員数は現在、2万4500人。NYタイムズのポッドキャストの月間ユニークユーザー数はこの3月に400万人を超え、月間のダウンロード数は3000万となった。

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図8 NYタイムズのFacebookグループ「The New York Times Podcast Club」



◇参考
・Infinite Dial 2018(Edison Research)
・Nielsen Q1 2018 Podcast Insights (Nielsen)
・Journalism, Media and Technology Trends and Predictions 2018(Reuters Institute)
・Listen Up! News Aggregator Techmeme Is Launching A Podcast(Fast Company)
・New York Times' Breakthrough 'The Daily' Soars Past 100M Download Mark(TheStreet)
・Newsonomics: The Daily’s Michael Barbaro on becoming a personality, learning to focus, and Maggie Haberman’s singing(NiemanLab)
・Newsonomics: 11 questions the news business is trying to answer in 2018(NiemanLab)
・Who needs video? Slate is pivoting to audio, and making real money doing it(NiemanLab)
・Bloomberg's TicToc Set To Launch Podcasts, Newsletters(MediaPost)
・ABC News Will Launch Daily ‘Start Here’ Podcast(Variety)
・Why Podcasting Is the Next Marketing Frontier(Entrepreneur)
・New York Times Expands TV, Podcast Effort After ‘Daily’ Success(Bloomberg)
・The New York Times Is Turning Its Hit Podcast, ‘The Daily’, Into A TV Show(tubefilter)

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posted by 田中善一郎 at 08:44 | Comment(0) | 新聞 ニュース
2018年01月30日

国民の信頼が最も低い米国と、最も高い中国:エデルマン調査より

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 米国は国民から最も信頼されていない国に、一方で中国は最も信頼されている国に・・・。

 世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)のセッションでも紹介されていた、エデルマンの信頼度調査によると、国民の自国に対する信頼度ランキングで米国が最下位近くに急落したの対して、中国はランキングのトップに躍り出たのだ。

 エデルマンの「2018 Edelman Trust Barometer」は年次のグローバルな信頼度調査で、今年は18年目。今回は2017年10月28日から11月20日にかけて、28カ国で実施したものである。18歳以上の各国1,150人を調査回答者とし、その中に各国200人(米国と中国においては500人)の知識層も含む。知識層は学歴が大卒以上の25〜64歳の大人で、年収が上位25%以内のかなり裕福な層と言えそう。

 調査では、一般層の国民と、さらに知識層に絞った国民を対象に、各国で自国の公の組織に対する国民の信頼度を測った。その結果の国別ランキングが、図1(一般層)と図2(知識層)である。組織としては企業、政府、メディア、NGOの4種があり、4種に対する信頼度の平均値が、図1と図2に示されている。エデルマンの評価によると、信頼していると答えた割合が60%を超える国は国民から信頼されており、50%〜59%だと中立の国で、49%以下だと国民から信頼されていない国としている。図1および図2では、1年間の変化を見るために前年の信頼度も掲載している。

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(ソース:Edelman)
図1 一般層国民の自国組織に対する信頼度ランキング。この1年間で一般層国民の信頼度を落とした国は、-9ポイントの米国と-5のイタリア。逆に信頼度をアップさせた国は、+7の中国を筆頭に+6の韓国やUAEなど。

Edelmans2018国民知識層.png
(ソース:Edelman)
図2 知識層国民の自国組織に対する信頼度ランキング。知識層の信頼度を大きき落とした国は-23の米国で、信頼度を上げた国は+9のアルゼンチンとスエーデンなど。


 一般層国民の自国組織に対する信頼度ランキング(図1)で、米国は昨年は52%で中立であったが、今年は43%と信頼されない国に格下げされている。さらに知識層のランキング(図2)で、昨年は68%と信頼されていたのに、今年は45%と最下位に転落し、調査対象の28カ国中最も信頼されていない国に成り下がっている。

 対照的に中国は、一般層国民の信頼度が74%、知識層国民からの信頼度が83%へとアップし、トップにランクされた。最も自国民から信頼されている国となっている。 今回の調査結果で話題になったのはやはり、トランプ氏が米大統領に就任してからの1年間で、米国社会の信頼が崩壊していることを浮き彫りにしたことである。過去18年間の調査で見られなかった劇的な変化を見せつけてくれた。まず一般層米国民は昨年の52%から今年の43%へと9ポイントも一気に信頼度を下げた。さらにトランプ大統領が嫌う知識層国民の反発も凄まじい。1年前には68%と信頼されていたのに、大統領に就任後の今年は45%に急降下し最も信頼されていない最下位に転落してしまったのだ。逆に中国は、一般層国民からの信頼度も知識層国民からの信頼度もこの1年間でアップし、ともにランキングのトップの座に上りつめた。

 日本人は公の組織をもともと信頼していないのか、一般層国民および知識層国民の信頼度がともにかなり低い。昨年と比べ信頼度はあまり変わっていないが、ランクは最下位近くに低迷している。膨らむ一方の将来への不安に対して、組織がしっかりと対応してくれているとは思えないからか。問題先送りが多すぎては仕方ないのかも。

政府、メディア、企業に対する個別の信頼度でも、中国は上昇し米国は降下

 次に、4種の組織(政府、メディア、企業、NGO)のそれぞれに対する自国民の信頼度がこの3年間でどう変化しているかを、日本(図3)、米国(図4)、中国(図5)の各国で見ていこう。

 日本人はどの組織に対してもあまり信頼していないが、やはりメディアに対する信頼度の低さが気になる。今回も信頼している回答者が32%しかいなかった。ここでメディアとは、伝統および新興のパブリッシャーだけではなくて、ソーシャルメディアのプラットフォームも含んでいる。
  
EdelmanTrustJapan2018.png
(ソース:Edelman)
図3 日本人の組織(政府、メディア、企業、NGO)に対する信頼度

 米国人はこの1年間、どの組織に対しても信頼度を落としており、その凋落ぶりは図4に示すように凄まじいが、中でも当然のように政府に対する信頼度が14ポイント・ダウンと急降下しているのが際立っていた。さらに知識層に絞ると、政府への信頼度が昨年の63%から今年の33%へと30ポイントもダウン、半減してしまっていた。

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(ソース:Edelman)
図4 米国人の組織(政府、メディア、企業、NGO)に対する信頼度。

 中国国民の自国組織に対する信頼アップに、トランプ大統領の行動が追い風となったと言える。一党独裁制で政治的自由や報道の自由に制約が多いにもかかわらず、政府やメディアなどへの信頼が高くなっている。昨年は信頼度が下がり気味であったが、2018年に一転して急上昇している。特に一般層国民からの信頼が厚くなっているのが目立つ。一般層の政府に対する信頼度が76%から84%へと8ポイントも、企業に対する信頼度が67%から74%へと7ポイントも、1年間でアップしいるのだ。

 政府や企業やメディアの後押しもあって生活が豊かになったお蔭で、中流階級からの信頼が高くなっているようだ。例えば、政府の保護政策の後押しもあってアリババやテンセントのようなネット企業が大躍進し、さらにグローバルに拡大していることをメディアを通して知らされる。中国国民が活躍できる仕事の場をグローバルに用意してくれているのも、政府が進める一帯一路政策のお蔭である。

 政治的な自由がないことに対する不満があっても、今はグローバル展開で経済的に豊かにしてくれる組織を信頼しておきたいということか。反グローバルのトランプ政権が居座っている限りにおいては、中国人の自国組織への信頼はしばらく揺るぎそうもない。

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(ソース:Edelman)
図5 中国人の組織(政府、メディア、企業、NGO)に対する信頼度


グローバルな好感度も、中国はアップし米国はダウン

 ともかく、打算的にしろ中国人は自国の組織を信頼しているが、海外の人は中国をどう見ているのだろうか。 Pew Research Centerが昨年春に実施した「Global Attitudes Survey」が興味深い。37カ国で各国1000人前後の大人を対象に行った調査である。

 国際的な問題の対応について、習近平国家主席とトランプ大統領に対するグローバルな信頼度は図6のようになった。両者ともあまり信頼されていない。習近平氏は37カ国の人の28%からしか信頼されていない。それでも、22%%の人からしか信頼されていないトランプ大統領よりもましだが。この調査時からほぼ1年近くになる現在では、グローバル派となっている習近平氏の信頼度が、反グローバル派のトランプ氏をさらに大きく引き離しているかもしれない。

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(ソース:Pew Research Center)
図6 習近平国家主席とトランプ大統領に対する信頼度

 政治リーダーに対する信頼度が低い国では、その国に対する好感度も低くなるだろう。政治的や経済的な自由が高いとされる米国に対するグローバルな好感度は、もともと高かった。でも図7のように、世界の成人たちが中国と米国に対してそれそれ好意的に見ている割合は、ほぼ同じになってきた。現在、同じ調査を実施すれば、中国の方が好きと答える人の割合が多くなっているかもしれない。ほぼ1年前でも、18歳から29歳の若年層では、中国が好きと答えた割合がグンと増えていた。

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(ソース:Pew Research Center)
図7 中国や米国に対して好きな国と答えた割合。

 中国に対する好感度を国別に示したのが次の図8である。特に、領土問題や安全保障などの利害関係がないアフリカや南米では、経済大国である中国に対する好感度は極めて高い。逆に日本人は中国を嫌っている。領土問題などで衝突しているベトナムと並んで、中国嫌いが際立っていた。

PewViewsofChina2017.png
(ソース:Pew Research Center)
図8 中国に対する好き嫌いの割合(国別)

◇参考
・2018 Edelman TRUST BAROMETER( Edelman)
・2018 Edelman Trust Barometer Global Report:PDF版( Edelman)
・トラストバロメーター2017( Edelman Japan)
・Globally, More Name U.S. Than China as World’s Leading Economic Power(Pew Research Center)
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posted by 田中善一郎 at 07:00 | Comment(0) | 新聞 ニュース
2018年01月21日

メディアに好かれる「グーグル」と、メディアに嫌われる「フェイスブック」

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 メディア会社はグーグルに対し好意的になっているが、フェイスブックを嫌っているようだ。

 オンラインのニュースメディア市場では、テック会社であるプラットフォームの力が強大化し、メディア会社の主導性が損なわれようとしている。先月(2017年12月)、ロイター( Reuters Institute for the Study of Journalism and the University of Oxford)がグローバルの主要パブリッシャーの主導者を対象に実施した調査によると、パブリッシャーの半分近い44%が1年前に比べプラットフォームの影響力が増していることに警戒心を抱いていると答えた。警戒していないパブリッシャーはわずか7%しかいなかった。

 では現時点で、パブリッシャーが主要プラットフォームのそれぞれをどう見ているかのだろうか。各プラットフォームに対して肯定的見方から否定的見方まで5段階で評価したスコア結果が興味深い。図1に示すように、最も高いスコアを得たのがグーグルで、最も低かったのがフェイスブックとなっていた。スコアが3以上のプラットフォームが、パブリッシャーから好意的に見られていることになる。


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(ソース:Reuters Institute for the Study of Journalism)
図1 パブリッシャーがポジティブに捉えているプラットフォームと、ネガティブに捉えているプラットフォーム。

 今回の調査では、欧州を中心に米、豪、日本、韓国、ケニアなどを含む29か国の伝統メディアや新興メディア(デジタルオンリー)のリーダー(CEOや編集責任者など)194人を対象に実施した。通常ロイターのこの種の調査では、ニュースメディアが主対象となる。

  オンラインメディアはこぞって、オーディエンスとの出会いの場としてプラットフォームへの依存を高めている。その中で際立っているのが、検索エンジンのグーグルとSNSのフェイスブックである。米国だけではなくて欧州や途上国も含めた世界のパブリッシャーにとって、両巨人への依存が非常に高くなっている(例外的に日本は、中国やロシアと同様、Facebookにあまり依存していない。「FBに頼る海外のニュースメディア、FBに頼らない日本のニュースメディア」を参照)。

 米トラフィック解析会社Parse.lyの測定結果からも両巨人の突出が明らかである。米国のオンラインパブリッシャーの記事への外部からの参照トラフィックのシェアを見ても、最近の1年間でも図2のように、3位以下を大きく引き離してグーグルとフェイスブックが競い合っている。

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(ソース:Parse.ly)
図2 パブリッシャーへの参照トラフィックの流入元シェア。

参照トラフィックでもグーグル検索がフェイスブックSNSに大逆転

 もともと4年前頃までは、グーグル検索からのトラフィックを増やすことに、パブリッシャーは躍起になっていた。ところが「検索」から「ソーシャル」への流れがモバイルシフトに乗じて加速化し、2年半ほど前に一つの転換期を迎えた。Parse.lyの測定で、オンラインメディア(デジタルパブリッシャー)への外部トラフィックで、フェイスブックがグーグル検索に2015年6月に追い抜いついたからだ。それ以降、次第に両者の差は開くようになり、一時、米メディアサイトへの全流入トラフィックのうちの45%前後がフェイスブックから、35%前後がグーグル検索からとなり、フェイスブックが事実上独走態勢に入ったかのように思えた。パブリッシャーは競って、フェイスブックに記事を投稿するようになった。

 ところが、「メディア接触の主導権争い、「フェイスブック」の独走に「グーグル検索」が奪回迫る」で紹介したように、昨年の初夏あたりから、グーグル・トラフィックが巻き返しフェイスブック・トラフィックに追いつき追い抜き始めたのだ。さらに昨年の秋以降は、図2でもはっきりと見られるように、グーグルのシェアが急上昇しフェイスブックが急降下していった。図3の直近の1か月間のシェア推移からも、両者のトラフィック差が2倍に広がってしまった言える。

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(ソース:Parse.ly)
図3 直近の過去30日間の参照トラフィックの推移。昨年の春から夏にかけて、グーグルがフェイスブックに抜き去ってからは、両者の差が日々拡大している。直近(2018年1月17日)でも、グーグルが45%でフェイスブックが22%と大差がついてしまっている。

ニュースフィードのアルゴリズムの変更で、トラフィックが激減するパブリシャーも
 
 1年ほど前から、フェイスブックからのトラフィックが減って、月間ユニークユーザー数とかページビュー数が落ちこんだと、不満を漏らすパブリッシャーが増え始めていた。Parse.lyの調査でも、2017年2月から10月までの間に、測定対象のパブリッシャーサイトの約2/3でフェイスブックのトラフィックが減っていた。残りは増えていたことになる。その期間で半数近くのパブリッシャーは20%以上もフェイスブックのトラフィックを減らし、さらに5分の一のパブリッシャーに至っては50%以上もトラフィックが激減した。フェイスブックのトラフィックに大きく依存している新興パブリッシャーにとって大打撃となったのだ。

 多くのフォロワーを擁しているパブリッシャーが大量の記事をフェイスブックに投稿しているにも関わらず、当てにしていたフェイスブックのトラフィックが減り始めているのである。明らかにパブリッシャーからの投稿コンテンツ(大半がリンク情報)がニュースフィードに露出する頻度が減っているのだろう。つまり、フェイスブックが頻繁に実施するニュースフィード・アルゴリズムの変更が大きく影響したのは間違いない。

 フェイスブックは3〜4年ほど前から、パブリッシャーのコンテンツをニュースフィードに優先して表示するように、アルゴリズムを変えてきていた。それに合わせて、パブリッシャーのフェイスブック依存度が年々高まっていった。だが昨年から風向きが変わってきた。パブリッシャーのコンテンツを優遇しても、フェイスブックの広告売上アップに大きく貢献しないことや、本来のコミュニティーサイトの役割が薄まりユーザーの滞留時間が減る懸念が高まっていた。そのため、友人のコンテンツを優先表示するアルゴリズムの変更はジワジワ進められていた。

 それに加えて、フェイクニュースなどの信憑性の無いコンテンツをフェイスブックが拡散させ、蔓延させたと批判が高まり、また増え続けるクリックベイトにも手を焼いていた。その対策として、ユーザーに不利益で信頼のおけないンテンツを表示しないように手を加えていた。グレイゾーンのニュースコンテンツが排除されるようになり、中にはまともなニュース記事までも犠牲になったりしたという。

 こうした混乱の中で、フェイスブックCEOのマーク・ザッカーバーグ氏が先日(2018年1月19日)、信頼できるパブリッシャーのニュースを優先して表示していきたいと明言した。信頼できるパブリッシャーをどのように定めていくかが物議をかもしそうだが、ともかくニュースコンテンツは排除していかないということだ。

パブリッシャーはグーグルのAMPを好み、フェイスブックのインスタント記事を嫌う

 としても最近のフェイスブックのアルゴリズムの変更で振り回されきただけに、冒頭のロイターの調査でフェイスブックに対して、世界のパブリッシャーの多くがフェイスブックに対して不満を募らせているのは仕方がない。フェイスブックだけではなくてグーグルに対しても、パブリッシャーに分配する収益を増やすべきだと主張しているが、特にフェイスブックへの不満が目立ってきた要因の一つに、インスタント記事の登場がある(「フェイスブックの分散型メディア「インスタント・アーティクルズ」、一気にアジアや南米のグローバル展開に突入」)。

 インスタント記事では、フェイスブックに投稿するコンテンツを、リンク情報だけではなくて記事全文にしなければならない。わざわざ時間をかけてパブリッシャーサイトに飛ばなくても、記事全文を高速表示できるようになる。ユーザーにとって高速表示はありがたい。それ以上に、フェイスブックにとって大きなメリットをもたらす。ユーザーを自分のフェイスブックのドメイン内に留めておけるし、インスタント記事内の広告枠も同社のルールに従わせることになる。

 2015年春から段階的に、世界中の主要パブリッシャーにインスタント記事の採用を強力に働きかけた。インスタント記事をニュースフィードに優先表示させることを臭わさせられたこともあって、多くのパブリッシャーが採用に動いた。パブリッシャーにとって不利な条件であったが、スマホ時代のコンテンツの高速表示は避けられない動きでもあった。

 ところがグーグルも同じようなモバイルで高速表示できるAMPを立ち上げた。インスタント記事よりオープンで、グーグルの検索エンジンだけではなくてTwitterなどのプラットフォームでも利用できる。それにパブリッシャーにとって魅力なのは、AMPを採用したコンテンツがグーグル検索結果の上位に表示されやすいことである。パブリッシャーが雪崩を打って、AMPの採用になびいた。図4でも明らかに、パブリッシャーへのトラフィックでインスタント記事が伸び悩む一方で、AMPが急増している。AMPの急伸のお蔭で、図2に示したように、パブリッシャーへの参照トラフィックの流入元シェアで、グーグルがフェイスブックに対し2倍の大差をつけるに至っている。

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(ソース:Parse.ly)
図4 フェイスブックのインスタント記事とグーグルのAMPのトラフィックの推移

嫌でも頼らざるを得ない
 
 フェイスブックに対して警戒心を募らせているパブリッシャーも、ミレニアル世代に代表される若い人にリーチするソーシャルプラットフォームとなれば、やはり嫌でも圧倒的な普及と拡散性の高いフェイスブックに頼らざるを得ないのが現状だ。バイラル性の高い記事を武器に、フェイスブックを舞台にして大躍進したBuzzFeedやHuffPostのような新興パブリッシャーが、しばらく苦戦を強いられそうだ。

 NewsWhipの測定データをプロットした図5でも、フェイスブックにおけるBuzzFeedとHuffPostの月間Interaction数(=Comment数+Share数+Like数)が、この2年間で急速に落下している。一方で、高級ニュースメディアと言われているNYTimesとWashington Postは、有料コンテンツの制約がありながらも、エンゲージメントに関わるInteraction数はさほど減っていない。インスタント記事の採用からいち早く離脱し、ファイスブック依存離れを宣言しているNYTimesが、Interaction数を増やしているのが興味深い。マーク・ザッカーバーグ氏が先日、信頼できるパブリッシャーのニュースを優先してニュースフィードに表示していくと明言したことを、先取りして実施しているのかもしれない。

NYTvsBuzzfeedEngagement2017Dec.png
(データ:NewsWhip)
図5 有力ニュースパブリシャーのInteraction数(=Comment数+Share数+Like数)



◇参考
・Journalism, Media and Technology Trends and Predictions 2018(Reuters Institute for the Study of Journalism)
・Facebook Declines, Google Grows as Battle for News Audiences Continues(Parse.ly、 Blog)
・BuzzFeed is losing website traffic as readers head for more traditional news sites(recode)
・Aren’t you glad you adopted AMP? Google referrals up 17% on the year with AMP traffic.(Parse.ly、 Blog)
・These were the most engaged sites on Facebook in December 2017(NewsWhip)
・News Feed FYI: Helping Ensure News on Facebook Is From Trusted Sources(Facebook Newsroom)
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posted by 田中善一郎 at 14:15 | Comment(0) | 新聞 ニュース
2017年12月21日

若いミレニアル世代ほど、ソーシャルメディアよりブランドメディアを信頼している

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  今年の米国のメディア業界は波乱万丈の年だった。ネット上にはフェイク情報が氾濫するし、米大統領までもソーシャルメディアでフェイク発言を連発したりと・・・・。監視すべき伝統マスメディアに対する信頼性も長期下落する一方だったし、勢いを増すソーシャルがメディアの混乱を一段と肥大させていた。

伝統マスメディアの信頼性が復活か

 ところが意外にも、マスメディアへの信頼性が復活する動きが出てきているのだ。Gallup(ギャラップ)が毎年実施するマスメディア(新聞やテレビ、ラジオ)に対する信頼度調査では、マスメディアの情報を信頼する米国民の割合が下落する一方であった。ところが2017年には一転して昨年の32%から41%へと大きくリバウンドしている。

 トランプ政権に対する危機感を抱く民主党支持者が、昨年の51%から今年の72%へと、マスメディアに高い信頼を寄せるようになったためといえそう。米国の有力マスメディア・ブランドの大半がもともとリベラル派であることも大きい。

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(ソース:Gallup)
図1 Gallupが実施したマスメディア(新聞、テレビ、ラジオ)に対する米国民の信頼性調査。2017年の電話インタビュー調査は、9月6日〜10日に全米50州でランダムに選んだ18歳以上の大人1022人を対象に実施。ウォーターゲート事件やベトナム戦争の報道で、マスメディアの信頼が最も高かった1976年には72%の国民から信頼を得ていたが、それ以降は長期低落が続いていた。それが今年は前年比9%増の41%に大きく回復した。

オンライン情報のアクセスではFacebookからが断トツのトップであるが

 ただ、伝統マスメディアの信頼が回復する気配が見られたといっても、メディアの主役は今やオンラインへ急速にシフトしている。さらに、スマホ(モバイル)化とソーシャルメディア化へとメディア環境も激変してきている。伝統マスメディアのパブリッシャーも、重心をオンラインに移してきている。今や若いミレニアル世代を中心に、ニュースからエンターテイメントまでの情報を入手する媒体としてはオンラインが主流になってきているのだ。

 そこで、米国人が日常的にオンライン情報をどこから入手しているか、それらの情報をどの程度信頼しているか、またどの程度フェイク情報である懸念を抱いているかを、Digital Content Next (DCN)が調査していたので、その結果を紹介する。DCNはデジタルコンテンツ産業のための非営利事業団体である。調査は、2017年10月に18〜64歳の米国の大人1000人を対象にオンラインで実施。対象者は、自宅からインターネットに接続し、少なくとも週に1回はソーシャルメディアやブランド・サイト/アプリを利用している。

 調査結果の図2は、ニュースからエンターテイメントまでのオンライン情報を、回答者がネット上のどのソースから入手しているかを示している。複数回答である。21〜40歳をミレニアル世代、41〜52歳をX世代、53〜64歳をブーマ世代として、世代別の各ソースの利用率を示している。

 Facebookからの情報アクセスが、どの世代を通しても最も多い。若者のFacebook離れがよく伝えられるが、若いミレニアル世代でも8割以上の人が日常的にFacebookから情報を得ている。日本や中国の一部の国を除けば、大半の国でFacebookが情報収集の主要な場となっている。


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(データ:DCN、グラフ:Axios)

Digital Sources Used to Access Information OnlineMobile201712.png
(データ、グラフ:DCN)
図2 どのソースのオンライン情報を利用しているか

伝統マスメディアのブランドがオンラインでも健在

 また図2で注目したいのは、ソーシャル全盛時代なのに、ミレニアル世代も含めてDesktop site、Mobile site、Mobile appにアクセスしている人が未だに多いことだ。これらは、ブランドサイトやブランドアプリから情報を得ているということである。

 一方でFacebookのようなソーシャルメディアでは、情報を発信しているブランド(情報の発信元や発信者が明確)が無視されがちで、センセーショナルな見出しの情報とか、いいね!が多い情報などがよく閲覧される。発信責任者が定かでない情報も氾濫し、真っ当な情報が埋没しがちである。どうしても、フェイク情報がはびこりやすい。

 ニュース情報のアクセスでも、ソースとしてソーシャルメディアが米国では主流となってきているが、日本と違って、伝統マスメディアのブランドサイト/アプリも質量とも充実しており、今も人気が高い。(注:日本では、ヤフーニュース、ラインニュース、スマートニュース、各種まとめサイのようなアグリゲーターサイト/アプリが主流)。

 こうした米国のブランドメディアは、大統領選の年にトラフィックが急増しても、選挙明けの翌年は一般に急落していた。ところが選挙明けの今年8月時点で、有力な伝統メディアサイトのトラフィックが、図3に示すように、1年前の選挙時に比べ増えているのだ。今年8月の月間ユニークビジター数が、CNNが前年比19%増の1億1200万人、NYタイムズが同12%増の9500万人、Washington Postが同12%増の9200万人と、勢いを増している。逆にFacebookなどのソーシャルメディア依存の高いBuzzfeedやHuffPostが伸び悩んでいるのが興味深い。トランプ大統領誕生により、信頼できる情報を伝統メディアに頼ろうとしているからではないか。Gallupの調査で、今年のマスメディアの信頼性が急回復したのと符合する。

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(データ:comScore、グラフ:Axios)
図3 トップクラスのニュースサイトのトラフィックの変化。2017年8月時点の月間ユニークビジター数と、前年同期比の増減率を示している

若い世代ほど、フェイクが少ないブランドメディアを信頼している

 DCNの調査でもなぜ、ブランドサイト/アプリの利用者が意外と多い結果となったのだろうか。図4と図5の調査結果が面白い。

 図4では、ブランドサイト/アプリ、YouTube、それにソーシャルメディアの三つのデジタル情報ソースに対して、回答者がそれぞれの情報を信頼しているかどうかの結果である。全体では、81%の人がブランドサイト/アプリの情報を信頼していた。60%のYouTubeや55%のソーシャルメディアよりも、ブランドメディアを信用している。ここで非常に興味深かったのは、デジタルネイティブが多いミレニアル世代の人たちが83%もブランドサイト/アプリの情報を信頼し、81%のX世代や75%のブーマ世代よりもブランドを志向していたことだ。

Trust in Information on the Following Digital Information Sources201712.png
(ソース:DCN)
図4 どのソースの情報を信頼しているか

 図5では、ブランドサイト/アプリとソーシャルメディア・プラットフォームのどちらに多くのフェイクニュースが存在するかを問うた結果である。全体の回答者の82%がソーシャルメディアに、52%がブランドブランドサイト/アプリに多くのフェイクニュースが存在すると答えている。ここでも目立つのは、ソーシャルメディアにフェイクニュースが多く存在すると答えた割合は、ミレニアル世代が84%と一番高く、77%のX世代や79%のブーマ世代を凌いでいた。ネットのメディア特性を、若い世代のほうが理解しているということか。

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(ソース:DCN)
図5 ブランドサイト/アプリとソーシャルメディア・プラットフォームのどちらが、フェイクニュースが多く存在しているか?

 このように、ミレニアル世代の若い人たちのほうが、中高年世代よりもフェイクニュースに敏感で、ブランドメディアに信頼性の高い情報を期待しているのかもしれない。若者がフェイクニュースに振り回されていると批判されがちであるが、高齢層のほうが振り回されているのかもしれない。もちろんブランドサイトだから信用できるわけではない。米国には品質の高いブランドのニュースサイトも多いが、一方で信頼できないブランドのニュースサイトも少なくない。ブランドサイトの良否を判断するメディアリテラシーが要求される。

◇参考
・Democrats' Confidence in Mass Media Rises Sharply From 2016(Gallup News)
・DCN’s new research: Trust as a Proxy for Brand Value (DCN)
フルレポートはこちら
・Brand affinity still strong in the age of tech(Axios)
・Facebook Engagement for Brands and Publishers Falls 20% In 2017(Buzzsumo)
・Bias, Bullshit and Lies Audience Perspectives on Low Trust in the Media(Reuters Institute,Univ of Oxford)
・Analysis: Conservative media traffic slump(Axios)


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posted by 田中善一郎 at 16:50 | Comment(0) | 新聞 ニュース
2017年11月28日

デジタル売上8億ドルの目標達成に向けて、「NYタイムズ」がニュース以外の有料コンテンツサービスを新規開発へ

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 NYタイムズのデジタル売上倍増計画の目標が達成しそうである。2014年にデジタル売上倍増計画を打ち上げたが、その年に4億ドル以下であったデジタル売上を2020年までに8億ドルに倍増させる目標を掲げた。

 かなり厳しい目標と思われたが、今年に入ってデジタル売上が前年比で30%増を上回り、一気に展望が開けてきたのである。やはり「トランプ特需」が効いたようだ。昨年後半の大統領選、それに予想外のトランプ氏の勝利、そして今年に入ってトランプ大統領の誕生と、トランプ旋風が吹き荒れている。NYタイムズのようなリベラル系ニュースメディアはトランプ大統領との対決で危機感を募らせていたが、その対決ムードがNYタイムズにとって思わぬ追い風となり、新規の有料購読者が殺到したのである。

 有料デジタルニュースのサービスを始めてから、購読者数が6年間でどう推移したかを図1に示す。これはデジタル版だけの定期購読者数である。直近の2017年第3四半期(2017Q3,2017年9月24日)には213万2000人に達し、この1年間で59.3%増と爆発的に増えたのだ。

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図1 NYTの有料デジタルニュース購読者数の推移。

 四半期単位の有料デジタルニュース購読者の純増数の推移を見ても、図2に示すように、突発的な急伸ぶりがすさまじい。昨年半ばころまで四半期で5万人程度で純増していたのが、昨年末の四半期(2016Q4)に27万6000人、今年初めの四半期(2017Q1)に30万8000人と、一気に跳ね上がった。まさに、トランプさまさまである。過熱化したトランプブームがやや収まってきた昨今でも、四半期毎の純増数が10万人前後と高成長を維持している。

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図2 有料デジタルニュース購読者数の四半期単位の純増数

 この1年間の有料デジタルニュース購読者数の急増を反映して、今年のデジタル販売売上高が大きく膨らんできている。2017年1月〜9月の9カ月間のデジタル販売売上高は2億4400万ドルとなり、前年同期間に比べ44.3%も増えた。また、期待したほど伸びていなかったデジタル広告売上高も、今年の好景気も手伝って勢いづき、2017年の9カ月間で前年同期比17.5%増の1億5400万ドルに達した。

 この結果、今年1〜9月のデジタル売上高(デジタル販売売上高+デジタル広告売上高)は4億ドルに達した。前年同期に比べ33.3%も増えている。2017年通してのデジタル売上高も、前年比で30%を上回ると見てよさそうだ。

 図3は、recodeがまとめたデジタル売上高推移のグラフである。2016年まで年平均成長率が12%前後で推移していたため、このままでは2020年の8億ドル達成は難しいと見られていた。それが、今年の成長率が30%台に跳ね上がり、8億ドル達成が見えてきたのである。recodeはさらに、2020年には9億ドルを突破すると予測している。

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(ソース:recode)
図3 NYTの年間デジタル売上高と年平均成長率の推移。2017年には30%増の成長が期待され、デジタル売上高も6億ドル近くに到達しそうである。

 だが、トランプ特需と好景気が重なった今年の成長率は、特殊環境が生み出した異常値と見るべきであろう。そこでこれからの年平均成長率が16%で続くとして、2020年には9億300万ドルに達すると、recodeがはじいているのであ。たとえ、以前のように12%成長に戻ったとしても、2020年には8億1300万ドルとなり目標をクリアできると主張している。

 それでもこの目標に到達するには、目新しいサービスが必要だろう。不安定なデジタル広告ではなくて、デジタル販売、つまり有料デジタルコンテンツ・サービスへの依存を一段と高めていかなければならない。今回のようなトランプ特需を当てにしないで、継続性のある高成長を実現していくには、新しい有料コンテンツサービスを生み出したい。

 実はすでに、NYTはクロスワード(Crossword)・パズルの有料サービスを始めている。今年6月からは料理(Cooking)の有料サービスも新たに始めた。さらに来年以降も、ニュースコンテンツ以外の有料の定期購読サービスを手がけていきたいという。

 このほどNYTの新製品/ベンチャー部門のヘッダーに就いたAlex MacCallum氏は、ロイターのインタビューで「子育て、健康、美容、ファッションなど10〜15分野の独立したデジタルサービスを検討中である」と答えている。来年にも2本あるいは3本のデジタルコンテンツ・サービスを開発したいと意気込む。 
 
 ここで気になるのは、本流のニュース以外のコンテンツ購読サービスで、どれくらいの購読者と売上を獲得できるかである。NYTの決算書には、ニュース(News)subscriptionとは別に、その他(Crossword+Cooking)subscriptionの定期購読者数と売上高も公表されている。

 その定期購読者数を図4に示す。2017年9月24日時点で有料ニュースコンテンツの購読者数は213万2000人に対して、その他有料コンテンツ(Crossword+Cooking)の購読者数は35万5000人となっている。先行しているCrosswordが33万2000人、有料化して約3カ月のCookingが2万3000人の購読者を抱えている。Crosswordのアーカイブには20年分のパズルが、またCookingには1万8000点のレシピが蓄えられている。

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図4 2017年9月24日時点/2016年9月25日時点のデジタル購読者数。ニュースサービス(News Product)とその他サービス(Crossword+Cooking)の購読者数を示している。単位は千。

 有料コンテンツの売上高の内訳は、図5のようになっている。今年の9カ月間の売上高は、ニュースコンテンツが2億3400万ドルに対して、その他(Crossword+Cooking)が981万ドルにすぎない。

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図5 2017年1月〜9月および2016年1月〜9月のデジタル販売売上高。ニュースサービスとその他サービス(Crossword+Cooking)の販売売上高を示している。単位は千。

 来年以降に登場する有料コンテンツサービスが、デジタル売上高の底上げにどれくらい貢献するか、注目したい。プリント版広告売上高が想定以上に落下しているだけに、売上高が少なくても、デジタルニュース以外のバーチカルな有料コンテンツサービスにも手掛けざる得ないのだろう。

◇参考
・New York Times to develop more products beyond news subscriptions(Reuters)
・The New York Times is nearing its goal of an $800 million digital business(recode)
・The New York Times Company Reports 2017 Third-Quarter Results(NYT,Press Release)
・Young subscribers flock to old media(Politico)
・The New York Times is now charging for its cooking site
(NiemanLab)

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posted by 田中善一郎 at 13:55 | Comment(0) | 新聞 ニュース
2017年09月07日

FBに頼る海外のニュースメディア、FBに頼らない日本のニュースメディア

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  世界のニュースメディアはフェイスブック(FB)に頼らざるえない状況に立たされている。でも幸か不幸か、日本のニュースメディアはFBにほとんど頼っていない。

海外の主要ニュースメディアは、日本に比べ約100倍のFBフォロワーを抱えている

 海外メディアと日本メディアとでは、FBに取り組む温度差がけた違いに大きい。それぞれの主要ニュースメディアのFBページがどれくらいのフォロワーを抱えているかを見れば明らかである。図1に示すように、海外の大手ニュースメディアが500万人〜4000万人規模の大多数ユーザーからフォローされているのに対し、日本の主要ニュースメディアはわずか5万人〜35万人くらいしかフォローされていない。1桁どころか2桁くらいの差がついている。

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図1 代表的な総合ニュースメディア(デジタル版)のFBページのフォロワー数。ここでは旗艦FBページのフォロワー数を示している。海外の大手ニュースメディアでは、旗艦FBページ以外の分野別/国別のFBページでも、100万人超のフォロワーを擁する場合が珍しくない。


 ここで注目したいのは、NYタイムズ、ワシントンポスト、CNN、BBC、ガーディアンのような欧米メディアだけではなくて、グローバル展開している中国のCCTV(英語版) や、インドやブラジル、インドネシアなどの新興国の主要ニュースメディアにとっても、今やFBは欠かせないプラットフォームになっていることである。

 インターネットの立ち上がりとFBの普及が最も遅かったアフリカですら、今ではFBを飛躍台にしてオンライン・ニュースメディアが育っている。たとえばメディア産業の基盤があまり整備されていかった新興国ナイジェリアでも、同国の主要ニュースメディアのFBページは、早くも200万〜500万人超のフォロワー数を抱えている。図2に示すように、日本のニュースメディア(国内向け日本語版、海外向け英語版)と比べて10倍近いFBフォロワーに支えられている。

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図2 ナイジェリアの主要オンライン・ニュースメディアのFBフォロワー数。FBに頼らない日本のニュースメディアに比べ、10倍以上のフォロワー数を擁している。Internet World Statsによると、ナイジェリアのFBユーザー数は現在2000万人くらい(1年前の2016年6月で1600万人)で、日本より少ない。

 ナイジェリアの高等教育は英語で行われており、これらのニュースメディアもすべてグローバルに通用する英語版となっている。Naij.comのように大半が、政治や経済分野もカバーした総合ニュースメディアである。

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図3 Naij.comの旗艦FBページ(フォロワー数は375万人)。その他に、NAIJ.com Breaking News(115万人)、NAIJ.com Gossip(86万人)、NAIJ.com Daily(53万人)、NAIJ.com Buzz(77万人)、NAIJ.com Sports(30万人)、 NewsNAIJ.com Opinion(1万5000人)に加えて、現地語のNAIJ.com Hausa(98万人)の姉妹FBページも備えている。



日本ではユーザー側からも、FBをニュースメディアの主要ゲートウエイと見ていない

 このように世界のほとんどの国の大手ニュースメディアが、FBをオーディエンスと接触する主要な場として活用している。実際に多くの国のニュース消費者も、FBをゲートウエイとして選んでニュース記事と接している。ロイター(Reuters Institute)が今年の1月から2月にかけて、36か国のニュースユーザー7万人を対象に実施した調査結果によると、最近1週間にFBを介してニュース記事に接した人の割合は、図4のようになっている。
 
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(ソース:Reuters Institute)
図4 日常的にFBを介してニュースメディアと接しているニュースユーザーの割合。過去1週間にFBを介してニュース記事に接した人の割合を、国別に示している。

 南米や東南アジアのニュースユーザーのほうが、米国や西欧のユーザーよりも、FBに頼っている。FB以外のメディア接触チャンネルがあまり普及していないためだろう。逆に米国などの先進国では、スナップチャットやインスタグラム、それにインスタントメッセージ系などと、新しいメディア接触のチャンネルが多様化しており、そのためFBの利用がやや頭打ち傾向にある。

 それでも例えば米国では、ニュースユーザーの48%が最近1週間にFB上でニュース記事を見つけている。米国のニュースメディア(ニュースパブリッシャー)がFBユーザーが好む記事をタイミングよくFBページに投稿しているから、今でも48%のユーザーが日常的にニュース記事と出会う場としてFBを利用しているのだろう。その結果として、前回のブログ記事「メディア接触の主導権争い、「フェイスブック」の独走に「グーグル検索」が奪回迫る」でも触れたように、ニュース系を含めたメディアサイトに流入する外部トラフィックの40%前後が、フェイスブックからとなっている。

 一方日本のニュースユーザーはわずか9%しか、FBを介してニュースメディアの記事に接していない。昨年(2016年1月〜2月)の調査では16%であったので、FB離れが進んでいるようだ。さらに総務省の調査報告書でも、利用層の厚い10代と20代で、FBユーザー数そのものが減り始めている。今後とも、FBでニュースメディアに接する人口を増やしていくのは厳しのかもしれない。

 またインスタントメッセージをニュースメディアへのゲートウエイとして利用する人が世界各国で増えている。日本ではLineが伸び悩むFBを大きく引き離して普及しており、ニュースメディアのゲートウエイとしても期待される。でもLineを介してニュース記事に接している割合は、今年も昨年と同じ13%に留まっており、海外各国のFBのような強力なゲートウエイに至っていない(ロイターの調査より)。日本では、ニュースメディアのゲートウエイとしては、ソーシャル系ではなくてニュースアグリゲーターやまとめサイトが今後も主役を演じ続けることになるのか。
 
 
FB主導下のニュースメディア展開、グローバルに同時進行へ

 海外の主要ニュースパブリッシャーがFBを重要なプラットフォームとして活用し、それに応じてニュースオーディエンスもFBを介してニュースパブリッシャーの記事に接するようになってきた。ここで見逃せないことは、この数年近くの間、モバイル化とソーシャル化の流れに沿ってフェイスブック(FB)社が仕掛けたメディアシナリオに、海外の多くのニュースパブリッシャーが乗ってしまっていることである。
 
 2010年ころまでFBは、パブリッシャー(メディア)のコンテンツをあまり重視していなかった。ニュースフィードに流れるコンテンツは個人やブランド(企業)からの投稿が中心であった。FBがメディアコンテンツの露出を増やし始めたのは2011年/12年あたりからである。その動きを先取りして積極的にFBを活用したHuffPostとBuzzFeedの新興パブリッシャーが、FBを飛躍台に急成長する。その成功を見習って、2012/13年に多くの新興パブリッシャーが雪崩を打ってFBへの投稿に殺到し、いわゆるバイラルメディア・フィーバーが起こる。こうしてパブリッシャーのプラットフォーマーとしてもFBが地位を確保していった。

 だが、FBをプラットフォームとして積極的に活用するのは主に、バイラル系の新興メディアとなる。ニュースフィードには軟派系のコンテンツが氾濫するようになったが、質の高いコンテンツがあまり流れなかった。

 そこでFBはニュースフィードに良質のメディアコンテンツを優先して流すようにアルゴリズムを変え、ブランド力のある有力メディアにFBへの投稿を強く働きかけた。2013年ころから、NYタイムズ、ワシントンポスト、ガーディアンなどの有力メディアがこぞって、良質の記事をFBに数多く投稿するようになった。今では図1で示すように、伝統の高級ニュースメディアも多くのフォロワーを擁するようになっている。

 さらに本格的なモバイル動画時代を迎えて、2015年ころからパブリッシャーに動画コンテンツの投稿を促すようになった。主要な動画パブリッシャーに、動画制作開発費を支援して必死に後押しした。確かにニュースフィードにはパブリッシャーが制作した料理や動物の短尺動画が増えてきたし、さらに2016年からは海外のニュースメディアのライブ動画を見る機会も増えてきた。最近では動画の本命のスポーツやドラマなどの長尺動画も囲い込み始めている。

 このようなFBの相次ぐ仕掛けは、グローバルに進められてきている。分散型メディアを推し進めるインスタント記事も世界の主要パブリッシャーにほぼ同時に働きかけ、2015年に「フェイスブックの分散型メディア「インスタント・アーティクルズ」、一気にアジアや南米のグローバル展開に突入」した。

 FBのシナリオに乗っかってるうちに、パブリッシャーの編集活動や広告活動がFB主導下で展開するようになってきている。複数のサードパーティ・プラットフォームに分散投稿する「分散型メディア」が定着しているが、海外ではパブリッシャーの多くが特定のプラットフォームのFBに過度に依存していると言えそう。そこでパリッシャーとしては、編集面や広告面での独立性を維持しようと、FB依存を弱めたいところ。しかし、ロイターが今年実施した調査によると、24か国のデジタルメディア・リーダーの78%が、今年最も注力したい重要なソーシャルプラットフォームとしてFBをあげていた(図5)。FB依存は続きそう。

WhichPlatformInvestment2017.png
(ソース:Reuters Institute)
図5 今年最も注力すべき重要なプラットフォームはどこか? 24か国のデジタルメディア・リーダー143人のアンケート結果より。調査はロイターが実施。

 日本のパブリッシャーは幸いというか、海外メディアのようにFBに依存していない。ロイターの調査(調査対象国36カ国)によると、日本人はニュースメディアのゲートウェイとしてソーシャルサイトを最も利用していない国民であると同時に(図4)、ゲートウエイとしてニュースアグリゲーターを最も利用している国民でもある。日本人にとって、ニュースサイトとして頭に浮かぶのは、ニュースパブリッシャー名ではなくて、ヤフーニュース、LINEニュース、スマートニュース、グノシー、それに特定まとめサイトといったニュースアグリゲーター名ではなかろうか。

◇参考
・Reuters Institute Digital News Report 2017(Reuters Institute)
・勢い増す「LINE」と「Instagram」、頭打ちの「Facebook」と「ニコニコ動画」(メディア・パブ)
・平成28年情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書(総務省)
・日本人のニュースメディア接触、先進国の中で際立つ特異性、ロイター調査が浮き彫りに(メディア・パブ)
・Facebook visitor reach in selected countries as of 1st quarter 2015(Statista)
・Journalism, Media and Technology Predictions 2017(Reuters Institute)



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posted by 田中善一郎 at 01:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 新聞 ニュース
2017年08月25日

メディア接触の主導権争い、「フェイスブック」の独走に「グーグル検索」が奪回迫る

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「検索」から「ソーシャル」へと。オンライン情報の接し方が様変わりしている。

 デジタルパブリッシャー(メディア)のコンテンツと出会うのも、検索エンジンではなくてSNSを介する場合が増えてきている。米国を先頭に大半の国では、検索エンジンはグーグル検索が、SNSはフェイスブックが寡占している。ということは、グーグルからフェイスブックへと、メディアへの影響力がシフトしていこうとしているのかも。

 この「検索」から「ソーシャル」への流れがモバイルシフトに乗じて加速化し、2年ほど前に米国では一つの転換期を迎えた。オンラインメディア(デジタルパブリッシャー)への外部トラフィックで、フェイスブックがグーグル検索に追い抜いついたからだ。米トラフィック解析会社Parse.lyが明らかにした。それ以降、両者の差は大きく開くようになり、一時、米メディアへの全流入トラフィックのうちの45%前後がフェイスブックから、35%前後がグーグル検索からとなり、フェイスブックが事実上独走態勢に入ったように思えたのだが・・・。

 ところが先週、久々にParse.lyのトラフィックデータを見て驚いた。図1の過去1年間の推移を見ると、この8月に入ってグーグル検索が37%、フェイスブックが39%と、両者の差が一気に縮まっている。

PerselyReferrer201708a.png
(ソース:Parse.ly)
図1 米メディアサイトへの外部トラフィックの流入元シェア。過去1年間(2016年8月〜2017年8月)の推移を示している。Parse.lyが米国の代表的なメディアサイト(2500サイト超)を対象に計数した調査より。今回の計測では、グーグルAPMからのトラフィックがGoogle検索に含まれていない。

 さらに先ほど過去30日間の推移を細かく追ってみた。図2に示すように、2017年8月21日にグーグル検索が43%に跳ね上がり、34%に急降下したフェイスブックを一気に抜き去っていたのだ。8月13日にも瞬間風速的にグーグル検索がトップに躍り出ていた。突発的かもしれないが、「検索」から「ソーシャル」への流れに逆らう動きが出てきている。

 確かに昨年後半から今年にかけて、フェイスブックからメディア(パブリッシャー)サイトへのトラフィックが減り始めているとのニュースが頻繁に伝えられていた。フェイスブックによるニュースフィードのアルゴリズム更新で友達や友人家族の投稿を優先することになり、パブリッシャーの投稿コンテンツの露出頻度が減ったせいかもしれない。また流通プラットフォームであるフェイスブックへの依存が高まるにつれ、編集面や広告面でいろいろと制約が課せらようになり、これを嫌って一部のパブリッシャーがフェイスブックへの依存度を下げていこうと動き始めたことも影響しているかもしれない。

ExternalReferralTrafficParsely20170821.png
(ソース:Parse.ly)
図2 8月20日までの過去1か月間における、外部トラフィックの流入元シェアの推移

 もともと、メディアサイトへの外部トラフィックの主役はグーグル検索であった。3年ほど前までの推移(図3)を見ても明らである。そのため長い間、メディアサイトもブランド(企業)サイトもSEOに注力し、グーグル検索からのトラフィックをいかに増やすかに必死になっていた。ところがフェイスブックなどのソーシャルの台頭により、ソーシャルメディア対策がより重要になってきた。特にミレニアル世代に代表される若年層ユーザーと接していくには、ソーシャルからのトラフィックを増やしていかなければならないのは間違いない。

FBTrafficvsGoogleTrafffic.png
(ソース:Parse.ly)
図3 2012年春から2015年夏までの期間における、メディアサイトへのトラフィックの流入元シェアの推移。

 グーグルからすればグーグル検索からのトラフィックに頼るパブリッシャーを増やしていきたい。一方でフェイスブックは同SNSからのトラフィックに頼るパブリッシャーを増やしていきたい。両巨人プラットフォーマーによるメディア接触の主導権争いが、ますます激しくなりそう。

 以上は、あくまで米国などの海外での話。日本のメディア環境は違う。日本のメディアは海外ほど、フェイスブックなどのソーシャルメディアにあまり頼っていない。その代わり、外部からの流入トラフィックとしてアグリゲーターに強く依存している。


◇参考
・Referrer Dashboard(Parse.ly)
・Facebook v Google: Is Facebook Winning The Content Discovery War?
(Buzzsumo)
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posted by 田中善一郎 at 01:28 | Comment(0) | 新聞 ニュース
2017年06月27日

編集者よりも「アルゴリズム」で選ばれるニュース記事、若者が好んで読んでいる

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 ニュースコンテンツと接する場が、オフライン中心からオンライン中心へ。さらにオンラインにおいては、ニュースメディア・サイトよりも、外部のソーシャルメディアやニュース・アグリゲーターなどでニュース記事と接する機会が増えてきている。

 ロイター(Reuters Institute)の最近の調査でも、こうした傾向を示していた。今年の1月から2月にかけて、36か国のニュースユーザー7万人を対象に実施した調査である。

 その結果によると、例えば米国ユーザーの場合、各種ニュースソースの利用率が図1のように推移している。過去1週間に利用したニュースソースを答えさせた結果である。利用ニュースソースとしては、オンライン(ソーシャルメディアも含む)、TV、プリント(新聞紙など)に加えて、ソーシャルメディア単独も答えさせている。

SocialMediasourceof News20172012ロイターUS.png
(ソース:Reuters Institute)
図1 米国のニュースユーザーが利用しているニュースソース。

 ニュースソースとしてオンラインがトップに定着し、そのオンラインの中でソーシャルメディアでのニュース接触が急増している。一方で、ニュースメディアの王者であった新聞紙が下降を続けている。TVは踏ん張っている。よく知られている傾向である。ただ、オフラインからオンラインへのシフトが進んでいても、実際には両方のニュースソースを併用している人が多い。複数回答なので、オフラインからオンラインへのシフトが劇的には表れない。77%のユーザーがオンラインニュースと接し、22%のユーザーが新聞紙ニュースに接したと答えているが、実際の利用頻度(利用回数とか利用時間)は1桁以上の差が開いているはずである。

 そこで、複数回答ではなくて単回答にし、さらに年齢層別に調査すれば、オンラインシフトがもっと明示されるだろう。図3は、36か国の回答者すべてを対象に、過去1週間で利用した主要ニュースソースを一つ答えさせている。ニュースソースとしてラジオも加えている。

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(ソース:Reuters Institute)
図2 年齢層別のニュースソース利用率。各年齢層18-24/25-34/35-44/45-54/55+歳の回答者数は7754/12,332/12,976/12,630/24,620人。

 若年層ほどオンラインシフトが一段と進行していることが、はっきりと示されている。18歳から44歳までの各年齢層では、主要なニュースソースがTVではなくてオンラインとなっている。さらに18〜24歳の若年層となると、ソーシャルメディアだけ(33%)でもTV(24%)を凌いでいた。

 ではニュースソースの主流となってきたオンラインにおいて、ニュースコンテンツと何処で出会っているのだろうか。オンラインニュースのユーザー(回答者6万6230人)を対象にした調査によると、ニュースメディアのサイトに直接訪れてニュースコンテンツと接しているユーザーは回答者の32%しかいない。その他の約65%のユーザーは、図3に示すように、検索、ソーシャルメディア、ニュースアグリゲーターを介してニュースコンテンツと出会っている。

MainGateway.png
(ソース:Reuters Institute)
図3 オンラインのニュースコンテンツと主にどこで接しているのか? ニュースユーザーの65%は、パブリッシャーのニュースサイトに訪れないで、検索、ソーシャルメディア、ニュースアグリゲーターなどでニュース記事を見つけている。35歳以下の若者となると、73%がパブリッシャーのニュースサイトに訪れなくて、他でニュース記事と出会っている。

 オンラインの中でも、ソーシャルメディアでニュースコンテンツと出会っているユーザーの割合が、図4で示したように、多くの国で急速に高まってきている。米国人(大人)の約半数(51%)がソーシャルメディアでニュースコンテンツと接しており、そのほとんど(48%)がフェイスブックでニュースコンテンツを見つけている。 

SocialMediaNewsSource20172013ロイター.png
(ソース:Reuters Institute)
図4 ソーシャルメディアでニュースコンテンツと接している人の割合。2016年までほとんどの国で、ソーシャルメディアを介してニュース記事を見つけている割合が増え続けていたが、2017年にはスペインやフランスのように一部の国でスローダウンし始めている


 このように、ニュースコンテンツと接する場が、オフラインからオンラインへと、さらにオンラインではフェイスブックなどのソーシャルメディアへと、若者を中心にシフトが加速化している。この流れにおいて、氾濫するコンテンツの中から、良いニュース記事とか重要なニュース記事を見出すのは大変だ。以前は、ニュース記事を生み出していたニュースパブリッシャーの編集者とかジャーナリストが、良いコンテンツや重要なコンテンツを選んで、パーケージした形でオーディエンスに届けていた。オフライン(プリントなど)の全盛時代だけではなくて、オンライン時代になってもしばらく続いた。

 特に欧米の伝統的なニュースメディア(新聞社やTV/ケーブル)は、2000年当初あたりからオンライン・ニュースサイトに力を入れ、オンライン時代のニュースメディアをけん引し、集客数も増やしてきた。ニュースサイトでは、オフライン時代と変わらず、編集者が良かれと思う記事や重要と思う記事を、パーケージした形で提供していた。ページのレイアウトや見出しサイズを工夫したりして、読者に読んで欲しいコンテンツを知らせていた。パッケージでの提供も、編集者側の伝えたいメッセージが込められていたりする。

 ところが図3で示すように、ニュースメディアのサイトに直接訪れてニュースコンテンツと接するニュースユーザーが減ってきている。代わりに、ソーシャルメディアや検索エンジン、ニュースアグリゲーターでニュースコンテンツに出会うユーザーが増えている。

 ここで見逃せないのは、Reuters Instituteも指摘するように、ソーシャルメディアや検索エンジン、ニュースアグリゲーターでは、ユーザーが接するニュースコンテンツを機械的なアルゴリズムによって選んで表示していることだ。それも基本的にはパッケージでの提供ではなくて、一本一本のニュース記事単位で、アルゴリズムが良い/重要と判断したコンテンツを優先して表示していく。図3から、オンラインニュース・ユーザーの約54%(Search25% + Social Media23% + Aggrigator)がアルゴリズムの選んだニュースコンテンツと接していることになる。さらに35歳以下のユーザーに絞ると、64%のユーザーが機械が選んだニュース記事を読んでいる。

 オリジナルのニュースコンテンツを生み出している編集者やジャーナリストが選んだニュース記事と接するには、ニュースメディア・サイトに直接アクセスするか、サイト側から送られるEmailとかMobile Alartに頼ることになる。図3から、オンラインニュース・ユーザーの約44%(Direct32% + Email6% + Mobile Alert5%)が編集者が選んだニュースコンテンツと接している。35歳以下のユーザーとなると、34%のユーザーにしか編集者の想いが伝わらないということか。

EditorialAlgorithmNews2017ロイター.png
(ソース:Reuters Institute)
図5 「アルゴリズム」が選んだニュースコンテンツと接しているユーザーと、「編集者」が選んだニュースコンテンツと接しているユーザー。「アルゴリズム」が選んだニュースコンテンツと接しているユーザーの割合が、全体では54%であるが、35歳以下の若年層では64%と跳ね上がる



◇参考
・Reuters Institute Digital News Report 2017(Reuters Institute)

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posted by 田中善一郎 at 14:15 | Comment(0) | TrackBack(0) | 新聞 ニュース
2017年05月29日

ニュース接触の主戦場が「フェイスブック」か「グーグル検索」か、記事のトピック別で大きく分かれる

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  ユーザーがニュースメディアに出会う主要な場として、検索サイトに加えソーシャルサイトも定着してきた。米国や欧州だけではなくて、新興国に於てもだ。特徴的なことは、検索サイトではグーグルが、ソーシャルサイトではフェースブックが抜きん出て利用されていることである。

  ニュースパブリッシャーは、彼らが発するニュース記事が、グーグル検索やフェイスブック(SNS)でより多くのオーディエンスに目に留まるように競うことになる。中でも最近の流れとしては、フェイスブックでの接触頻度が増えてきている。米国のニュース/メディア・サイトへのトラフィックを分析しているParse.lyの調査でも、図1に示すように、外部からニュースサイトへの流入トラフィックうち40%以上がフェースブックからとなっている。35%前後のグーグル検索を上回っている。
 
ExternalReferralTrafficParsely20170522.png
(ソース:Parse.ly)
図1 パブリッシャーへの参照トラフィックの流入元シェア。最新(5月22日)の結果でも、フェイスブックが45%、グーグル検索が34%と、トップ2サイトで大半を占めている。残りの3位以下は、2.2%のTwitter、1.5%のYahoo!、0.76%のGoogle News、0.66%のDrudge Report、0.30%のRedditが続く。

  Parse.lyは米国の主要デジタルパブリッシャーの1000強サイトを対象に、外部(ソーシャルシェア、検索プラットフォーム、ニュースアグリゲータなど)からどれくらいのトラフィックが流入しているかを、計測している。同社は今回のレポート(The Authority Report:ここからダウンロードできる)で、パブリッシャーのニュース記事への外部からの参照トラフィックの流入元シェアをトピック別に調べ、初めて公開した。

 その結果が、図2である。ここでは、2016年に米主要デジタルパブリッシャーが投稿した約100万記事を対象にした。同社のアルゴリズムに従って、対象記事をそれぞれWorld EconomyからEducation&Researchまでの14種のトピックのどれかに分類した。どのトピックでもフェイスブックとグーグル検索が流入元で圧倒的なシェアを占めているのだが、トピックによって両者のシェア率が大きく異なっていることが明らかになった。

ParselyTopicAudience201705a.png
(ソース:Parse.ly)
図2 トピック別記事への参照トラフィックの流入元シェア

  エンターテイメントやライフスタイル、それにローカルニュースに関する記事とは、多くの人がフェイスブックで接している。一方で、テクノロジーやスポーツ、ビジネス/金融といった分野の記事とは、グーグル検索を介して出会っている人が多い。

 友人や周辺の人が話題にしていそうな記事と接したい場合はフェイスブックを利用するが、特定テーマの記事を探す場合はグーグル検索に頼ることになるのだろう。フェイスブックで出会う記事はセレンディピティ(偶然の出会い)的であるが、思いもしなかった面白い記事を発見する機会が多いのは確か。しかし仕事や学業、それに趣味のために、重要な記事を抑えたい場合は、偶然の出会いに頼るのではなくて、グーグル検索を介してきっちりと発見しておきたいようだ。ビジネス/金融分野の記事で、グーグル検索経由が47%に対して、フェイスブックが14%と低くなっているのもうなずける。スポーツ記事もグーグル検索経由のほうが多いのも、特定試合の速報記事を探したりしているからであろう。

 米大統領政治の分野の記事では、外部トラフィックの59%がフェイスブックからと、25%のグーグルを圧倒していた。2016年は大統領選挙期間であり、友人やインフルエンサーが接している選挙関連記事や、それへのコメントも知りたいし、トランプ氏が主役の政治記事はエンターテイメント化していたこともあって、多くの人がフェイスブックで記事に接していたのだろう。フェイクっぽい記事も知っておきたかったかもしれない。だが硬めの一般の政治記事(State&Local Politics)となると、グーグル検索(42%)がフェイスブック(35%)よりも多かった。

 次に4つのトピックを選んで、流入トラフィックのシェアを図3〜図6で少し詳しく示しておく。各トピックの記事内容を示すキーワードも、各図の左端に掲げられている。

ParselyTopicAudience201705b.png
(ソース:Parse.ly)
図3 米大統領政治に関する記事への流入トラフィックのシェア

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(ソース:Parse.ly)
図4 ビジネス/金融分野の記事への流入トラフィックのシェア

ParselyTopicAudience201705d.png
(ソース:Parse.ly)
図5 ライフスタイル分野の記事への流入トラフィックのシェア

ParselyTopicAudience201705e.png
(ソース:Parse.ly)
図6 テクノロジー分野の記事への流入トラフィックのシェア


 この中でフェイスブック依存が極端に高いトピックの記事は、ライフスタイル分野であった。外部トラフィックの87%と、大半がフェイスブックからとなっている(図5)。逆にグーグル検索依存が高いトピック記事は、テクノロジー分野であった(図6)。いずれにしろ、フェイスブックとグーグル検索が圧倒的なシェアを占めているため、その他の流入元のシェアは低くなっているが、それでも分野によっては欠かせない流入トラフィック源となっている。

 例えば図4のビジネス/金融分野では、グーグルニュースが7.2%でツイッターが6.7%と、14.1%のフェイスブックの半分近くのシェアを占め、パブリッシャーにとって無視できないプラットフォームとなっている。

 以上は米国市場での話であるが、欧州や新興国でも、少々の時差があっても似通った動きを示している。でも日本は違う。まず、日本の主要ニュースメディアはフェイスブックにあまり依存していない。その代わり、ニュースアグリゲーターが主導権を握っており、日本独自のメディア環境を作り上げている。


◇参考
・Who’s really driving traffic to articles? Depends on the subject: Facebook (lifestyle, entertainment) or Google (tech, business, sports)(NiemanLab)
・External Referral Traffic to Parse.ly's Customers(PERSE.LY)

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posted by 田中善一郎 at 01:23 | Comment(0) | TrackBack(0) | 新聞 ニュース
2017年02月10日

トランプ特需で有料購読者急増の「NYタイムズ」、でも長期低迷から脱せないのはなぜ?

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 NYタイムズ(NYT)デジタル版の有料購読者数が驚異的な伸びを示している。2016年第4四半期/2006年度通期の決算発表によると、昨年末の第4四半期(10月〜12月)だけで、デジタルニュースの有料購読者数が27万6000人も純増したのだ。

 NYTのデジタル版ニュースの購読者数総計が、2011年の有料化開始以降どのように推移してきたかを図1に示す。これまで購読者が四半期毎にほぼ5万人前後増え続けていた。ところが昨年末の四半期には、通常の5倍近くも購読者数が急増したのである。これは、トランプ効果以外の何ものでもない。

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図1 NYTの有料デジタルニュース購読者数の推移。2016年12月末に160万8000人に達したが、クロスワードの有料購読者も付け足すと計185万3000人となる。

 トランプ氏は、米大統領選挙中から自分への批判を繰り返す主要マスメディアと真っ向から衝突し、就任後も対決姿勢を一段と強めている。特に、リベラル派メディアの代表格であるNYTに対しては、「廃刊すべきだ」と大統領自身がツイッターでののしるまでに、関係が険悪化している。でも、大統領が激しく攻撃すればするほど、NYTの購読申込数が増えていった。これは、逆にマスメディアがトランプ氏を厳しく批判すればするほど、同氏の支持が高まっていったのと同じ現象か。

 選挙期間を含む2016年の1年間を見ても、購読者数が51万4000人も増えた。前年比で48%増という驚くべき伸び率を示した。注目すべきは、トランプ氏が勝利を収めた選挙直後からもさらに一段と、購読申し込みが殺到していることである。ともかくトランプ特需のお陰で、収益面でもNYTに追い風が吹いた。2016年の有料デジタル版の購読料売上高(図2の赤いDigital Circulation)が、前年比17%増の2億3280万ドルと膨らんだのである。

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図2 NYTの販売売上(プリント購読料収入+デジタル購読料収入)の推移

 プリント(新聞紙)からデジタルへのシフトを加速化させているNYTにとって、今後の展開に希望を抱かせる流れである。これまでのデジタルシフトの過程おいて、デジタル事業の売上は伸びてはいたが、急落するプリント事業の売上減を補うほどの勢いが無かった。でも今回の有料読者数の急増により、図2に示すように、デジタルの売上増がプリントの売上減を上回り、全体(デジタル+プリント)の販売売上高でも完全に上昇気流に乗ってきたといえる。

 また、昨年初めて売上高でデジタル販売(2億3280万ドル)がデジタル広告(2億0880万ドル)を追い抜いた。デジタル事業の稼ぎ頭であったデジタル広告が、図3に示すように伸び悩んでいたこともあって、勢いを増すデジタル販売がデジタル事業の牽引役に取って代わった。

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図3 NYTの広告売上高(プリント広告売上高+デジタル広告売上高)の推移。2016年のデジタル広告売上高は2億0880万ドルで、前年比5.45%増と伸び悩んでいる。


 このように有料読者の急増でデジタル事業が軌道に乗り始めた。明るい展望が描ける段階に入ったと思えた。ところが、前途は甘くない。今回の決算発表でも、図4と図5に示すように、2016年通期および2016年第4四半期がともに減収減益に陥っている。

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図4 NYTの2016年度(1月〜12月)決算

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図5 NYTの2016年第4四半期(10月〜12月)決算


 伝統新聞の中で最もデジタルシフトで先行し、比較的うまく進んでいると見られているNYTでも、経営的には厳しい状況が続いているのである。その背景として、売上の大半を未だに落ち目のプリント(新聞紙)に頼らざる得ない状況がある。昨年の販売売上高(8億8054万ドル)の内訳を見ると、その73.6%をプリント(6億4771万ドル)に依存している(図2参照)。広告売上高(5億8073万ドル)でも、64%をプリント(3億7193万ドル)から得ている。その絶対額の大きいプリント売上が下げ止まりそうもないので、デジタル売上を少々伸ばしたくらいでは不安定な状況から抜け出せない。

 そこでNYTは、デジタル売上倍増計画を打ち上げた。デジタル売上高(デジタル販売+デジタル広告)が2014年に4億ドルであったのを、2020年までに8億ドルに倍増させる目標を掲げた。ところが現在のデジタル売上の年間成長率は12%〜13%である。このレベルのままでは目標に達せない。8億ドルに達成させるには、これから毎年16%前後で成長し続けなけれならない。

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図6 NYTのデジタル事業計画。2016年のデジタル事業売上高が4億4160万ドルなので、2020年に8億ドルに達成するには、毎年16%程度の成長率を維持しなければならない
 
 となると牽引役のデジタル販売にもっと頑張ってもらわなければならないことになる。NYTは昨年末に、到達時期をあいまいにしているが、デジタル版の有料購読者数を1000万人の大台に乗せたいと、大風呂敷を広げたのも、そのためであろう。1000万人規模を達成するくらいの勢いがなければ、有力なデジタルメディアとして生き残れないという危機感を募らせているのだ。

 先日の決算説明会によると、2017年に入ってもデジタル版の有料購読申し込みは高レベルで滑り出しており、今年第1四半期には購読者数が20万人ほど純増する見込みという。でもバブル的なトランプ特需に頼っていると有料購読者数の急成長も鈍ってしまうので、新たな手を打つ必要がある。つい先ほど、世界最大級の音楽ストリーミング配信サービスSpotifyと組んで、共同サブスクリプション・サービスを発表したのもそのためだ。新たに年間の有料購読サービスを申し込めば、年間120ドルのSpotifyサービスを自由に利用できるようになる。どれくらい多くの若い読者を獲得できるかが興味深い。


重荷になってきた新聞“紙”を止めて、デジタルオンリーになれないのか


 このように現状では、NYTをはじめとする伝統的な新聞メディアのほとんどが、売上高をあまり伸ばせずに四苦八苦しているのである。一方でBuzzFeedやVox Mediaのようなデジタルオンリーの新興メディアは勢いを増し、売上高を急激に伸ばしている。 それなら一層のことNYTも、輪転機を止めてお荷物のプリント事業に終止符を打ち、デジタルオンリー・メディアに衣替えできないのだろうか。

 そこで、プリントとデジタルの2本足メディアのNYTと、デジタルだけの1本足メディアのBuzzFeedの総売上高を比較してみた。2015年の総売上高は、NYTが15億8000万ドルに対して、BuzzFeedが1億7000万ドルとなっている。2016年は、NYTが図4で示したように15億5500万ドルに対して、BuzzFeedが2億5000万ドル〜3億ドルあたりと推定される。

NYTBuzzFeed2015.png
図7 NYTとBuzzFeedの比較。NYTは発表データを、BuzzFeedはFinancial Timesの予測データより。

 NYTが売上高で圧倒的に差をつけているのは、まだプリント事業を抱えているからだ。2016年の総売上高の約70%となる10億ドル以上を新聞紙から稼いでいる。一方デジタルオンリーのBuzzFeedは、購読が無料なので、総売上高のほとんどはデジタル広告売上高となっている。

 そのデジタル広告売上を比べると、2015年までNYTがリードしていたようだが、昨年からBuzzFeedが上回るようになったはず。BuzzFeedは今後も、巨大なオンライントラフィック(ビュー数)をバックに広告売上高(総売上高)を増やし続けそうである。トラフィックの面から見れば、BuzzFeedはニュースメディアというよりも、エンターテイメント・メディアである。大半のトラフィックが、例えばTastyの料理動画のような非ニュース記事へのアクセスである。ニュースも、トラフィックを稼ぎやすいバイラル性の高いテーマを重点的に選ぶ。つまり収益性を重視する。

 片やNYTは、総合ニュースメディアである。多くの分野をカバーする網羅性が要求される。さらに質の高いジャーナリズムを看板にしているので、収益性の悪いテーマでも取り上げなければならないことが多い。そのため編集経費がやたら嵩む。総売上の7割を占めるプリント売上(Print Ad + Print Circulation)無しでは、とてもやっていけない。2020年に目標のデジタル売上8億ドルを達成しても、現在の15億ドル程度の総売上高を維持するだけでも、2020年に8億ドルくらいのプリント売上が必要となる。

 NYTが本格的なデジタルシフトに乗り出したのは、リーマンショック前の2007年あたりであった。その年のダボス会議で、NYTのArthur Sulzberger会長が「NYT紙が5年後には存在しているかどうかわからない」と言い放ったのを思い出す。既にその当時から、プリントが消えることを覚悟して,デジタルシフトを加速化させようとしていたのである。でも10年後の今になっても、輪転機を止めるどころか、これからもしばらく落ち目のプリント事業に頼っていかなけれなならない。前途多難である。

◇参考
・Journalism That Stands Apart/THE REPORT OF THE 2020 GROUP(NYT)
・The New York Times Company Reports 2016 Fourth-Quarter and Full-Year Results
(NYT)
・Newsonomics: The New York Times is setting its sights on 10 million digital subscribers(NiemanLab)
・New York Times Offers Free Spotify Service to Boost Subscribers(Bloomberg)
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posted by 田中善一郎 at 12:47 | Comment(0) | TrackBack(0) | 新聞 ニュース
2016年11月21日

日本人のニュースメディア接触、アジア主要国と比べても「受動的」で「非ソーシャル」

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 日本人のメディア接触は受動的で非ソーシャルである。

 英ロイター(Reuters Institute)は、26か国のオンライン・ニュース・ユーザーを対象に年初に実施したメディア接触調査で、そのようにレポートしていた。さらにそのレポートを補完する形でロイターは、同じ調査を今年4月に、香港、シンガポール、台湾、マレーシアのアジア4国でも実施し、このほど「REUTERS INSTITUTE DIGITAL NEWS REPORT 2016 - ASIA-PACIFIC SUPPLEMENT」としてまとめた。そのレポートでも、これらアジア4国と比較しても、日本人のメディア接触が最も受動的で非ソーシャルであると見ている。

 今回の調査レポートでは、年初に実施した日本、米国、英国、韓国、オーストラリアの調査結果とも比較しており、アジア4国の消費者のメディア接触の特徴を明らかにしている。今回対象としたアジア4国もネットがかなり普及している国々で、普及率は香港が81%、シンガポールが82%、台湾が84%、マレーシアが68%となっている。今回も前回同様、YouGovが調査を行った。

ソーシャルメディアを介してのニュース接触、アジア4国は日本以上に盛ん

 アンケート結果からいくつか拾って紹介する。まず、この1週間でニュース情報をどのメディアから入手したかを質問し、複数回答させた結果から見ていこう。利用メディアとしては、TV、プリント(新聞、雑誌など)、オンライン(ソーシャルメディアを含む)、ソーシャルメディアの4種。図1がその結果。アジア4国が日米英よりも、オンラインでニュースを入手している割合が高くなっていたことが目についた。またソーシャルメディアを介してニュースと接触する人の割合を比較すると、日本が42%とアジア4国を含めた9国の中で最も低かった。

ReutersAsiaSourcesofNews1.png
図1 ニュース情報の入手メディアは?(複数回答)。アジアの4国は、オンラインでニュース情報を入手している人の割合が日本よりも高い。過去1週間でオンラインニュースに接触した回答者の割合は、台湾が90%、マレーシアが88%、シンガポールと香港が84%に対して、日本は72%であった。ソーシャルメディアだけに絞ると、台湾が55%、マレーシアが69%、シンガポールが59%、香港が42%に対して、日本は31%。 

 オンラインシフトが先行している米英や日本で、アジア4国よりもプリントメディアの利用者の割合が低くなっているが、TVの利用率はそれほど低くなっていない。TVのニュース番組が充実しているからか。米国ではCNNやFox Newsのような強力な24時間ニュース番組が存在するし、英国では巨大なBBCを擁している。

 次の図2は、この1週間でニュース情報の接触で最もよく利用したメディアを一つだけ答えさせた時に、オンラインと答えた人の割合を示している。35歳以下と35歳以上とに分けた。ここでも意外だったのは、日本の35歳以下の若い人たちで主要メディアとしてオンラインを利用している割合が58%と、9国の中で最も低かったことだ。

ReutersAsiaOnlineSourcesNews.jpg
図2 主要ニュースソースがオンラインメディアと答えた人の割合。35歳以下の若い回答者でオンラインを主要ニュースソースとしている割合は、シンガポールが72%、香港が64%、台湾が62%、マレーシアが62%に対して、日本は58%。ちなみに韓国は73%。

オンラインニュースの接触、アジア4国と欧米は似通っているが、日本だけは違っている

 このように、オンラインメディア、中でもソーシャルメディアを介してニュースソースに接触するユーザーの割合が日本は低くなっている。でも、極端な差があるわけではない。それよりも、オンラインメディアの接触の仕方に日本人の特異性が際立っていることに、注目したい。

 オーディエンスがこの1週間で、どのようなチャンネルを介してオンラインニュースを見つけたかを、複数回答させた結果を図3に示す。つまり、オンラインニュースとの出会いの場(チャンネル)を答えさせている。実際のアンケートでは9種のチャンネルを選ばせていたが、図3ではそのうちの4種のチャンネルの利用度だけを抜き出して掲載した。

 ダイレクト・エントリー(ニュースブランドのWebサイトやアプリに直接アクセス)でオンラインニュースに接している割合は、前回の26か国を対象にした調査で、日本が12%とずば抜けて低かった。今回のアジア4国との比較でも、香港(42%)、マレーシア(45%)、シンガポール(36%)、台湾(34%) と大きく差をつけられている。新聞社やテレビ局などの伝統マスメディアのニュースサイトが、日本ではオンラインニュースの主流となってこなかったためである。

 逆にアグリゲーターでオンラインニュースに接している割合は、日本が43%と飛びぬけて高っかったが、やはり、香港(12%)、マレーシア(15%)、シンガポール(10%)、台湾(12%)と比べても、抜きんでいる。アグリゲーターであるヤフーニュースが圧倒的なシェアを握っていたからである。さらにモバイル時代に入っても、スマートニュースのようなアグリゲーターのニュースアプリが日本では受けた。こうしたアグリゲーターでは、ニュースブランドのサイトに直接行かなくても、複数のマスメディアが提供するニュースをまとめて閲覧できる。受身的であるだけに、中高年層にもなじみやすい。例えばスマートニュース・ユーザーの年齢層分布でも、50代以上が46%も占めている。

 先にも述べたように、ソーシャルメディアをオンラインニュースとの出会いの場としているユーザーの割合が、日本は低い。香港(38%)、マレーシア(57%)、シンガポール(53%)、台湾(54%)に対して、日本は17%である。

ReutersAsiaComingAcrossNews.png
図3 オンラインニュースと出会うチャンネル。


ニュース記事に参加する度合い、日本人が最も希薄

 ニュースメディアは昔のように提供者主導の一方向ではなくて、消費者(ユーザー)主導の双方向性メディアとなっている。今やユーザーがニュースメディアに参加するのが当たり前になっているのだ。そこで、ニュース記事にどのような形で参加しているかを、アンケートしている。参加する場としては、ニュースブランドのWebサイトよりも、ソーシャルメディアが中心となっている。図4では、ソーシャルメディアでニュース記事に参加している回答者の割合を、項目別に示している。

 ニュース記事にコメントする(Comment on a news story in a social network)割合は、香港(24%)、マレーシア(22%)、シンガポール(13%)、台湾(26%)に対して、日本は6%であった。

 次のニュース記事をシェアする(Share a news story via social network)割合は、香港(28%)、マレーシア(32%)、シンガポール(27%)、台湾(34%)に対して、日本は9%。

 またニュースに関連する写真や動画を投稿したり送る(Post or send a news related picture or video to a social network)割合は、香港(12%)、マレーシア(16%)、シンガポール(11%)、台湾(15%)に対して、日本はわずか3%であった。

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図4 ニュース記事に参加する。

 このように、アジア4国のオンラインニュース・ユーザーは、ニュース記事への参加意識が米国並みに高い。一方で日本人の多くは、アグリゲーター・ニュースサイトが一方向で提供してくれるニュースを受け取るのに満足し、ニュース記事に能動的に参加することをあまりは好まないようだ。

 ロイターは先の26か国を対象にした調査のレポートで、ニュース接触に関して日本の消費者が26カ国中最も受動的で、最も能動的でない国民としてまとめていた。今回は、アジア4国に日本、米国、英国、韓国、オーストラリアを加えた9国を対象に、同じようにニュースに対して能動的な行動をとるオーディエンスの割合を比較した。それをグラフ化したのが図5である。ニュースの参加者を、最も能動的なProactive、その次に能動的なReactive、そして受動的なPassiveとの分けて、国別に内訳を示している。ここでもニュースに対して受動的な行動をとるユーザーの割合が、日本が9国の中で最も高いと結論付けている
 
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図5 ニュースメディアへの参加態度。能動的か受動的か

 ニュース接触においても、受動的で保守的で非ソーシャルであるのは、国民性に起因しているだろう。良し悪しは別にして、グローバルに見て日本人のメディア接触が、多くの国とちょっと違うのだということを、認識しておいたほうがよさそう。

◇参考
・NEW REPORT EXAMINES ONLINE NEWS HABITS ACROSS ASIA-PACIFIC REGION(Reuters Institute for the Study of Journalism)
・日本人のニュースメディア接触、先進国の中で際立つ特異性、ロイター調査が浮き彫りに(メディア・パブ)
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posted by 田中善一郎 at 16:49 | Comment(1) | TrackBack(0) | 新聞 ニュース
2016年11月14日

トランプ次期大統領のニュースメディア対策、鍵握る右派ニュースサイト「Breitbart」が勢いを増す

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 右派ニュースサイトの「ブライトバート・ニュース」(Breitbart News)が、NY Times、CNN、Fox Newsといったエスタブリッシュメント・メディアを打ち負かした。このように自慢げに勝利宣言をうたい上げる記事を、自らのフェイスブック・ページに投稿した。

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図1 Breitbartのフェイスブック・ページ。「Breitbart Beats NY Times, CNN, and Fox News for Election Day Facebook Engagement」という見出しの記事が、11月10日に投稿されていた

 メディア分析会社NewsWhipが、米大統領選の開票日(11月8日〜9日)に、主要ニュースサイトを対象に選挙関連記事のエンゲージメント数(いいね!数+コメント数+シェア数)を計数した。その結果によると、確かにBreitbartの総エンゲージメント数が、CNN、BuzzFeed、NY Times、Fox Newsを上回っていた。反エスタブリッシュメントを旗印にしたトランプ氏が勝ったように、同氏を強く支持してきたBreitbartもエスタブリッシュメント・メディアを負かしたのだと、叫んでいるのだ。

 Breitbartは過激な右派ニュースサイトなので、大統領選でもトランプ氏を応援していた。さらに今回の選挙では、Breitbart Newsのスティーブン・バノン(Steven Bannon)会長が8月中旬にトランプ陣営の選挙対策本部最高責任者に任命されたこともあって、トランプ氏とBreitbartの関係は密着していたと言える。Huffington Postの記事によるとバノン氏は「最も危険な政治フィクサー」と言われており、選挙対策の責任者に就いた彼はトランプ氏に過激な言動を再開させ、それが功を奏して勝利に至ったと見られている。

 選挙運動中には、トランプ氏の過激な言動に合わせて、Breitbartは過激な記事を発信してきた。それらの記事内容がファイスブックやツイッターのソーシャルメディアで拡散することになった。今年の6月ころには、Breitbartの政治関連ニュースがソーシャルメディアで最も話題になるようになってきた。NewsWhipの調査でも、図2に示すように、Breitbartの政治記事が最も多くの(フェイスブックのエンゲージメント数)と(ツイッターのシェア数)を獲得していた。

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(ソース:NewsWhip)
図2 ユーザー・リアクションが多い政治記事を発信しているニュースサイト。今年の5月13日から6月13日までの1か月間に投稿した政治記事が、ニュースサイト別に(フェイスブックのエンゲージメント)および(ツイッターのシェア)をどれくらい得たかを示している

 これまでインターネット上でも、NYTimes、The Hill、CNN、Guardian、Washington Post、Politico、WSJなどの政治関連記事が影響力を発揮し、いわゆるエスタブリッシュ層にもよく読まれている。逆にBreitbartのような偏ったニュースメディアはエスタブリッシュ層にほとんど相手にされなかった。政治に関心の高い人たちに利用されている政治ニュース・アグリゲーターmemeorandumでも、Breitbartの記事はあまりキュレーションされていない(掲載数ランキングで現在は35位)。ところが、エスタブリッシュ層にほとんど無視されていたBreitbartが、フェイスブックやツイッターのSNSでは最も注目されている政治系ニュースサイトに躍り出ているのだ。

 ともかく、トランプ氏の勝利により、Breitbartが一段と勢いづくのは間違いない。Breitbart会長であり、トランプ陣営の選挙対策責任者であったバノン氏は、トランプ次期大統領の上級顧問と首席戦略官を兼務することになっている。既存のマスメディアを極度に嫌っていたトランプ氏が、どのようなメディア対策を講じてくるか気になる。当然、BreitbartはもちろんとしてFox Newsなどが優遇されるであろうが、NYTimesのようなリベラルなメディアは冷遇されそうである。

 Breitbartはすでに、図1で誇示しているように、3700万人の月間ユニークユーザー数を擁しているが、トランプ勝利の追い風に乗って、さらなる飛躍を目指す。 Alex Marlow編集長がReutersに語ったところによると、米国内で多くのジャーナリストを採用し始めており、中でもポッドキャストや動画といったマルティメディア・オペレーションを強化し、大量の政治ニュースを発信していきたいと意気込む。新たにTV番組も立ち上げる。

 海外展開にも力を入れる。移民/難民やグローバル化に関連して失業/格差問題が深刻化する欧州各国で、ポピュリズム政党が台頭している。フランスの極右政党である国民戦線のルペン氏はその代表格である。トランプ氏やバノン氏が標榜する白人ナショナリズム主義が、欧州でも拡大する素地が整ってきた。そこで、Breitbart Franceと Breitbart Germanyを立ち上げることになった。この設立する狙いを、欧州の主要2国で右派政治家が選ばれるように支援すること、とバノン氏が語ったという(Reutersの記事より)。

 また、すでに海外展開の成功事例があるとも主張する。2013年にBreitbart Londonを立ち上げていた。英国のEU離脱のキャンペーンが、ビジネスになると見たからだ。EU離脱運動が盛り上がるにつれて、Breitbart Londonの読者も増えていき、バノン氏が営業して獲得した広告も増えていった。英国のEU離脱を問う国民投票が実施された6月23日には、Breitbart Londonへのトラフィックが殺到したという。

 要するに、トランプの勝利も英国のEU離脱も、Breitbartが大きな役割を演じたと言いたいのだろう。さらに同じ流れを、フランスでもドイツでも・・・。トランプ新大統領のメディア戦略を注視していきたい。

◇参考
・Online, Everything Is Alternative Media(NYTimes)
・ドナルド・トランプ氏、「最も危険な政治フィクサー」起用で過激路線復活か(Huffington Post Japan)
・Who are the Biggest Politics Publishers on Social?(NewsWhip blog)
・Trump strongly considering Steve Bannon for chief of staff(CNN)
・Exclusive: Riding Trump wave, Breitbart News plans U.S., European expansion(Reuters)
・Breitbart Beats NY Times, CNN, and Fox News for Election Day Facebook Engagement(Bleitbart)


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posted by 田中善一郎 at 16:38 | Comment(0) | TrackBack(0) | 新聞 ニュース
2016年10月30日

「分散型メディア」への大幅シフトでトラフィックが急増、 月間ユーザー数が3600万人を超えたテック系ニュースサイト

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図1 The Vergeのコンテンツ。左は自社のWebサイト(theverge.com)上のコンテンツ。右はFacebook上のコンテンツ。Facebookページとして、中核のThe Vergeに加えて、今年4月にガジェットブログのCircuit Breakerを立ち上げ、動画を中心にしたコンテンツを投稿。


  ニュースメディアを取り巻く環境が激変している。急速に進むモバイル化とソーシャル化を背景に、分散型メディアが定着してきた。特に際立つのは、分散配信される動画ニュースが爆発的な勢いで増えていることだ。また分散型を支える新しい仕掛けのインスタント記事とAMPも軌道に乗り始めている。

 分散型メディアで成果を上げているニュースブランドとしては、自前のWebサイトを持たないで外部プラットフォームだけに動画ニュースを配信する「NowThis」とか、ソーシャルプラットフォームとともに成長してきたバイラル指向の「BuzzFeed」がよく知られている。だがここにきて、自前のWebサイトを中心に展開してきたニュースメディアも、分散型メディアに本腰を入れ始めている。こうした動きが米国で盛り上がっているが、どれくらいのレベルで進んでいるのだろうか。それを示すデータを、テクノロジー系ニュースサイト「The Verge」が公表していたので、覗いてみた。

 図2は、Vergeが配信するコンテンツのビュー数がこの1年間でどう変化したかを示している。昨年と今年の、第3四半期の総ビュー数である。興味深いのは、自前のWebサイトでのビュー数(図2の@)が減ったにもかかわらず、全体のビュー数がこの1年間で40%近くも増えたことだ。SNSやアグリゲーターなどの外部プラットフォームに投稿したコンテンツが閲覧されたビュー数(図2のA〜G)が、1年間で3倍近くも急増したお陰である。つまり、分散型メディアの取り組みが功を奏したといえる。
 
VergeContentViews201610a.png
@:Website pageviews
A:Google Newsstand views
B:Flipboard flips
C:YouTube video views
D:Facebook video views(VergeとCircuit Breaker) 
E:AMP pageviews
F:Instant Article pageviews
G:Apple News views
(ソース・The Verge)
図2 The Vergeのコンテンツビュー数の内訳

 昨年の第3四半期では、総ビュー数の半分以上は自社のWebサイトでのビューが占めていた。ところが今年の第3四半期では、自社のWebサイトのビュー数(図2の@)が総ビュー数の約1/3に縮小し脇役に回ってしまっている。残りの2/3を外部プラットフォームでのビュー数が占めるようになっているのだ。

 その外部プラットフォームでのビューの内訳をみて目立つのは、動画ニュース(図2のCとD)が爆発的に増えてきたことである。瞬く間に動画ニュースだけで総ビュー数の4割も占めてしまっているのだ。さらに注目すべきは、今年の第3四半期に入ってその動画ニュースのビデオビュー数(再生回数)で、Facebook(図2のD)が圧倒的なシェアを占めていることである。

 また分散型への見逃せない動きとしては、今年に入ってFacebookのインスタント記事(図2のF)とGoogleのAMP(図2のE)が登場し、トラフィックの流れを変え始めたことがある。FacebookやGoogle検索から自社のWebサイトに流入していたトラフィックが、外部のインスタント記事やAMPページに流れていく。The VergeのNilay Patel編集長は、Webサイトのページビューが減った代わりに、AMPなどのページビューが増えているという。中でもAMPのページビューの急伸がすさまじく、The Vergeの今年9月には早くも総ビュー数の14%を占めたと同編集長が明らかにした。

 このように分散型が浸透してくると、効果測定の指標として自社Webサイトのページビュー(PV)だけでは不十分となる。外部プラットフォームでのビュー数も当然、加えなければならない。そこでThe Vergeでは、図2のように、PVではなくてコンテンツビュー(Content View;CV)という指標で評価している。そこでは、急増する動画コンテンツのビューをどのように計数するかとか、ニュースアグリゲーターのFlipboadのflip数(ページをめくる回数)をビュー数にどう対応させるかなどを、決めておかなければならない。例えばテキスト系コンテンツのCVは従来のPVと1:1対応で良いだろうが、動画コンテンツのCVはすべての再生を計数するのではなくて、ある視聴時間(プラットフォームによって異なる)以上の再生のみをCVとすることになろう。

 そのコンテンツビューの指標で見る限り、The Vergeのコンテンツのビュー数はこの1年間に飛躍的に増えた。今年に入っても加速化している。問題は、外部プラットフォームでのビュー数が大幅に増えているのに対し、自社Webサイトのページビューが減っていっていることだ。The Vergeの収益の大半は自社Webサイトでの広告売上に頼っていたはずである。自社Webサイトから外部プラットフォームへトラフィックが流れていくとなれば、ビュー数の増加に応じて外部プラットフォームで広告売上を稼ぎたい。でもFacebookやGoogleなどのプラットフォーマーのコントロール下での広告事業となる。自社Webサイトの広告と違って、いろいろと制約も課せられるし、手数料を徴収されたりもする。パブリッシャーとプラットフォーマーとの綱引きが続くことになる。

 多くのプラットフォームに配信することにより、リーチを拡大でき、新しい多くのユーザーと接することができるようになつたのは間違いない。編集長がTwitterで、今年9月の月間ユニークユーザー数が3640万人に達したと報告している。7月が3250万人だったので、3か月間で約400万人も増えたことになる。 

注:
The Vergeは今年の11月1日に創立5周年を迎えるニュースブランドで、新興ニュースパブリッシャーVox Mediaの傘下にある。同社は、Recode、SB Nation、Vox.comなどの有力なメディアブランドを擁している。

◇参考
・The Verge is turning five on November 1st, and we're refreshing our entire brand(Verge)
・Refreshing The Verge: Facebook video, Google AMP, and the (non)future of the web(Verge)
・Google AMP Gets Mixed Reviews From Publishers(WSJ)

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posted by 田中善一郎 at 17:01 | Comment(0) | TrackBack(0) | 新聞 ニュース
2016年06月20日

日本人のニュースメディア接触、先進国の中で際立つ特異性、ロイター調査が浮き彫りに

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 日本のニュースメディア環境は、先進国の中でも特異な存在である。先週末に、ロイター(Reuters Institute)が毎年発行する「Digital News Report」の2016年版が公表されたが、例年のように日本の特異なニュースメディア環境を浮き彫りにしていたので、その中からいくつか拾って紹介する。

 今回の調査は2016年1月〜2月に、26か国のオンライン・ニュース・ユーザー5万人を対象に実施した。各国から、少なくとも2000人がアンケート回答者として参加した。日本人回答者は2011人。
26か国は、いわゆるニュースメディア先進国で、国名は次の通りである。
United States 、United Kingdom、Germany、France、Italy、Spain、
Portugal、Ireland、Norway、Sweden、Finland、Denmark
Belgium、Netherlands、Switzerland、Austria、Hungary
Czech Republic、Poland、Greece、Turkey、Korea
Japan、Australia、Canada、Brazil
いずれもインターネットの先進国でもあり、比較的普及が遅れているブラジルでも58%、トルコでも60%がインターネットを日常的に利用している。中国やロシアは含まれていない。

●パブリッシャーでないポータルが、日本市場を完全制覇してきた
 日本のオンラインニュース環境で最も特異なことは、オリジナル・ニュースを作ってこなかったポータルのヤフーニュース(Yahoo! ニュース)が完全に制覇してきたことである。パソコン全盛時代には、日本のインターネットユーザーにとって事実上、「ヤフーニュース=インターネット・ニュース」であった。

 海外の主要国では、21世紀に入るころから、新聞やTV・ケーブルの伝統メディア会社がオンラインニュース・サイトにも積極的に進出し、激しい競争を繰り広げながら成長してきた。一方日本の伝統メディアは、カニバリズムをあまりにも気にして、オンラインニュースの取り組みは非常に消極的であった。そのためネットビジネスのノウハウで秀でていたヤフーニュースが、強い競争相手なしに思う存分に市場展開でき、同社にとって収益性の高いビジネスモデルを確立し、市場を完全制覇してきた。

 このため、海外のような伝統パブリッシャーの優れたニュースサイトが生まれてこなかったし、人材も十分に育ってこなかった。日本のオンラインニュース産業にとってもユーザーにとっても、ヤフーニュースしか頼れない、悲劇的な状況が長く続いてきたといえる。

 オンラインニュースの主戦場が、パソコンからモバイルに移るに伴い、ヤフーニュースの完全独走にも待ったがかかり始めている。ようやく日本でも新聞系サイトが充実し始めたし、TV系サイトも動画ブームに乗ってユーザーを増やしている。それでも今回の調査でも、主に利用しているニュースブランド名を答えさせると、未だにヤフーニュースの人気が抜群に高い。ここでは図1A〜Cに、日本を含めた6か国を取り上げて、人気オンライン・ニュース・サイトを列挙しておく。

 日本ほど極端ではないが、英国も特定サイトが独走している。トップを走る公共メディアBBCは、グローバルにも展開している巨大なパブリッシャーでもあり、多くのデジタル人材を育ててきた。また日本での2位のNHKと違って、政権との距離を意識して置くようにしているため、信頼も高い。英国の場合、独走の弊害が日本ほどひどくはない。2位以下にMail Online、Guardianさらに米国の有力メディア(パブリッシャー)が競い合っており、グローバルでも非常に人気の高いサイトとして成長している。決して悲劇的な状況ではない。

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図1a 主に利用しているオンライン・ニュース・ブランド。日本(左)とフランス(右)

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図1b 主に利用しているオンライン・ニュース・ブランド。米国(左)と英国(右)

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図1c 主に利用しているオンライン・ニュース・ブランド。スペイン(左)とトルコ(右)


●26か国中、日本は軟派系ニーズが最も高くて、硬派系ニーズが最も低い
 オンラインニュース消費者のニーズでも、日本は際立った特異性を見せつけてくれる。どのニューストピックスにどの程度関心を寄せているかを問うたアンケート結果では、26か国中,日本が最も軟派ニュースのニーズが高く、逆に最も硬派ニュースのニーズが低かった。図2がその結果である。

 ここで、硬派ニュースとは、国際、政治、ビジネス/経済、健康/教育ニュースといったトピックスのニュースを指している。一方軟派ニュースとは、エンターテインメント/セレブ、ライフスタイル、アート/カルチャー、スポーツといったトピックスのニュースを指している。

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図2 関心のあるニュース・トピックスは硬派系か軟派系か?

 ソーシャルメデャアなどを介して実際に消費しているニュース・トピックスは軟派系の割合が多いはずだが、今回のロイターの調査のように、どのようなニュース・トピックスに関心があるかと聞かれると、硬派ニュースが増えるのだろう。

 硬派のトピックスに関心を寄せる割合が、ギリシャが81%、スペインが77%、ドイツが76%、米国が74%と高いのに対し、日本は49%と最も低く26か国の中で唯一50%を切っていた。ギリシャのように、金融危機/失業、難民など切羽詰まった身近な問題を抱えた国では、それらの硬いトピックスのニュースをもっと知りたくなるのは当然かもしれない。日本も、高齢化、財政破綻、格差社会など多くの問題が山積しているはずだが・・・。

 こうした難問から逃避したいのか、日本では軟派ニュースのほうに関心を持つ人の割合が34%と、26か国の中で最も高かった。ロイターのレポートでも、エンターテインメント/セレブ・ニュースに最も興味を持つ国民として紹介されていた。さらに注目すべきは、軟派ニュースのほうに興味を寄せる若者の割合が、日本では極端に高いことだ。図3に示すように、硬派よりも軟派ニュースに目を向ける割合は、どの国でも若い人ほど高い傾向を示す。18〜24歳の若者で軟派ニュース寄りの割合を国別で比較すると、スペインが18%、ドイツも18%、米国が23%、英国が17%、イタリアが29%であるのに対して、日本は58%と断トツの値を示していた。

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図3 軟派ニュースのほうに関心を持つユーザーの割合(年代層別)

 ニュースの本流であるはずの硬派ニュースに目を向けるオンライン・ニュース・ユーザーの割合が相対的に低い理由として、文化や国民性、政治・経済環境なども考えられるが、非パブリッシャーのポータルが日本のオンライン・ニュース市場を独占的に支配してきたことも影響しているのではなかろうか。

 オリジナルの硬派ニュースの多くは、伝統的な新聞社や雑誌社で作られている。ヤフーニュースは、これら伝統パブリッシャーから提供された硬派ニュースも発信していた。だが、伝統パブリッシャーは本丸のプリント事業に悪影響を及ばさない範囲内でしか、ヤフーニュースには硬派ニュースを渡さなかった。このため質の高い硬派ニュースがネット上には多く流れなかった。そうでなくても、米英の英語圏に比べて質量とも雲泥の差があるだけに、日本のオンライン上の硬派ニュースが充実していたとは言えない。その対応としてヤフーニュースは、伝統パブリッシャーなどから配信された硬派ニュースのレベルを底上げるために、独自のトピックス・ページを設けたりして頑張ってきた。
 
 硬派ニュースは主要先進国に比べ相対的に充実してこなかったが、一方で軟派ニュースは伝統パブリッシャーに頼らなくても済むこともあって豊富で活気がある。軟派系ニーズが最も高くて、硬派系ニーズが最も低い国となってきたのも、こうした背景が一つの要因となっているのではなかろうか。質の高い硬派ニュースに出会う機会が少なければ、硬派ニュースに興味を抱かなくなっていくのも仕方がないのかも。

●有力なパブリッシャー・サイトが育たなかったので、アグリゲーターを受動的に利用
 非パブリッシャーのポータルが独占支配し、ニュースサイトが育ってこなかったことは、次の調査結果でも明確に示されていた。図4は、オーディエンスがどのようにしてオンラインニュースを見つけているかを調べた結果である。先週、どこでオンラインニュースを見つけたかを複数回答させている。つまり、オンラインニュースとの出会いの場(チャンネル)を示している。ここでは、ダイレクト・エントリー(ニュースブランドのWebサイトやアプリに直接アクセス)、検索エンジン、ソーシャルメディア、アグリゲーター、電子メール、モバイル・アラートの6種のアクセス・チャンネルを取り上げていた。

NewsStartingPointReuters2016.png
図4 オンラインニュースをどこで見つけているのか。

 アグリゲーターでオンラインニュースに接している割合が、やはり日本が43%と飛びぬけて高い。日本がヤフーニュース天下であることを、知らしめてくれている。主要な先進国では、米国が9%、英国が6%、ドイツが6%、フランスが9%と、アグリゲーター依存は低い。日本人のアグリゲーターによるニュース接触の習性は、モバイル(スマホ)時代にも引き継がれている。日本では、スマートニュースやグノシーのようなニュースアプリが人気の高いのは、そのためである。

 逆に日本では、ダイレクト・エントリーの割合が12%と、ずば抜けて低かった。チェックすべき信頼できるニュースブランド(Webサイトやアプリ)が少ないということであろう。つまりそのようなニュースブランドが育ってきていないのだ。だが他の主要先進国では、ダイレクト・エントリーの割合は未だに高い。英国が47%、米国が35%で、北欧4国(NOR,SWE,FIN,DEN)に至っては40%台〜60%台である。図1に示したように、パブリッシャー(オリジナルコンテンツ作成者)であるニュースブランドが品質面でも競い合っている。たとえば、英国のBBCやGuardianとか、米国のCNN onlineやNYタイムズのような特定のサイト/アプリを直接アクセスしておきたいというオーディエンスが多いのもうなづける。

 日本では、直接アクセスするほどのサイト/アプリが少ないので、適当にフィルタリングしてまとめてくれるアグリゲーターを受動的に利用することで、満足(あるいは我慢)している人が多いのだろう。


メディア接触でも最も受動的

 また本格的なソーシャルメディア時代に入って、ソーシャルメディアがオンラインニュースの出会いの場として急浮上してきた。そこではニュース・コンテンツ対し参加しエンゲージするオーディエンスが増えている。共有したりコメントを加えたり、投票したり、写真などを投稿したり・・・、と能動的にニュースと接する。過去1週間に、ニュース記事に参加したりエンゲージしているレベルを定量的に測定した結果を、国別に比較したのが図5である。おしゃべり好きが多い南欧を中心に60%から90%の高い値を示している国が大半だが、控えめな日本人はここでも特異性を発揮し、40%と低く唯一50%を切っていた。


NewsEngagementReuters2016.png
図5  ニュースに対して能動的な行動をとるオーディエンスの割合。

 別のアンケート調査結果からでも、ロイターは日本の消費者が26カ国中最も受動的で、最も能動的でない国民としてまとめていた。

 ソーシャルメディアを介してニュースと接触する頻度(割合)は、図4に示すように、日本人は14%と、26カ国中最も低かった。受動的な国民性のせいかもしれない。でもこの1年、日本でもソーシャルメディアを介してニュース接触する人が急増している。ファッションや美容、それに料理やゲーム、芸能などの軟派ニュースが中心である。

 生活を楽しくしてくれる軟派ニュース市場が盛り上がるのは素晴らしい。参入障壁も比較的低いこともあって、若い人がニュースメディアに関心を持つようになてきたのも嬉しいことである。ただ日本ではバイラルメディアなどが過度に高く評価され、軟派ニュース一辺倒になりがちな点が気になる。今回のロイターの調査でも、日本以外のメディア先進国の多くの人も軟派ニュースを楽しんでいるのだが、同時に、硬派ニュースの重要性を強く感じている。それに応えるように、硬派ニュースを核にしたオンラインニュース・ブランドが多く存在し、生まれてきている。


◇参考
・The Reuters Institute Digital News Report(Reuters Institute)

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posted by 田中善一郎 at 14:55 | Comment(0) | TrackBack(0) | 新聞 ニュース
2016年02月19日

メッセージアプリがメディア向けプラットフォームとして浮上、大手パブリッシャーも新規ユーザー開拓で動き出す

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 メッセージアプリの勢いが止まらない。FacebookやTwitterなどのソーシャルネットワークの成長が鈍り始めているだけに、この2〜3年のメッセージサービスの成長ぶりが一段と際立っている。
 
 グローバルに展開している有力なメッセージアプリともなると、図1に示すように、月間ユーザー数が5億人から10億人に達する規模となっている。ところが、パブリッシャー(メディア)サイトはこれまで、集客のためにFacebookなどの既存ソーシャルネットワークを競って活用してきたが、メッセージサービスの利用には熱心でなかった。

MessagingAppRankingBI2015.png
(ソース:Business Insider)
図1 メッセージアプリのの月間アクティブユーザー数の推移。Viberの最新のユーザー数は誤っていると思われる。Statistaの調査によると、2016年1月現在の月間アクティブユーザー数は、WhatsAppが9億人、Facebook Messengerが8億人、QQ Mobileが8億6000万人、WeChatが6億5000万人、Viberが2億4900万人、LINEが2億1200万人、となっている。またWhatsAppは、2月に入って10億人を突破したと発表した。


 ところがここにきてパブリッシャーも、ソーシャルサービスの主流になりかねない勢いで爆発的に伸び続けるメッセージサービスを無視できなくなってきた。メッセージサービス側も、巨大な集客力を背景にプラットフォーム化を進めており、写真や動画の共有とかゲームの提供に加えて、メディアコンテンツの配信に意欲を見せ始めている。すでに、「LINE NEWS」や「Snapchat Discover」のような独立したニュースサービスで大きな成果を上げてきているが、必ずしもメッセージ機能を活かしたサービスとはいえない。

 そこでメッセージアプリの本流のチャット特性を活かしたメディアサービスに挑めば、新しいコンテンツ流通チャンネルが生み出せるのではと、期待が高まってきたのだ。若年層を中心にFacebookからメッセージサービスへのシフトがじわじわ進んでいる状況下において、パブリッシャーにとってリーチが難しくなってきた若年層が膨らんできている。そうした若者に振り向いてもらうためには、彼らが日常頻繁に接しているインスタントメッセージのインターフェイスを介して、ニュースを届けたりユーザーの要望を受け止めていかなければならないのかもしれない。

 米Cabrini CollegeのF.Duncan准教授も、若者のニュース接触が変容していることを指摘している。教え子のデジタルメディア専攻学生が授業開始前の隙間時間においてスマホで何にアクセスしているかを調べ、その結果をQuartzの投稿記事の中で次のように報告している。「彼らはすぐにはFacebookをチェックしていない。またInstagramやPinterest、Twitterもチェックしていない。彼らはまず、Snapchat内での友人の話しや Facebook Messenger内での友人のチャットをチェックして、その日に見るニュースを選んでいる。それを終えてから、Instagramで好きなブランドの投稿やTwitterでセレブのツイートなどを楽しんでいる。若者たちのニュース接触の場となってきたメッセージアプリの活用に、パブリッシャーが着手する時期が訪れてきたようだ。

 それに応えてメッセージアプリ各社も昨年あたりから、徐々にパブリッシャーに働きかけるようになってきた。その中で目立った動きを見せたのがViberとLINEであった。パブリシャーに公式アカウントを設けることができるようにし、メッセージ機能を活用したメディア活動を実施させ始めたのだ。まだ実験的な段階かもしれないが、欧米の幾つかの有力パブリッシャーが読者と対話するような形でニュース記事などを提供し始めている。そこでここでは、ViberやLINEのメッセージ機能を活用している欧米のパブリッシャーの事例を見ていこう。

Viberの事例:BBCはミャンマーやネパール向けに、現地語のチャットチャンネルを活用

 Viberはイスラエル生まれで、一昨年に楽天に9億ドルで買収されたメッセージアプリである。現在、世界に約6億7000万人の登録ユーザーを抱え、月間のアクティブユーザー数は約2億5000万人とされている。同アプリのPublic Chat機能により、アカウントを設けたセレブやブランド(企業)、インフルエンサーなどとライブの対話を楽しめる。対話では、写真、音声、動画、ステッカー(絵文字、スタンプ)を使える。そのPublic Chat機能のアカウントを、欧米の名だたるパブリッシャーも取得しており、メディア活動を実験的に始めているのだ。老舗のBBCや新興のBuzzFeed、Huffington Post、Mashableが着手しており、現在の各アカウントのフォロワー数は次のようになっている。

BBC Burmese:112,680人
BBC Nepali:25,628人
BuzzFeed:131,205人
Huffington Post:17,969人
Mashable:26,674人

 それぞれのパブリシャーが展開している公開トーク・ページのスナップショットを、図2、図3に掲げておく。

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図2 Viberを利用したBBC Burmese(ミャンマー)とBBC Nepali(ネパール)。BBC Burmeseではビルマ文字が表示できなかった

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図3 Viberのメッセージ機能で情報提供しているBuzzFeed(左)、Huffington Post(中央)、Mashable(右)

  グローバルメディアの代表格ともいえるBBCは、Facebookなどのソーシャルメディアを積極的に利用しているが、メッセージアプリの活用でも先頭を走っている。さすがと思わせたのは、昨年4月末に発生したネパール大地震の時に、ViberのPublic Chatをライフラインチャンネルとして用い、公共サービス通知や緊急情報をネパール国民に素早く流したことだ。今もそのチャンネルを継続して、ネパール向けのBBCニュースを流している(図2の左)。BBCはまた昨年12月に、BBC Burmese Public Chatを立ち上げ、ミャンマー向けのニュース配信チャンネルを増強している。すでにFacebook pageに370万人のファンを抱えており、こうした複数のチャンネルを介して毎週650万人のミャンマー国民がBBCニュースと接しているという。

 新興メディアも実験に取り組んでいる。Huffington PostのViber Public Chatでは、12人の記者がチャットに参加して、ニュース記事を紹介したりしている。 

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図4 Huffington PostのViber Public Chatでチャットに参加している記者の紹介。12人の記者がチャットに参加している

 
LINEの事例:WSJがアジアユーザー向けのニュースを配信。215万人のフォロワーに、これまで1330本の記事を配信


 LINEもパブリッシャーにメディア公式アカウントを開設させている。これらの公式アカウントを友だちとして加えることにより、通常のトーク(チャット)インタフェースでパブリッシャーからのニュース記事と接することできるようになる。現在、日本国内向けには39のパブリッシャーが公式アカウントを設けている。これ以外に欧米の幾つかのパブリッシャーも、アジア向けに英語版ニュースを配信するために公式アカウントを取得していた。ここでは、そうした欧米のパブリッシャーの取り組みを紹介する。

 実際に次の6つの欧米パブリッシャーをフォロワーしてみた。それぞれのパブリッシャー・アカウントのフォロワー数とこれまでの投稿記事(post)数は次のようになっている。

Wall Street Journal(WSJ):2,151,050人/1,330post
NBA Global:1,287,151人/689post
BBC News:1,241,565人/1,012post
BuzzFeed:316,505人/514post
Mashable:272,468人/220post
The Economist:77,028人/196post

 各パブリシャーのスナップショットを、図5〜図9に掲げておく。

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図5 LINEを利用したWall Street Journal(WSJ)。投稿ホーム画面(左)とトーク画面(右)

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図6 LINEを利用したNBA Global。投稿ホーム画面(左)とトーク画面(右)

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図7 LINEを利用したBBC。投稿ホーム画面(左)とトーク画面(右)

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図8 LINEを利用したBuzzFeed。投稿ホーム画面(左)とトーク画面(右)

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図9 LINEを利用したMashable(左)とEconomist(右)

 
 このなかで目を引いたのは、やはりWSJである。WSJは、LINEの中核ユーザーである若年層にとってあまり馴染みがなさそうなパブリッシャーであるし、硬派の経済専門新聞メディアでもある。それなのに、現在215万人を超える最も多いフォロワー数を獲得している。さらに、そのフォロワーの30%前後ものユーザーが投稿記事にコメントしたりシェアしている。かなり高いエンゲージメント率を達成しており、驚いてしまう。

 LINEの月間アクティブユーザー数は2億1500万人であり、その多くは日本、台湾、タイ、インドネシアなどのアジア地区のユーザーである。LINEユーザーにはWSJのような硬派の記事を好む割合が少ないかもしれないが、アジア人が関心を寄せる質の高いニュースをアジア人ユーザーが多いLINEに配信すれば、母数が大きいだけにそれなりの規模のユーザー数を獲得できると踏んだのであろう。そこで、WSJは次のキーワードの記事を選んで、配信するようにした。 
Tech、Markets、Economy、China、Japan、Korea、India、Indonesia

 BBCやEconomistもLINE活用の狙いはWSJと同じである。将来性の高いアジア市場に向けて、そこの若いアジアユーザー層にリーチするには、LINEが有望と見たのであろう。

 このようにViberやLINEなどのメッセージアプリをメディアプラットフォームとして活用しようとする動きがようやく始まった。ただ、プライベートなメッセージアプリをオープンなメディアプラットフォームとして利用することに壁が存在することもあって、これまでパブリッシャーは積極的に取り組まなかったのもうなずける。そういう背景もあって、限られた大手パブリッシャーが試行錯誤的に着手している段階かもしれないが、それなりの手ごたえがあったのも確かで、これから本格的な展開が見られそうである。


10億人ユーザーのWhatsappが乗り出せば、本格化する
 パブリッシャーにとってグローバルなメディアプラットフォームといえば、これまでFacebookに代表されるソーシャルネットワークであった。ところが図10に示すように、月間アクティブユーザー数でソーシャルネットワークはメッセージアプリに追い抜かれ、差を広げられている。メッセージアプリには、既存のパブリッシャーがリーチできなかった、つまり手つかずのユーザーが多く集まっているはず。それだけに、ソーシャルネットワークを補完する形で、メッセージアプリにもグローバルなメディアプラットフォームの役割を果たしてほしいとの声が高まってきたのは当然かもしれない。

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図10 ソーシャルネットワーク 対 メッセージアプリ。トップ4の月間アクティブユーザー(MAU)数総計の推移を示している。2015年の前半に、トップ4のMAU総計でメッセージアプリがソーシャルネットワークを追い抜いた。2015年第一四半期時点でのメッセージアプリのトップ4はWhatsApp, Facebook Messenger, WeChat, Viberで、ソーシャルネットワークのトップ4はFacebook, Twitter, LinkedIn, Instagram。

 そのグローバルなメディアプラットフォームとしては、規模やFacebook傘下の点から、WhatsAppやFacebook Messengerの2大メッセージアプリに注目が集まる。特に、欧米のパブリッシャーが強く関心を寄せるのは、月間アクティブユーザー数が10億人を突破した”最もグローバル”なWhatsAppである。ところが上で紹介したように、名だたるパブリッシャが飛びついたのは、ViberやLINEであった。理由は、両メッセージアプリがメディア対応に先行して動いていたからだ。一方WhatsAppは公式にメディアサポートをしていない。それどころかプライベートなメッセージサービスならではの各種制約が課せられていた。グループのユーザー数に上限があったり、ユーザー情報が得られなかったりしている。

 ただ、Facebookなどのソーシャルネットワークからパブリッシャーサイトへの流入トラフィックが伸び悩みだした現状において、新たなフロンティアとしてメッセージアプリへの期待が日増しに高まっている。そのためか、Facebookも動き始めている。 WhatsAppはこのほど年間0.99ドルのサブスクリプション料金を廃止し、新たな収益モデルへの転換を明言している。またFacebook MessengerもAPIを公開することを昨年末に明らかにした。公式にメディアサポートする前ぶれではなかろうか。

 すでに非公式ながら、大きなイベント時の期間限定ではあるが、大手パブリッシャーがWhatsAppを使ってニュース配信した事例はいくつかある。たとえばNYタイムズは、昨年7月のローマ法王が南米を訪問した時に同行した特派員が、WhatsAppのメッセージサービスによるニュース配信を実験している(図11)。読者との対話も試した。BBCもこれまで一昨年のインド選挙や、昨年のネパール大地震などの時に、WhatsAppを利用してきた。ネパール地震の時には、WhatsAppアカウントを用いて、ニュース素材となる読者からの写真やビデオ、それに生の声を集めた。

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図11 New York Times(NYT)の特派員が、昨年7月のローマ法王南米訪問ニュースをWhatsappのメッセージサービスで配信

 そのほか、Washington PostはKiKを(図12)、独BildがFacebook Messengerを利用するなど、大手パブリッシャーの実験が花盛りだ。

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図12 Washington PostはKiKのメッセージ機能を用いてゲームやクイズを提供


 さらに外部のメッセージアプリに頼らないで、メッセージ機能を備えたニュースアプリを独自に提供するパブリッシャーが登場してきた。Quartzのスマホ向けニュースアプリは図13で示すように、チャットインタフェースでニュースを届けている。チャットボットを採用し、対話しながらユーザーはニュース記事を選んだり、クイズを楽しんだりできるようになっている。図13の例では、新しいニュースがない時間帯にアクセスしたので、クイズをしてみないかと問われ、OKをすると、「最も利用者の多い空港はどこか」との質問が出て、その後すぐにアトランタか北京かの2択が表示され、アトランタを選ぶと、おめでとうと返事が戻るとともに、今は新しいニュースがないので、もう少し経ってからアクセスしてくださいといわれる。ステッカー/絵文字なども使ったりして、楽しくニュースに接する環境を提供しようとしている。

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図13 Quartzは自前のチャットインタフェースのニュースアプリでニュースを配信


 このように見ていくと、今年はメッセージアプリがグローバル・メディア・プラットフォームに飛躍する元年となるかもしれない。これに合わせて気になる動きとして、GoogleのスマホWeb表示高速化の「AMP」をLINEやViberなどが採用していることである。近いうちにメッセージアプリから爆速表示のニュース記事に接することができるかも。もう一つ楽しみな動きとしては、Quartzも採用したチャットボットのAI化が進んでいることである。チャットに編集者が加われば良いのだが、現実には超多忙な編集者が関われる時間は限られているだけに、より賢いチャットボットの開発が期待される。


◇参考
・Most popular global mobile messenger apps as of January 2016, based on number of monthly active users (in millions)(Statista)
・Messaging apps are now bigger than social networks(Business Insider)
・Line is The Wall Street Journal's fastest-growing platform(Digiday)
・Publishers are leveraging chat apps to reach mobile audiences(Business Insider)
・Sharing News on WhatsApp, an International Desk Experiment(NYTimes.com)
・Is Messaging the Future of News? Quartz Thinks It Might Be(Fortune)
・Teens have a smart reason for abandoning Facebook and Twitter(Quartz)
・Myanmar Viber Users Can Now Access BBC Burmese News(Myanmar Marketing News)
・The New York Times is publishing on WhatsApp for the first time, covering Pope Francis(NiemanLab)
・BBC using WhatsApp and WeChat at Indian elections
(journalism.co.uk)
・BBC Nepali earthquake lifeline public chat channel launches on Viber(Media Center、BBC)
・Test Your Trivia Skills With Washington Post on Kik(KiK)
・WhatsApp at 1 billion: How can journalists use the chat app for newsgathering?(FirstDraftNews)
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posted by 田中善一郎 at 15:22 | Comment(0) | TrackBack(0) | 新聞 ニュース
2016年01月20日

信頼できるニュースソース、検索エンジンがソーシャルメディアを引き離す

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 信頼できるニュースソースとして、グーグルに代表される検索エンジンが今年もトップとなった。ユーザーは、検索エンジン経由で接したニュースを、伝統メディアやオンラインメディア(ニュースサイト)で接する場合よりも信頼している。またソーシャルメディアで接するニュースに対する信頼度は、高くならないで頭打ちになっている。

 これは米PR会社のエデルマン(Edelman)がまとめた「2016 EDELMAN TRUST BAROMETER」の調査結果である。昨年同様、今月20日から始まる世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)に向けて実施され調査で、2015年10月13日〜11月16日の間に28か国の3万3000人を対象に行った。

 昨年の調査で注目されたのは、最も信頼できるニュースソースとして、検索エンジンが初めて新聞やテレビなどの伝統メディアを追い抜いたことであった。今年はさらに、以下の図に示すように、検索エンジンを信頼する人の割合が昨年よりも1%増えて63%となり、伝統メディアと5%の差をつけたままトップを続けている。また若いミレニアル世代に限るとさらに差が開き、66%もの人が検索エンジンを信頼している。

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(ソース:Edelman)
図1-1 信頼できるニュースソース。一般ニュースや情報のためのニュースソースとして信頼できると答えた割合を示している。


EdelmanMediaTrust2016b.png
(ソース:Edelman)
図1-2 信頼できるニュースソース。ミレニアム世代(1980〜2000年生まれ)に限定した信頼度データ(2016年)も付け加えている。

 オンラインメディア(オリジナルのWebサイト)も信頼されてきているが、検索エンジンと比べると信頼度でまだ10%もの差が開けられている。オリジナルのWebサイトと同じニュース見出しが検索エンジンでも表示されているはずなのに、検索エンジンサイトで接したニュースのほうが信頼度が高いわけだ。検索エンジンの利用では、能動的にニュースを探し、また検索結果から実績のあるWebサイトを選べることもあり、ニュース記事を信頼しやすいのかもしれない。

 ソーシャルメディアは、若い人を中心に主要なニュース接触の場にのし上がっているが、そこで接するニュースに対する信頼度は昨年より1%減の44%に落ち、検索エンジンとの差が拡大している。エデルマンの調査でも、友人や家族などとシェアしたニュース記事を信頼する人が多いと語っているのに、ソーシャルメディアのニュースはあまり信頼されていない結果となっているのだ。

 Quartzの解説によると、検索エンジンで示されるニュース記事の見出しは、検索エンジンに最適化するようにファクト(キーワード)ベースで作られているため、信頼できる記事かどうかを判断しやすいと解く。一方ソーシャルメディアでのニュース記事の見出しは、拡散を狙ってくただけた解説的なものが多く、またコンテンツとかけ離れた釣りっぽい見出しも少なくない。信頼できないニュース記事が散在しているのも確かである。またグーグルのような検索エンジンでは、信頼できる有益なニュース記事をなるべく上位に表示するように努めているはずなので、信頼を得るための施策を打っているとも言える。

 検索エンジンの市場を事実上独占しているグーグルは、Reputation Groupが発表する「世界で最も信頼度の高い企業100社」のランキングで2014年と2015年の2年連続で2位に選ばれている。このことは、グーグルの検索エンジンは何やかんやと批判されようが、一般にはおおむね信頼されている。だから検索エンジンで探したニュース記事をある程度信頼しても良い、と判断する人が多いのもしれない。

◇参考
・People trust Google for their news more than the actual news(Quartz)
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posted by 田中善一郎 at 08:35 | Comment(0) | TrackBack(0) | 新聞 ニュース
2015年12月20日

フェイスブックの「ニュース配信サービス」、世界の有力メディアが一斉になびく一方で日本のメディアは沈黙

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  世界のパブリッシャーが、フェイスブックの手のひらの上で踊らされてしまうのでは・・・。世界の有力なニュースメディアがこぞって、フェイスブックのモバイル端末対応のニュース配信サービス「インスタント・アーティクルズ(Instant Articles)」に参加し始めたからだ。

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図1 世界の有力パブリッシャーが雪崩現象のように、フェイスブックの新しいニュース配信サービス「Instant Articles」と提携している。すでに350以上のパブリッシャーが契約している。ただし日本のパブリッシャー名が見当たらず、いまのところ蚊帳の外に。

 フェイスブックは今年5月から、NYTimesやBBCなど選りすぐりの欧米ニュースメディアと提携して、インスタント・アーティクルズ(IA)の実験サービスを開始していた。そして今秋からは、より多くのパブリッシャーを加えて、iPhone ユーザーに向けてほぼ本番に近いサービスに入った。さらに、Androidにも対応してサポート体制が整ってきたのか、新興国の有力パブリッシャーとも組み、グローバル展開にも突入した。2週間ほど前にインドでのサービス開始を皮切りに、アジアや南米各国でのサービスが今まさに離陸しようとしている。

 そのグローバルでのサービス展開は、思っていた以上に速いペースで進んでいるようだ。米国ではNYTimesやBuzzFeed、Washinton Postなどの主要パブリッシャーがほとんど契約し、英国でもBBCやGuardianに続いて Daily Telegraph, Independent, Sun, Daily Mail など著名な13パブリッシャーが一斉に契約した。実際に、筆者のニュースフィードでもこの2週間くらい前から、米英の有力パブリッシャーがフェイスブックに投稿したIA対応の記事を見かけるようになってきた。さらに驚くことに、後発と思っていた新興国の大手パブリッシャーの幾つかは、IA対応の記事をすでに発信しているのだ。この1週間で見つけたニュース記事例のスナップショットを、図2、図3、図4に掲げておく。先進国だけではなくてアジアでも、インドをはじめ、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイなどの各国で、地元の有力パブリッシャーと提携してすでに走り出しているのだ。さらに、近く開始すると発表した南米や、未発表のオーストラリアやニュージーランド地域の一部パブリッシャーまでも、見切り発車のようにIA対応の記事をすでに発信しているのである。


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図2 IA対応の記事例。米国に次いで世界第2位のフェイスブック人口を誇り、今後も急拡大が間違いないインド市場でのIA普及に、フェイスブックは非常に力を入れている。図左はインドの著名なパブリッシャーAaj Tak、図右は同国トップの英語版ニュースメディアIndiatimes。赤丸で示した稲妻マークで、IA対応の記事であることをユーザーに知らせている

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図3 IA対応の記事例。図左はフィリピンのパブリッシャーGMA News、図右は中国の国営メディアのCCTVNews。CCTVは、12月16日世界インターネット会議で習主席がネット規制の正当性を主張した講演のニュースを、3倍以上拡散するといわれるIA対応にして投稿した。

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図4 IA対応の記事例。左はブラジルのパブリッシャーCatraca Livre、右はオーストラリアのパブリッシャーSydney Morning Herald

 このように、世界中のパブリッシャーがどうしてほぼ同時に、フェイスブックの新しいニュース配信サービスになびいたのだろうか。どうも見境もなく飛びついるのではないようだ。IAサービスで提携しているパブリッシャーは前々から、コンテンツ流通プラットフォームとしてフェイスブックを積極的に活用していたのである。これまで各パブリッシャーはフェイスブックページを設け、そこにニュース記事をリンク情報(リンクシェア)の形で投稿していた。その記事がファンのニュースフィードに掲載されたりしていたのだ。この2〜3年の間にフェイスブックページのファン数を急増させ、投稿記事が一段と拡散するようになっていた。その結果として、大量のトラフィックがパブリッシャーサイト(ホームページ)に流入するようになった。つまり、世界の有力パブリッシャーの多くは、フェイスブックのプラットフォームに大きく依存しているのである。

 確かにIAサービスに参加している有力なパブリッシャーは、図5に示すように、それぞれ自分たちのフェイスブックページで多くのファンを抱えている。参考までに図6に示した日本の代表的なマスメディアと比べても、桁違いに多いのがわかる。

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図5 IAに参加している著名なパブリッシャーが抱えるフェイスブックページ・ファン数。先ほど、IAの参加が明らかになったアフリカのパブリッシャーでも、ナイジェリアのNaij.comが2,840,000万人、ケニアのStandard Media Groupが1,070,000人と、かなりのファン数を獲得している。さらに有力なパブリッシャーともなると、人気の高いフェイスブックページを複数持っている。

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図6 日本の代表的なマスメディアが擁するフェイスブックページ・ファン数。

 フェイスブックのプラットフォームに大きく依存している様子を、BBCの例で見てみよう。2500万人以上のファン数を誇るフェイスブックページBBC Newsを看板にし、それ以外に地域別や言語別、カテゴリー別にも数多くのフェイスブックページ用意しており、多くのファンを獲得している。BBC Brasil(ファン数が1,876,171人)、BBC Persian(同2,750,583人)、BBC Burmese(同3,777,108人)、BBC Hindi(同3,895,132人)、BBC Bangra(同6,357,641人)、BBC Nepali(同2,388,154人)からも分かるように、世界で万遍なく浸透しているフェイスブックを活用して、地域別や言語別に記事を配信しているのである。カテゴリー別でもBBC Sportのフェイスブックページが話題になっている。若年層を中心にファン数を8,461,256人にも急増させたお陰で、フェイスブックからBBC Sportのホームページへのトラフィックが、昨年9月に週間3万5000件しかなかったのが、今年9月には週間で370万件と100倍以上になった。

 また新興国のパブリッシャーもフェイスブックへの依存を高めている。英語新聞として世界トップ級の発行部数を誇るインド Times Internetが旗艦ブランドとするIndiatimesも、400万人以上のファンを抱えるフェイスブックページを背景に、フェイスブック経由で世界中から多くのトラフィックを流入させている。NewsWhipの今年10月の調査結果によると、Indiatimesのニュース記事は、月間でLike数が9,999,468件、Share数が3,751,711件、Comment数が978,385件ものアクティビティを得ていた。欧米のトップクラスのパブリッシャー並みに、フェイスブック上で記事を拡散させているのだ。

  このように、世界の大半の国の主要パブリッシャーはすでに、多くのファンを擁するフェイスブックページをバックに、コンテンツ流通プラットフォームとしてフェイスブックを活用している。こうした下地があるからこそ、その延長上での新しいモバイル端末対応ニュース配信サービス「インスタント・アーティクルズ(IA)」を打ち上げられ、世界の主要パブリッシャーが一斉にIAサービスに走りだせる態勢を整えることができたのだ。

 これまでパブリッシャーが彼らのフェイスブックページに投稿していたニュース記事はあくまでリンク情報で、その記事本文を読むためにはパブリッシャーのサイトに飛ばなければならなかった。お陰でパブリッシャーにとっては有り難いことに、あまりコストをかけないでも、フェイスブックから多くのトラフィックを流入してもらえていた。でもモバイル環境でのユーザーエクスペンスとしては、ユーザーが記事本文を読むのに、わざわざパブリッシャーサイトに飛ばさせ、時には10秒近くも時間をかけさせるようなことは、許されなくなってきた。

 そこでパブリッシャーに投稿させるニュース記事を、これまでのリンク情報ではなくて、記事本文に切り替えていくこうとして、ニュース配信サービスIAをフェイスブックが打ち上げたのだ。パブリッシャーの記事本文がフェイスブック内にホストされるため、パブリッシャーサイトに飛ばなくても済む。フェイスブック内で即座にニュース記事全文が読めるようになる。ユーザーにとって有り難いことだ。ニュース記事をIA対応にするとサクサクと記事全文も読めるようになり、その結果ニュース記事の閲覧数も増えるので、パブリッシャーにとってもメリットが大きいと、フェイスブック社は主張している。

 NewsWhipがNYTimesの投稿ニュース記事を対象に調べた結果によると、リンク情報の記事よりもIA対応のニュース記事のほうが、Share数で 3.5倍、Like 数で2.5倍、Comment数で5.5倍と、平均エンゲージメント率がぐんと高まっていた。つまり、リンク情報からIA対応(記事全文をホスティング)に変えると、より多く閲覧されるようになるということだ。にもかかわらず、NYTimesはリンク情報のニュース記事を今でも多く投稿している。自サイトへのトラフィックを減らしたくないためであろうが、またIA対応の記事では編集や広告フォーマットでフェイスブックによって規制が課せられることも、全面的なIA対応記事へのシフトを鈍らせているようだ。

 ところがWashington PostはもっとIAに入れ込んでいる。NYTimesより遅れて秋からIAサービスに参加しているが、フェイスブックに投稿するニュース記事を、リンク情報ではなくて、すべてIA対応とした。この結果、フェイスブックからWashington Postサイトへの参照トラフィックは減るのだが、フェイスブックにホストしたニュース記事(全文)へのトラフィックが新たに生まれることになる。

Washington Post記事の総閲覧数=
Washington Postサイトでの閲覧数+外部プラットフォームでの閲覧数

となるので、第1項の閲覧数が減ったとしてもそれ以上に第2項の閲覧数を増やせれば、Washington Post記事の総閲覧数(トラフィック)が増えることになる。実際、第2項に相当するIA対応記事などの外部プラットホームでの閲覧が増えたことにより、Washington Postのトラフィックを大きく底上げすることになった。その結果、今年10月にWashington Postの月間訪問者数が6690万人となり、6580万人のNYTimesを初めて追い抜いた。さらに11月には7160万人と急伸し、NYTimesとの差を拡大させ、トップ3との差を縮めた(図7)。IAサービスの積極的な取り組みが、勢いづけていると見てよさそうだ。

ComScoreNewsSite201511.png
図7 米ニュースサイトの月間訪問者数(マルチプラットフォーム)ランキング。comScoreの2015年11月調査。米国ユーザーが対象。いずれも、膨大なファン数を獲得したフェイスブックページを持ち、それをベースにIAサービスにも参加している。最も積極的なWashington Postの伸びが際立っている


 IAサービスを巡って現在も、水面下でフェイスブックとパブリッシャーの間の激しい綱引きが繰り広げられており、まだ課題も多く残されている。それでもともかく、世界のほとんどの国の主要パブリッシャーがIAに参加しているのである。でも日本の伝統的なニュースメディアは、フェイスブックが海外に比べあまり普及していないこともあり、コンテンツ流通プラットフォームとしてフェイスブックをあまり重視してこなかった。このため、IAにまだ参加していない。国内市場ならそれでも構わないが、グローバルなメディア展開を目指すとなると参加を検討する必要がありそう。



◇参考
・Instant Articles Launches to Everyone on Android, with More Than 350 Publications Globally(Facebook)
・Facebook Instant Articles: More Media Partners, More iPhone Users Coming(Adweek)
・Facebook signs up a further 13 UK publishers for its Instant Articles(Drum)
・Facebook Partners With 50 Publishers To Launch Instant Articles In Asia(Techcrunch)
・Is Facebook Driving Less Traffic to Publishers’ Sites?(WSJ)
・The Washington Post continues to see explosive growth, breaks yet another record with 71.6 million users in November(Washington Post)
・Facebook Bends to Publishers, Tweaks Instant Articles Advertising(WSJ)
・“Why not be all the way in?” How publishers are using Facebook Instant Articles(NiemaLab)
・Facebook Instant Articles rolls out across Asia(Facebook)
・Fairfax first local publisher to partner Facebook Instant Articles
(AdNews)


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posted by 田中善一郎 at 06:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 新聞 ニュース
2015年11月14日

分散型メディア、動画コンテンツが先導し爆発普及の兆し

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 分散型ニュースメディアの動きがにわかに活発になってきた。先行したのは動画メディアである。

 代表例としてよく紹介されるのがNowThisである。新興の動画コンテンツ(大半が硬派な動画ニュース)パブリシャーである同社は、自前のメディア・サイトを閉鎖し、すべての動画コンテンツを外部プラットフォームにホストしている。ユーザーには、自前のホープページではなくプラットフォームで視聴してもらう。NowThisのサイト(nowthisnews.com/)に飛ぶと、
「HOMEPAGE.
EVEN THE WORD SOUNDS OLD.
TODAY THE NEWS LIVES WHERE YOU LIVE.」
の案内が目に入る。「古い感じのするホームページに来てもらうのではなくて、ユーザーがよく居る場所にニュースを置いておきます」ということだ。現在、毎日60点以上の動画コンテンツを、Facebook,Instagram、Vine、Snapchat、Twitterなど16か所のプラットフォームにホストしている。月間にして4億3500万回も視聴されている。

 こうした分散型メディアが最近になって一段と注目を浴びているのは、一般のテキストニュースにも波及し始めているからだ。特に、その本命と目されているFacebookの「Instant Articles(インスタント・アーティクルズ)」が、参加パブリッシャーを20社に増やし、本格的に離陸しようとしている。

これまでパブリッシャーサイトへの参照トラフィック増を支援してきたが
 
 この2~3年、米国のニュースメディアは、新興メディアだけではなくて伝統メディアも、バイラル重視に突っ走てきた。ニュースサイトへのトラフィックを増やすために、ソーシャルネットワーク、特にFacebookで話題になり拡散するコンテンツを作り出すことに努めてきた。Parse.lyが米主要パブリッシャー400サイト以上を対象に実施した今年5~7月の調査でも、図1のように、パブリッシャーへの参照トラフィックの流入元シェアでFacebookが43%とトップに飛び出て、38%のGoogleを追い抜いている。さらにモバイル環境の拡大に伴い、GoogleからFacebookへの流れは止まりそうもない。

 TopReferringSitetoPublisher201507.png
図1 パブリッシャーへの参照トラフィックの流入元シェア(データ:Parse.ly)


 このように、ニュースメディアなどのパブリッシャーが競ってFacebookからの参照トラフィックを増やす流れを、Facebookも後押ししてきた。ニュースフィードに掲載されるコンテンツは、Facebookが決めるアルゴリズム次第でどうにでも制御できる。この2〜3年の間、メディア/パブリッシャー・ページからのコンテンツが優遇され、逆にブランド・ページからのコンテンツは冷遇されニュースフィードへの表示でも目立たなくなってきた。その結果Socialbakers の調査でも、図2のように、メディアやパブリッシャー・ページからのコンテンツのInteraction数(=Comment数+Share数+Like数)が過去2年間に急増し、ブランド(企業)ページのコンテンツに比べ約3倍にもなっている。Interaction数の多いメディア・ページのニュース記事が、ニュースフィードに頻繁に表示されるようになってきたのである。

FBNewsFeedCategory.png
図2 フェイスブックのカテゴリー別Interaction数。メディア・ページからのコンテンツが最も拡散性が高い。(調査:Socialbakers)


これからはパブリッシャーのコンテンツはリンク情報からネイティブへ

 そこで、NewsWhipでは、Interaction数(あるいはShare数)の多いパブリッシャーを「The Biggest Facebook Publishers」として、毎月ランキングを発表している。図3は、今年9月のShare数の多いパブリッシャーのトップ10である。Facebook内でのパブリッシャーの各記事はリンク情報がほとんどなので、Share数やInteraction数が多ければパブリッシャー・サイトへの参照トラフィックが一般に増えることになる。


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図3 Share数の多いFacebookパブリッシャーのトップ10。2015年9月調査。(調査:NewsWhip)


 ところが、こうした各パブリッシャーがFacebookからの参照トラフィック増を競う流れに、変調が見え始めた。ひとつ前の記事の中でも触れたように、バイラルメディアに代表される新興メディアにおいて、この1年の間にInteraction数(Share数も含む)を減らすサイトが目立ってきたからだ。そうしたサイトではFacebookからのトラフィックも減り始めているはずだ。先週末のDigidayの記事でも、今年に入って主要パブリシャーがこぞってFacebookからのトラフィックを減らしているというSimpleReachのレポートを紹介していた。

 これは、Facebookのメディア戦略が新たな局面を迎えているためではなかろうか。これまで、Facebookはニュース/メディアなどのパブリッシャーのコンテンツを優遇してきた。そのお陰でパブリッシャーは参照トラフィックを増やすことができた。この結果、パブリッシャーのFacebook依存が高まることになり、多くのパブリッシャーは同社なしではやっていけない状況にはまっていった。伝統メディアまでも頼ってきている。今やFacebookは、パブリッシャーに対し優位に立てるようになったのだ。

 ところが現状のままでは、パブリッシャーのコンテンツはリンク情報のため、Facebookはユーザーをパブリッシャー・サイトに送り込む役割を担っているだけとなっている。広告などの売上はパブリッシャー・サイト側で生まれるが、Facebook側の売上にはほとんど貢献しない。このままでは面白くない。そこでパブリッシャーに対し優位に立てるようになった段階の今、Facebookが次の大きな一手を打ち出したのだ。Facebookに置くパブリッシャーのコンテンツ(ニュース記事など)を、リンク情報ではなくてネイティブ(コンテンツそのもの)に変えていこうとしたのだ。

 これはユーザーにとっても有り難い。ユーザーがパブリッシャーのコンテンツ(リンク情報)に出会った時に、わざわざパブリッシャー・サイトに飛ばなくても、即座にFacebook内でコンテンツ全文を閲覧できるからだ。このサクサク感はモバイル時代には欠かせない。ユーザーのエンゲージメントも高まるはず。さらに、パブリッシャーのコンテンツにかかわる広告事業をFacebookの制御下で展開できるようになる。これこそが同社の最大の狙いでもある。モバイル広告市場で急成長している同社としては、さらなる飛躍に向けて動き出せるのである。

 まず同社が急いだのは動画メディアの強化だ。動画配信事業は以前、YouTubeが圧倒的に支配していた市場である。そのため、パブリッシャーや企業も、YouTubeに動画を投稿し、Facebookにはその投稿動画のURL(リンク情報)を掲載することが多かった。つまり、URL(リンク情報)がFacebookで拡散しても、動画再生のトラフィックはYouTubeに流出していたのだ。そこで、動画配信環境を整備し、Facebookへの動画の直接投稿を強力に推し進めてきた。その成果で、今や毎日、Facebookで80億回も動画が再生されるほどに急成長し、動画プラットフォームとしてYouTubeと対抗しうる存在となってきた。

 動画メディアに続いてニュースなどのテキスト系メディアでも、パブリッシャーに対しリンク情報の代わりにコンテンツ全文を直接投稿するように働きかけているのだ。それが「Instant Articles(インスタント・アーティクルズ)」である。でもこのような流れが進むと、パブリッシャーが当てにしていたFacebookからの参照トラフィックが減っていくことになる。Facebookとしてはこの流れを加速化させるために、ニュースフィード・アルゴリズムに手を加えて、ネイティブ動画やインスタント・アーティクルズを優遇していくのだろう。一方でリンク情報コンテンツは冷遇されそう。


パブリッシャーのネイティブ動画ニュースが起爆に

 すでにニュース系パブリッシャーも、この変化に対応し始めている。動画やイメージ・ニュースを、リンク情報ではなくて、ネイティブ(コンテンツそのもの)の形でFacebookにホストさせるパブリッシャーが増えてきているのだ。図3でShare数の多いトップ10パブリッシャーを示したが、これらパブリシャーでも、リンク情報コンテンツのShare数のほかに、ネイティブコンテンツのShare数もかなり獲得し始めている。図4はその両者を足し合わせたグラフである。中でも、伝統メディアのBBCとかGuardianでも、動画ニュース・コンテンツ丸ごとFacebookに置き、BBC NewsやGuardianのサイトではなくてFacebookサイトで視聴してもらおうとしている。例えば、独ミュンヘン駅に到着したシリア難民を出迎えるBBCの動画ニュースは、37万件を超えるShare数を獲得し、2200万回以上も再生されていた。

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図4 各パブリシャーが直接投稿したネイティブコンテンツのShare数を追加したグラフ。黒い部分がネイティブコンテンツ。2015年9月調査。(調査:NewsWhip)

  主要ニュースサイトは、これまで以上に動画ニュースに力を入れ始めており、動画ニュースの割合が増えていけば、相対的にリンク情報ニュースが減っていきそうである。図4にトップ10のパブリッシャーのInteraction数(=Comment数+Share数+Like数)の内訳を示しています。例えばBBCの場合、9月に3万2814本のニュース記事がリンク情報の形でFacebook内で拡散し、そのInteraction総数が18,455,535件となっている。記事1本あたり562件のInteractionを得ている。一方、コンテンツ丸ごと投稿した動画・イメージニュースは221本であるが、そのInteraction総数が3,253,616件となっており、記事1本あたりのInteraction数が1万4722件と、リンク情報ニュースに比べ25倍以上となっている。ニュースサイトが、動画ニュースに走るのも当然かもしれない。

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図5 トップ10のFacebookパブリッシャーのInteraction数内訳


 このようにニュース系パブリッシャーも、動画ニュースを手始めに、記事コンテンツを外部プラットフォームにホストすることに抵抗がなくなってきたようだ。そこで気になるのが、「Instant Articles(インスタント・アーティクルズ)」の展開である。そこで最初から同プロジェクトに参加しているNYタイムズの現況を見ていこう。NYタイムズのFacebookページ(ファン数1014万)の投稿ニュース記事を見ていくと、稲妻マークの付いたインスタント・アーティクルズ(つまりネイティブコンテンツ)の割合は数分の1程度で、ほとんどはリンク情報コンテンツである。

 そこでNewsWhipでは、リンク情報コンテンツとインスタント・アーティクルズのそれぞれの、記事1本あたりのShare数、Like 数、Comment数をはじいた。リンク情報の場合、335件、1,437件、173件となった。一方インスタント・アーティクルズの場合、1,219件、3,423件、944件となった。インスタント・アーティクルズのほうが、Share数が 3.5倍、Like 数が2.5倍、Comment数が5.5倍と、平均エンゲージメント率がぐんと高まっている。つまり、インスタント・アーティクルズを採用したほうが、多く閲覧されることになる。これはFacebookの主張でもある。

 また、パブリッシャーがいつまでもFacebookからの参照トラフィックを当てにしないほうがよさそうだ。

◇参考
・Facebook has taken over from Google as a traffic source for news(Fortune)
・Facebook's traffic to top publishers fell 32 percent since January(Digiday)
・Socialbakers Finds That 3% of Facebook Desktop News Feed Is Promoted(Socialbakers)
・The Biggest Facebook Publishers Of September 2015 – With Native Content(NewsWhip)
・Re-Thinking Engagement In The Age Of Distributed Content(NewsWhip)
・Instant Articles Are Shared Three Times More Than Regular Links(NewsWhip)
・The Biggest Facebook Video Publishers Of August 2015(NewsWhip)
・Facebook Mulls Ad Changes for Instant Articles After Publisher Pushback(WSJ)
・Theft, Lies, and Facebook Video(Medium)
・これがFacebookが動画再生回数を増やす「カラクリ」、コンテンツを他サイトから盗んでいる構図を解説したムービー「How Facebook is Stealing Billions of Views(Gigazine)
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posted by 田中善一郎 at 16:55 | Comment(0) | TrackBack(0) | 新聞 ニュース
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